M&A編スタート、既存産業をスタートアップが買うとなぜ伸びるのか
今回からマーケティング編に戻り、新たにM&A編がスタートします。M&Aとは、企業を買収すること、つまり企業を買うことを指します。
この回で扱うのは、スタートアップなどが既存の中小企業を買収し、成長させた事例です。既存産業にスタートアップの最先端のノウハウやテクノロジーを投入したら伸びた、という話が背景にあります。
要は企業買収というか、買うことなんですね。
佐久間さんは、伸びたポイントを理解できれば、マーケティングや企業成長のポイントに学びがあると話します。地方企業でも活かせるポイントがいくつもあるとのことです。
これは地方企業でも活かせる。
活かせると思います。活かせるポイントがいくつもあると思います。
M&A編第1回はGENDA、ゲーセンやカラオケを買い続けて上場
M&A編第1回の企業はGENDAです。2、3年前ほどから急激に認知度が上がっていったスタートアップだと紹介されます。
GENDAの事業はゲームセンターです。メダルゲームやUFOキャッチャー、店舗まるごとガチャガチャを置いた店など、エンタメ系の産業を手がけています。
GENDAが面白いのは、全国の有名なゲームセンターやカラオケ、アミューズメント企業を次々と買収した点です。それらを業績成長させ、上場に至りました。
本当に全国の有名なゲームセンターとかカラオケとかアミューズメント企業をバンバンバンバン買って、これを業績成長させて、上場しちゃったっていう。
ヤマさんが確認したように、GENDAが買ったのはオンラインのクレーンゲームではなく、実店舗のゲームセンターやカラオケ、映画館などです。コロナ禍もあった中で、ゲームセンターにこれ以上何ができるのか、と一見思える産業でした。
これ以上何をすることがって、一見。
その既存産業をスタートアップが買って業績改善をやっていったところに、何かヒントがあるのではないか、というのがこの解説の出発点です。
買収後の「100日PMIプラン」とは何か
企業を買収したら、まず最初の100日ほどのプランを作るといいます。契約合意し、グループ会社・傘下に入ったところから、100日間のプランで統合作業を進めます。
この統合作業のことをPMIと呼びます。親会社の持つノウハウやテクノロジーを子会社・グループ会社に浸透させて、業績を改善する活動です。
この100日は2段階に分けるといいます。最初の30日までと、31日から100日まで、という区切りです。
最初の30日、基盤整備と「クイックウィン」づくり
最初の30日までにまず行うのが、コミュニケーション基盤の整備です。連絡の取り方を整えます。
たとえば多くの会社がSlackやTeamsなどのチャットツールを使っているのに対し、買収先がメールや紙、FAXでやっていると、情報の集約や連携がうまくいきません。会議体や報告・管理の体制も含めて、まずコミュニケーションの基盤を整えます。
次にデータ基盤を整えます。データをつなぎ込み、どんな数字が取れ、どう分析するのかを整備します。データ分析が仕切れていなければ、親会社のテクノロジーを投入して分析できる体制まで作るといいます。
そして最初の30日の最後のテーマが「クイックウィン」を作ることです。統合による相乗効果を、まず小さな成果として出すという発想です。
最初にここだけでも成果出ましたよねっていうものを小さい山を作るんですって。
大きなテーマをいきなり掲げて向かうのではなく、小さなゴールを達成することで達成感を得たり、エンゲージメントを高めたり、勢い(モメンタム)を作るのが狙いだと説明されます。
最初からなんかM&Aで買収されたらゴリゴリ怖い人が来て、ここはそうじゃないですか。
M&Aと聞くと、いきなり強い人が来てゴリゴリ進めるイメージがあるかもしれません。しかしGENDAの進め方は、コミュニケーションの基盤を整えてデータを整備し、小さな達成をどう作るかから始めるものだと佐久間さんは面白がります。
この基盤整備の段階だけでも、古くからある会社にはメリットがありそうだ、とヤマさんは指摘します。効率化や連携ができるようになるからです。
31日〜100日、仕組み化とカルチャーの扱い方
31日から100日までの第2タームでは、中期経営計画を作ります。3年後ぐらいにどうするかを描くものです。
あわせて、組織や人事制度の仕組みを整え、継続的な仕組みに落とし込みます。古くからの会社だと、給与がブラックボックス化していたり、何を頑張ればどう評価されるのかがわからなかったりします。
そうした点を整え、頑張れば報われる仕組みを戦略的に作り込んでいくといいます。
一方で、この段階でカルチャーは強制的に上塗りしません。親会社が「スピード重視だ」と一方的に押し付けるのではなく、そこで働いてきた従業員や会社の風土で大事な文化は基本的に残すという方針です。
排除するのはネガティブな部分だけです。意思決定の遅さやギスギス感、非生産的な業務監視などは削りますが、買収先企業のもともとの文化は尊重しながら進めるといいます。
そうなんだ。そこ(買収先の文化)は残してくれる。ありがたい。
右向け右のように従わせるのではなく、お互いに信頼関係を作りながら業績を上げていく。M&Aではまさにこのカルチャーの扱いがネックになりやすい、とヤマさんも応じます。
ファイナンス・マーケ・ブランドの共有で業績を上げる仕組み
統合の中では、いわゆる空中戦的なメリットもあります。親会社が資金を持っているため、投資やリニューアル、機器メンテナンスの一斉導入といったファイナンス面のメリットが生まれます。
さらに大きいのがマーケティングとブランドです。GENDAで最も有名なブランドには、GiGOというゲームセンターのブランドがあります。
GiGOには会員基盤があり、メダルのデータなどが連携してどこでも使えたり、お得なキャンペーンがあったりするといいます。こうしたブランドを買収先が借りられる点が強みです。
本社がもともと持つブランドをM&A先に落とし込み、すぐ使えるようにして効率化します。その結果、グループ各社はやるべき業務にシンプルに取り組めるようになります。
ファイナンスやマーケティング、ブランディング、テクノロジーは親会社が担うため、各社は接客などの本来の業務に集中できるという構造で業績を上げていきます。
親会社が担う
ファイナンス・マーケティング・ブランド・テクノロジー
買収先が集中
接客など現場の本来業務
結果
効率化とシナジーで業績が改善する
確かにこれ(役割分担)はお互いにとってだいぶプラスに。ネットが大きいですね。
泥臭いPMIから中小企業が学べること
今回のGENDAの事例は、データやテクノロジーを提供するだけの浅いレベルではなく、泥臭くPMI・統合後の整備に取り組んだ話だと佐久間さんはまとめます。
特に、顧客基盤の応用や横展開は、既存企業や中小企業にとってもヒントになりそうだと話されます。手持ちの顧客基盤をベースに新規事業ができないか、別の会社と連携できないか、という発想です。
こうした視点で、M&A編ではさまざまな企業解説を続けていく予定です。今回はその第1回として、GENDAが取り上げられました。
まとめ
GENDAはゲームセンターなど既存のエンタメ産業を次々に買収し、買収後の「100日PMIプラン」で統合を進めて急成長しました。基盤整備と小さな成果づくりから始め、カルチャーを尊重しながら仕組み化する進め方には、地方企業や中小企業にも応用できるヒントがあります。
- M&Aは企業買収を指し、買収後の統合作業(PMI)で業績を改善していく
- 最初の100日は「30日まで」と「31日〜100日」の2段階に分ける
- 最初の30日はコミュニケーション基盤・データ基盤を整え、クイックウィンで勢いを作る
- 31日以降は中期経営計画や人事制度を仕組み化し、買収先の良い文化は残す
- 親会社がファイナンス・マーケ・ブランドを担い、各社は本来業務に集中できる構造を作る




