転園は準備が8割
この回のきっかけは、ヒヤマユウタロウさんの息子が9月から幼稚園を転園することでした。引っ越しのタイミングで空きが出たため、育休中でフォローしやすい今、先んじて転園だけ済ませたそうです。
年中の2学期からっていう形で、本人にも前から言ってるものの、環境の変化っていうのは子供にとってはすごい大きなことかなって思うんで、親側でもできることをいろいろ考えたくて(このテーマを)持ってきました。
一方のばたこさんは、娘のこの6年間で環境が変わる経験を3回してきました。保育園から保育園への転園、幼稚園、そして小学校入学です。
小学校は物事の理解も進んでるし、事前の準備も結構進んでたから、結構すんなりだったんですよ。けど、やっぱり保育園から保育園(の転園)が一番大変だったかな。2歳半ぐらいの。
ばたこさんの娘はもともと慎重なタイプで、新しい環境が得意ではありません。だからこそ振り返ると、早く慣れさせようとするより、安心して環境にフィットできることに力を注いでいたと話します。
早く慣れさせようと思って頑張ったというよりかは、安心してどうやったら(新しい環境に)フィットできるかみたいなところに結構尽力してた気がしますね。
その最初の一歩が、前もって説明することでした。「言ってもわからないかな」「直前でいいか」と考えがちですが、ばたこさんはあえて何回も繰り返し伝えたそうです。
こういうお家に引っ越すから新しい保育園に行くよとかを、ちゃんと前もって説明する。今度ここに行くんだよっていうのは、本当に何回も何回も説明した記憶があります。
転居に伴う転園だった2歳半のときも、3ヶ月ほど前から伝え始めました。何度聞かれても何度でも答えることで、不安をそのまま受け止め、一緒に歩み寄る形をとったそうです。
ヒヤマユウタロウさんは、変に不安にさせても仕方ないという親心から、つい直前に伝えてしまうパターンもあり得ると返します。ばたこさんは、不安になっても大丈夫なように準備することこそ親の役割だと考えていました。
上司が、わけもわからず「これ明日からお前異動だから」って言われるより、ちゃんと心の準備させてもらう方がいいじゃんね。
味方をつくり、場所に慣れておく
不安と向き合う方向を決めたうえで、ばたこさんが具体的にやっていたのが「味方をつくる」ことでした。子どもが好きなキャラクターのグッズをそろえ、一人じゃないと感じられるようにするやり方です。
その時トーマスが好きだったんだけど、トーマスのロンTを5個ぐらい買ったり、水筒もトーマスにしたり。あなたにはトーマスがついてるから大丈夫みたいな。
もう一つ重視していたのが、実際の場所を見に行くことです。転園前の空白期間には、毎日新しい保育園までお散歩し、外から一緒に眺めていたと言います。
ここが入り口だねとか、ここが駐車場だねとか一緒に確認すると、初めて行った時もドキドキ度がちょっと下がるじゃん。
ヒヤマユウタロウさんの場合は、転園先の幼稚園に土日開放の時間があり、たまたま同じ年中クラスになる子と居合わせたそうです。しかもその子も9月1日に転園する2人のうちの一人でした。
場所と人やんか、結局。その環境って。少なくとも場所には慣れてるから。あとは人の部分はドキドキで当日を迎えるみたいな感じやけど、一人ね、知ってる人がいるのといないのでも全然違うから。
小学校入学のときも、ばたこさんは2週間、しかも通学と同じ時間に毎日歩いたそうです。子どもだけでなく、親も朝の様子をシミュレーションできたのが良かったと振り返ります。
朝7時に家出発みたいな。通学路で、朝ってこういう感じの人が多いねとか、ここの小学校の子たちもいるねとか。親子ともどもシミュレーションできる。
前もって説明する
3ヶ月前などから何度も繰り返し伝え、不安を受け止める
味方をつくる
好きなキャラクターのグッズをそろえ「一人じゃない」状態にする
場所を見に行く
空白期間や通学時間に合わせて外から眺め、当日のドキドキを下げる
人とつながる
開放日などを使い、知っている人を一人でも作っておく
本でイメトレし、隙間を埋める
場所や人に加えて、ばたこさんが使っていたのが本です。「ようちえんのいちにち」「ほいくえんのいちにち」といった本で、園での一日の流れを事前にイメージしていました。
保育園の一日の場合は、ひよこ組さんとかクラスによってこんなことするねとか、お昼寝するねとか、結構細かく書いてあって。
子どもは何が起こるかわからない状況を怖がりやすく、見通しが立つほど安心します。ばたこさんはこの本を、何が起こるかわからないを一緒に解決するイメトレの道具として使っていました。
人間関係の面では、先生と親が仲良くしている姿を子どもに見せる工夫がありました。送り迎えのときに、あえて子どもの前で先生と会話を盛り上げるのです。
送り迎えの時に、わざと娘の話を「最近こういうのハマってて」って、普段だったら話さないようなことまでプラスアルファで話したりとか。
ああ、先生とママ仲いいんだなみたいなって思ってもらうだけでもちょっと安心するかなと思って。
さらに家でも「なんとか先生、こういうの好きなんだって」と先生の話題を出し、子どもの中での先生の登場頻度を上げていたそうです。ヒヤマユウタロウさんは、これを仕事の「紹介」に例えて納得します。
仕事もそうよ。「何々さんの紹介です」みたいに言われると、急に「じゃあ大丈夫か」みたいになるし、距離縮まるの早かったりする。
先生とのコミュニケーションをどう確保するか
ここでヒヤマユウタロウさんが、今の悩みを相談します。転園先は生徒数が多く、先生と話す時間を確保しづらいため、「先生を信頼している」と伝える材料が少ないというのです。
先生の話をしっかりする必要があるのに、そもそも先生の情報があまりない。どうすればいいか。
(ヒヤマユウタロウ) さんからの質問
ばたこさんの提案は「個人面談をお願いする」ことでした。連絡帳に心配事を書いて相談し、10分でもいいので時間をもらう方法です。転園したてなら、なおさら頼みやすいと言います。
最近の様子ちょっとどうなのか詳しく聞きたいんですけど、10分でもいいのでお時間いただけませんかって言ってみるみたいな。
ヒヤマユウタロウさんは、先生も人間なので全ての園児に平等に接するのは難しいと指摘します。転園したてのボーナスは新入社員と同じで、一週間、一ヶ月とだんだん消えていくとも話しました。
どうやってこの脳内シェア率を維持するかみたいなのは、あんまりハックしすぎるといやらしくなるのはあれやけど、大事なポイントの一つではあるよね。
さらにばたこさんは、手のかからない子ほど先生の目が届きにくくなる問題にも触れます。その対策として、幼稚園の役員をやると先生と仲良くなれると経験を語りました(役員の詳細はまた別テーマとのことです)。
行きたくないへの対処法
ここまで準備しても「行きたくない」となることはあります。ばたこさん自身、順調に見えた保育園転園でも、3週間ほど経った頃に行きたくないが始まった経験があるそうです。
そのときは明確な理由がありました。夕方4時に先生がシャッフルされ、お迎え前に知らない先生ばかりになるのが嫌だったのです。前の園にはなかった仕組みで、2歳半の娘がそれを言葉で説明できたと言います。
ママお迎え来るちょっと前から、全然知らない先生ばっかりになると言って。
ばたこさんはしばらく4時にお迎えに行くことで対応しました。1時間早いお迎えは大変ですが、できる範囲で調整し、慣れるための階段を刻んでいったそうです。
そこは割と調整しつつ、慣れるための階段をうまく刻んでいったって感じなの?
興味深いのは、先生交代の不安が消えたきっかけです。園そのものに慣れて楽しい友だちやおもちゃが見つかると、先生が変わることも気にならなくなり、1ヶ月後には大丈夫になったといいます。
お楽しみを取っておくご褒美の使い方
行きたくない対策として、ばたこさんは「お楽しみを取っておく」ことも実践していました。目標づくりとインセンティブの両方を兼ねた工夫です。
幼稚園入園のときは、前回の反省から3週間後あたりが大変になると想定し、その頃にトーマスランドへの旅行を入れたそうです。しかもゴールデンウィーク明けの疲れを見越し、あえて連休前に設定していました。
カレンダー見ながら「ここまで行ったら、ほら見て、あと2回お休みが来たら次」みたいな言ってました。
カレンダーで可視化することで、2〜3歳でも「何回寝たら」が伝わります。ヒヤマユウタロウさんは、これは大人が仕事を頑張るために先に楽しみを作るのと同じだと共感しました。
そこに先に楽しみを作っておかないとやれないところもあるからさ。大人がそれしてるのに子供それしないのもちょっとようわからんもんね。
一方で、ご褒美そのものには悩みもあります。ご褒美ありきでないと動かなくなるのではという不安です。ばたこさんの整理は明快でした。
新しい環境においては、もう全振りしょうがない。
日常的にはご褒美より「小さな習慣」に持っていきたい派だというばたこさんですが、新しい環境という一時的な場面では割り切ってご褒美を使う、という使い分けを示しました。
休ませる線引きと、子どもの「有給」
ヒヤマユウタロウさんは、初日から順調に見えても甘く見ない大切さを受け止めます。無理しているけどいけているパターンは実際にあり、見えてくるのは3週間ほどかかるという話です。
「行きたくない」に対して休ませるかどうかの線引きは難しいテーマです。癖になったら怖い一方で、泣きながら連れて行くのもつらく、仕事があると簡単に休ませられない事情もあります。
今日はもう玄関からへばりついて全然行かなかったわみたいな時に休ませたりとか。
そのうえでばたこさんは、園までは行くことを基本にしつつ、その子の様子を見ながら判断していたと話します。夫婦で基準を共有していた点も特徴です。
さらにばたこさんの家では、子ども向けの「半休制度」も作っていました。預かり保育なしでお昼を食べたら帰りたいという要望に応えるための仕組みです。
月に2回まで行使可能でとかルール決めて。朝の申告でOK。その代わり早くお迎え行くけど午前中は頑張っていく。
3歳でこの制度を運用し、カレンダーに丸をつけて管理していたそうです。使う回数は最初の数ヶ月がピークで、その後は自然と減っていきました。子どもが環境に適応していった証だと二人は受け止めます。
初週のふりかえりと、慣れさせるより土台づくり
ヒヤマユウタロウさんの息子は、転園から一週間は思ったより順調でした。開放日で場所に慣れていたこと、事前に心の準備をさせていたことが効いていそうだと振り返ります。
ただし、まだ一週間で安心するのは良くないとも考えています。土日に激しく遊びすぎないなど、休日の過ごし方も意識するとのことでした。
ただでさえも平日、5日間刺激まみれで疲れてるぐらいやから、土日ぐらいはね、穏やかに過ごした方がいいもんね。
園での様子を子どもから聞き出す難しさも話題になりました。幼稚園は連絡ノートの情報が減りがちで、つい根掘り葉掘り聞いてしまいがちです。ばたこさんの工夫は「クイズ」でした。
わざと間違えるようなクイズにして「今日はなんとかちゃんはこれをしました。正解はどっちだ?」みたいな。
子どもの生活を聞くこと自体をエンタメにしてしまうやり方で、小学生の娘にも通用しているそうです。二人はこれを、遊びの要素を取り入れる「ゲーミフィケーション」として整理しました。
最後に二人は、この回のテーマを整理し直します。「慣らす」は親が動く受動的なニュアンスになりますが、視点を変えると別の問いになります。
子供が自発的に慣れていくために、どんなことができるだろうっていう問いに変わるから。
ばたこさんは、これらすべてをまとめて「土台づくり」と表現しました。安心できる土台があってこそ、子どもは自分から環境になじんでいけるという考え方です。
同時に、親が完璧に準備しようと気負いすぎなくてもいいとも付け加えます。子どもは親が思う以上に成長しており、手を出すところと見守るところの塩梅が大事だと二人は話しました。
まとめ
この回は、転園を控えた父と、転園・入学を経験してきた母が、新しい環境への慣らし方を語り合いました。結論は、慣れさせるのではなく、安心して慣れていける土台を作るという視点です。準備を8割と考え、行けた日を成功と決めつけず、しばらく様子を見ていく姿勢が繰り返し語られました。
- 場所と人が大丈夫だと感じられる状態を、事前の見学や説明で作っておく
- 本でイメトレし、先生との関係を見せて「知らない」を減らす
- 行きたくないには理由を聞き、環境を整えつつ、環境の外にも楽しみを用意する
- 新しい環境ではご褒美を割り切って使い、休ませる線引きは子の様子と夫婦の基準で決める
- 行けた日を甘く見ず、1〜2ヶ月かけて子どもが自分から慣れていくのを見守る






