イベント出演を終えて残った反省と手応え
この回は、東京・原宿のスタジオで生配信されたイベント出演回を、沖縄・那覇のスタジオから改めて届ける特別編です。冒頭では、神森さんが当日を振り返っています。
イベントは9月12日に開催された「Web Creator Podcast Day 2026 ── ウェブ制作に関わるポッドキャスト番組が集まって開催された配信イベント。この回はその出演回にあたります」です。原宿のスタジオにウェブクリエイターのポッドキャスト13番組が集まり、朝から夕方まで生放送する一日でした。
当日、神森さんは朝10時過ぎにホテルをチェックアウトし、山手線で原宿の控室へ向かっていました。移動中、スマートグラスに当日の原稿を出して練習しようとしたものの、うまくいかなかったといいます。
ちょうど(山手線で)トクサトさんの話が始まったんですよ。もうね、面白すぎちゃって。全くもって集中もできず、練習もせずに控室に行きました。
控室では他の出演者と挨拶を交わしたものの、神森さん自身はかなり緊張していたと明かします。いつもより速いスピードで話してしまい、自分らしい配信ができなかったと反省を口にしています。
みんなに聞いてもらいたい、フォローしてもらいたいという一心で、あまりにも緊張しすぎてしまって、全くもって自分っぽい配信ができなかったなと。
当日はXのライブなどで、のべ4万ほどの視聴があったようだと神森さんは話しています。番組のオープニングで流していた新曲「Keep Talking」は、すべてのポッドキャスターに捧げたいという思いから作った曲で、この日、あの場にいたポッドキャスターに向けてかけていたと語っています。
折りたたみスマホのサイトは、どう作ればいい?
ここからは、イベント当日の配信がそのまま流れます。まず神森さんは自己紹介をしています。1990年代からウェブ制作を始め、2000年代は東京でディレクター、2011年からは事業会社でウェブマスターなどを担当してきました。2020年に沖縄の宮古島へ移り、今は那覇からリモートで東京の会社に勤めています。
番組は普段、ガジェットの話をする「Gadget Report」、ウェブ運営やアクセシビリティ、広報を扱う「Work Talk」、生成AIで作った曲を紹介する「Suno AI Lab」の3つのコーナーで届けています。この回では、そのうち2つのコーナーを扱っています。
当日は2通のお便りが読まれました。1通目は、前身番組から聴いているというリスナーからの応援でした。神森さんはこの番組を始めた理由にも触れています。
神森さん、ジェネチャット時代からのリスナーです。ジェネチャットでは世代間の話題を若手の方と話をされ、自分も神森さんに近い年齢なので共感しきりでした。ゆったりとした神森さんの語り口の中、ガジェット話題など楽しく聞かせていただいております。今なお配信をしっかりする神森さんを見習って、自分も頑張っていきたいと思います。イベント頑張ってください。
神森さんは、コロナ禍で人と会う機会が減ったことが番組を始めるきっかけだったと話します。話す相手が家族だけになり、うまく話せなくなったことに危機感を持ったといいます。
ほぼほぼ話をしなくなったら、なんかろれつが回らなくなっちゃったんですよね。やばいなと思って。
2通目は、折りたたみスマホ向けのウェブサイト制作についての質問でした。iPhoneの折りたたみモデルが発表された直後というタイミングです。
先日、折りたたみiPhoneのiPhone Duoが発表されましたね。近年、折りたたみスマホが続々と登場していますが、折りたたみスマホで表示するウェブサイトやウェブアプリを制作する際に、通常のスマホ向けのサイトとは違って気をつけた方がいいことはあるのでしょうか。ウェブ制作者の視点から、折りたたみスマホならではの注意点や、実際に対応する際のポイントなどがあれば教えていただきたいです。
神森さんは、縦折りのクラムシェル型は普段のストレート端末を折るだけなので、ほぼ気にすることはないと答えます。問題になるのは横開きのほうだと整理しています。
参考として、自宅にある横開きの折りたたみ端末で自分のサイトを見た経験を挙げます。外側のディスプレイでは通常のスマホサイズ、開いた側ではタブレット向けのデザインで表示されたといいます。ブレークポイントの設計次第で、これまでのやり方と大きく変わらないのではないかという見立てです。
場合によっては、この辺、これまでのやり方と大きく変わらないんじゃないかなとは思ったりします。結構大変だなと思ってるのは多分アプリの方々だと思います。
ウェブサイト側よりも、拡大縮小への対応が必要になるアプリ開発のほうが負担は大きいのではないか、というのが神森さんの見立てです。
スマートグラスは、いま何を映しているのか
Gadget Reportのテーマは、神森さんが実際にかけているスマートグラスです。Even Realities ── スマートグラスを手がける企業。神森さんが使っているのはこの会社の「Even G2」ですの「Even G2」で、購入の決め手は度付きレンズを入れられることだったと話します。
見た目はほぼ普通のメガネで、パッと見ではスマートグラスと気づかれないといいます。控室でも普通のメガネと言われたそうで、違和感なく溶け込むことが特徴です。
Even G2をかけると、視界の中に緑色の文字が浮かんで見えます。神森さんは、この回で話しているスクリプトも、実際にグラス越しに目の前へ表示させながら話していると明かしています。約2メートル先あたりに緑色の文字が見えているといいます。
Even G2には、相手の話した言葉をその場で文字にする会話サポートや、翻訳の機能もあります。緑のテキストを表示するタイプは他社からも出ていて、方向性が分かれていると神森さんは整理します。
神森さんは、フルカラーで表示するタイプにも触れます。日本未発売のMeta Ray-Banディスプレイ ── Metaが手がけるディスプレイ付きスマートグラス。片側にカラーディスプレイを備え、リストバンド型の入力機器で操作しますは、片側にカラーディスプレイを備え、手首の筋肉の動きを読み取るリストバンドで操作すると説明します。イベント主催者の名村さんの会社で、実際にかけさせてもらったといいます。
テキストを緑で表示するもの、フルカラーで表示するもの、表示せずスピーカーとカメラだけのもの。神森さんは、どれが正解ということもなく、みんなね、試作の段階なんじゃないかなと見ています。
視界に緑色の単色テキストを表示。会話サポートや翻訳ができる
片側にカラーディスプレイを備え、リストバンドで操作する
640×350ピクセルにウェブをどう出すか
ウェブに携わる立場として、神森さんはグラスでウェブサイトを見たらどうなるかを考えます。ただ、これがなかなか難しいといいます。
Even G2の表示領域は640×350ピクセルで、高さがかなり狭く、緑の単色で16段階の階調しかありません。写真を表示してもよくわからず、瞬時に認知できる情報量はパソコンやスマホと比べて格段に少ないと神森さんは説明します。
そのため、ブラウザーでページをそのまま見るという概念がそもそもないと神森さんは話します。基本はアプリを通じて情報を見る形になるという見立てです。
神森さんは、実際にどれくらいの量が見られるのかを測ってみたといいます。その結果、Even G2の画面いっぱいに入るのはわずかな文字数でした。
一行が28文字で、9行なんですよ。当然全部で252文字。情報としては受け取りづらいこともあるので、結構シビアになるかなと。
それでも、スマートグラスでもウェブを見たいという需要はあるはずだと神森さんは言います。そこで挙げるのが、見た目を整えるレスポンシブとは違う「出し分け」の発想です。
見た目を変えるのではなく、そもそも出す情報を変えるという考え方です。ウェブサイト側ではなく、グラスのアプリ側で情報を整える手もあると神森さんは提案します。
具体案として、神森さんはEven G2用のブラウザーを作ろうとしていると話します。テキストブラウザーのような作りにし、ナビゲーションのスキップや、スクリーンリーダーのような見出しジャンプ機能を付ければ成立するのではないかという見立てです。
この話をしながら、神森さんはマイクロフォーマット ── HTMLの中に、人名や日付などの意味を機械が読み取れる形で埋め込む記法の考え方。2000年代に議論されましたの考え方が今こそ生きてくる気もすると語ります。情報に印を付けておき、受け取る側が必要なものだけを取り出せるようにする発想が、新しいデバイスに必要とされるのではないかという見立てです。
福祉機器と一般ガジェットの境界は消えていく
Work Talkのテーマは、スマートグラスとアクセシビリティです。神森さんは、Even G2の会話サポート機能に改めて注目します。
Even G2のツルの後ろには2本のマイクが付いていて、相手の話をその場でテキストにします。耳が遠くなってきたという神森さんは、ガヤガヤした場所でこの機能をオンにすると、話がだいたい追えるといいます。
さらに、会話の中に出た専門用語らしき言葉を認識すると、その説明を出してくれる機能もあると神森さんは紹介します。ここで重要なのは、Even G2はそもそも福祉機器として作られたわけではないという点です。
(Even G2は)そもそも福祉機器として作られたわけじゃないんです。一般向けのガジェットがこうなってるっていうのがなかなか面白いですよね。
もう一つの例が、ViXion ── オートフォーカスのアイウェアを手がける企業。手元と遠くのピントが瞬時に合う製品を展示していますのオートフォーカスのアイウェアです。手元と遠くのピントが瞬時に合う製品で、日本では通常はスマートグラスの延長として紹介されているといいます。
神森さんは、これがアメリカで開催されたCSUN ── アメリカで開催される、支援技術やアクセシビリティに関する大きなカンファレンスの通称。書き起こしでは音として「CEEC」と聞こえていますの展示会で紹介されていたと知って驚いたと話します。株式会社コンセントの堀口さんが、6月に沖縄で開いたアクセシビリティのイベントで、その模様を報告していたそうです。
一般向けのガジェットが福祉機器の展示会に並ぶという事実から、神森さんは境界が消えつつあると感じています。
構造化された情報が、グラスにも読み上げにも効く
神森さんは、スクリーンリーダーで聴く人と、テキストブラウザーでウェブを見る状況は本質的に同じだと整理します。どちらも、線形化された情報の構造をたどって読んでいくという点で共通するからです。
だからこそ、機器側でナビゲーションのジャンプ機能を持たせたり、ARIAのタグを抽出してメインやコンテンツをたどれるようにする手が有効だと神森さんは言います。同じ仕組みをEven G2のアプリに実装できれば、グラス用のウェブサイトリーダーも作れるのではないかという見立てです。
スマートグラスの話は、結局ウェブサイトからどう情報を取得するか、テキストベースの情報がどれだけ助かるかという点で、アクセシビリティに通じると神森さんはまとめます。
テキストベースの情報がどれだけ助かるのか、どう取り扱うのか。そういう点ではアクセシビリティにも通じる話だったんじゃないかな。
神森さんは、これは誰かがそのうち考えるだろうという話ではなく、ウェブ制作に携わる人間として、これからも考え続けたいと語ります。
新コーナー「Accessibility News Morning」の始動
この回の最後に、神森さんは新コーナー「Accessibility News Morning」の開始を告げます。月に一回、第3金曜日のWork Talkの中で届けるコーナーです。
内容は、直近1か月ほどでアクセシビリティに関して気になったものを3つほど取り上げ、それについて話していくというものです。
このコーナーを始めた背景には、神森さんの現在の仕事があります。アクセシビリティに関わる仕事のため、毎朝、前日までに起こったアクセシビリティ関連の情報を巡回しているといいます。その中で見えてくる動きを、音声にのせて多くの人に届けたいという狙いです。
神森さんは最後に、この番組では普段レアなガジェットの話や、広報の視点からの情報の出し方も扱っていると紹介し、これからも聴いてほしいと呼びかけて配信を締めています。
まとめ
スマートグラスという新しいデバイスを入り口に、限られた表示領域でウェブをどう見せるか、そしてそれがアクセシビリティとどうつながるかを、神森さんが自身の実感をもとに語った回です。
- Even G2の表示領域は640×350ピクセルで、画面に入るのは1行28文字×9行の252文字と、扱える情報量はごく限られる
- 限られた画面では見た目を整えるより、出す情報そのものを変える「出し分け」の発想が必要になる
- 情報に印を付けて必要なものだけ取り出すマイクロフォーマット的な考え方が、新デバイスで生きてくる可能性がある
- 一般向けガジェットが福祉機器の展示会に並ぶなど、福祉機器と一般ガジェットの境界は薄れつつある
- 構造化された情報をたどる仕組みは、グラス用のリーダーにもスクリーンリーダーにも共通して効いてくる




