インターナショナルなキャリアからClayへ
後半のテーマは、Clayが日本に来て何をしているのか、そして日本でGTMエンジニアがどう広がっていくのかという具体です。まずは服部さんのキャリアから話が始まります。
服部さんがClayに参画したのは2024年8月。その前は、CRMを提供するHubSpotで導入支援側のカスタマーサクセスを3年間担当していました。
HubSpotの前は、自身の会社でマーケティングのコンサルティングや、プロジェクトマネジメント系の管理ツールの開発をしていたといいます。
さらにさかのぼると、新卒はカナダの投資ファンドでビジネスアナリスト。学士は日本の明治大学でした。
日本の大学からカナダのファンドに入るとかあるんですね。
そうですね、まあご縁もありまして。
その後、ヨーロッパのHECパリというビジネススクールで修士課程を修了し、暗号技術などを扱うFintech企業で事業開発の責任者を務めました。この会社は日本の会社で、インドネシアでの創業を目指して進出したものの、コロナ禍などのタイミングもありピボットしたと振り返ります。
金融、事業開発、自身での起業、そしてHubSpotでのカスタマーサクセスと、国をまたいだキャリアを歩んできた人物です。
なぜHubSpotから急成長スタートアップへ
服部さんがHubSpotに入ったのは、自分で事業を立ち上げてうまくいかなかった経験から、マーケティング・セールス・CS全般を体系的に学びたいと考えたからでした。
カスタマーサクセスっていう仕事が、自分で事業をやりながらプロダクトと一緒にお客様が伴走していくフェーズがすごい好きだったので、CSに強い会社に行きたいなというところで。
当時のHubSpotジャパンはすでに100〜200人規模。ある程度仕組み化された組織で学びたいという狙いがありました。
そこからClayの立ち上げへ移りますが、そのきっかけは求人への応募だけではありませんでした。
求人はスルー、株主になろうとして採用された話
Clayには「Create your own role(自分の役割を自分で作る)」という求人があり、服部さんは最初そこに応募しましたが、スルーされてしまいます。
それでもClayを追いかけ続け、Clayがグローバルで実施した、個人が投資家になれるコミュニティファンドのプログラムに注目します。Clayの株主になりますと連絡したところ、そこから採用の話が動き出しました。
(Clayの株主になる)連絡をしたところ、ClayのCOOのビジネスサイドのヘッドの人から、この人材が面白いから採用しようって社内で上がって。
当時Clayには日本市場担当のロールがなかったため、まずはグローバルで働けるカスタマーサポート、テクニカルサポートのロールで採用されました。
一方でその日本市場の推進を勝手にやっていいよっていうところで、今勝手にやらさせてもらってる感じなんですけども。
なぜそこまでClayに惹かれたのか。服部さんはHubSpotのカスタマーサクセスで常に120%ほどの達成をし、グローバルで2〜3年連続トップだった時期に、CRMの先にある最先端のAIやデータを追いかけていたと語ります。
情報収集したらClayに出会って、そしたら自分のLinkedInのフィードに全部Clayの情報しか出てこないように最適化されてしまって。
そこに、HubSpotの最初期のような雰囲気を感じたといいます。AIとデータでゴートゥーマーケットの最先端を行く会社を、日本でも広げられないかという気持ちが応募の原動力でした。
日本でClayはどう使えるのか
後半では、参加者からの「日本だとClayはどう使えるのか」という質問に話が移ります。
Clayのコンセプトは、社内外のマーケティング・営業で使えるデータを統合するレイヤーであり、統合したデータにAIで新しいインサイトを見つけることです。
日本国内では、提携先のネットビジネスサポート(NBS)という法人データの老舗ベンダーのデータを取り込み、CRMのデータをエンリッチする入り口ができるといいます。
何万社分くらいデータがあるとかあるんですかね。
NBSさんは公開情報ベースでいうと80万社だったと思います。
浜田さんは、10人20人程度の規模がある日本企業のデータならおおむね揃っているのがNBSだと補足します。Clayから社名やドメインを渡せば、業種・本社・創業年などをそのNBSのデータから引っ張ってくることがすでにできる状態です。
もう一つの入り口が、Web上のリサーチに特化したClagent ── ClayのAIリサーチエージェント機能。Web上の情報をもとに企業の事業内容などを自動で調べ、営業やマーケティングのターゲティングに活用できますです。たとえばメールアドレスのドメインからその会社の事業内容を調べ、営業担当やマーケティングのターゲティングに活かす使い方が挙げられます。
クラウドコードではなくClayで処理する意味
浜田さんは、AIによるリサーチはClaude Codeなどですでにできるのに、あえてClay上で処理する意味はどこにあるのかと尋ねます。
服部さんはまず、汎用的なAIツールでリサーチさせる場合、参照させるデータの構築をエンジニア側で行う必要があり、一括アップロードすると不要なデータまで参照して結果がざっくりしてしまう課題を挙げます。
ClayはスプレッドシートみたいなUIになってるので、このデータのこの部分だけ欲しい、で、この結果に応じて次のAIのフローを(組めます)。
たとえば「BtoBかBtoCか」を調べ、その結果でフィルターをかけ、BtoBの会社だけに次のAI処理を回す、といった条件分岐を組めます。安いモデルを使ってコストを抑えるといった調整もできます。
個人が一人でAIツールを回すことはできても、チームでセキュアにAIの処理結果を共有し運用しようとすると難易度が上がる点に、Clayの価値があると服部さんは説明します。
Clayであればそこ(データの構造化からワークフローまで)を一気通貫で全部実装できますっていうところですね。
浜田さんは、テーブルとしてデータを構造化し、集まったデータに対する後続の処理までステップとして組める点が、アウトソースした場合との難易度や安全性の差になると整理します。
リサーチは可能だが、参照データの構築をエンジニアが行う必要があり、チームでのセキュアな共有・運用が難しい
スプレッドシート状のUIでデータを構造化し、条件分岐を含むワークフローを一気通貫で構築。CRMやSlackまでデータを届けられる
さらにClayは、CRMやSlackなど現場の担当者が使うツールまでデータを届けられるといいます。
英語UIでも使える理由と、盛り上がるClayクラブ
Clayの盛り上がりを示す例として、六本木で開催されたClayクラブのイベントが挙がります。浜田さんも参加し、60〜70人の会員で会場が完全に埋まっていたと振り返ります。
日本まだ一人しかいないのにこんなにみんな集まるんだみたいな感じだったんですけど。
利用層は幅広く、アクティブに使う企業もあれば、Clayを使ったサービス開発をするエージェンシーもいます。月額2〜3万円から始められるため、営業リスト作成を入り口にする個人や、テック系のファウンダーも利用しているといいます。
一方で、Clayの管理画面はまだ英語のみです。浜田さんがその点を難しさとして挙げると、服部さんはむしろAIがそれを補うと逆説的に語ります。
担当の方が言語問わず日本語とかでこういうClayのテーブルを作ってほしいとか、こういうGoToMarketの仮説を持ってっていうのをAIチャットに問い合わせすると、AI側でそのClayのテーブルとかをビルドしてくれるんですね。
UI/UXの一部をAIに委ねているため、日本語で指示してもテーブルを組み立てられるという説明です。浜田さん自身も、日本語で「最近資金調達した会社リストを作って」と指示すると勝手に作ってくれると実感を語っています。
なぜアメリカでGTMエンジニアという職種が生まれたのか
話題は、GTMエンジニアという職種そのものの誕生に移ります。浜田さんは、職種を新しく作ること自体が難しい挑戦だと指摘します。
例として、カスタマーサクセスという職種が挙がります。10年ほど前、Gainsightという会社がカンファレンスなどを通じて盛り上げ、職種の社会的地位や給与を引き上げることに成功したケースです。それと同じくらい難しいことを、Clayはどうやって成し遂げたのかという問いです。
服部さんは、きっかけはテクニカルなバックグラウンドを持つ営業担当が、一人でGTMのプレイブック作成やDevOps的な仕事、営業活動を兼ねていたことだと説明します。リソースが足りず、AI・データ・ワークフローで自動化を進めた結果、それに合うポジションが世の中に存在しなかったのです。
GTM自体をプログラミングする、いわゆる仕組み化する人を作ろうっていうところで始まって。
そしてClayでGTMエンジニアが広がった最大の理由を、服部さんはコミュニティドリブンだったからだと語ります。
アウトバウンドのメールのエージェンシーの方とかが、GTMエンジニアっていう新しい職種のキーワードに参画して、自分たちでClayを使った教育コンテンツをコミュニティベースで作っていただいたりとか。
Clay自身がコミュニティをスポンサリングするClayクラブは、今や世界40カ国ほどで120イベント規模になっているといいます。その担い手がGTMエンジニアを名乗り、顧客の売り上げに直結する成果報酬的な形でグロースを担ったことが、流行のきっかけになったと説明します。
浜田さんは、Clayが力ずくで職種を作ったというより、情報交換する人たちをコミュニティとしてClayが支えていった構図だと整理します。
マーケットにフィットしたっていうのもあります。そこの見つけるプロセスをClayがして、それがマーケットにフィットして、すごく反響していただいたのかなと。
日本にGTMエンジニアは根付くのか
ここからは参加者からの質問に答える形で進みます。まず「GTMエンジニアはどのくらいの人数が必要とされるイメージか」という問いです。
服部さんは、GTMエンジニアは少人数で担われることが多いと答えます。営業担当が多い会社や、ある程度PMFができていてプレイブックを改善すればインパクトが跳ね上がりやすい会社ほど、価値が発揮されやすいといいます。
少人数で成り立つ背景には、Clayのようなプロダクトが、これまで人手と時間がかかっていた業務をAIのワークフローで置き換えられることがあります。
キャンペーンとかやるのに1ヶ月かかったのを1日とかで構築できたりとか。
服部さん自身も、Clayクラブのイベント向けにパーソナライズしたアウトリーチメールを2〜3時間で構築し、コンバージョン率5%ほどの成果を一人で出せたと具体例を挙げます。
次に、日本での市場開拓についての質問です。SalesforceやHubSpotのように日本で定着したツールがある一方、アメリカで使われるZoomInfoなどが日本では一部にとどまる状況を踏まえ、Clayの日本での勝ち筋が問われます。
服部さんは、Clayを受け入れやすいのはアメリカ同様、AIやデータを社内で活用してインパクトを作るテック系の会社だと答えます。
AIデータ、様々な社内外のデータを使ってAIを使って売り上げを上げるための仕組みを作っていきたいような会社さんっていうところが、Clayが今一番私が提案していきたいお客さんかなって思ってます。
具体的には、ある程度の規模のSaaS企業が、プロダクトの利用データやCRMの獲得データ、外部の公開企業データを組み合わせて最適なターゲットリストを作りたいとき、その実行基盤としてClayを使うイメージだといいます。
浜田さんは、AIとデータでGTMを伸ばしたい企業は多く、チャンスがありそうだと応じます。服部さんは、それをセキュアに組織立って運用するのは大変であり、APIキー管理などを含めてClay側で仕組み化できる点が価値だと補足します。
クラウドコードにその顧客のスクショ上げるのマジやめてほしいなと思ってる人結構いると思いますけどね。
浜田さんは、学習されないと分かっていても顧客情報を汎用AIツールに上げることへの抵抗を挙げ、セキュアな会社として契約したアカウントで入っていける点がClayの要素だと締めくくります。
まとめ
Clay Japan一号社員の服部さんの歩みからは、Clayが職種そのものを設計から作り、コミュニティとともに広げてきた姿が見えてきます。日本ではAIとデータで売り上げの仕組みを作りたいテック系企業が、GTMエンジニアとClayの最初の広がりどころになりそうです。
- 服部さんは求人応募ではなく、Clayの株主になろうとしたことがきっかけで採用された
- 日本ではNBSの約80万社の法人データ取り込みや、Clagentによるドメインからのリサーチが入り口になる
- Clayの価値は、データの構造化から条件分岐ワークフロー、CRM連携までをチームでセキュアに一気通貫で組める点にある
- GTMエンジニアはClayが力ずくで作ったのではなく、コミュニティドリブンでマーケットにフィットして広がった
- 日本ではSaaS企業が自社データと外部データを組み合わせ、ターゲットリストを作る実行基盤としての活用が有望






