前回の続き、送った採用企画への違和感
この回は、八木さんが土田さんに送った採用の情報発信について、前回のフィードバックを深掘りするところから始まります。
前回の収録で土田さんは、大枠は変わらないものの、向いているベクトルが少し違うのではないかと指摘していました。今回はその点を具体的に聞いていきます。
社長のを拝見して感じたのが、会社側のベクトルで話されてるなって感じたんですよ。
土田さんによると、八木さんの発信は会社のブランディング的な要素が強く出ていたといいます。ターゲットが意識の高い層だとしても、世代を考えるともう少し柔らかくした方がよいと感じたそうです。
僕が向くべきだと思ったベクトルは、やっぱりユーザー目線、求職者目線での情報発信の仕方に、大本は変えないですけども、表現を変えていく必要があるかなって思って。
集客はブランディング、採用はまだマーケティングの段階
土田さんは、集客と採用でいまいる段階が違うと整理します。一般的な宿泊の集客については、すでにブランディングをしていく段階だと評価しています。
一方で採用については、いまの状態でブランディングを始めるのは早いのではないかと土田さんは指摘します。求人の場面では、八木さんがまだ何者か知られていないという前提があるからです。
求人でいうと、まだ八木さんって何者ぞという、まだ知られてないので、そこにうちはこんなやぞってあんまり行きすぎても、ハテナハテナってなりそうだなと思って。
だからこそ、まずはマーケティング寄りの表現でやっていくべきだと土田さんは話します。そこで認知度が上がってきたら、初めてブランディングに切り替えればよいという順番です。
まだ知られていない段階。求職者目線でハードルを下げ、認知度を上げることを優先する
認知度が上がった後の段階。「うちはこうだ」と会社の価値観を押し出していく
面白い。でもその視点あんまなかったな。
八木さんは、求人でブランディングという感覚がなかったと振り返ります。押し出しすぎると圧が強く感じられるという点にも納得し、いかにハードルを下げるかが大事かもしれないと応じました。
「独立しなかったらどうなる?」求職者の素朴な疑問
土田さんは、第三者の求職者目線で企画を読んだときに感じた素朴な疑問を挙げます。それが「独立しなかったらどうなるのか」という点でした。
独立せんかったらどうなんやって。独立しない場合はっていうのは書いてあるのは一部見つけたんですけども、ちっちゃく一部あるだけで、読み落とす人もいらっしゃるなと思って。
八木さんもその場で、独立しない場合についてちゃんと書いた方がいいと応じます。土田さんは、安定志向の人も多いという前提に立って考えるべきだと続けました。
最初から野心むき出して、私もう何年経ったら絶対独立するっていう人のところを、あまり打ち出すのがちょっと多いかなというふうに。
結果的に独立したいと考える人はいても、最初から野心をむき出しにしている人ばかりではありません。そこを強く打ち出すと、求職者にとってハードルが上がってしまうと2人は確認します。
独立支援資金は魅力的、でも出しすぎると怪しい
話は、八木さんが作った独立資金ありきの打ち出しに移ります。土田さんは、その金額の見せ方も少し控えめにしてよいのではないかと提案します。
独立資金ありきの打ち出しだと思うんですけど、それもちょっと控えめしてもいいのかなと。それすると逆に怪しくなるんじゃないかな。
餌、いい餌すぎて、甘い話は乗るなみたいな感じに。
八木さんも同じ懸念を抱えていました。魅力的な条件をぶら下げると、それ目当ての人が来てしまうため、きちんとふるいにかける仕組みも必要になると話します。
なんぼでも言えるじゃないですか、そういう口とか紙では。なんならAIが履歴書を書く時代ですから。
土田さんは、独立支援金の制度そのものを否定しているわけではないと補足します。むしろ制度は魅力的だと評価したうえで、見せ方の話をしていると強調しました。
基本独立しませんかっていうスタンスはいいと思うんです。そんだけやる気があれば、八木としては支援しますよっていうスタンスの方が。
店を持つために必要な「作る力・回す力・開く力」
八木さんは、土田さんが仮に作ってくれた資料の中で、店を持つために必要な要素がわかりやすく整理されていた点に触れます。若い頃は独立や開業の夢はあっても、そのために何が必要かまでは分解できないと語ります。
資料では、店を持つために必要な力が3つに整理されていました。作る力、店を回す力、店を開く力です。
八木さんは、与えられたレシピをこなすだけの方が楽だと指摘します。しかし店を持つとなれば、仕入れから原価・在庫・衛生の管理、メニュー構成、人への指導まで必要になり、多くの人がここで挫折してしまうのではないかと話します。
最後の「店を開く力」では資金が壁になります。いくら必要で、どう回収するかを描けないままでは、ハードルが高いと2人は確認しました。
支援金の金額より先に、経営への解像度を上げる
土田さんは、独立支援資金の金額自体はすごいと評価しつつも、その金額が先走っているのではないかと感じています。解像度が低い求職者には、その金額が高いのか低いのかすら判断できないからです。
どんだけ必要なのか、それすらイメージはできてないのに、その金額出るって時に、高いのか低いのか、それすらも判断ができないなと思っていて。
そこで八木さんは、資料に開業費用のシミュレーションを加えることを提案します。想像しやすくするための具体的な数字です。
お店を出すって言っても、機械を入れたりとか、お店を借りたりとか、改装したりとかっていう費用すると、最低でも数百万の費用がかかっていきますみたいなことを入れるだけでも結構イメージがつくじゃないかな。
土田さんは、作る技術だけでなく経営にも目を向ける必要があると重ねます。以前から八木さんと話してきた論点でもあると振り返りました。
美容室や飲食店の独立に見る、経営という壁
土田さんは、他業種の例として福井に多い美容室の独立を挙げます。お客さんがついて技術が身につくと独立していく美容師が多い一方、独立してからが苦しいといいます。
ヘアスタイルをやるっていうのが多分その人たちの商品だと思うんですね。そこは技術が身についたって言って出ていくんですけども、やっぱ経営のところがもう白紙。
単純計算で「これだけ人をさばけばこれだけ儲かる」という発想だけで独立する人が多いと土田さんは話します。八木さんは、料理人やお店を持ちたい人も同じだろうと応じました。
飲食店の倒産件数が最多みたいなニュースが出てましたけど、作るのはプロでも経営のプロではないわけですから、多分絶対つまずきますよね。
八木さんは、資金繰り表やキャッシュフローすら思い描けないまま始めてしまい、「あれ、金残らないな」となるケースを想像できると語ります。だからこそ、その前提をきちんと整えてあげたいという思いにつながっていきます。
現場仕事の給与水準を上げ、憧れられる職業に
八木さんは、こうした壁を整えてあげないと、お店を持ちたい人がどんどん減ってしまうのではないかと懸念します。飲食店はその土地の顔でもあり、職業として人が集まるものになってほしいと話します。
さらに八木さんは、AIの進化でホワイトカラーの仕事にもゲームチェンジが起きていると指摘します。だからこそ現場仕事や職人仕事の価値を見直すべきだと考えています。
八木さんは、現場仕事や職人仕事の価値を高めることに一石を投じたいという思いを語ります。飲食店の担い手が出にくいという課題とも重なるテーマです。
最後に八木さんは、収録前に雑談した「今の若者の結婚に対する価値観」のニュースが、担い手不足の話とリンクしているのではないかと提案し、次回はその点を深掘りすると予告して締めくくりました。
まとめ
採用の情報発信は、いきなりブランディングに走るのではなく、まだ知られていない段階では求職者目線でハードルを下げるマーケティングから始めるべきだという回でした。独立支援制度の魅力的な見せ方だけでなく、経営への解像度を上げる情報を添えることの大切さが語られています。
- 採用は認知度が低いうちはマーケティング寄り、上がってきたらブランディングという順番で考える
- 「独立しなかった場合」も明記し、安定志向の求職者のハードルを下げる
- 独立支援資金は魅力的でも、出しすぎると怪しく見え、目当ての人を集めてしまう
- 店を持つには作る力・回す力・開く力が必要で、開業費用のシミュレーションがイメージを助ける
- 技術だけでなく経営への解像度を上げ、現場仕事が憧れられる職業になることを目指したい






