「なんであんたに言わなあかんの」と問われる現場
薬局で服薬指導をしていると、患者から血液検査の結果を見せてもらったり、病状を詳しく聞かせてもらったりする場面があります。
ところが、その情報を確認しようとすると、患者から「なんであんたにそんなこと言わなあかんねん」と言葉で返されたり、そうした態度で示されたりすることがあると、たいぞーさんは話します。
いや、そんなん言うたかて、お医者さんにも話はしてるし、血液検査だってお医者さんも見てはるのに、それでも(薬剤師の)あんたら見なあかん理由があんのかいな
こう言われて言葉に詰まった経験は、薬剤師なら一度はあるかもしれません。たいぞーさん自身も、そうした思いを持ったことがあると振り返ります。
懐疑的な反応は、信頼を得るチャンスになる
血液検査の結果や病状は、患者にとってとても大切な個人情報です。おいそれとペラペラ話すものではない、という患者の言い分はその通りだと、たいぞーさんは受け止めています。
だからこそ、薬剤師がその情報を確認することに大きな意味があると説明できれば、それは患者の信頼を得るチャンスになると考えています。
患者から懐疑的な反応を示されたときこそ、たいぞーさんは「薬剤師が確認しないといけない理由は何か」という問いを立てられたのだと捉えて対応しています。
医師は「病気」が軸、薬剤師は「薬」が軸
たいぞーさんが患者に伝えているのは、薬剤師ならではの視点で患者を見ているということです。医師も薬剤師も、患者の状態や治療の経過を見ている点は同じだと前置きします。
ただし薬剤師は、治療がうまくいっているかどうかだけでなく、薬の副作用が出ていないか、薬が今の状態のリスクになっていないか、どれくらいのリスクを孕んで治療が進んでいるのかを正確に捉えようとします。そのために、患者からの聞き取りや血液検査の情報が重要になると説明します。
では、医師も見ているのになぜ薬剤師も見るのか。たいぞーさんは、医師と薬剤師では見ている視点の軸が違うと整理します。
医師は医学的な知識を持って患者の状態を見ているため、主軸にあるのはやはり病気だといいます。病気を軸に患者の状態を判断し、病気を軸に薬がどうなっているかを見ていく。これが医師の専門性であり思考の一端だと述べます。
一方で薬剤師は、薬学が主軸にあるため、薬が思考の軸になります。
病気を主軸に、患者の状態や薬のことを判断していく
薬を主軸に、副作用のリスクや作用機序から患者の状態を見ていく
たとえば薬剤師は、こういう薬を飲んでいてこういう病気を治療しているからこう経過するだろう、この薬ならこういう症状が出るリスクがあるので今そうした症状が出ていないか、この薬とこの薬の作用機序はこうだからこの患者に問題が生じていないか、といった視点で見ていくといいます。
判断が違ったときこそ、医師と協議して最適解を探す
医師と薬剤師の考えや判断は、概ね一致することのほうが多いと、たいぞーさんはいいます。ただ、それぞれ違う方向から患者を見ているため、たまに違う判断になることもあります。
そうしたときにこそ、患者にとってより良い治療にするにはどうすればよいか、どちらの見え方を今の状態として捉えるほうが治療がうまく進むのかを、医師ときちんと協議して最適な治療を考えていくといいます。
この協議のために患者から情報を取得することが、薬剤師が様々な情報を確認するとても大切な理由になると、たいぞーさんは説明します。
患者と一緒に治療を考える第一歩に
こうした説明をすると、患者のほうも「そうか」と受け止めてくれるといいます。薬剤師と医師が違う視点から見ているなら、それはどちらが良い悪いではなく、両方の側面から見ることが大切だと理解してもらえるからです。
そうして理解が得られると、患者はとても詳しく自分の状態を話してくれるようになったと、たいぞーさんはこれまでの経験を語ります。
患者から懐疑的な反応を示されたときは、薬剤師が信頼を得るチャンスです。このチャンスを逃さず、自分の専門性を理解してもらい、薬剤師と患者が一緒に治療を考えていく第一歩にしていく。そのために、薬剤師の仕事は何かを常に意識しながら患者と関わることが大切だと締めくくります。
まとめ
血液検査や病状をなぜ薬剤師にも見せるのか。その問いに応えるには、医師とは異なる薬剤師ならではの視点を患者に伝えることが鍵になります。懐疑的な反応は、むしろ信頼を築くチャンスだというのが、たいぞーさんの実践から得た考えです。
- 患者から「なぜ薬剤師にも」と問われる場面は、薬剤師にとって珍しくない
- 医師は病気を軸に、薬剤師は薬を軸に、それぞれ違う視点から同じ患者を見ている
- 副作用や薬のリスク、作用機序を捉えるために、聞き取りや血液検査の情報が重要になる
- 判断が違ったときは、医師と協議して患者にとって最適な治療を探す
- なぜに応えることは、患者と一緒に治療を考える第一歩であり、信頼獲得のチャンスになる



