12年続けてきた漢方の学びと実践の積み重ね
たいぞーさんは、日本在宅薬学会の漢方師範セミナー、8回連続講座の最終回に参加しました。この放送は、そのセミナーを受けての所感を伝える内容です。
たいぞーさんによると、8回連続講座で毎月学び、現場で実践することを繰り返すと、学びが深まるといいます。漢方のセミナーで勉強したことで、患者さんのことが以前より見えるようになってきたと話します。
今回のセミナーは8回受講しましたが、そもそもたいぞーさんが日本在宅薬学会の漢方セミナーを最初に受講したのは薬剤師1年目のときでした。そこから数えると、漢方 ── 漢方薬を用いた東洋医学的な治療。日本では医療用の漢方製剤が保険適用され、証と呼ばれる体の状態に合わせて処方を選ぶ。を継続的に学び、実践してきた期間は12年になるといいます。
臨床現場では、処方提案として漢方を提案し介入したケースがこれまでにも何度かありました。うまく改善したケースもあれば、提案したものの改善には至らなかったケースも経験してきたと振り返ります。
下痢が改善しなかった患者、なぜうまくいかなかったのか
たいぞーさんが心に引っかかっていたのが、ある下痢の患者さんの症例です。便のコントロールが難しく、柔らかい便で困っている患者さんに漢方を提案しました。
その患者さんは何度か漢方を飲みましたが、楽になった気もするし変わらない気もするということで、結局続けるのはやめになってしまいました。たいぞーさんは、なぜうまくいかなかったのかがずっと気になっていたといいます。
たいぞーさんが提案したのは、腸の中に余っている水分を体の循環に戻し、偏っている水を整える漢方薬でした。本来おしっことして出ていくべき水が体の中で処理しきれず、腸に溜まって下痢になっている、それを体を温めながら改善するという狙いです。
ところが昨日のセミナーで学び直したとき、たいぞーさんはあることに気づきます。体が水を処理しきれずに腸へ溜めているなら、本来おしっこに行くべき水が減り、尿量も少し減ってくると想定されるはずだ、という点です。
そこでたいぞーさんが手元にあったその患者さんのデータを見返すと、尿量はいつも通り、むしろしっかり出ているくらいでした。つまり体の中の水の巡り自体はうまくいっており、下痢だけをしている状態だったのです。
腸に力をつけるという新しい選択肢
尿量がしっかり出ていたことから、たいぞーさんは、あの提案がうまくいかなかった理由を経験談と結びつけて考えられるようになったといいます。
たいぞーさんは、おしっこは出ていて水の巡りはうまくいっているのに腸に水が溜まってしまうなら、腸の力が弱いのではないかと考えました。だとすれば、腸に力をつけるような漢方薬のほうが合っていたのではないかと、新たな選択肢が見えてきたと話します。
たいぞーさんは、この振り返りを通して、患者さんの体が今どうなっているのかをより深く考察し、漢方薬という選択肢も加えながら薬物治療を最適化する視点が自分に身についていると感じたと語ります。
「医療は年季や」という言葉が示すスタートライン
セミナーの中でたいぞーさんが印象的だった言葉が「医療は年季や」というものでした。
「医療は年季や」という、この言葉ですね。
たいぞーさんは、漢方セミナーを8か月学んできたものの、これはあくまで土台作りだと受け止めています。漢方薬を使った治療戦略を薬剤師の立場から提案し、より良い一手を医師とともに検討するための下地であり、まだスタートラインに立ったところだといいます。
ここから多くの患者さんを診て、漢方を使い、うまくいくこと・いかないことを経験として積み重ねる中で、患者さんを見る目を養い、方剤 ── 漢方薬の処方構成のこと。複数の生薬を組み合わせて一つの処方として用いる。の理解を深め、より良い選択肢を示せるようになるという話でした。
たいぞーさんは、12年間学んできたことを土台に、これから臨床現場で実践を続けることが非常に大切だと強く感じたと話します。
リアルな患者の姿が浮かぶセミナーの価値
たいぞーさんがもう一つ挙げたのが、セミナーの質についての気づきです。個別の患者さんを振り返るだけでなく、特性のある方剤の使い方も学べたといいます。
たいぞーさんは、こういう漢方で、体がこういう状態の人にはこう治療するとこう変わる、という内容を学ぶ中で、今介入している患者さんの顔がたくさん頭に浮かんできたと話します。この方法ならうまくいくかもしれない、こんな選択肢もあるのかと考えられたそうです。
たいぞーさんは、リアルな現場の患者の姿が浮かぶセミナーを受講できると、その学びがすぐ次の実践につながると考えています。今日もこの後は仕事ですが、現場に出てすぐ患者さんに実践できる状態になっている、というのが一つの気づきだと語ります。
漢方師範資格を得て、これから伝えていきたいこと
たいぞーさんは今回のセミナーで漢方師範という資格を得ました。今後は漢方のセミナーの開催なども考えていきたいと話します。
たいぞーさんは、漢方を臨床現場で実践しながら学びつつ、アウトプットの場を自分でも設けて、学んだことや経験したことを多くの方に伝えていきたいと述べます。来月にはバイタルサイン講習会も開催予定で、自分が関わっている患者さんをイメージして聞いてもらえるセミナーにしたいと語ります。
たいぞーさんは、薬剤師が患者さんに最適な治療を医師とともに検討し提案していけるよう、その力を多くの人と共有し合いながら、薬剤師がより良く活躍できる医療現場を目指したいと締めくくりました。
最後に告知として、9月26日に学生向けの症例検討イベント「Tricon」を開催するとのことです。参加費無料で、現場の薬剤師と一緒に症例検討をしながら、現場で働くイメージを深めてもらう内容だと紹介しています。
まとめ
漢方師範セミナー最終回を通して、たいぞーさんは患者さんの体の状態を具体的に捉える視点が身についたことを実感しました。うまくいかなかった症例の振り返りが、新たな治療選択肢と実践への意欲につながっています。
- うまくいかなかった下痢の症例を、尿量というデータから振り返り、腸に力をつける漢方という新たな選択肢に気づいた
- 12年の学びと実践は土台であり、「医療は年季や」という言葉どおり、実践の積み重ねがこれからの鍵になる
- 関わっている患者の姿が浮かぶセミナーは、学びがすぐ次の実践につながる
- 漢方師範資格を得て、今後は漢方セミナーの開催などアウトプットの場を広げていきたいと語った


