SNSの「初任給で買ったもの」動画がきっかけ
たいぞーさんがこの話をしようと思ったきっかけは、SNSに流れてきた薬局の採用向けショート動画です。薬剤師の採用が本格的なシーズンに入り、ある薬局の従業員が初任給で買ったものを話す動画を見かけたといいます。
そういえば自分って初任給で買ったものって何やったかなと思って、約10年前ぐらいのことを思い返していたんですけども。
たいぞーさんは当時、奨学金を借りていたため、働き始めた頃の給料のほとんどを返済に充てていたそうです。それでも、せっかく得た初任給なので、欲しいものを買うためにも使ったと振り返ります。
Amazonの購入履歴に残っていた意外なもの
たいぞーさんが新卒の頃のAmazonの購入履歴を確かめると、初任給で買っていたのは血圧計とパルスオキシメーター ── 指先に装着して、血液中の酸素飽和度(SpO2)と脈拍を測る機器。在宅医療や救急の場面で患者の呼吸状態を把握するのに使われますでした。
僕が初任給で買っていたものは、なんと、血圧計と、酸素飽和度を測るパルスオキシメーターをAmazonで購入しておりました。
たいぞーさんがこの2つを選んだ背景には、学生時代に参加した日本在宅薬学会のバイタルサイン講習会があります。講習会では、薬剤師がバイタルを測って患者の状態を把握し、薬学の専門性で読み解き、医師と共に薬物治療の最適化を図れるという話を聞いたといいます。
(薬剤師は)こんなやりがいも面白さも持って働くことができる職種なんやなということを、気づいて。
この講習会での気づきが、たいぞーさんが薬剤師の資格を取って現場で働こうと思う動機になりました。講習の費用に聴診器が含まれていたため、聴診器はすでに手元にあったそうです。
新卒1ヶ月で感じた「失敗やったかも」という後悔
とはいえ、4月に働き始めたたいぞーさんが、すぐに血圧を測る必要のある場面に出会ったわけではありません。必要に駆られて血圧計を買ったのかというと、全然そんなことはなかったと話しています。
働き始めて1ヶ月の頃のたいぞーさんは、バイタルサインで患者の状態を把握する場面にも出会わず、薬学の専門知識を発揮している実感も持てずにいました。
この道を選んだのは、ちょっともしかして失敗やったかもしれへんなというような、なんか後悔のようなものを感じながら、仕事をしていた。
それでも、たいぞーさんは講習会で気づいた仕事の面白さややりがいを、幻想でも間違いでもないと強く信じていました。いつか力を発揮して関わる必要のある患者が現れるかもしれない。だからこそ、その気持ちを忘れないことが大切だと考えていたのではないか、と振り返っています。
会社に頼めないなら、自分の給料で買う
たいぞーさんが想定していたのは、薬がよく効いているのか、効いていないのか、副作用の要因になっていないかを、血圧から把握したくなる場面です。ただ、そんな日が来るかどうかもわかりませんでした。
一年目で働き始めて間もない僕が会社に、血圧計、パルスオキシメーターがいると思うので買ってくださいと言ったとて、何の信用もない僕の言葉が会社に届くとも思えないですし。
そこでたいぞーさんが選んだのが、自分の給料で機器を買い、私物として手元に置いておく方法でした。
1年目で信用もなく、さすが会社に言い出せなかった
誰にも迷惑がかからず、必要な場面ですぐ取り出して使える
手元に物さえ揃っていれば、必要に駆られた時にすぐに取り出して使うことができるじゃないかということを思って。
たいぞーさんは、この考えから初任給で血圧計とパルスオキシメーターを買ったのではないか、とうろ覚えの記憶として語っています。
半年後、初めての在宅訪問で血圧計が役に立った
たいぞーさんの初任給の買い物は、約半年後に功を奏します。勤めていた薬局で、ついに在宅医療に関わる機会が巡ってきたのです。
訪問先の患者は血圧が安定せず治療が難渋している方で、家でどの薬を飲めばいいかわからなくなって困っている、という相談がきっかけでした。家に行くと、血圧の薬がほとんど飲めずに残っていたといいます。
あれ、これもしかしたら薬が飲めてないから、この人(の)血圧(が)安定しないんじゃないかな。
たいぞーさんは服用状況を確認しながら血圧を測らせてもらい、初任給で買った血圧計がとうとう日の目を見ることになりました。
相談を受ける
どの薬を飲めばいいかわからず困っているという相談
自宅を訪問
血圧の薬がほとんど飲めずに残っているのを確認
血圧を測る
初任給で買った血圧計で状態を把握
処方医と相談
服用状況と血圧をもとに、薬が十分に効いていない可能性と今後の治療を話し合う
たいぞーさんは処方医のもとへ出向き、服薬状況と訪問時の血圧をもとに今後の治療を相談しました。この経験が、在宅医療の第一歩になったと振り返っています。
初任給で買ったものに見えた、活動の原点
初任給で買うものには思い入れのあるものが多い、とたいぞーさんは話します。たいぞーさんの場合、それは「薬学で患者を語る」ことの第一歩を踏み出すきっかけとなるツールでした。
たいぞーさんは、現場で働く薬剤師のリスナーにも、初任給で買ったものを振り返ってみてほしいと呼びかけます。新卒の自分を思い出すことで、働く原点に立ち返り、仕事のやりがいや面白さを感じてもらえたら、というメッセージで放送は締めくくられました。
まとめ
たいぞーさんが初任給で買った血圧計とパルスオキシメーターは、新卒1年目の迷いの中でも講習会で得た志を忘れないための道具でした。約半年後の在宅訪問で実際に役立ち、それが今の「薬学で患者を語る」活動の原点になったと語られています。
- 初任給で買ったのは、学生時代のバイタルサイン講習会での気づきを生かすための血圧計とパルスオキシメーター
- 働き始めて1ヶ月は専門性を発揮できず、薬剤師の道を後悔しかけていた
- 会社に頼めない立場だからこそ、私物として手元に置く選択をした
- 約半年後の在宅訪問で血圧計が役立ち、処方医との相談につながった
- 初任給で買ったものを振り返ることは、働く原点に立ち返るきっかけになる


