寝られないのは神経質だから、ではない
旅行先で周りはもうスヤスヤ寝てるのに、自分だけ寝られないこと、ありませんか。あの人、寝息立てるの早いなあ、みたいな。
そういう時って、僕って神経質なんかな、と思ってしまう方がすごく多いんじゃないかと思います。
でも実は僕、寝ることにあんまり苦労しないタイプなんですよ。だから正直そこで悩んだことはないんですが、仕組みを知るとやっぱり面白かったので書いていきます。
結論から言うと、寝つきの悪さは性格の問題だけではないんですね。脳にはそもそも、興奮を鎮めるブレーキが備わっているんです。
脳のブレーキ「GABA」と、口から取っても脳に届かない話
そのブレーキの正体が『GABA』と呼ばれるものです。ドラッグストアやコンビニで「GABA入り」って書いてあるドリンク、見たことありますよね。
ただ、ここが結構衝撃的なんですが、口から取ったGABAは脳へほとんど入らないんです。
なんでかと言うと、血液から脳へ行く通路に血液脳関門 ── 血液から脳へ物質が入るのを選別する関所のような仕組み。BBBとも呼ばれるというものがあって、GABAはここでバチャンと止められちゃうんですね。悪いものが入らないように、ちゃんと振り分けられているわけです。
ただ、GABAの材料になるグルタミンというアミノ酸は、この関門をすっと通り抜けます。そして脳に入るとグルタミン酸というものに変換されます。
アクセルとブレーキは表裏一体
このグルタミン酸が、今回すごく重要です。GABAがブレーキだとすると、グルタミン酸は主要なアクセルだと思ってください。
神経を興奮させて、考えをバーッと巡らせたり、感覚を鋭くしたりする物質です。つまり、あなたの眠れない夜を導いているのは、このグルタミン酸なんですね。
面白いのが、このグルタミン酸は酵素を1つ通るだけでGABAに変わるんですよ。アクセルとブレーキが表裏一体というか、分子のほんの一部が外れるだけでブレーキに変わる。
この変換を担うのが『GAD1』という遺伝子で、酵素としてはGAD67と呼ばれます。そしてこのGAD1が働くには、補因子としてビタミンB6が必要です。ここは後で対策のところでもう一度出てくるので、頭の片隅に置いておいてください。
なので夜眠れない原因は、興奮が強いことだけじゃなくて、ブレーキへの変換力が弱いという可能性も考えてほしいんです。
マグネシウムという「栓」の話
もう少し仕組みの話をします。神経細胞の表面には、興奮の信号を受け取る入り口の穴があります。重要なのはNMDA受容体と呼ばれるもので、名前は覚えなくて大丈夫です。
この入り口、普段は栓がされてるんですよ。ワインのボトルにコルクが入ってるみたいな感じです。
この栓をしているのがマグネシウムイオンです。細胞の内側がわずかにマイナスに帯電していて、その電気に引き寄せられてマグネシウムが穴にポコッとはまっている。
興奮の信号がいくつも重なるとそのマイナスが打ち消されて、栓がポコッと抜ける。ここでGABAが効いてきます。
GABAは細胞の内側をよりマイナス側へ押し戻す役目があるので、GABAが足りていると栓はしっかり止められる。足りないとポコッと外れやすくなる、というわけです。
血液データで自分のブレーキ力を見る
じゃあ自分の状態はどうやってわかるのか。ここでいつも言っている血液データです。
1つ目はASTとALT。肝機能のところに載っている項目です。この2つはビタミンB6を使って働く酵素なので、ビタミンB6が少ないと低めに出ます。
具体的には、この2つが揃って20以下だと、もしかしたらビタミンB6が足りてないかも、という一つの目安になります。あくまで可能性ですよ。お酒をよく飲む人は他の要因で上がったりもするので、そこは難しいところなんですが。
2つ目は血清マグネシウムです。栓を担うのがマグネシウムイオンでしたよね。目安としては2.4mg/dLを下回っていないかを見てください。
ただ、血液中のマグネシウムは体内のごく一部で、大半は骨や細胞の中にあります。なので数値だけで判断せず、体の状態と合わせて読んでほしいです。詳しくはマグネシウムだけで話した回があるので、そちらを見てもらえればと思います。
遺伝子だけで決まる話じゃない
眠れる人と眠れない人の差は、設計図であるGAD1の違いで、GABAへの変換ペースが違うところにあります。
変換ペースの遅い人は、同じ量のグルタミン酸を受け取っても、生成されるGABAが少なくなる。つまり、グルタミン酸の量そのものより、ブレーキの利きが弱いことのほうが原因として多く見受けられるんです。
じゃあ遺伝子なんですか、と思いますよね。でもこれはエピジェネティクス ── 遺伝子の働きが生活習慣や環境によって変わるという考え方の考え方で、遺伝子だけでどうしようもない世の中ではもうなくなってます。ここが救いですね。
慢性ストレスはGAD1の活性を落とすと報告されていますし、加齢でも働きが弱まる。年齢を重ねるほどグルタミン酸が増えてGABAが減る傾向もあると言われています。
昔はもっと眠れたのに、というのは、ストレスや加齢でGABAを作る力が落ちてるのかもしれません。加齢はどうしようもないですが、ストレスは意識できるところです。
今日からできる3つの対策
生まれ持ったGABAの変換のしやすさは変えられませんが、GAD1の働きを促すことはできます。3つお伝えします。
1つ目は、アクセルであるグルタミン酸を踏み続けないこと。夜も昼と同じ明るさの部屋で過ごす、寝る直前までスマホやPCをいじる、夕方以降のカフェイン。どれも脳のスイッチを入れたままにする習慣です。
何かを足す前に、まず何かをやめましょう、といつも言うんですが、種を植える前にまず畑を耕す。GABAを働かせる前に、まずアクセルを緩めるところがスタート地点です。
2つ目は、変換の補因子であるビタミンB6を切らさないこと。グルタミン酸自体は足りていることが多いので、切らしやすいのはこっちです。マグロ、カツオ、鶏肉、バナナ、玄米などに多く含まれます。
3つ目は、栓であるマグネシウムを切らさないこと。睡眠とマグネシウムってよく出ますが、本当に重要です。ほうれん草、ナッツ、海藻、豆類あたりですね。
そしてこの3つに共通する土台もあります。
- 睡眠の規則性。何時に寝て何時に起きるかのリズム
- 血糖の安定。血糖が大きく揺れると体は興奮へ傾く
結局ここに戻ってくるんですよね。食事、睡眠、運動、メンタル、ストレス。このあたりを整えれば、病気でなければある程度は解決しやすいというのが、いつもお伝えしていることです。
眠れない状態が長く続く場合は、自己判断だけでやらず、お医者さんや栄養の専門家に相談しながら進めるのが一番いいかなと思います。
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それと、今しばらくお待ちいただきたいんですが、ヘルスケアのアプリももうすぐリリース予定です。日々のデータをもとにアドバイスや相関関係が見られるようにしていて、結構面白いと思います。
それでは、ぐっすり眠って皆さん健康に過ごしてください。今日も健康で。ではまた。
まとめ
寝つきの悪さは性格だけの問題ではなく、脳のブレーキであるGABAへの変換力や、栓の役目をするマグネシウムが関わっています。まずはアクセルを緩め、ビタミンB6とマグネシウムを切らさないことから始めてみてください。
- 口から取ったGABAは脳にほとんど届かず、材料のグルタミンが脳内でグルタミン酸に変わる
- グルタミン酸はGAD1とビタミンB6の働きでGABAに変換される。この変換力が弱いと眠りにくい
- 血液データではAST・ALTが揃って20以下ならビタミンB6不足、血清マグネシウムは2.4mg/dLが目安
- 対策はアクセルを緩める、ビタミンB6を補う、マグネシウムを切らさない。土台は睡眠の規則性と血糖の安定






