「地上に太陽を作る」研究者はどんな仕事をしている?
サイエントークでは今年の初めに核融合発電を取り上げました。その配信にSNSで反応してくれたのが、実際に核融合の研究をしている浦野創さんで、レンさんが連絡を取ってゲスト出演が実現しました。
浦野さんの所属は、量子科学技術研究開発機構 ── QSTと略される国立研究開発法人。量子科学技術や放射線医学、核融合などの研究開発を担っていますの那珂フュージョン科学技術研究所、先進プラズマ研究開発部です。研究所には大型の核融合実験装置があり、「地上に太陽を作る」という目標を掲げて研究開発を進めています。
(QSTには)大型の核融合の実験装置があります。それを使って、地上に太陽を作るっていう目標のもとで研究開発を進めています。
浦野さんは現在管理職で、自分で実験を提案してデータを解析する第一線にいるわけではないと話します。フュージョンエネルギーの研究開発は多くの分野を結集した「総合理工学」なので、分野ごとの研究者や技術者をつなぐマネジメントが主な仕事です。
そのうえで、浦野さん自身が積極的に進めている研究は、ひと言でいうと「核融合炉の制御」です。レンさんとエマさんは「暴走したら大変そう」と反応しますが、浦野さんの話はここから意外な方向に進みます。
なぜ核融合には数億度もの高温が必要なのか?
浦野さんによると、核融合は原子核同士が衝突して起きる反応です。ところが原子核はプラスの電気を持っているため、近づけると磁石の同じ極のように反発し合います。
この反発力はクーロン斥力 ── 同じ符号の電気を持つ粒子同士が押し合う力。距離が近いほど強くなるため、原子核同士を接触させるには非常に大きなエネルギーが必要ですと呼ばれます。核融合を起こすには、この力を乗り越えるだけの運動エネルギーを原子核に与えなければなりません。
運動エネルギーは温度とほぼ同じ意味の量なので、必要な条件を温度で表すと数億度、少なくとも1億度以上になります。これが核融合の最初の難しさだと浦野さんは説明します。
数億度に達した物質は、固体・液体・気体のさらに先にある「電離気体」になります。原子が原子核と電子にばらばらになった状態で、研究者はこれをプラズマと呼んでいます。
核融合反応を起こすためには、このプラズマ状態っていうのを作る必要があるってことなんですよね。
プラズマを磁石で浮かせ、風船のように閉じ込める
プラズマは電気を帯びた粒子の集まりなので、外から電磁力で操ることができます。レンさんが「磁石で操るみたいなこと?」と聞くと、浦野さんは「まさにその通り」と答えます。
核融合炉ではプラズマを電磁力で浮かせて、容器の壁に触れないように閉じ込めます。超高温のプラズマが壁に当たると、壁を溶かしたり壊したりするおそれがあるためです。
ただし、核融合反応を十分に起こすために温度と密度を上げると、プラズマは「暴れ出し」ます。物理の言葉では、不安定な状態になるという意味です。
核融合の反応率はプラズマの圧力の2乗に比例します。そのため、限られた装置サイズや磁場の強さの中で、できるだけ圧力を上げることが経済的な核融合炉の条件になります。
浦野さんはここで風船にたとえます。風船はゴムの張力で中の空気を閉じ込めていますが、圧力を上げ続けるといつか割れます。核融合炉では、ゴムの代わりに電磁力がプラズマの圧力を支えています。
風船に例えるなら風船が割れないギリギリのところまでパンパンにしたいわけですよ。
支えきれなくなったプラズマは制御を失って消滅します。そうなると「もう一回作り直さないといけない」と浦野さんは話します。
本物の太陽は電磁力を使っていません。太陽は自分の大きな重力で燃料の粒子を閉じ込め、自律的に反応を続けています。地球の重力は太陽に比べて小さすぎるため、地上では重力の代わりに電磁力を使う必要があるのです。
巨大な重力で燃料の粒子を閉じ込め、自律的に核融合反応を続けている
地球の重力では足りないため、重力の代わりに電磁力でプラズマを浮かせて閉じ込める
アクセルとブレーキだらけの「制御」とは?
浦野さんの研究テーマである制御は、風船をパンパンにしながら割らないための技術です。核融合炉には、温度を上げる加熱装置、密度を上げるための燃料(ガス)供給設備、プラズマを閉じ込めるコイルなど、多くの設備があります。
浦野さんは車の運転にたとえます。車はアクセルとブレーキでスピードを調節しますが、核融合炉では構成する設備のそれぞれがアクセルとブレーキを持っているイメージです。
その全部の設備のアクセルとブレーキをバランスよく制御して、プラズマが不安定にならないように、あるいは不安定になってもすぐその不安定を抑え込めるようにして(いく)。
燃料について、浦野さんはDT反応 ── 重水素(D)と三重水素(T)を融合させる反応。必要な温度が比較的低く、地上での核融合研究の主流になっていますを挙げます。地上では温度ができるだけ低い反応のほうが扱いやすく、組み合わせによっては10億度が必要になることもあるため、最もやりやすいDT核融合の研究が最も進んでいます。
フュージョンエネルギーのメリットは「暴走しない」こと
ここで浦野さんは、なぜここまでして研究するのかというメリットの話に移ります。1つ目は、核融合炉が二酸化炭素を出さないことです。
2つ目は安全性です。核融合炉は原理的に暴走せず、制御の手を離せば必ず止まります。
ただ浦野さんは、この性質がそのまま難しさでもあると付け加えます。止まらないように制御し続けなければ、運転そのものが成り立たないからです。
エマさんが「他のエネルギーは暴走する可能性があるのか」と聞くと、浦野さんは核分裂反応の例を挙げます。核分裂では連鎖反応が起きるので、放っておいても反応が続き、止めるために何かをしなければなりません。
重い原子核が分裂する反応。連鎖反応が起きるため、放っておいても反応が持続し、止めるための操作が必要
軽い原子核同士をくっつける反応。起こすにも続けるにも制御が必要で、手を離した瞬間に止まる
レンさんは「世話しないといけない系の子供」とたとえ、エマさんも「メリットでもありデメリットでもありそう」と応じます。浦野さんは「まさにそうです」と認めています。
「核融合」はなぜ「フュージョンエネルギー」と呼ばれ始めたのか?
呼び方については、リスナーからも疑問が寄せられていました。
相談の要旨: 「原子力発電」と「核融合発電」という言葉が使い分けられているが、包含関係がめちゃくちゃなのではないか。
浦野さんは、物理学の観点からは核融合も間違いなく原子力だと認めます。最初に商用化されたのが核分裂炉で、それが「原子力発電」として定着し、後から研究が進んだほうを区別して「核融合発電」と呼ぶようになった、という歴史的な経緯です。
現場の研究者や技術者も違和感を抱えながら、社会に定着した用語として受け止めてきたといいます。
最近「フュージョンエネルギー」という言い方が増えているのは、「核」という言葉から本質的ではない不安を連想させたくないからだろうと浦野さんは考えています。高市早苗さんが首相として行った最初の所信表明演説でも、エネルギー問題の文脈で「フュージョンエネルギー」という言葉が使われたそうです。
浦野さんの研究所も、以前は那珂核融合研究所でしたが、那珂フュージョン科学技術研究所に名前が変わりました。見学者に説明するときもフュージョンエネルギーという言葉を使うよう心がけているものの、今でも時々「核融合」と言ってしまうこともあると話しています。
燃料は海水から。1グラムで石油8トン分のエネルギー
もう1つの大きなメリットは燃料です。石油や天然ガスはいずれなくなりますが、核融合の燃料は海水の中に大量に含まれています。
浦野さんによると、計算した人がいて、燃料は人類が数百万年使える量があるそうです。しかも、海水から取り出す手間よりも、核融合で得られるエネルギーのほうがはるかに大きいといいます。
効率については、燃料1グラムから石油8トン分のエネルギーを取り出せると浦野さんは説明します。研究所内で試算した人によると、核融合で走る車に燃料を1グラム入れれば、地球を2.5周ほど走れる計算になるそうです。
レンさんは「それスタンドいらないですね」と笑い、浦野さんも「車の方が先に壊れそう」と返します。
浦野さんが強調するのは、日本にとっての意味です。エネルギー資源に乏しい一方で、周囲を海に囲まれた島国である日本は、エネルギーを自給できるようになれば国際的な立場を安定させられるかもしれません。
究極的には世界平和とかにも貢献する新しいエネルギーじゃないですかっていうのをみんなに言って回ってます。
プラズマを閉じ込めたまま、どうやって電気を取り出すのか?
レンさんが気になっていたのは、磁場の中に閉じ込めたプラズマからどうやってエネルギーを取り出すのかという点です。浦野さんは「そんなに難しいことをやってない」と答えます。
DT核融合反応からは、ヘリウムの原子核と中性子が生まれます。プラズマが磁場で閉じ込められるのは電気を帯びているからで、電気的に中性な中性子は磁場にとらわれずに外へ飛び出していきます。
飛び出した中性子のエネルギーは、容器の周りに引き回された冷却水で受け止めます。正確には中性子を減速する材料も入りますが、最終的には水を沸騰させてタービンを回すという、火力発電と同じ原理で電気を作ります。
もう一方のヘリウムは電気を帯びているため、磁場の中に残ります。高エネルギーのヘリウムは、燃料のプラズマを加熱して次の反応を助ける役割を果たします。浦野さんはこれを足湯のように「温度の高いものを混ぜると全体が温まる」イメージだと説明しました。
DT核融合反応
重水素と三重水素が融合し、ヘリウムの原子核と中性子が生まれる
中性子が外へ
電気的に中性なので磁場にとらわれず、容器の外へ飛び出す
冷却水で受け止める
中性子のエネルギーで冷却水を沸騰させる
タービンで発電
火力発電と同じ原理で電気を作る
ではヘリウムは溜まり続けるのか、とレンさんが尋ねると、浦野さんは「すげえいい指摘」と返します。ヘリウムは上手に排気する必要があり、ヘリウムを選択的に外へ出すタイプの不安定性を利用することもあるそうです。
欲しいものだけをプラズマに残して、で、不安定性も上手に利用しながら、中の状態っていうのを一番いい状態にキープしてるんですよね。
天気予報の技術が核融合炉の制御に使われる理由
プラズマの制御は、内閣府のフュージョンエネルギー・イノベーション戦略 ── 日本政府がフュージョンエネルギーの実用化に向けて定めた国家戦略。研究開発や産業化の方向性を示していますで2030年代の発電実証を目指すうえでも重要な課題だと浦野さんは位置づけます。
そこで浦野さんは、研究所の中だけでなく、大学や企業との連携を積極的に進めています。制御技術は多くの産業で使われているため、まったく違う分野の人が思いもよらない技術を持っていることがあるからです。
レンさんは、以前ゲスト出演したKEKの研究者が光に敏感なセンサーを工場に作ってもらった話や、液体のりのアラビックヤマトが細胞培養に使えるという論文を例に、越境が研究を進めることへの共感を示しました。
浦野さんが挙げる具体例が、気象予測の技術です。天気予報では、ばらばらに存在する観測点のデータから気象の状態を把握し、将来を予測しています。
同じ考え方を使えば、計測器から今のプラズマの状態をつかみ、このままだと不安定になるかを予測できます。さらに、目標の状態に持っていくために加熱設備や燃料供給設備のアクセルとブレーキをどう踏むか、という指令まで出せるようにすることを目指しているそうです。
この手法は数理に立脚した方式で、AIと呼ぶとその分野の人は違和感を持つかもしれないと浦野さんは断ります。それでも、今後AIは制御に大きく入ってくると見ています。
プラズマだけで言ったとしても、まあ7個ぐらいあったりするんですよ。同時にね、同時に制御しなきゃならないものが。
以前はプラズマの物理を理解したうえで、アナログに制御ロジックを組み立てていました。同時に制御する対象が増えるとその方法には限界があるため、最適化問題が得意なデータ科学やAIの出番だと浦野さんは考えています。
水素爆弾とフュージョンエネルギーは何が違う?
ここでレンさんが、リスナーからの質問を紹介します。
フュージョンエネルギーと水素爆弾の核融合は同じなんですか?
浦野さんの答えは、反応そのものは同じでも技術的にはまったく別物だというものです。どちらも重水素と三重水素が融合してヘリウムと中性子ができる反応を利用しています。
一瞬で大きなエネルギーを放出するのが目的。高温・高密度の状態を一瞬だけ作り、爆発的に反応させる
安定してエネルギーを取り出すのが目的。燃料をプラズマにして磁場で閉じ込め、密度はものすごく低い
発電所のプラズマは爆弾に比べて密度が非常に低いため、水素爆弾のように爆発する条件にはならないと浦野さんは説明しています。
世界最大の実験装置JT-60SAは何を確かめるのか?
浦野さんたちが運転しているのが、那珂フュージョン科学技術研究所にあるJT-60SA ── 日本と欧州が共同で建設した超伝導トカマク型の核融合実験装置。運転中の装置として世界最大級の規模を持ちますです。将来の核融合炉に近い条件を実現し、長時間安定して運転できるかを調べるための装置です。
今の我々の課題っていうのが、その核融合反応を起こすっていうことじゃなくて、(起こすのは)もう当たり前で、発電所として安定して動けるような運転技術を開発していくっていうフェーズになってるんですよね。
レンさんが「エンジニアリングに近い段階ですね」と言うと、浦野さんは同意しつつも、プラズマの挙動はまだ物理で完全には理解されていないと付け加えます。シミュレーションコードで現象を体系的に説明する研究も続いています。
浦野さんは、ブラックボックスのAIで制御するより、物理的な知見のもとでAIを使うほうが精度は上がると考えています。物理研究で解明した事実とAI技術の融合が、これから求められるという見方です。
100秒の放電実験と、0.01秒で逃げるプラズマ
エマさんの「今は何秒くらい反応を続けられるのか」という質問に、浦野さんは装置のスペック次第だと前置きします。JT-60SAは100秒間の放電実験ができるように作られています。
100秒あれば、プラズマで起きるほとんどの物理現象の時間スケール(タイムスケール)をカバーできるからです。
例えばプラズマの位置は、リアルタイムで計算し、指令値からずれていれば電磁石コイルの電流を変えて元に戻しています。これがフィードバック制御です。
もしずれたまま放置すると、プラズマは力のかかる方向へ飛んでいってしまいます。その時間はおよそ0.01秒のオーダーです。
制御する側の計測器や計算は、現象の時間スケールより1〜2桁速くなければなりません。レンさんは「計算に0.01秒かかっていたら、終わった時にはもうどこかに行っている」と言い換えています。
浦野さんによると、プラズマの物理現象には遅いもので数秒から10秒ほど、速いもので磁場の揺らぎが伝わるマイクロ秒(100万分の1秒)のオーダーまであります。
| 現象 | 時間スケール | 制御への意味 |
|---|---|---|
| 磁場の揺らぎの伝搬 | 100万分の1秒のオーダー | 最も速い現象の一つ |
| 位置がずれたプラズマが飛んでいく | 0.01秒のオーダー | 計測や計算はこれより1〜2桁速さが必要 |
| 遅い物理現象 | 数秒〜10秒ほど | 100秒の放電で一通りカバーできる |
発電所ではプラズマのつけ消しを繰り返すと効率が悪いため、将来は連続して運転し続けることを目指しています。その技術を確立するための実験時間として、100秒あれば十分研究できるという考え方です。
なお、プラズマが飛んでいく動きを抑える制御技術はすでに確立されており、画期的な発見がなければできないというレベルではないと浦野さんは話します。
スライムを素手で押さえ込むような複合制御
いま求められているのは、1つの現象を制御することではありません。いくつもの制御対象を、リアルタイムに同時に、複合的に制御する技術です。
高温・高密度の状態に近づけていく途中で、プラズマは不安定になって暴れ出します。浦野さんは、暴れないように押さえつけるだけでなく、「この先暴れそうな状態に近づいている」と事前に知ることができれば回避できると説明します。
レンさんは自分のイメージとして、スライムを強い力で握りしめる様子を挙げました。指のすき間からピュッと出てこないように押さえ込む、というたとえです。
その制御したいものが一つ一つが独立なものだったら簡単だと思うんだけど、今のスライムみたく全部がくっついているので、一個頑張っても他が追いついてこなかったりする。
1つに集中しすぎると他が手薄になり、全体としては整合しない状態になってしまう。浦野さんはスライムのたとえを「いい例だと思います」と評価しました。
完成から6年、JT-60SAはどこまで来たのか?
エマさんの「100秒間核融合を起こし続けられるのか」という質問に、浦野さんは「それはできます」と答えます。ただし、JT-60SAの本格的な科学実験は今年の暮れから始まるところです。
JT-60SAは2020年に装置として完成しました。そこから設備を1つずつ試験し、2023年には全設備を協調して動かす統合試験運転を行いました。0.01秒より速い現象を制御するには、設備がばらばらではなく協調して動く必要があるからです。
統合試験の最後の項目がプラズマを作る試験で、2023年10月末にJT-60SAは最初のプラズマをつけました。最初はごく一瞬で、約1か月かけて10秒ほどまで延ばしましたが、核融合反応がどんどん起きるようなものではなかったといいます。
その後は休止期間に入り、本格的な実験のための計測器やプラズマをさらに高温にする加熱装置を導入してきました。この増強が終わると、本来のスペックである100秒間の放電実験に挑む予定です。
レンさんは「最初は裸のガンダムみたいな状態」とたとえ、浦野さんもうなずきます。今後も何年かごとに少しずつ増強していく計画です。
浦野さんによると、十分な核融合反応に必要な高い圧力を出せる装置で、その圧力を100秒間維持した例は世界にまだありません。低い圧力ならプラズマはあまり不安定にならず制御も簡単ですが、それでは発電所として投入した以上のエネルギーを取り出せないため、風船が割れる直前の状態を維持する研究が大事になると説明しています。
デメリットは?中性子と放射化への向き合い方
レンさんが「あえてデメリットも」と尋ねると、浦野さんは制御の難しさを挙げます。
精密な制御をしない限り発電として成立しないことこそが大きな課題で、デメリットといえばデメリットだと浦野さんは話します。
続いてレンさんは、リスナーからの質問を紹介します。
そこ(中性子)は放射性物質は大丈夫なんでしょうか?
浦野さんは、中性子が出る以上、装置の放射化 ── 中性子などが当たることで、もともと放射能を持たない物質が放射線を出すようになる現象は起きると認めます。発電所が動き出したら手ぶらでいつでも中に入れるわけではなく、適切なメンテナンスが必要です。
一方で、核融合装置はオフィスの横に置くようなものではなく、隔離された場所で閉じ込めて運転します。また連鎖反応が進むことは基本的になく、手を離した瞬間に反応が止まるので、運転中でなければ中性子がどんどん出ることはないと浦野さんは説明しています。
数億度のプラズマが壁に当たっても大丈夫な理由
エマさんは、風船が割れるようにプラズマが飛び出したら危険ではないかと尋ねます。浦野さんの答えは、爆弾のように爆発することはなく、装置に力がかかるので何度も起こしたくはない、その程度だというものです。
実験ではプラズマが壁にぶつかることも実際にあるそうです。それでも一度で装置が壊れることはなく、その理由がプラズマの「薄さ」だといいます。
浦野さんは、同じ100度でも、沸騰した鍋のお湯を浴びれば大火傷をするのに、100度のサウナには普通に入れることを例に挙げます。違いは水分子の密度で、密度の低い水蒸気はたくさんの熱を蓄えられません。
水分子の密度が高く、多くの熱を蓄えられる。浴びれば大火傷になる
密度が低く、蓄えられる熱が少ない。熱いが普通に入れる
核融合で「高密度」というのは、あくまでプラズマにとっての話です。空気と比べると何万分の1から何十万分の1ほどの薄さしかないと浦野さんは話します。
そのため、壁の材料は数億度に耐える必要はありません。一般的には1000度ほどに耐えられる耐火材料を配置しておけば、ちょっとやそっとでは溶けないそうです。
レンさんは「完全にイメージ間違ってました」と驚き、エマさんも空気の何万倍も高密度だと思っていたと話します。二人はスライムより「スカスカのスポンジ」のほうが近いたとえかもしれない、と言い直しました。
核融合の電気でご飯が炊けるのはいつ頃?
最後の質問として、レンさんがリスナーからの質問を読み上げます。
核融合で生み出されたエネルギーでご飯を炊けるようになるのはどのくらい先の未来でしょうか?
浦野さんは、実用化の時期は正確にはわからないと正直に答えます。そのうえで、国家戦略で2030年代の発電実証がマイルストーンとして明確に置かれていることから、10年、20年というスパンの中で確実に実現すると考えています。
(核融合で発電した電気でご飯を炊くことは)もしかしたら今の小学生ぐらいの子たちが大人になった時に実現していることもあるかもしれないんですよ。
ブレイクスルーの鍵を聞かれた浦野さんは、総合理工学としての横の連携を挙げます。一人の研究者が夜遅くまで残るだけでは前に進まず、分野の違う人たちがゴールを共有して足並みをそろえる仕組みが必要だといいます。
エマさんが「プロジェクトマネジメント能力も必要そう」と言うと、浦野さんも「そう思いますよ」と同意します。レンさんは「みんなの気持ちがフュージョンしないといけない」とまとめ、浦野さんに「めちゃくちゃいいじゃないですか」と気に入られました。
一般の人ができるフュージョンエネルギーの応援とは?
エマさんが一般の人にできる応援を尋ねると、浦野さんは、メディアで取り上げられるようになってから研究所の見学者がとても増えたと話します。興味があればぜひ見学に来てほしいとのことで、一般の人も多く訪れ、子どもたちが自由研究に来ることもあるそうです。
研究所はXやYouTubeでも発信しています。「JT-60SA」で検索すると、最初にプラズマがついた瞬間の動画が見られ、研究員や技術員が大喜びでハイタッチする様子が残っています。
ただしそのプラズマはごく一瞬しか光らないため、まばたきせずに見ていないと見逃してしまうそうです。浦野さん本人もその場にいたものの、映っているのは伸ばした手くらいだったと振り返られていました。
今年の暮れから始まる本格的な実験についても報道発表があるはずだとして、浦野さんは「核融合」というワードに敏感に反応してもらえればと呼びかけています。
まとめ
核融合は「起こすこと」から「発電所として安定して動かすこと」へと課題が移っています。浦野さんの話からは、暴走しない安全性と制御の難しさが表裏一体であること、そして意外なほど薄いプラズマを、多くの分野の力を合わせて押さえ込もうとしている現場の姿が見えてきます。
- 核融合には数億度が必要で、プラズマを電磁力で浮かせ、風船が割れる直前の高い圧力を保つ制御が鍵になる
- 手を離せば止まるため暴走せず、燃料は海水から得られ、1グラムで石油8トン分のエネルギーを取り出せる
- プラズマは空気の何万分の1以上も薄く、壁に当たっても約1000度に耐える材料で受け止められる
- JT-60SAは今年の暮れから本格的な実験に入り、高い圧力での100秒間維持という世界初の挑戦を目指す
- 気象予測やAIなど異分野の技術との連携が、2030年代の発電実証に向けた突破口として期待されている




