フランス旅行と「カフェから時代は創られる」
今回の冒頭は、東南さんのフランス旅行の話から始まります。パリとニース(南仏)に、10日間ほど滞在してきたそうです。
フランスはやっぱり人生で一度は行ってみたい国じゃないですか。
円安の影響は大きかったものの、燃油料金が上がる前に予約していたため、タイミング自体はよかったと東南さんは振り返ります。
今クレジットカードの明細は見ていません。
東南さんがパリで最初に向かったのは、「カフェから時代は創られる」という書籍で最初に取り上げられているカフェ「ドゥ マゴ」でした。この本は、安斎さんが以前から東南さんに勧めていたものです。
この本では、当時のパリのカフェが、社会に馴染めなかった天才たちの居場所になっていたことが描かれています。安斎さんは、その理由を営業環境の面から説明します。
当時営業時間が長くて、ワンコインでずっといられて、食べ終わっても追い出されないっていう。だから実はカフェが(異端が集まる)学習環境としてすごかった。
東南さんも修士課程でコミュニティデザインやサードプレイスを研究していたため、この話は自分の関心と近かったと言います。約10年前に本を読んで以来、ドゥ マゴには一番に行きたかったそうです。
安斎さんは、カフェのテラス席にも意味があったと補足します。奥で天才たちが激論を交わす一方、いきなり奥に入る勇気のない人が、まずテラスで様子をうかがえたというのです。
だんだん通ってるうちに、オーナーが「君も奥行けば」みたいな感じで、だんだん奥に入ってって、テラス席っていうのは実は新しい風が入ってくる重要な設計だった。
知識としては知っていた安斎さんですが、東南さんの体験談を聞いて「見たくなってきた」と羨ましがります。東南さんが最初に興奮して上げたドゥ マゴの写真の意味を、当時は理解できていなかったと反省していました。
休日って何すればいいの?正解がわからない
ここから今回のテーマに入ります。今日の会議のテーマは、安斎さんが提案した「休日って何すればいいの?」です。
安斎さんは、充実した夏休みを過ごした東南さんが羨ましいと言いつつ、そもそも休日は難しいと切り出します。第2回で扱った「結局何時間働けばいいの?」の回で明らかになった、2人の価値観にもつながる話です。
休日って研究進める時間だよねみたいな。
安斎さんが例に挙げるのは、美容師さんとの雑談です。「休みの日何してるんですか?」と聞かれる場面での戸惑いを語ります。
休みの日、休みの日ってなんすかね?(と自問自答してしまう)
大学院生の頃は真面目に問い直しすぎて、相手を困らせていたそうです。今は大人として「子供と遊んでます」「サウナ行ってます」と、趣味の話として軽く返すようにしていると言います。
ただ、事実として子供と過ごしてはいるものの、根本の悩みは残ったままだと安斎さんは打ち明けます。
東南さんも正解はわからないと応じ、この回は2人で一緒に考えていく形になります。東南さん自身の休日は、料理、読書、ヨガ、飲みに行くことなどが多いそうです。
楽しい時間より、楽しみにしている時間
東南さんは、休日を旅行の計画や準備に使うことがあると話します。近場でも1か月前、遠方なら3か月や半年前に予約するため、その週末は旅行の下調べに使われることがあるのです。
この過ごし方に、安斎さんは自身の持論を重ねます。
それはそうだと思う。旅行ってやっぱ行く前の方が楽しかったりしますもんね。
安斎さんは、少年ジャンプの週刊連載を例に出します。読む時間は一瞬でも、次週を待つ1週間こそが連載で読む醍醐味だと言います。
東南さんは、今回のフランス旅行がまさにそうだったと振り返ります。2か月前からデュオリンゴでフランス語を学び、王妃マリー・アントワネットを題材にした小説も読み始めていたそうです。
本を読んでてもすごい充実感あるっていうか、楽しみがこうどんどん募っていく週末だったなと思って。
安斎さんは、労働の回で話した「社会に仕組まれたリズムで休まされている」という論点を持ち出します。休日はもともと、労働の生産性を上げるために制度化されたものだという整理です。
すべてが労働の時間になり、休日までタスク化してしまうのが資本主義社会の課題だと安斎さんは考えています。その上で、「休日のために休日を使う」東南さんの過ごし方を、豊かなものだと評価しました。
娘と体験した、めっちゃいい休日
続いて東南さんが、安斎さんの最近の良かった休日を尋ねます。安斎さんは即座に「めちゃくちゃいい休日があった」と答えました。
前提として安斎さんは、子供と過ごす時間の複雑さを打ち明けます。幸せで可愛い一方、作業的にきつい瞬間もあるというのです。
ずーっと一輪車を一時間見るとか。可愛いし嬉しいし豊かな時間なんだよ。だけどずーっと一時間見る時間とかさ。
両立するからね、その可愛い気持ちと、ちょっともう長い、しんどいなみたいな。
さらに安斎さんは、子供の休日は惰性になりやすいと指摘します。計画がある日はいいものの、校庭開放でいつもの学校に行って帰ってくるような日は、楽しくても予想通りで終わってしまうと言います。
そんな中で起きたのが、良かった休日の話です。きっかけは、小学2年生の娘さんの夏休みの調べる学習でした。ダンスのレッスンを習っている娘さんの興味に合わせ、ダンスをテーマにした探究学習に取り組むことにしたそうです。
設定した問いは「ダンスが上手いってどういうこと?」でした。東南さんは、小2の子が自力で立てられる問いではないと笑います。
ここどっか親ついてるって、絶対先生思いますよ。
安斎さんは、完全に指示したわけではなく、ブレストの中で導いたと説明します。低学年の探究学習はテーマ設定が全てなので、そこは足場をかけた方がいいという判断でした。
キッズダンサーの大会で、娘に起きた揺さぶり
週末にやることを調べていたところ、安斎さんは近くでキッズダンサーの頂点を決めるダンスバトルの大会があることを見つけます。観覧は1人3000円でしたが、2人で見に行くことにしました。
会場は観客席のあるステージではなく、鏡張りのダンススタジオのような場所でした。スタッフも審査員も出場者も観客も入り交じって囲んで見る形式で、緊張感があったと言います。
大会は1対1のフリースタイルバトルでした。ラップバトルのようにDJが曲をかけ、先攻・後攻が40秒ずつ踊り、審査員が勝敗を決めるトーナメント方式です。
レベルは大人が見ても感動するほど高く、決勝は中学生と小学3年生の対戦でした。1.5メートルほど先で、ぶつかりそうなほど間近に踊る様子を目の前で見たそうです。
2位になった小学3年生の女の子に、娘さんは強く惹かれます。Supremeのだぼだぼのシャツにキャスケットを深く被り、ヒップホップやロボットダンスなど複数のジャンルを混ぜて踊る姿でした。
結果何が起きたかというと、娘が死ぬほど憧れちゃって。どうなったらこうなれるのかってすごい聞いてくるようになって。
娘さんはその子のインスタの動画を見続け、同じダンスが習える教室に通いたいと言い出したそうです。安斎さんは、人生の転機になるほどの揺さぶりが起きたと表現しました。
なぜそれが「いい休日」だったのか
東南さんは、この体験のどの点が「いい休日」だったのかを問い直します。娘さんの転機なのか、惰性ではなく一緒に楽しめたことなのか、と切り込みました。
さっきのこの惰性でみたいな話があったから、惰性じゃなくてみたいなところ、(親子で)一緒にこう楽しめてみたいなところなのか、何がいい休日だったんでしょうか。
安斎さんは、いつもの校庭で友達と遊ぶのも幸せだが、それは予想通りの一日になると答えます。今回は、どんな感じかわからないものに、えいやで6000円を払って飛び込んだ結果、予想外の驚きがあったと言います。
大人にとっても、全国や地方からわざわざ来た子供たちのレベルの高さに驚く体験でした。そして娘さんにとっては、それまでK-POPで想像していたダンス像を覆される、衝撃的な経験になったのです。
安斎さんは、これを惰性からの脱却として捉えます。専門の学習理論を引きながら説明しました。
衝動っていうのは惰性から脱するためのエネルギー、きっかけなんだっていう、まさにそれを見た。
一方で安斎さんは、こうした休日ばかりでも疲れてしまうと付け加えます。前の回で話した「65点ルール」になぞらえ、納豆ご飯のような普通の休日があってもいいと言います。
惰性だなーって思う休日もあるから、その晴れの場でおーみたいになるわけで。
休養・教養だけでいいのか
ここから安斎さんは、休日の目的を機能面から整理します。一つは文字通りの回復です。疲れていれば家でずっと寝ているのも、心身を癒す意味では機能的だと言います。
もう一つは、快楽・享楽・遊びの側面です。安斎さんにとって格闘技の観戦は、仕事にはほとんどつながらないものの、ワクワクするから見ている遊びの時間だと語ります。
その上で安斎さんは、快楽にも深みがあると指摘します。勉強や準備、投資によって快楽を最大化する営みは、文化的な行為でもあるという見方です。
快楽を最大化するためにわざわざ予習して格闘技を見に行くとか、語学を勉強してフランスに行くみたいなのって、快楽を深めていることだと思う。
この流れで東南さんが紹介したのが、越川さんの「世界の一流は『休日』に何をしているのか」という本です。休日には主に2つの位置づけがあると書かれていたそうです。
エネルギーをチャージする側面。疲れて回復する状態に至らないよう、日々温存しておくとされる
知的エネルギーを蓄える側面。本や美術館などからのインプットが想像されやすい
東南さんは、安斎さんの話を聞きながら、休養と教養の2つだけでいいのか、快楽など他の要素があるのではないかと問いを投げます。
安斎さんは、快楽に興じることも別側面の教養につながると応じます。哲学者・千葉雅也さんの「勉強の哲学」を引き、勉強と享楽の結びつきを説明しました。
休日は「自分の物語を進める時間」
ここで安斎さんは、自分にとってのいい休日に、まだ言葉にできていなかった側面があると気づきます。予定のない休日には、結局「本を書きたい」と思うというのです。
(本を書くのは)回復でもないし、享楽つっちゃ享楽なんだけど。平日に止まっていた何かを進められるっていう感覚なんですよ。
それはタスクを進める感覚とは違うと安斎さんは言います。自分の物語を前進させる感覚だという説明です。
安斎さんにとって、平日の仕事はやりがいがある一方、基本的には社会に貢献する仕事だと位置づけられています。株主総会の準備や取締役会、講演などは、貢献に自分の動機を結びつけて楽しむ時間だというのです。
これに対し、本を書きたいテーマに費やす時間は、自分のアイデンティティに直結します。
平日は社会への貢献の時間で、自分の物語が少し進んでいない感覚があると安斎さんは言います。娘さんのダンスの一件も、娘さんの物語のページが進む感じがしたと重ねました。
「ずっと行きたかった国に行く」「憧れを見つける」「次に書きたい本が見つかる」といった出来事も同じで、自分の物語を自分で進められたと思えることが、休日で取り戻したい機能の一つだと安斎さんは整理します。
東南さんは、これが労働の回とつながると受け止めます。「させられている」「休まされている」ことに疲れてしまうという話と、休日は裏表の関係だと感じたそうです。
ルール「休日は次の休日に備えよ」
番組の締めとして、今回の休日の過ごし方について1つだけルールを作ることになります。
安斎さんは、東南さんの旅行の計画や語学の勉強、自身の格闘技の予習や娘さんとのダンス観戦を振り返ります。これらは次の月曜からいい仕事をするための休みではなく、次の休日のための時間だと気づいたのです。
こうして提案されたルールが「休日は次の休日に備えよ」です。休日は次の休日に備えよという言葉に、2人の考えが集約されました。
安斎さんは、大事なのは終わらないことだと補足します。日曜日が終わる感覚である「サザエさん症候群」や、旅行の帰り道で娘さんが不機嫌になることを例に、余暇や物語が閉じていく感覚を挙げました。
そこで安斎さんの家では、旅行が終わったら次の旅行を決めているそうです。終わりをネガティブにしないためであり、次があると楽しみになるからだと言います。
旅行を直前に決めるより、絶対前もって決めてた方が楽しいから、うちそうしてます。
格闘技でも、勝敗がついた瞬間に次の対戦が始まると安斎さんは言います。物語が常に続いていく点で、すでに世界に存在するルールかもしれないと東南さんは受け止めました。
だからこそ、それを自分で実践していこうというのが今回のルールの趣旨です。東南さんは、聴いている人にも休日に備えて、いい休日を過ごしてほしいと呼びかけて回を終えました。
まとめ
フランス旅行の楽しみ方や娘さんのダンス観戦を手がかりに、いい休日の正体をたどった回です。回復や教養だけでなく、快楽を深めることや自分の物語を進めることに目を向け、最後は「休日は次の休日に備えよ」というルールにたどり着きました。
- いい休日の正解はわからないという悩みから会議がスタートした
- 楽しい時間より「楽しみにしている時間」が幸福度を高めるという持論が語られた
- 予想外の体験は惰性から脱するきっかけになり、娘さんのダンスへの憧れを生んだ
- 休日の機能は回復・教養だけでなく、快楽を深めることや自分の物語を進めることにも及ぶ
- 提案されたルールは「休日は次の休日に備えよ」で、旅行や趣味の予定を先に決めておく実践につながる


