東大院を中退してYouTuberになるまで
聞き手の川口さんは、荒井さんが東京大学の大学院を中退してYouTuberの道を選んだ理由を尋ねます。
荒井さんによれば、最初は自分から始めたわけではなく、YouTubeをやると言っていた友達を手伝ったのがきっかけだったといいます。
一緒にYouTube始めた友達がいたんですけど、そいつが全部演者とかやるって言ってて、それだったら自分がやった方が良さそうだなと思って手伝ったっていうのが最初。
最初のチャンネルは「東大に反抗する」というコンセプトでした。荒井さんは、学歴を人の尺度とすることへの疑問を、周りにも共有したかったと話します。
学歴ってそんなに重要?とか、人を決める尺度においてそんなに有能?みたいなことを考えた上で、そこに気づいてほしかった。
東大生という肩書きを生かして、いかにバカなことをやるかに注力したといいます。頭のいい人間が徹底的にバカなことをやる、という設計です。
東大生なんで、僕頭いいんで、頭使ってミックスジュース作りますって言って、頭でスイカを割ってミックスジュース作る。
その後、精神的に続けられなくなり、相方が始める教育系YouTubeに合流します。荒井さんは「YouTubeを選んだ」というより、流れの中で必然的にたどり着いたと振り返ります。
なぜ今、教養が求められるのか
三浦さんが「今の時代に教養が求められる理由」を尋ねると、荒井さんはその問いの前提自体に疑問を投げかけます。
なんで今教養が求められてるのかっていう、その疑問自体に僕はちょっと疑問を持っちゃって。そんな求められてるんですかね。
荒井さんにとって教養は、危機感からではなく、人生を豊かにするためのものです。ボロい家を「バブル遺産では」と見立てられれば、旅行も街歩きも楽しくなる、と例を挙げます。
ビジネスパーソンにおすすめの領域を問われると、荒井さんは「自分が興味あるところ」が一番だと答えます。気になったことを調べるのが最も面白いからです。
三浦さんは、自分の立場を縦軸と横軸で捉える見方を示します。経営者としての縦軸ならマネジメントの歴史を、広告の仕事という横軸なら広告の起源を知ると、判断に迷わなくなるといいます。
なんでこんな仕事やりたくないってならずに、もうこうするしかないねんや、人類はっていうのがわかったら、やる気が出る。
歴史の失敗を知ると、経営が楽になる
話は、教養が経営にどう役立つかへ進みます。マーケティングの歴史はまだ100年ほどですが、その中で大半の失敗はすでに繰り返されている、と三浦さんは指摘します。
荒井さん自身も、本に書かれた失敗をそのまま踏んだ経験を明かします。
友達と会社をやっちゃいけないってどの本にも書いてあったんですけど、友達と会社をやっちゃって。株は半々で持ってはいけないってどの本にも書いてあったんですけど、半々で持っちゃって、もう本に書いてある通りになりましたね。
一方で、歴史を知ることには救いもあります。孫さんやホリエモン、柳井さんといった経営者の自伝を読み、挫折や裏切りが誰にでも起きると知ると勇気づけられるといいます。
自分も歴史の一部っていうか、すっげえ変なこと起こってるわけじゃないんだみたいな。みんなやってんならっていう日本人精神で乗り切れたりもします。
教養や歴史を学ぶことは、人生を楽しくするだけでなく、失敗を少し楽にし、自分の判断の指針にもなる、というのが二人の共通した見方です。
「その手があったか」と唸った歴史上のアイデア
The Solutionsは「その手があったか」というアイデアを紹介する番組です。川口さんが、荒井さんが唸った歴史上の戦略を尋ねます。
1つ目に挙がったのが、フランスのアンリ4世です。宗教対立による戦争を収めるため、自分の信仰を改宗して争いを鎮めた王のエピソードです。
宗教を捨てるって、その手があるんだっていう。宗教ってもっとその人の根幹に根ざしてるもので、それを変えて現実を取ったって、おーみたいな。
三浦さんは、当時の宗教が生き方や共同体のあり方まで決めるものだったからこそ、改宗という選択がいかに大きな意思決定だったかを補足します。
2つ目は、明治期の使節団としてアメリカに渡り、そのまま帰国せず大富豪になった長沢カナエさん。「カリフォルニアのブドウ王」と呼ばれた人物です。
そのままアメリカで大富豪になったっていうやばい奴です。やっぱ日本にとって良くない歴史だから全然有名になってない。
三浦さんは、この3つの例に共通するのは「既存の価値観からの逸脱」だとまとめます。東大が最高か、宗教が政治より上か、国のお金なら帰国すべきか——そうした前提を疑うことがアイデアだ、というわけです。
100万人に伝わる「わからせ方」の技術
川口さんが、勉強したことをわかりやすく翻訳するために意識していることを尋ねます。荒井さんの答えは明快でした。
固有名詞は聞き手にとって未知の言葉であり、それが積み重なると人は話を聞かなくなる、と荒井さんは考えます。アンリ4世の説明でも、カトリックやプロテスタント、ユグノーといった語を一切使わずに話し切りました。
ユグノーって言ったら、この中で10パーぐらいしかわからなくなって。またカトリックとかプロテスタントとかぶつけてったら1人になって、誰もわからないつまらない授業が出来上がるんですよ。
大事なのは固有名詞を暗記させることではなく、構造だけを理解してもらうこと。試験がないのだから、面白いと思ってもらうために名前はいらない、という発想です。
もう1つの工夫が、指示語を使わないこと。「それ」「これ」を避け、直前に出た語でない限りは、すべて具体的な言葉に戻すといいます。
現代文の問題で、それとは何か答えなさいって問題があるじゃないですか。ってことは、それがわかる人とわからない人がいるってことなんで。読みにくくするための言葉でしかない。
わかりやすさやシンプルさを、荒井さんは徹底的にデザインし、意識的に設計しているのだと語ります。
企画は「伸びてる動画」から逆算する
川口さんが、動画の企画やアイデアの思考プロセスを尋ねると、荒井さんは「夢もへったくれもない話」と前置きしつつ本音を語ります。
伸びてる動画があるかどうかをまず調べます。
行きたい場所が先にある場合も、まずそのテーマで伸びている動画を探すといいます。それを二番煎じではなく「ブラッシュアップ」として作ることで、採算の合う動画になる、という考え方です。
三浦さんは、これを「自分の興味関心」と「YouTubeエコノミーの中で何が人気か」の組み合わせだと整理します。参考にしたものより必ずいいものにするのが前提です。
荒井さんは、旅系の動画などはその場でWikipediaを見て話しているものも多く、そこが伸びているなら、より詳しく解説すればさらに伸びると語ります。
同時に、YouTuberは競争相手というより仲間だとも話します。何が伸びるかを少しずつ試し合い、当たったら皆で作っていく構図だといいます。
可処分時間の奪い合いだみたいに言われるんですけど、全然そんなことない。まだまだ全然いける。YouTubeの動画ってまだ足りてないんで。
次に狙うのは「移民の国」アメリカと海外
今注目している場所を問われると、荒井さんは迷わずアメリカを挙げます。国として極端で、どう切り取っても面白い動画になるからです。
その面白さの核にあるのが「移民の国」という性質です。禁酒法のような極端な政策とその結果まで、試行錯誤の答えが歴史に残っていると語ります。
移民だけでできてった国なんで、みんなの試行錯誤がもう半端じゃない。ここで揉めんねやとか、それは分かるけど極端すぎるみたいなやつが無限に出てくる。
三浦さんは、移民の受け入れが前提になる時代に、一通りの失敗を先にやったアメリカを学べば、日本で今後起きるトラブルも想像できると応じます。
話はフランスにも及びます。荒井さんは、フランスに行くなら地下鉄を見てほしいと勧めます。改札を飛び越える人が当たり前にいる光景です。
もう本当に全員飛び越えてますから、改札。全然先進国じゃないじゃんって。抜き打ちでチケット持ってるか確認しに来るおばさんに、みんな来ないと賭けて乗ってるんですよ。
さらに、朝の地下鉄は肌の黒い人が多く、昼になるにつれ白い人が増えるという光景も挙げます。荒井さんはこれを肌の色ではなく、移民と経済格差の現実として捉えます。
大人の教養TVは現在充電期間中で、今後は海外での動画制作に力を入れる方針です。荒井さんは、週一投稿を守り続けてインスタントになっていた反省を語ります。
100万人っていう区切りと、社長が僕に変わった区切りもあって、動画が2ヶ月出ないけど、その間ちゃんと蓄えていっぱい外国に行くっていうスキームに切り替えた。
安定した視聴者基盤があるからこそ挑戦できる、と三浦さん。荒井さんも、待っていてくれる声に安心し、勇気を出して体制を変えたと話します。
まとめ
ドントテルミー荒井さんの話は、「教養=現実の積み重ね」という一貫した哲学に貫かれていました。既存の価値観を疑うことがアイデアであり、伝え方は固有名詞を捨てて構造だけを残すこと。企画は伸びている動画から逆算し、次は移民の国という現実を海外で撮りに行く——徹底したわかりやすさの設計が100万人の背景にありました。
- 教養は危機感からではなく、人生を豊かにし、判断を楽にするために使う
- アンリ4世も長沢カナエさんも、共通するのは「既存の価値観からの逸脱」
- 伝わる解説の核心は、固有名詞と指示語を捨てて構造だけを残すこと
- 企画は「伸びてる動画」から逆算し、二番煎じではなくブラッシュアップとして作る
- 移民の国アメリカやフランスは、日本の未来を先取りした「現実」として学べる





