「当館はAgodaと契約しておりません」の張り紙は何を意味するのか
旅行サイトのAgodaを使わないでほしいと、温泉旅館が注意喚起を出しています。観光庁の改善要請から1年半近く経つものの、トラブルはなかなか解決していないとCEOセオさんは紹介します。
よくある事例は、旅先で旅館に着いたら予約が取れていなかったというものです。宿には「当館はAgodaと契約しておりません」という張り紙があり、一方で客のスマホには予約完了と支払い済みの記録が残っています。
最初にね、その「申し訳ありません、確保できてないんです」というふうに謝んなきゃいけないのは旅館になりますから。
宿の側からすると、契約していないのに自分たちの部屋が売られている状態です。CEOセオさんは、誰が何をどういう形で売っているのかという旅行のビジネスモデルに原因があるとみて、構造と対策を深掘りしていきます。
SNSで広がった被害、国内サイトでは起きないトラブル
2026年10月上旬には、Agodaで予約した人が宿の「契約してません」という張り紙をSNSに投稿し、話題が広がりました。チェックインコードや玄関の暗証番号が届かないという事例もあったといいます。
2026年9月には山形県の温泉旅館が、Agodaなどの海外サイトは使わないでほしいと呼びかけています。直接契約していない部屋がかなりの高値で売られ、人数や食事の有無など宿の設定と大きく違う内容で販売されていたためです。
実際に楽天トラベルとかじゃらんみたいな国内のサイトではそういうことは起きてないんだよということも言ってます。
CEOセオさんの見立てでは、山形の旅館の呼びかけは「公式サイトから予約してほしい」という意味ではありません。海外サイトの流通が煩雑になってミスが起きていることへの注意喚起だと読んでいます。
2025年3月には観光庁がAgoda日本法人に業務改善を要請しました。行政処分ではないため内容は非公表です。Agoda側もAIの導入や直接契約への切り替えなど改善を進めているようですが、東横インは名指しで海外予約サイトを使わないよう呼びかけ、転売で客に不便をかけていると語っています。
星野リゾートはなぜAgodaと良い関係を築けたのか
星野リゾートも同様の問題を指摘していましたが、Agodaと包括的なパートナーシップを結んだことで、むしろ良い関係を築けていると語られています。直接つながることで、予約のトラフィックがミスなく流れているといいます。
CEOセオさんは、トラブルの相手はAgoda全体ではなく、一部の業者になるのかもしれないと補足しています。
仲介業者が重なると、なぜ予約がズレるのか
正規の流れであれば、宿から旅行サイトが直接仕入れて客に販売するので、在庫も連携していてシンプルです。ところが旅行サイトには、間に複数の業者が入るケースがあるとCEOセオさんは説明します。
たとえば宿が提携先の旅行会社に部屋の枠を提供し、旅行会社は飛行機やツアーと抱き合わせて販売します。その枠をさらに別の卸が仕入れ、最終的にAgodaが売るという流れです。
宿
提携先の旅行会社に部屋の枠を提供する
旅行会社
飛行機やツアーと抱き合わせて販売する
卸
旅行会社の枠をさらに仕入れる
Agoda
卸から仕入れた枠を客に売る
仲介業者が多すぎると、その枠に対する精度が非常に下がっていて、結局正しい予約情報が伝わらず、ミスブッキングを行っちゃってるということですね。
仲介が重なると、いくらで売ったのかもわからなくなります。海外向けなら円安もあり、もっと高く売ってもいいという動きも出てきます。
音楽業界にはチケット不正転売禁止法 ── 2019年施行の法律で、興行チケットを定価を超える価格で業として転売することなどを禁じていますがありますが、旅行にはそうした仕組みがあまりないとCEOセオさんは指摘します。転売が平気でできるうえに在庫も確保できていなければ、ほぼ詐欺のような状態になってしまうといいます。
Agodaは、直接契約の宿だけでなく卸から仕入れた枠もまとめて並べ、大量の在庫を持つ見せ方で客を集めています。卸経由の枠は価格も安く見せやすく、それがAgodaの価値になっている一方、予約が取れなければ本末転倒です。
損をする人と儲ける人が違うという問題
予約トラブルが起きたときの負担は、結局客と宿に集まります。決済も終わっているので、中間業者にはほとんど負担が残りません。
AgodaはAgodaで、日本では第一種旅行業 ── 国内・海外の募集型企画旅行の企画・実施まで行える、旅行業法上で最も業務範囲の広い登録区分ですの登録をしているため、旅行業法に従う責任があります。客が代金を払っている相手はAgodaなので、宿が無理に部屋を用意したとしても、予約が履行できなかったことへの債務不履行の責任はAgodaにあると観光庁も話しているといいます。
外国人宿泊者4人に1人の時代に、トラブルは増え続けるのか
日本の宿泊市場では、外国人の宿泊が大きく増えています。CEOセオさんは、Agoda経由のトラブルも右肩上がりに増えていくだろうとみています。
前年比では9.4%増で、延べ宿泊のおよそ4人に1人が外国人という状況です。外国人が楽天トラベルやじゃらんを使いこなすとは考えにくく、英語対応や決済の問題もあるため、どうしてもAgodaのような海外サービスを使うことになるとCEOセオさんは話します。
こういった問題は非常に大きな、まあ日本としてもね、問題になりますよね。
Booking Holdingsの好調な決算とトラブルの裏側
Agodaの親会社であるBooking Holdingsは、2025年12月期の売上高が4.2兆円、営業利益が1.39兆円で、営業利益率は32.8%に達します。取扱高は約30兆円にのぼります。
Booking Holdingsの売上の内訳を見ると、宿と直接契約して代金を自社で受け取るマーチャント売上が2.8兆円で前年比25%増です。一方、代金を受け取らず仲介だけをするエージェンシー売上は1.26兆円で、前年比6.5%減となっています。
宿と直接契約し代金を自社で受け取る。2.8兆円、前年比25%増
代金を受け取らず仲介のみ。1.26兆円、前年比6.5%減
CEOセオさんは、仲介を広げること自体にリスクがあり、Agodaとしても減らしているのかもしれないと読みます。宿泊数は年間12億泊で前年比8%増と、コロナ明けから旅行業態は大きく伸びています。
CMガンガン流してやってるわけですから、その前にちゃんと対策しろよというのが、まあ一般の消費者の意見かなと思います。
直接契約できない中小旅館が被害を受ける構造
星野リゾートは、Agoda経由の月間取扱高が2026年5月時点で1億2000万円に達し、毎月最高を更新しているそうです。張り紙まで出されるような相手でも、直接包括的に契約できれば有力な集客経路になるといえます。
ただしCEOセオさんは、星野リゾートには外国人が泊まりたがるブランドがあるから包括契約が成り立つと見ています。そうでない宿とは連絡も取れず、ほぼ相手にされないだろうといいます。
結局被害に遭って損失を受けるのは中小の旅館ということになりますよね。
中小旅館は直接契約が難しいうえ、高値で売られた結果、外国人客から値段に見合わないと言われるかもしれません。満室なのに客が来てしまい、断らなければならない場面も起こりえます。
予約が取れていなかった客の不満は宿に向かいがちです。旅行会社はあくまで仲介しただけで、宿の問題だろうというイメージがあるからですが、実際にはそうとも言えない状況が起きているとCEOセオさんは指摘します。
旅館側の在庫管理は甘くないか
世間では、Agodaが悪い、海外企業に役所が甘すぎるという論調が目立ちます。CEOセオさんは、よくよく見ると旅館側の管理にも問題があるのではないかと、逆の視点を示します。
当然どこにいくら卸してどうなのかってあるので、これ単純にその先の管理問題もあるんじゃないかなというふうにちょっと思っていて。
旅館にはアナログな管理のところが多くあります。部屋が埋まったのにAgodaのようなデジタル側へ申告できていなかった、といった調整のズレが起きやすいというのがCEOセオさんの見立てです。
部屋が埋まれば自動的に在庫数を変えられる
埋まった情報の申告が漏れ、ミスが生まれやすい
同じことは飲食店でも起きているといいます。AI電話予約のようなサービスで予約が取れていないトラブルも、空席の管理がアナログなまま、テクノロジーが窓口に入っていることが原因だとCEOセオさんは見ています。
結論は、旅館側もDXするしかない
CEOセオさんの結論は、直接契約に加えて、旅館側もテクノロジーを入れるしかないというものです。客はデジタルで予約してくるのが現状で、電話予約の人は減っているため、在庫管理もデジタルに変えなければトラブルはなくならないと考えています。
直接取引ならミスは少ないものの、卸や旅行会社に枠を展開する限り、デジタルで在庫を管理する仕組みを作らないと難しいといいます。まず台帳をDX化し、部屋が埋まっているかどうかも管理する必要があります。
そうしたサービスを、リクルートのような会社が出してもいいのではないかとCEOセオさんは話します。リクルートは決済のAirレジ ── リクルートが提供するタブレット・スマホ向けのPOSレジアプリ。会計や売上管理を無料で始められますなどでデジタル化を進め、オーダーのミスもなくしてきたからです。
こういった、そのお店側のDX、AXというのが非常に重要なんじゃないかなというふうに並行して思いました。
まとめ
Agoda経由で宿に泊まれないトラブルは、仲介業者が重なる旅行流通と、旅館のアナログな在庫管理がデジタルの予約窓口とかみ合わないことから生まれています。CEOセオさんは、直接契約とともに旅館側のDXが解決の鍵になると語りました。
- 卸や旅行会社を何層も経由した枠がAgodaで売られ、予約情報や価格の精度が落ちている
- トラブルの負担は客と宿に集まり、中間業者にはほとんど残らない
- 星野リゾートのように包括契約できる宿もあるが、中小旅館は被害を受けやすい
- 外国人宿泊が4人に1人を占める中、旅館の台帳や在庫管理のデジタル化が欠かせない




