スケルトンクルースタジオ(Skeleton Crew Studio)は何をする会社?
今回のひびもとは、ひげもとさんがゲストに石川武志さんを迎えたインタビュー回です。石川さんは、ひげもとさんのもう一つの番組『ゲームすっきゃねん』にも以前ゲストで出演しています。
冒頭では、ひげもとさんが社名を噛んでしまい、石川さんがわざと「スクルトゥンクルートゥトゥディオ」と返す掛け合いから始まります。関西人同士らしい、ゆるいノリのスタートです。
スクルトゥンクルートゥトゥディオの石川です笑
石川さんによると、スケルトンクルースタジオ(Skeleton Crew Studio)はゲーム開発をベースにしつつ、ゲームに関わるさまざまな取り組みをしている会社です。リスナーに一番なじみがあるのは、京都のインディーゲームイベントBitSummit ── 京都で毎年開かれる、日本最大級のインディーゲームの祭典。国内外の開発者が出展し、各種アワードも行われますの運営メンバーとして関わっていることだといいます。
インディーゲームっていうのを、まだ誰も「インディーゲームって何ですか?」っていう時代からやってます。
石川さんは、インディーゲームという言葉が知られていなかった頃から、開発も含めて普及に関わってきたそうです。今はイシイジロウさんの『シブヤ・スクランブルストーリーズ』のコーディネートやプロデュースも担い、クラウドファンディングに合わせた渋谷でのイベント運営も手伝っているといいます。
学生200人が即席チームで挑むGame Jamとは?
石川さんがBitSummitの中で特に力を入れているのが、学生向けのGame Jamです。学生を200人ほど集め、有志でチームを組んで約3か月でゲームを作り、BitSummitに展示して表彰する取り組みです。
審査にはゲーム業界の人たちを、ほぼボランティアで招いているそうです。石川さんは、BitSummitの忙しい時期に時間を割いてもらうことを「ごめんなさい」って言いながらお願いしていると話します。この取り組みは2019年から続いています。
Game Jamから生まれた成功例として、石川さんはフェイストラッキングで遊ぶゲーム『YaoyoroZoo(やおよろずー)』を挙げます。前年のBitSummitで、NHKの番組『神ゲー創造主エボリューション』の審査を受け、3次選考へのシード権を得たチームの作品です。
えっと、彼らはGame Jamで即席でできたチームで。そこから1年間みんな頑張って作っていくっていうね。
『YaoyoroZoo(やおよろずー)』のチームは、今年2月の神ゲー創造主エボリューションのアワードで、サイゲームスの賞と、サイバーコネクトツーの松山さんの賞を受けています。さらに今年のBitSummit本編にも一般出展し、イノベーティブアウトローアワードも受賞したそうです。
ひげもとさんは番組の密着取材も見ていたそうで、話はBitSummitやTGSの「Selected Indie 80」に選ばれたシロさんへのゲリラインタビューにも広がりました。石川さんのあまりの忙しさに、ひげもとさんが「石川さん、いったい体何個あんねん笑」とつっこむと、石川さんは「1.2個やね笑」と答えて笑いを誘っていました。
渋谷の404 Not Foundはどんな場所?
石川さんのもう一つの肩書きが、渋谷の404 Not Found ── JR渋谷駅新南口直結のSHIBUYA SAKURA STAGE内にある複合スペース。ゲームを中心にイベントや配信などを行っていますのプロデューサーであり「超内会長」です。運営母体は一般社団法人渋谷あそびば制作委員会で、東急不動産やスケルトンクルースタジオ(Skeleton Crew Studio)代表の村上さんなど、複数の会社が理事として名を連ねています。
石川さんも理事に入っています。理事のなかでも現場に近く、アルバイトやリーダー格のスタッフと一緒に日々の運営にあたっているそうです。
404 Not Foundについて、石川さんは「一番わかりやすく言えばイベントスペースやね」と説明します。そのうえで、中にある機能を次のように挙げていました。
- LEDビジョンと、テーブルや椅子を自由に置けるスペース
- コーヒーやお茶が飲めるカフェカウンター
- ボードゲームやクリエイターのグッズを置くストア
- ポッドキャストやYouTube配信ができるスタジオ
- レンタルキッチンのようなスペース
場所は渋谷駅新南口を出てすぐのSHIBUYA SAKURA STAGEの4階で、オープンしてから2年目になります。ゲームにとくに力を入れていて、最近は吉田修平さんと「吉Pラジオ」も始めたといいます。
吉Pラジオはインディークリエイターを招く番組で、404 Not Foundのスタジオで収録し、終わったあとは交流会もできるそうです。東京ゲームショウ最終日に予定していた回は台風で延期になりましたが、OIGS2026(オーサカインディーゲームサミット)で、吉田さんが応援する『シュレディンガーズコール』の製作陣と収録する予定だと紹介されました。
カラフル納豆の人は、なぜ東北を応援したのか?
ひげもとさんと石川さんの付き合いは、2011年頃からで15年ほどになります。ひげもとさんが最初に知った石川さんは、いろいろな色や種類の豆を使った「カラフル納豆」をプロデュースしている人でした。
よく聞けば、石川さんは当時デザインやイラストレーションの専門学校で先生や学科長を務め、自分でも絵を描いてギャラリーで個展を開く作家でもありました。今でも家に絵の具があり、気が向いたらキャンバスを買って描いているそうです。
もうずっと何してる人なんやろうって思ってました笑
そんなに複雑じゃないんですけどね、自分の中では。
大阪・福島の「福島バル」に合わせて、納豆で「福島ネバル」というイベントをやったこともあるそうです。納豆づくりのプロジェクト自体は、東日本大震災の1年前に友達と「面白そう」だけで始めたもので、大きなビジョンはなかったといいます。
旧Twitterで、毎日7時10分に「おはよう」、夜7時10分に「お腹空いたな」とつぶやくと、納豆好きの人たちがつながっていったそうです。当時はUstreamで配信もしていて、2011年3月11日にも放送する予定でした。
震災当日は放送を見送りましたが、何かできないかと考えたときに、活動のテーマだった「710(なっとう)」という数字が浮かびます。大阪から直線距離で710キロ先を調べると、ちょうど宮城県の本吉海岸あたりだったそうです。
さらに、停電で納豆づくりの最初の工程、豆を水で戻すタンクの中で豆が傷み、関東のスーパーから納豆が消えていました。そこで「納豆でネバーギブアップ」と、見て楽しく食べておいしいカラフル納豆で応援しようと考え、三重の小杉食品の社長が協力して商品化したそうです。
面白そうで始動
震災の1年前、友達と納豆づくりのプロジェクトを始める
震災と停電
停電で豆を戻す工程が止まり、関東で納豆が品薄に
710キロ先を思う
大阪から直線710キロが宮城県本吉海岸あたりと気づく
商品化
三重の食品会社の協力で、食卓に笑顔を戻すカラフル納豆が誕生
石川さんは、自分が何をしている人かわかりにくい理由を、この経緯そのものにあると話します。起きたことに対して自分にできることを探すから、アウトプットの形がその都度変わるのだそうです。
ゲームジャムで「見ず知らずの人と作る」理由
石川さんは、ゲームジャムの狙いも同じ考え方から説明します。学生は学校の中では同じ学校の仲間とものづくりをしますが、社会に出るといろいろな環境の人と協調して作らなければなりません。
入学したてのころは違う性質の人同士でも、学校ではある時期を過ぎると、似た「匂い」の人同士ばかりで固まってしまいがちです。だからこそ強制的に見ず知らずの人たちとゲームを一緒に作ることで、いろいろなスキルがつくのではないか、という仮説のもとで続けているそうです。
自分が学校の先生の時に感じてたことを、それに共感してもらってる先生たちとやってるみたいな感じですね。
もちろん、チーム作りはきれいにいくことばかりではありません。「俺はこれがいいと思う」という真っ当な揉め方もあれば、粗相から喧嘩になることもあり、結果的に三者面談をすることもあったいいます。
ひげもとさんは、30代、40代で経験するのとは違い、若いうちにそうした衝突を経験しておくのは大事だと受け止めていました。ひげもとさんは今でも石川さんを「石川先生」と呼んでいて、石川さん本人も「もはやあだ名やね笑」と笑います。
海外のゲームイベントで石川さんは何をしている?
石川さんは、海外のゲームイベントにもよく出かけています。BitSummitが海外イベントとパートナーを組むと、相手の国のイベントにBitSummitのブースができるため、受賞タイトルを持っていく「いろいろ面倒を見る人」として行くのだそうです。
行くときはたいてい1人か2人だそうです。ひげもとさんが忙しさを心配すると、石川さんは自分ではあまり忙しいと思わないと答えます。
あんまり自分は忙しいと思わへんから。
そうですね。友達になったりして、仲良くなる人も増えていくので楽しいけどね。
今年すでに行った海外イベントは台湾だけとのことですが、中国のWePlayなどもこの先に控えているそうです。ほかにもベルリンのGameGround、韓国の釜山インディーコネクトフェスなど、BitSummitの関わる海外イベントの名前が次々に出てきました。
東京ゲームショウの直前には、京都市の依頼でイギリス・ウェールズからの使節団を京都国際マンガミュージアムで迎えています。石川さんはQ-GamesやROOM6、パブリッシャーや開発会社に声をかけて名刺交換の場をつくり、使節団は「また来ます」と喜んでいたそうです。
東京ゲームショウの時期には、404 Not Foundでドイツから来た人たちとのパーティーがあったり、イギリス大使館で企業が集まったりと、関連パーティーがたくさん開かれるといいます。ひげもとさんは、国が変わっても一緒に飲んで意気投合することの大切さに共感していました。
東京ゲームショウ2026は「仕事で見え方が変わる」?
ここからが本題の東京ゲームショウ2026の話です。石川さんはビジネスデーに2日、一般日に1日参加し、ほぼ仕事だったそうです。最初の感想は、正直に「会場がデカいから足が疲れた笑」でした。
今回はお仕事関係の人と一緒に全体を見て回り、人を紹介して顔つなぎをしたといいます。これまであまり使っていなかったビジネス・ミーティングエリアを打ち合わせに使ったのも新しい体験だったそうです。
インディーのプレゼンとアワードが行われるSense of Wonder Night ── 東京ゲームショウで行われる、斬新なアイデアのゲームを開発者がプレゼンするイベント。インディー作品の登竜門として知られていますは、いつもタイミングが合わず見られないそうですが、今回は最後に滑り込みで見られたといいます。Selected Indie 80のコーナーも見て回ったそうです。
やっぱその時々の自分の仕事に応じて見え方が変化するなと思いましたね。
石川さんの言う「見え方の変化」とは、アテンドするお客さんによって紹介するブースが変わる、ということです。業界の人なので知っているタイトルも多いものの、ちょうど任天堂ダイレクトで発表された目玉タイトルや、レベルファイブの『妖怪ウォッチ』『レイトン教授』の新作などの話題も出ました。
なかでも率直に驚いたのが、パルワールドのブースの大きさだそうです。コナミやレベルファイブと並ぶなかで、サイズが肩を並べるどころではなく、登壇した4Gamerブースの目の前で巨大なLEDの映像が流れていたといいます。
ここまで急成長してるっていうのはすごいなって単純に思いました。
4Gamerのステージで報告したメイドインジャパンXRプロジェクト
石川さんは東京ゲームショウ2日目に、ゲームメディア4Gamerのステージに登壇し、生放送で司会を務めました。ステージの内容は、ゲームジャムとも関わる「Made in Japan XR Project」の報告です。
このプロジェクトは、BitSummitで大規模なVRゲームエリア「XR横丁」を手がけるG-SMASHと一緒に進めているもので、クリエイター支援基金の助成も受けられています。背景について、石川さんはVRの市場を数字で説明します。
VRってこう、日本では、すごい年によってこう、ガーって流行ったり、ちょっと落ち着いたり、浮き沈みがあるんすよ。
VRは波の激しい産業で、日本ではヘッドマウントディスプレイを持つ人は多くありません。一方で、世界ではゲーム機として5000万台ほど出ていて、PlayStation 5の8000万台に近い規模だといいます。
北米では250ドルほどでスーパーマーケットでも買え、Switchの450ドルより手ごろです。さらにアメリカでは子どもが1人で外に遊びに行くのが危ないとされるため、家でVRを着けて友達と集まる文化があり、鬼ごっこのような『Gorilla Tag』が流行っているそうです。
プロジェクトの狙いは、日本から複数のタイトルを同時にMetaのストアへ投げ込むことです。Steamでは月に2000本、年に2万本ほどのゲームがリリースされて埋もれやすいため、まだ見つかりやすいMetaのストアで、アメリカの10代に向けて一つのテーマのもと何十本も同時に出す「ストアジャック」を目指しているといいます。
Steamは飽和
月2000本、年2万本が出て、新作が埋もれやすい
Metaストアに着目
北米の10代に普及し、まだ見つかりやすい
同時に投入
一つのテーマで何十本ものタイトルを一斉に出す
プロジェクトでは、ハッカソン ── 「ハック」と「マラソン」を組み合わせた言葉。短い期間にチームで集中して、ソフトウェアやゲームを作り上げるイベントですや合宿も行いました。テーマは「ソーセージ」で、ソーセージを切る、投げるなど、ソーセージを題材にしたVRゲームを作ったそうです。
石川さんにとって、ハッカソンもゲームジャムもやっていることはほぼ同じです。メンターをつけてディスカッションし、レクチャーをして、プレゼンも何度もしてもらったといいます。ステージでは、石川さん自らスライドを作り、出演者に話を振りながら「わちゃわちゃ」進めたそうです。
ゲームすっきゃねんでTGSに行くには?OIGSのオフ会へ
台風で中止になった東京ゲームショウ最終日について、石川さんはもともと家で過ごす予定で、一般日の初日を見て帰ってきていたそうです。ひげもとさんは今年は行けなかったことを悔しがり、いつかゲームすっきゃねんとしてメディアの立場で行きたいと話します。
石川さんは、東京ゲームショウにはインフルエンサー向けの受付枠があり、あまり並ばずに入れるかもしれないと教えてくれました。受付で「俺ら『ゲームすっきゃねん』やで!知らんのかい!」と言ってみる、という悪ノリで盛り上がり、「出禁になるので気をつけて笑」とオチがつきます。
話題は10月3日から開かれる大阪インディーゲームサミット(OIGS)へ移ります。石川さんは初日の3日に、香川で{要確認: 讃岐GameNという活動をしているワタナベさんと会う予定だそうです。
ひげもとさんは、ゲーム系ポッドキャストがOIGSを盛り上げる企画に参加していて、3日の夕方6時からグランフロント大阪北館地下のビールの博物館で60〜70人規模のオフ会を開く予定だと話します。石川さんも、ファンとして紛れ込むかもしれないと応じていました。
ポッドキャストは、どっちかって言えば、量より質って感じなので、リスナーさんとの絆というか、関係性が近かったりするのが魅力的ですね。
TGSで一番うれしかった『顔UFO』と『FINDING POLKA』の受賞
石川さんが東京ゲームショウで一番うれしかったことは、仲の良い宮澤さんの受賞でした。ミヤザワさんは、変わったコントローラーのゲーム「make.ctrl.Japan」の活動をしていて、BitSummitにも『顔UFO』を出展していた方々です。
『顔UFO』はSelected Indie 80でゴールド賞を取り、Sense of Wonder Nightでもゲームデザイン賞やオーディエンスのグランプリなど、4つほどの賞を受けたそうです。石川さんは宮澤さんを「天才」と呼び、Switchのジャイロなどのセンサーを使った不思議なゲームを出し続ける人だと紹介します。
めちゃくちゃおもしろいアイデアのゲームを毎回つくられてるんすよね。
『顔UFO』は、変顔や笑顔など顔の動きをトラッキングしてUFOを動かし、4人でレースをするゲームです。笑うと上昇する仕組みのため、失敗して笑うと壁にぶつかり、さらに笑ってしまう、という連鎖が起きます。
失敗する
UFOの操作をしくじる
笑ってしまう
みんな思わず笑う
上昇する
笑顔に反応してUFOが上がる
壁に激突
また失敗して、さらに笑いが続く
先にゴールした人は、お邪魔キャラになってまだゴールしていない人を邪魔できるそうです。リリースについて、石川さんは「する予定があるはず」「乞うご期待」と話していました。
もう一つのうれしいニュースが、パルコゲームズがパブリッシングする『Finding Polka』のSelected Indieプラチナ賞、つまりグランプリ級の受賞です。BitSummitでもビジュアルセレクションを受け、開発者のクマザワさんがステージで男泣きした場面を、石川さんは「いい物語」だと振り返ります。
あれ?(Finding Polkaは)たぶん自分のこの経験、この記憶みたいなものとかね、思い出みたいなものがそこにふんだんに盛り込まれてる素敵なゲームですね。
ひげもとさんは、BitSummitでクマザワさんの手描きのスケッチブックを見て、全部を手描きからゲームに落とし込む作業に驚いたそうです。Steam版はすでに発売中で、Switch版の発売も決まっていて、ひげもとさんはSwitchで遊べる日を楽しみにしています。
運営者の目で見たTGS。入場待ちや5000円の荷物預けの裏側
石川さんは東京ゲームショウの感想をnoteにも書いていて、前半は運営者目線の内容になっています。Xでは入場に時間がかかって怒る人や、キャリーケースを預けるのに5000円かかるのは高い、という声も目立っていたそうです。
自分もイベントを運営をする側としては、身につまされる思いを持ちつつ。
石川さんは、こうした対応にはきっと理由があるのだろうと想像しながら書いたといいます。適当にすれば時間は短縮できるかもしれませんが、事故が起きれば必ず叩かれるため、そうならないように運営しているはずだという見方です。
だって何十…25万人とか来るんですからね。
みんな優しく温かい目で見てって思ってnoteに書きました。
ひげもとさんは、来場者と運営者の両方の気持ちがわかる人はなかなかいないと感心していました。次のBitSummitは2027年5月の開催予定で、最近ゆっくり話し始めている段階だそうです。
夏場は暑かったため、ひげもとさんは5月開催が最高だったと振り返ります。石川さんも同意し、関東と関西を行き来するなかで今年は関東が涼しく、関西に戻って「なんやねん」と思うほど暑かったと笑っていました。
ゲームとアートの壁を壊すと何が起こる?
今後の予定として、石川さんは11月21日に京都市と文化祭のようなイベントを開くと話します。Xでの長文の告知に、ひげもとさんは「めっちゃ情報があってびっくりした」と驚いていました。
12月には大阪で、FM802と一緒に進めるアートイベントUNKNOWN ASIAもあります。こちらはほぼ個人での活動で、専門学校の先生時代から立ち上げに関わってきたそうです。
石川さんの原点は、30年ほど前に出展した日本ビジュアルアート展です。コミック、CG、写真、油絵、イラストレーションなど平面ならなんでもありの場で、まったく違うジャンルの人と出会えたことがとてもうれしかったといいます。
ところが最近、浜松町で東京ゲームダンジョンが開かれた同じ建物の上の階で、アートイベントのインディペンデント東京が開かれていました。石川さんは両方に知り合いがいるのに、近い表現分野なのに行き来が少ないことを不思議に感じたそうです。
インディーゲームのイベント。石川さんはBitSummitのような場になぞらえる
同じ建物の上の階で開かれたアートイベント。UNKNOWN ASIAのような場になぞらえる
アルゴリズムがバグるというか。繋がらないはずのところを、くっつけたら絶対おもしろいやろ、と。
今のネットはアルゴリズムの設計上、自分の好きなもの以外の情報が入ってきにくい、と石川さんは指摘します。そこをハックして異質なものを組み合わせていくことで、世の中での過ごし方がもっと楽しくなるのではないか、というのが今の思いだそうです。
その実践として、404 Not Foundと、京都のホテルアンテルームでアート展を開く人たちと一緒に、クリエイター支援の基金を受けたゲームとアートのプロジェクトを進めています。来月末には、フランス・アルルの芸術祭に展覧会を持っていく予定です。
展示では、工芸作家とゲームクリエイターが組んだ作品や、『8番出口』などゲームアート的な作品を、「Animal Dance」というコンセプトでキュレーションするそうです。
404 Not Foundでは今、ゲーム内の風景を撮影するインゲームフォトグラファー ── ゲームのカメラモードなどを使って、ゲームの中の景色を写真作品として撮影する人。作品を展示するアーティストもいますのパスカル・グレコさんの展覧会も開かれています。『デス・ストランディング』や『アサシン クリード』『サイバーパンク』などの景色を大きく出力して飾り、トークショーも行ったそうです。
AIを使いこなす前に必要なことは?
これだけの仕事をこなすうえで、石川さんはChatGPTなどのAIにだいぶ助けられていると話します。AIセミナーを頼まれそうな気配もあるそうです。
ただ、石川さんはAIについて「AI以前の話が多い」と感じています。AIに力を発揮してもらうには、仕事を分解し、順序立てて進める必要があるからです。
多分頼むべきタイミングに頼むべき情報が揃ってない段階で。頼んでも多分いい成果が出てこないでしょ。
つまり、AIが何かしてくれるのではなく、自分がどの業務をどのタイミングでどう整理するかを理解していないと、いい答えは出てこないという考えです。さらに、どのくらいの頼み方でどのくらいの答えが返ってくるかは、たくさん使ってみないとわからないともいいます。
一方で、ゲーム業界ではAIがセンシティブな話題でもあります。ですか、石川さんはAIで3Dモデルを作るサービスの人たちと話し、とても便利だとも感じたそうです。
東京ゲームショウでは、ビジネスデーの2日間だけ「AIソリューションコーナー」があり、一般日にはそのスペースが物販の待機列になっていたといいます。石川さんは、BtoBだけを想定していたことに加え、AIでここまでできるのかと一般の人に誤解を与えないためではないかと見ていました。
また、Claude CodeやCodexのようなツールで、コーディングができない人でもある程度ゲームを作れるようになったとも話されています。ただし最後のコアな部分は経験のある人でないと難しく、両方の組み合わせになるだろう、という見立てです。
イベントは短距離走、常設スペースは終わらないマラソン
終盤では、ひげもとさんが今回の流れを振り返ります。石川さんは、自分のやっていることは全部普通のことだと言いつつ、実はそこまで深く考えていないと明かします。めちゃくちゃ考えたら、大変すぎて「やめとこう」となるはずだから、というのが理由です。
渋谷の404 Not Foundには、不特定多数の人が毎日たくさん訪れます。普通に考えれば怖さもある場所ですが、石川さんは、学校もずっと運営してきた場所だったと気づき、運営には慣れていたのだと話しています。
それでも、イベントと常設スペースでは使う頭や筋肉がまったく違うそうです。石川さんはその違いを走り方にたとえています。
準備は長いが、始まれば終わる短距離走。一気に搬入し、一気に搬出するお祭りに近い
終わりのないマラソン。責任感を持ちながら、考える瞬間と力を抜く瞬間の両方が必要
ひげもとさんが体を気づかうと、石川さんは睡眠はしっかりとっていて、寝るのが好きだと答えます。猫好きの話もはさみながら、最後は2人らしいゆるい空気に戻っていきます。
最後に石川さんは、404 Not Foundのスタジオは空いていれば使えると話し、ゲームすっきゃねんの東京での収録やオフ会の場としても誘っていました。ひげもとさんは、事前に空きを確認したうえでぜひやりたいと喜び、「フラグは立てときます」と応じています。
ひげもとさんは、クリエイターを応援し、アーティストとゲームクリエイターをつないで何かを爆発させようとする石川さんを「稀有な存在」と表現します。自分でも絵を描くクリエイターだからこそ、話すたびに刺激をもらえるのだそうです。
◆石川武志さん関連のリンク
・4Gamer Live Stage Day2の配信アーカイブ
・404 Not Found | SHIBUYA SAKURA STAGE
まとめ
石川武志さんの仕事は、BitSummitのゲームジャム、404 Not Found、海外イベント、東京ゲームショウでの登壇、UNKNOWN ASIAと、一見ばらばらです。でも根っこにあるのは、起きたことに対して自分にできることを探し、違う人同士が出会える場をつくるという一本の線でした。気になったイベントやスペースがあれば、ぜひ足を運んでみてくださいね。
- 石川さんの活動がわかりにくいのは、その都度「自分にできること」を探すため、アウトプットの形が変わるから
- BitSummit Game Jamは、見ず知らずの学生同士で作る経験を通して、社会で必要な協調を学ぶ場になっている
- 東京ゲームショウ2026では、Made in Japan XR Projectの報告に登壇し、またSENSE OF WONDER NIGHT 2026では知人の『顔UFO』などの受賞を喜んだ
- ゲームとアートのように近いのに交わらない分野を組み合わせ、アルゴリズムの外の出会いをつくりたいと考えている
- AIを活かすには、仕事を分解して整理する「AI以前」の力が欠かせないと石川さんは話している





