酪農家がスーパーでつい見てしまうもの
今回の質問は、TikTokのプロペラファクトリーさんから。「スーパーで乳製品コーナーを通った時、つい見てしまうところはありますか?職業病があれば教えてください」という内容です。
スーパーなどで乳製品のコーナーを通った時に、ついつい見てしまうところってありますか?職業病みたいなものがあれば教えてください。
川上さんがまず見てしまうのは、やっぱり価格だそうです。「なんでこれ高いの?なんでこれ安いの?」という素朴な疑問から始まります。
そして次に見るのが、商品の裏側にある表示表。どこが作っているのか、どこで加工しているのか、原材料は何か。乳製品やお菓子は特にじっくり見てしまうそうです。
島根県から遠いところなのに、なんでこの値段で売れるのよ?っていうのもあったりしますよ。
気になった商品は、会計後に車や家でネット検索。面白い企業だと思えば株までチェックすることもあるといいます。
価格は「答え」ではなく「疑問の入り口」
なぜ価格が気になるのか。牧場では、牛に餌を与えて搾乳し、牛乳を冷却してメーカーに渡すまでのコストが見えています。
一方でスーパーに並ぶまでには、集乳、工場での殺菌、容器詰め、検査、配送といった工程が加わります。それでもこの価格で成り立つのか、と気になるわけです。
ただし、川上さんはここで注意も添えます。店頭価格だけを見て「農家が安く売っている」「メーカーが儲けている」とまでは分からない、と。
物流の規模や契約、販売量、プライベートブランド、特売など、価格を左右する要素はたくさんあります。だから価格は答えではなく、疑問の入り口として見る感覚だそうです。
「国産」と「国内製造」は同じじゃない
価格に「あれ?」と思ったら、商品をひっくり返して裏の表示を見ます。製造者や販売者、原材料には面白い情報が詰まっています。
表側にはブランドの物語が書いてありますけど、裏側には商品の構造が書いてある、そんな感覚があります。
ここで川上さんが大事だと話すのが、「国産」と「国内製造」の違いです。似ているようで意味が違います。
消費者庁によると、国内で作られた加工食品では、重量割合が最も高い原材料について原料原産地が表示されます。その原材料が生鮮食品なら「国産」「アメリカ産」などと書かれます。
一方、その原材料自体が加工食品だった場合は「国内製造」「フランス製造」といった表示になります。ここが重要なポイントです。
「国内製造」は、その加工原料が日本国内で作られたという意味であって、さらに元の農産物まで日本産という意味ではありません。この点は消費者庁も注意喚起しています。
原材料が生鮮食品で、その産地が日本のとき。原料そのものが日本産です。
原材料が加工食品で、その加工が国内で行われたとき。元の農産物まで日本産とは限りません。
だから「国産かな?」と思ったときは、表示を一段深く見てみるのがいいそうです。
アイスの「種類別」と乳脂肪分の話
川上さんが乳製品でよく見るのが、アイスクリームのコーナー。裏の表示を見ながら、毎週の新商品をチェックしているそうです。
アイスの裏には「種類別」という欄があり、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓などと書かれています。これは単なるカテゴリーではなく、乳成分の基準で決まっています。
乳固形分15%以上、うち乳脂肪分8%以上のもの。
乳固形分10%以上、うち乳脂肪分3%以上のもの。
乳固形分3%以上のもの。
上のどれにも当てはまらない、氷の菓子。
同じアイスに見えても、中身の設計はかなり違うというわけです。
そして川上さんが面白いと話すのが乳脂肪分。酪農家は普段から「今月の乳脂肪は何パーセント」「暑くなって落ちてきた」と、牛乳の成分をずっと見ています。
牛の餌や暑熱対策、健康状態。牧場では乳成分が経営にも牛の状態を見る指標にも関わってきます。だからアイスの裏に乳脂肪分が書いてあると、つい見てしまうそうです。
ただし、乳脂肪分が高いほどいい、という話ではありません。ここも大事なところです。
アイスクリームが上でラクトアイスが下、という優劣ではなく、食品としての設計の違い。植物油脂を使った商品も、果物を主体にした氷菓もあります。
価格、食感、香り、溶け方、カロリー、コンセプト。メーカーはいろんな要素を組み合わせて商品を作っています。日本アイスクリーム協会も、乳脂肪分だけが美味しさの基準ではないと説明しています。
スーパーで見てほしい3つの表示
川上さんは、食品表示は「良い商品・悪い商品」を判定するものではなく、自分が何を買っているのかを理解するためのものだと話します。
そのうえで、次にスーパーへ行ったら3つだけ見てみてほしい、と提案しています。
これだけでも、乳製品売り場がちょっと違って見えてきます。
食品表示は正しい商品を選ぶための答えだと思われがちですが、むしろ問いを作るための入り口なんじゃないかなと思います。
なぜこの値段なのか、なぜ乳成分が高いのか、なぜ遠くで作られた商品が島根まで運ばれてこの価格なのか。調べていくと、酪農だけでなく食品加工、物流、貿易、小売り、マーケティングまで全部つながってきます。
スーパーカップの話とアイスの値上がり
この時期はやっぱりアイスクリームを見てしまう、と川上さん。8月から9月になると、秋の果物を使ったジェラートなどの新商品が出てきて、それだけでも楽しいそうです。
川上さんが挙げたのがスーパーカップ。分類としてはラクトアイスで、植物油脂もいろいろ使われているそうですが、それでも美味しいと絶賛します。
一方で、値段の変化にも触れます。高校生の頃は80円や90円台で安く売られていたアイスが、今では120円、130円ほどになっていると。
アイスクリームも高くなってる。でも酪農家の手取りは変わってないからね。そこは知ってほしい。
まとめ
今回は「酪農家がスーパーの乳製品売り場でつい見てしまうもの」という質問から、食品表示の読み方まで広がる回でした。値段や裏の表示は、答えではなく問いを作る入り口。次のお買い物でちょっと見てみてくださいね。
- 酪農家の川上さんは、価格・裏の表示・原材料・乳成分をつい見てしまう職業病があります。
- 「国産」は原料が日本産、「国内製造」は加工が国内という意味で、元の農産物の産地までは示しません。
- アイスの「種類別」は乳固形分・乳脂肪分の基準で決まり、優劣ではなく設計の違いです。
- 次のお買い物では、種類別・原材料・原産地/製造者の3つを見てみると発見があります。
- 牛乳一本の裏側からは、加工・物流・貿易・小売りまでつながる食料システムが見えてきます。
