リスナーからの「耳が痛い」質問
この日の配信は、匿名リスナーから届いた質問に答えるお便りコーナー。秋は牛乳や酪農のイベントが増える季節ということで、そのイベントへの率直な疑問が寄せられました。
牛乳のイベントが行きづらいところで、やたらと無料で何でも食べさせるイベントが多いのはどういうつもりですか。物販のところに牛乳や乳製品がないのも何とかしてほしい。
この質問に、川上さんはまず正直な気持ちを口にします。
本当に耳が痛いというか、本当に申し訳ないというか。そうなんですよね。
そのうえで、なぜこうなっているのかをAIと一緒に整理して、少しでも理解してもらいたいと話を進めていきます。
なぜ「遠くて無料」なのか
最初のテーマは、イベントが行きづらい場所で開かれ、しかも無料で配られる理由です。まずは場所の問題から。
牛や牧場は基本的に郊外にあります。牧場祭りや牛乳の日イベントは、街中ではなく郊外や産地で開かれがち。さらに牛乳を扱うには冷蔵設備や広いスペースが必要なので、どうしてもアクセスしづらい場所になりやすいんですね。
では、なぜ無料なのか。牛乳は日常品なので、広告だけでは印象が残りにくいもの。だから昔から、無料で飲んでもらうことがPRの定番だったといいます。
加えて、牛乳消費拡大運動には国や業界の補助金が入っていて、そのお金で無料提供しているケースが多いのだそう。牛乳消費拡大運動牛乳・乳製品の消費を増やすために業界団体や行政が行う啓発・PR活動。試飲や無料配布などが行われる。
つまり、売り上げを作るイベントではなく、飲んでもらって牛乳の良さを知ってもらうイベントという位置づけ。だから無料が基本になっているというわけです。
物販に牛乳がないのはなぜ?
次のテーマは、イベントの物販に牛乳や乳製品が並ばない理由です。川上さんは3つの壁を挙げました。
要冷蔵の壁
牛乳やヨーグルトは常温で食べられず、販売には保冷車や大型冷蔵庫が必要でコストも人手もかかる
販売許可・仕入れの壁
主催がJAや団体だと直接販売の免許や流通ルートを持たず、無料配布で終わりがちになる
目的の壁
多くの牛乳イベントはPR目的で、その場で買ってもらう設計になっていない
結局、その場で買ってもらう仕組みがそもそも用意されていないため、「近所のスーパーで買ってね」で終わってしまうんですね。
体験を「生活」に持ち帰るには
では、どう改善すればいいのか。川上さんが提案するのは、無料で配って終わりにせず、少しでも販売につなげることです。
- 100円で飲み比べセット
- 200円で地元チーズが食べられる
- 500円で牛乳プリンのお土産
こうした形なら、消費者は「牛乳はお金を払う価値がある」と感じ、イベントの後も購買行動につながりやすいといいます。
予算があるから危機感がない
ここから川上さんの本音が出てきます。無料配布や動きづらい動線、酪農家でなくてもいい仕事をさせられるイベントには、会議でも意見を言ってきたそう。
ただ、酪農や牛乳を愛する人たちの集まりの中でこうした意見を言うと、煙たがられてしまうこともあると打ち明けます。
すぐね、目の上のたんこぶというか、いなくなってほしいって言われる。なんでそんなこと言うんですかって言われたこともあります。
川上さんが根本的な原因と見ているのが、予算の存在です。国や行政の補助金、酪農家の拠出金からイベント予算が出るため、回収しようという発想が生まれにくいというのです。
危機感がないのと、予算を回収しようっていう思考がないので、イベントを盛り上げようとかそういうの関係ないんですよ。
どれだけ消費が伸びたか、どれだけ牛乳を飲み続けてくれる人が増えたかを問う必要がない。予算がすでにあるからこそ、イベントは「多く来てくれました、チャンチャン」で終わってしまうと指摘します。
無料配布に潜むもう一つの問題
去年も参加したという東京・豊洲でのミルクフェスは、今年も開催予定。動線の悪さがどう改善されているかが見どころだと話します。
そして川上さんは、無料配布そのものへの疑問を重ねます。牛乳を無料で配ると、スーパーで買ってもらえず、「無料でもらってラッキー」で終わってしまうというのです。
代わりに提案するのが、牛乳を買う動線ができる商品との組み合わせです。ミルメークやフルーチェ、牛乳寒天、コーンフレークなど、牛乳を用意しないと楽しめないものなら、購入につながるという発想ですね。
さらに、夏場の食中毒リスクにも触れます。登下校や出勤時に配られた牛乳を冷やさず持ち歩く危険があるのに、その自覚が薄いまま昔ながらのやり方が続いていることを気にかけています。
まとめ
牛乳イベントが遠くて無料ばかりになるのは、牧場の立地や要冷蔵の壁、そしてPR目的という設計と補助金の仕組みが背景にありました。川上さんは、体験を生活に持ち帰る仕組みづくりの必要性を、酪農家の本音とともに語りました。
- 牧場は郊外にあり、冷蔵設備も必要なため、イベントは行きづらい場所になりがち
- 牛乳イベントは売上ではなくPRが目的で、補助金を使った無料提供が定番になっている
- 物販に牛乳がないのは、要冷蔵・販売許可・目的の3つの壁があるため
- 無料で終わらせず、少額でも販売につなげれば購買行動に結びつきやすい
- 予算が先にあることで回収や成果を問う発想が生まれにくいのが根本的な課題

