価値観は「脳の構造×生育環境」で決まるのか
話は、他人の軸を気にするかどうかから始まります。ホストは「気になる時もあれば、関係ないと思う時もある」と、自分の二面性を認めます。
そういう二面性というか、二面性ではなくて、まあ結局グラデーションじゃないですか。だからまあそんなもんでしょう。
続けてホストは、日本人は欧米の人より気にしいだという、ステレオタイプな見方を持ち出します。それを島国民族のDNAではないかと表現しました。
いなけんさんはこれに対し、DNAよりも環境のほうが強いと反論します。血が入っていても、日本で育てば日本人的に思考するハーフのタレントがいることを例に挙げました。
いなけんさんは、人の性格や価値観の傾向を掛け算に分解すると、脳の構造と生育環境の2つになると説明します。土台となる脳の構造脳の構造 ── ここでは神経のつながり方や状態を指す。いなけんさんは、その形が個人によって違うことを前提に話しているは個人ごとに違い、そこに家庭環境や使う言語といった前提が加わって人を形づくる、という整理です。
友達にバトンを託す、いなけんさんの「利他に近い利己」
話題は、いなけんさんが目指す役割分担へと移ります。自分が先に起業して経営の経験を積み、構造化できるようになったら、それを友達に教えたいと語ります。
いろんな世界を見たいんで、僕は。だから一人でも多く自分の友達から、より本質っぽいものが見えてる人材に早くなってほしいなって思うんですよね。
いなけんさんは、これは自分が幸せになるためにやっていることだと言い切ります。経験を積んでいる時点で成功であり、たとえ失敗しても誰かのためになる、という考え方です。
仮にどんだけ失敗しても、それって絶対誰かのためになると思ってるから。それで次の人にバトンを託すことができたら、そいつが多分作ってくれる。
ホストが「宣教師みたいな」と表現すると、いなけんさんは科学もそういうものだと応じます。自分たちも誰かから繋がれたバトンの上に立っている、という感覚です。
僕らも絶対誰かから繋いだバトンの上に立ってると思うんで、なんとかそれに気づいたんやったら報いる必要があるもん。
ここでいなけんさんは、自分の立ち位置を「利他のグラデーションが近いところまで来ている」と表現します。ただし、利他は利己を超えられないとも考えています。
「利他に依存する人は頭が悪い」という主張の中身
ホストが利他主義と利己主義のエネルギーの違いを問うと、いなけんさんは論点が少し違うと切り返します。他人を喜ばせることをモチベーションにする人でも、結局は自分のフィルターでしか世界を見ていない、という指摘です。
いなけんさんによれば、他人が喜んでいるという判断も、その反応が嘘かもしれないのに自分が信じているだけです。だから、他人の幸せを媒介にしていても、実際には他人の幸せを定義できていない、と論を進めます。
この価値観の合う・合わないを、いなけんさんは短時間で判定できると言います。ワード一つの使い方から、議論が楽しめる相手かどうかがわかるという感覚です。
多分僕30秒ぐらい話したら、僕と価値観合うかどうかって大体グラデーションで判定できると思います。点数つけれると思う。
価値観の点数と、仲の良さは別ものという話
ホストが「じゃあ俺は何点」と尋ねると、いなけんさんは70点ほどと答えます。100を概念上のマックスとしたときの、価値観のマッチ度合いです。
あー70点ぐらいかな。でもだいぶ高いですよ。
いなけんさんによれば、90点台に乗る人はこれまで会った中で3人ほどです。頻繁に会う大学時代の友達で88や89、一緒に会うもう一人は65くらい、と具体的な数字を挙げます。
ここで重要なのは、価値観の点数と友達としての仲の良さは別だ、という整理です。ホストの確認に対し、いなけんさんも「全然違う」と繰り返します。
いなけんさんは、やることによって一緒にいたい相手は変わると説明します。美術館に行ってワクワクが加速するなら、いつもの地元の友達3人ではなく、芸術への理解度が高い相手とチームを組んだほうが楽しい、という考え方です。
これは趣味だけでなく会社のプロジェクトも同じだと言います。多様な人材が欲しいのは、役割分担を極めたいからです。
「キャリアってしょうもない」──起業を止めた人への違和感
話は、いなけんさんが感じるキャリアという概念への違和感に移ります。起業したいという相談者に「とりあえず今辞めといたほうがいい」と言われたことへの反応です。
なんかしょうもないんですよね、キャリアってマジで。クソしょうもない。
相手のロジックは「できることが少ないから」「世間を知らないから」というものでした。いなけんさんはこれを否定ではなく前提の違いだとしつつ、そもそも「できる」の定義に違和感があると指摘します。
いなけんさんによれば、「できる状態」とは過去の実績にすぎません。それは未来にできることを保証しないうえ、誰かの会社に入るために判定される、という前提に基づいている、と分解します。
「世間を知らない」への反論と、構造で捉える力
もう一つの違和感は「あまり知らないんだから」という部分です。いなけんさんは、領域に詳しくなくても抽象化すれば構造はわかる、と主張します。
いなけんさんは、戦略が見える人は具体を知らなくても大局を描けると考えています。過去にいた(会社の)マーケの部長を例に、詳細を知らなくても「これってこういうことでしょ」と見抜けるタイプだと語ります。
いなけんさん自身は、資本主義や仏教、マーケティングといった構造の話は得意だが、キャリアという狭い各論の知識はないと認めます。
世の中の構造、社会みたいなもの、それは政治とか資本主義とか、そういう文脈の解像度は多分僕めっちゃ高いんですよね。
だからこそ、相手とは前提、つまり生き方の前提が合わないと結論づけます。向き合ってくれたことには感謝しつつ、言われた道とは違う道を行くという判断です。
幸せに近づく最短手段は「選択肢を潰していく」こと
ホストが「頭ではわかっていても踏み出せない人が多い」と話を広げると、いなけんさんは最近見つけた最短手段を語り始めます。それが「選択肢を潰していくこと」です。
どうすれば"ありたい状態"に最短で近づけるのか
いなけんさんは、自分が何を持っていて何を持っていないかを確かめ、持っているもので一番幸せな状態を見つけていくことを勧めます。それが達成できれば「俺ってこうありたかったんや」という状態になり、借金があっても幸せだと考えられる、という論です。
いなけんさんは、コンビニの店員のほうがスーパーより幸福度が高いという研究結果に触れ、それを選択肢の狭さによるものだと解釈します。選択肢が絞られるほど、幸せな状態に近づきやすい、という見立てです。
いなけんさんにとって、人の目やお金は手段にすぎず、リスクではありません。自分のワクワクという感情を潰して確かめていくことが、ありたい状態への道だと語ります。
仏教の「捨てる」と、会社を辞めた自分の選択
ホストは、いなけんさんの話が仏教の考え方に近いと感じます。物を捨てることが執着を手放すことにつながる、という発想です。
ホストは、明日生きる日銭もない貧しい人が寄付をする例を挙げます。外から見れば疑問に思える行為が、幸せにリンクしているという話が、今の議論に近いと感じたのです。
いなけんさん自身も、独立を決める前は少し執着し、怖さを感じていたと明かします。そのとき相談した相手にかけられた言葉が、決断の後押しになりました。
(相談した人に)「いや、捨てないと新しいもの入ってこないよ」って。あ、確かになと思って。
いなけんさんは、何を捨てればワクワクできるかを考え、会社での8時間を捨てることを選びました。捨てなければ新しいものが入らず、選択肢も潰れないからです。
クローゼットのキャパが変わらない限りは、新しい服買ったらなんか捨てないと物があふれるしね。
礼儀作法は手段、究極のコミュニケーションは対話
話は、いなけんさんが学生起業を良いと考える理由へと展開します。社会を知らなくても、礼儀作法のような「手段」は後からでも扱えるという考え方です。
いなけんさんによれば、礼儀作法やビジネスマナーは、コミュニケーションを誰もが再現できるようにまとめた儀式です。全員が的確に相手を読めるわけではないから、再現性のある形にされている、と分析します。
いなけんさんは、本当にすごい経営者は相手の服装から人を判断しないだろうと語ります。場や前提という文脈があれば判断するが、人そのものを見るときは、十分に喋らなければ判断できないという見方です。
ホストも、ルールがないと何をすればいいかが解釈任せになると補足します。ビジネスマナーは、まず全員が平均点を出せるようにするための仕組みだと整理し、それを超えて崩したほうが心地よい瞬間もある、と応じました。
大企業への違和感と、この3年間が宝物だった理由
いなけんさんは、大きめの企業が苦手な理由がわかったと話します。抱える人が多く、事業が大きいぶん、再現性を持たせるために礼儀作法も人間関係もかっちりしている、という点です。
いなけんさんは、それが本質からずれると感じ、本能的にベンチャーのほうがいいと思っていたと振り返ります。
一方で、今の会社に入ってよかったと語ります。いなけんさんはこれを弁証法弁証法 ── 対立するものをぶつけ合い、より高い次元の答えへ進む考え方。ここでは、直感と違う選択をしたことで新しい気づきが得られた、という意味で使われているだと表現しました。
いなけんさんは、就職活動では直感的には広告代理店に行きたかったと明かします。会った人に惹かれたからですが、あえて自分がしたことのない仕切りに挑もうと、今の会社を選びました。
じゃあどうなるかわからんかったから、ワクワクしたから。超越してあれだわ、感情に従ってたわ、そういえば。
その選択のおかげで、自分がどこを負っていないのか、何をやりたいのかがより見えたと言います。だからこの3年間は宝物だと締めくくりました。
だからこの3年間って僕にとって宝物。めっちゃよかった、本当に。感謝しかないですもん。
まとめ
今回の対話は、価値観がどう作られ、どうすれば"ありたい状態"に近づけるかを掘り下げるものでした。行き着いたのは、選択肢を潰し、捨てることで新しいものを入れていくという考え方です。
- 人の価値観の傾向は、脳の構造と生育環境の掛け算で形づくられると整理された
- いなけんさんは、利他に依存する人を「他人を媒介にしても他人の幸せは定義できていない」と批判した
- 「できる」は過去の実績にすぎず、キャリアという概念への違和感が語られた
- 幸せへの最短手段は、選択肢を潰しワクワクを一つずつ確かめて"ありたい状態"に達すること
- 捨てなければ新しいものは入らないという言葉が、会社の8時間を手放す決断を後押しした

