湯気と水蒸気は別物
餃子を蒸すとき、せいろから白いものがわーっと立ち上がります。多くの人はこれを水蒸気だと思いがちですが、実は違うと小野寺さんは指摘します。
水蒸気は水が気体になったもので、無色透明です。あの白いものは、水蒸気が空気で冷やされて細かい水滴に戻った「湯気」であり、正体は液体だといいます。
水蒸気が空気で冷やされて細かい水滴に戻ったものが湯気なんです。つまり、あの湯気ってのは液体なんです。空に浮かぶ雲と同じ状態なんですね。
わかりやすい例がやかんです。注ぎ口のすぐ近くにある透明な部分が水蒸気で、そこから少し離れて白くもくもく見えるのが湯気だと説明します。
そして今回の主役は、見えない水蒸気の方だといいます。フライパンの中で餃子をおいしくしているのは、湯気ではなく見えない水蒸気だと話します。
気化熱と凝縮熱という2つの現象
水蒸気を理解するために、小野寺さんは「凝縮熱」という言葉を挙げます。まず、その反対の現象である「気化熱」から説明します。
汗をかいて風に当たると涼しくなり、注射前のアルコール消毒でひんやりします。これは水が蒸発するときに周りから熱を奪うためで、この現象が気化熱です。
では、どれくらいのエネルギーが必要なのか。水1グラムを1度温める熱が1カロリーで、0度から100度まで上げるには100カロリー必要だといいます。
ところが、100度のお湯1グラムを水蒸気にするには、それとは別に約539カロリーが必要だと話します。水蒸気にするには、100度まで上げる何倍ものエネルギーがいるということです。
そのエネルギーは、水蒸気の中に閉じ込められています。水蒸気が冷たいものに触れて水に戻るとき、抱えていた熱をその冷たい方にドンと渡します。これが凝縮熱です。
水が蒸発して水蒸気になるとき、周りから熱を奪う。汗が乾くと涼しいのはこのため
水蒸気が水に戻るとき、抱えていた熱を触れた相手に渡す。餃子を温めるのはこの熱
蒸し餃子は「サウナ」ではない理由
餃子を蒸すことをサウナと表現することがありますが、それは違うと小野寺さんは言います。サウナは基本的に乾燥していて、湿度がとても低いためです。
同じ100度でも、乾いた空気と水蒸気はまったくの別物だといいます。100度のサウナには人が入れますが、100度の水蒸気の中に入れば一瞬で全身大火傷すると話します。
その違いが凝縮熱の有無です。100度の水蒸気には大きなエネルギーが溜まっており、触れた瞬間に人体へエネルギーがぶつかって火傷してしまうのだといいます。
水蒸気が餃子を焼き上げる仕組み
この熱を運ぶ役割こそ、焼き餃子と蒸し餃子で使われている原理です。餃子を並べてお湯をかけ、蓋をするのは、蒸気を逃がさないためだといいます。
フライパンの底でお湯が沸騰し、水蒸気がフライパンの中でパンパンに膨らみます。小野寺さんはこれを水蒸気の満員電車状態と表現します。
そうすると水蒸気はできるだけ冷たいところを探して逃げていこうとするんで。そこでいうと、あ、冷たい餃子がいるぞと。そこに熱を届けに行くと。
フライパンの熱が直接当たるのは餃子の底面だけです。水に浸っていない上のひだの部分や横の部分に熱を届けるのが、水蒸気の役割だといいます。
同じように、蓋にも熱が渡って水に戻ります。だから蓋はよく温まり、水滴がつきます。蒸気を逃がせば餃子に届かなくなるため、蓋を閉じて凝縮熱を餃子に与え続けることが大切だと話します。
茹でる・蒸す・焼くの違い
では水餃子はどう違うのか。茹でる場合、餃子はお湯の中に浸り、熱を全体から均一に吸い込みます。ただし凝縮熱がドンと来るわけではないため、ゆっくり熱が伝わります。
同時に、皮のでんぷんがお湯に少しずつ溶け出します。餃子を茹でた後のお湯が白く濁るのはこのためだといいます。
一方、蒸し餃子で触れるのは水蒸気だけです。皮の成分が溶け出さないため、薄い皮でも旨味を閉じ込めたまま蒸し上げられると話します。
焼き餃子は底の一部が茹でに近いものの、基本的にはほぼ蒸し餃子だといいます。水が残る間はフライパンの温度が上がりにくく、水がなくなった瞬間に温度がぐんと上がります。
水って沸騰温度100度なので、100度になるまで水がいます。100度になるまでエネルギーがずっとフライパンから水に移ってるだけなんで、フライパンの温度上がらないんです。
水がなくなると温度が上がり、160度や180度でメイラード反応が起き、焼き色がつきます。水が残る間は焼き色が絶対につかないため、皮が蒸し上がった頃に水がなくなるのが理想だといいます。
最初に入れる水の量が焼き上がりを決める
そのため、餃子を焼くときに最初に入れるお湯の量が重要になります。小野寺さんの目安は、フライパンの高さで水面1〜2ミリほどだといいます。
強めの中火で5分ほど茹で蒸しをすると、ちょうど水がなくなってパリッと焼き目ができます。最初のお湯の量で焼き上がりが変わるということです。
小野寺式の焼き方で最初にフライパンで水を沸騰させるのは、火力やフライパンの熱伝導率、蓄熱力を測るためだといいます。
沸騰の火力が強ければ水を少し多めに、弱ければ高さ1ミリほどに減らすと、きれいに焼き色がつきます。水の量は餃子を焼くうえで重要な変数だと話します。
今週のお取り寄せと水そのものの話
今週のお取り寄せ餃子は、黒田越中餃子研究所が作る黒部名水ポーク餃子です。金曜と土曜だけ営業する生餃子専門店の一品だといいます。
黒部名水ポークは、北アルプスの雪解け水が流れる富山県黒部市のブランド豚肉です。黒部川の伏流水で育ち、旨味成分が多く、柔らかくジューシーだと紹介します。
最後に小野寺さんは、餃子を焼くときに使う水そのものにも触れます。詳しく調査したわけではないと前置きしつつ、いい水を使うだけで味が変わると話します。
贅沢に水道水じゃなくてミネラルウォーターとか使ってもね、味が変わったりしますので、もし機会があったら試してみてください。
まとめ
焼き餃子をおいしくしているのは、目に見える湯気ではなく、見えない水蒸気の凝縮熱でした。水がなくなるタイミングと最初のお湯の量が、もちもちとパリッの仕上がりを左右します。
- 白いのは湯気で液体、無色透明の水蒸気が主役
- 水蒸気が水に戻るときに放つ凝縮熱が餃子を蒸し上げる
- 焼き餃子は底以外がほぼ蒸し餃子で、薄い皮でも旨味を閉じ込められる
- 水が残る間は温度が上がらず、なくなった瞬間に焼き色がつく
- 最初に入れるお湯は高さ1〜2ミリが目安で、水の量が焼き上がりを決める

