AIの時代に、メモの「軸」はどこに置く?
この回のテーマは、最近の情報管理、つまりメモをどう取り、どうまとめ、どう使っているかです。五藤晴菜さんは、iPhoneやiPadだけで生活しているわけではないので、端末を限らずに全部含めて話すと切り出します。
五藤晴菜さんによると、メモのツールにはその時々のブームがある一方で、時代ごとに「これを軸にしている」というメインツールもあるといいます。そして最近の軸を決めているのは、生成AIの存在だと話します。
最近の話でいうと、やっぱり生成AIというか、AIツールがすっごくやっぱり便利になってて、そのAIツールでうまく噛ませるというか、読み込めるようなツールだったりとか、そのデータの持ち方っていうのをするようになってきた。
AIが読み込みやすい形で情報を持つことが、今のツール選びの基準になっているということです。では具体的に何を使っているのかと聞かれた五藤隆介さんの答えは、意外なものでした。
えっとね、(メモの)大半がGitHubのissueです。
なぜGitHubのissueがAIと相性がいいのか
GitHub ── ソフトウェアのコードを保存・共有するためのWebサービス。開発者どうしの共同作業の場として広く使われていますと聞くと難しそうに感じる人が多いかもしれない、と五藤晴菜さんは前置きします。それでも、今は生成AIとの相性がものすごく良いと話します。
五藤隆介さんは理由の1つ目として、生成AIがプログラムやWebの情報から訓練されている点を挙げます。そのため、AIはGitHubの使い方に非常に詳しいといいます。
GitHubの使い方は世界の誰よりも詳しいレベルで多分簡単に使える。
理由の2つ目はプラグインの豊富さです。ChatGPTやClaudeなどのAIツールには、GitHubと連携する機能が標準的に用意されていて、承認ボタンを押すだけで使えるようになると二人は説明します。
GitHub自体は開発者向けのサービスという印象が強いものの、五藤隆介さんは最近、料理レシピまでGitHubのissueに置くようになったといいます。
生成AIはプログラムとWebから学んでいるため、GitHubの操作を得意としている
ChatGPTやClaudeでは、ボタンを押して承認すればGitHub連携が使える
五藤晴菜さんが試して気づいた「引き継ぎ」の便利さ
五藤晴菜さんは、五藤隆介さんからGitHubのissueの話を1、2ヶ月前に聞き、自分でも試してみたところ案外良かったと話します。
五藤晴菜さんは、Antigravity ── Googleが提供する、AIエージェントと一緒にコードやファイルを扱う開発環境と、ChatGPTの中のCodexやiPhone・iPadのアプリを組み合わせて使っています。2つのAIをまたいで作業するため、作業の引き継ぎ方がずっと課題でした。
DailyNoteなどのMarkdownファイルを作業書にして、指示ややったことを書き込み、どちらのAIからも見られるようにしていた
GitHubのissueに引き継ぎ内容や残りタスクを書いてもらい、作業するときはissueを確認して進めてもらう
五藤晴菜さんのやり方では、パソコンでしかできないローカルの同期作業などをissueに書いておいてもらいます。雑多な思いつきのアイデアも「残しといて」と頼めば、AIがまとめてくれるといいます。
やろうかなって思った時は、プルしてissueを確認みたいなして、データを一応同期はかけてissueを進めてもらうみたいな。
作業を始めるときには、AIのほうから「オープンなissueがこれだけありますが、どこから進めますか」と聞いてくれる形になっているそうです。
人間が見なくていいことは、AIに進めてもらう
五藤隆介さんはさらに一歩進めて、AIに自分からissueを作らせています。DailyNoteとフリーライティング用のノートを1日に1回AIに見直してもらい、そこからissueになりそうなものを登録してもらうといいます。
五藤隆介さんの仕組みでは、AIが作業ログを点検してissueを作ることもあれば、毎日進められるissueをAIが自分で進めることもあります。
かなり人間が見なくていいことを人間が見ないで進められるようにしようとしているつもり。
ルーチンタスクやその日にやったことはObsidian ── Markdownファイルでメモを管理するアプリ。ファイルが手元に残るため、AIからも読み込みやすいのが特徴ですのDailyNoteに書き、ルーチンではないことや「これはやらないといけない」というものはissueに書く、という使い分けです。
| 置き場所 | 書くもの | AIの役割 |
|---|---|---|
| DailyNote | ルーチンタスク、やろうと思っていること、やったこと | 1日1回見直してissue候補を拾う |
| GitHub issue | ルーチン外のこと、やらないといけないこと | 整理し、進められるものを毎日進める |
Obsidianは残り、原稿はChatGPTのスペースへ?
ツールの面では、二人ともObsidianはずっと使っているといいます。ただ五藤隆介さんは、仕事で使っているのは実質DailyNoteくらいだと話します。
原稿ファイルについて聞かれた五藤隆介さんは、今どうやって原稿を書いているのか自分でもわからないと答えます。今はObsidianで書いているものの、ChatGPTのスペースとページに変える可能性が高いそうです。
ChatGPTのスペースは、Proプラン以上で使える機能です。ChatGPT上でプレビュー付きの編集ができる場所で、五藤隆介さんはこれを一言で表します。
あのね、めっちゃ簡単なこと言うとね、ChatGPTのNotion。
ブロックエディターでスラッシュコマンドが使え、範囲を選択して「ここを直して」と指示できる点が特徴だといいます。エディターとAIが合体した環境だからこそ、Notionにたとえたというわけです。
Plusプランでも「見ながら指示」をする工夫
五藤晴菜さんは安いほうのPlusプランなので、ChatGPTのスペースはまだ使えません。それでも、文章を見ながら範囲を選んで指示を出したいという気持ちはあるといいます。
そこで五藤晴菜さんが使っているのが、Obsidianのプラグイン「Cloudian」です。サイドバーやページ下部にチャット欄が出て、仕組みとしてはChatGPTのCLIを使ってやりとりしているそうです。
五藤晴菜さんは、普段はCodexやAntigravityにファイル操作をしてもらい、サイドバーに出るプレビューで範囲を選択してCommand+Lで引用し、「これをこうして」と指示しています。最近はファイルを開けば編集もできるようになったといいます。
ただ、五藤晴菜さんが好きなObsidianの画像埋め込み表示は、ChatGPTやAntigravityでは標準では出ず、ファイル名しか見えません。画像を見ながら編集したいときはObsidianを開き、Cloudianを使ってAIに指示を出すという使い分けです。
メモを「整理しない」という変化
ここで五藤隆介さんは、自分たちは多くの人がしているようなメモ管理をしなくなったのかもしれない、と振り返ります。五藤晴菜さんも、めちゃくちゃ雑になったかもしれないと応じます。
そのメモを整理するということをしなくなったし。あとね、もう忘れてもいいやとかって言っていて。
五藤隆介さんは以前、ジョギング中に何か思いついたらどうするのかと聞かれ、忘れたら仕方がないと答えたそうです。メモが取れなくても「まあいっか」と考えるように変わってきたといいます。
五藤晴菜さんは、AIとのやりとりの量が激増したことも理由に挙げます。どうでもいいことから深く考えることまで、すべてをAIとすごい速さと回数でやりとりするので、自分でも何が何だかわからなくなってくるといいます。
イシューにあるか俺ももう知らない。
育てたいアイデアは「issueにしといて」の一言で
五藤晴菜さんは、残しておきたい、育てていきたいと思ったものは、iPhoneやiPadのChatGPTアプリでのやりとりの中で「issueにしといて」「プロジェクトに追加しといて」と頼むといいます。
何度も繰り返すうちに、ChatGPTはプラグインを呼び出す指示がなくても自動でGitHubプラグインを使うようになったそうです。既存のプロジェクトに入れられれば入れ、なければ新しく作ってくれます。
まあどうせメモ大半は使わんからねっていう、結局のところは。
時間が空いたときに五藤晴菜さんが「今なんかできることある?」と聞けば、AIがissueをチェックして教えてくれます。五藤隆介さんはさらに、AIにissueを整理させ、ときどき人間と対話しながら棚卸しをして、不要なものを閉じたり、わかりにくい説明を書き直させたりもしているといいます。
会話で残す
やりとりの中で「issueにしといて」と頼む
AIが振り分け
既存プロジェクトに入れるか、新しく作る
必要なときに聞く
「今できることある?」でAIが候補を示す
棚卸し
AIと対話して不要なものを閉じ、説明を直す
こうして五藤隆介さんにとってメモは、自分で管理しないものの最たるものになったのかもしれないと語られます。
手書きは「考えるため」に残す
一方で五藤晴菜さんは、手で書いて考えることが単純に好きなので、いろいろな場所に書き散らかしているといいます。
五藤晴菜さんの書き散らかし先は、アナログのノート、iPadのデジタルプランナー、Appleの標準のメモ、無限キャンバスのアプリProDraftなど、本当にまちまちだそうです。AIに渡して管理するメモとは別に、その場で思考を深めるための手書きが残っている形です。
やり方が1ヶ月単位で変わる時代
五藤隆介さんは、情報管理の変化が激しく、1ヶ月後には違うことを言っている気がすると話します。5年前から去年までは、大きな意味ではやり方がほとんど同じだったそうです。
五藤晴菜さんも、移り変わり自体は以前からあったものの、変化の大きさとスパンが今はとても早いと同意します。五藤隆介さんにとっては、2ヶ月ほど続いているissueでさえ長いほうだといいます。
その例として挙がったのが、ChatGPTのProプラン以上で使える常時稼働の秘書的な機能dot/Astraです。日本で実質使えるようになったのは10月1日で、五藤隆介さんは使い方が独特で、3週間でやっと慣れたと話します。
多分一番でかいのは常時動いていて、何かを常に読んできている。
五藤隆介さんによると、この機能はメールが届けば知らせ、カレンダーを見て今日の予定を伝え、GitHubに新しいissueがあれば反応できます。OpenAIは能動的に反応できると説明しているそうです。
正解はない。でも「AIで楽をする」が今の答え
五藤晴菜さんは、新しい機能やツールが次々に出てくる中で、正解の形は人それぞれだとしつつ、自分たちの場合はAIをうまく組み合わせながらいかに楽していくかだと話します。
管理っていう意味では、ものすごく雑に、そのほんと一個の箱の中に全部ザバって入れといて、後で何か必要なものは勝手に探してもらうみたいな雰囲気。
五藤隆介さんは、その感覚とは少し違うと言いながらも、ものすごく大きな意味では同じだと応じます。どこに保存したかさえもう意識していない、という言葉で二人の話は締めくくられます。
まとめ
二人は、AIと対話しながら働くことで、メモを丁寧に分類・管理する習慣を手放しました。GitHubのissueを共通の置き場にし、整理や棚卸しもAIに任せる一方で、手書きは考えるために残しています。
- GitHubのissueはAIが扱いに詳しく連携も簡単なため、複数のAIや端末をまたいだ引き継ぎ先として機能している
- 五藤隆介さんはDailyNoteからAIにissueを拾わせ、人間が見なくていい作業はAIに進めさせている
- メモは整理せず「issueにしといて」と頼むだけにし、必要なときにAIに探してもらう形になった
- 手書きのノートやiPadのメモは、その場で考えを深めるための道具として使い続けている
- 情報管理のやり方は数ヶ月単位で変わっており、今の答えも「AIを組み合わせて楽をする」という暫定的なもの







