エンタメを見ないしぶちょーさんが、なぜAI作品を語るのか
今回のおちつきAIラジオ深掘り回のテーマは「AIで作ったものは人の心を動かすのか」です。しぶちょーさんは2026年のAI映画祭で評価された短編映画やアニメなどを実際に見て、かねりんさんと感想を語り合う回にしました。
きっかけは、しぶちょーさん自身がほとんどエンタメ作品を見ないことです。映画もドラマも一人では見ず、読むのはスマホの空き時間5分ほどで読めるウェブ漫画くらいだといいます。
まとまった時間、1時間とか2時間をまとまって取ることができない、ショートコンテンツしか消費できないっていうですね。
しぶちょーさんは、そのせいで「右脳が腐り始めてるんじゃないか」と冗談めかして心配していました。偏頭痛で定期的に脳のCTを撮っているという脱線もはさみつつ、AIをテーマにすればエンタメにも触れられて「一石二鳥」だと考えたそうです。
意外とやっぱ最近のもの、2026年とかのものでも、AIで作りましたみたいなアニメーションとかドラマとかが割とあったんだよね。
紹介する作品はどれも5分から10分ほどで、基本的に無料で見られるものです。作品の内容に触れるため、ネタバレを避けたい人は先に概要欄のリンクから見てほしいと二人は呼びかけています。
AI作品はなぜ嫌われ、それでも増え続けるのか
作品紹介の前に、しぶちょーさんはエンタメとAIの全体像を整理しました。映像、声、曲、文章のすべてにAIが入り込んでいる一方、「AIで作られた」と聞くと評価が下がることも多く、権利関係もまだあやふやな状態だといいます。
象徴的なのがAI絵師 ── 画像生成AIにプロンプトを入力して絵を作り、作品として発表する人を指す呼び方。手で描く絵師との間で、呼び方や作品の扱いをめぐる議論が続いていますをめぐる問題です。手で絵を描いてきた人から見ると、多くの絵を学習した結果として生成された絵は、さまざまな人の努力をスキップしたものに映ることがあります。
1枚にさ、何時間、何十時間もかけるけど、生成AIでもう数秒で出したものが、自分の描いた絵よりもSNSで評価されてたりすると、やっぱり面白くないよねと。
しぶちょーさんは、厳密には盗作ではなく、もっと抽象化された情報だと補足します。ただ、嫉妬やITリテラシーの差もあって、極端な人同士の対立が目立ち、「わちゃわちゃしてる」状況に見えるそうです。
それでも、AIで作られるコンテンツの量は爆発的に増えています。Spotifyに投稿されていたAI曲が7500万曲ほどあり、スパム曲として削除されたという話もしぶちょーさんは紹介しました。
動画では、小学生の間でイタリアンブレインロット ── 生成AIで作られた、動物と物が合体したような奇妙なキャラクター群のネットミーム。トゥントゥントゥンサフールなどのキャラクター名で知られますが大流行しました。しぶちょーさんの子どもも大好きで、シールまで出ていたといいます。
量産の時代
2024〜2025年ごろは、素人が数打ちゃ当たるでAI作品を大量に投稿
対立の構造
AI絵師問題など、クリエイターとAI利用者がぶつかる
作品として評価
2025年ごろから、AI作品が映画祭などで評価され始める
しぶちょーさんは、AI作品のクオリティが人の作ったものと遜色ないところまで上がってきたと話します。そのうえで、実際に見たときに人が作ったものとどんな差を感じるのかを確かめるのが、この回の狙いです。
Runwayグランプリの短編映画は何を描いたのか
1つ目の作品は、短編映画『A Face Only A Mother Could Love』です。7分51秒の作品で、Runway AI Festival ── 動画生成AIを提供するRunway社が開く、AIを使って作られた映像作品の映画祭2026のグランプリを受賞しています。
主人公はパリに住む38歳のマンセルで、顔に生まれつき大きな変形があります。母親から毎朝「あなたは美しい」と言われ続けたため、本人は見た目をあまり自覚していません。
周囲の人に避けられながらも、マンセルはいつか一緒に踊ってくれる人が現れると信じ、一人でダンスを練習しています。そんなある日、公園で一人の女性と出会い、心が揺れ動いていく物語です。
この映画の制作は、AIと人間の役割がはっきり分かれています。
全カットの映像、ElevenLabsによるナレーション、Suno AIによる音楽
物語と脚本、どのカットを使うかの判断、編集
感想を聞かれたしぶちょーさんは、「無風ではない」と答えました。AIで作られたコンテンツだと意識して見始めたものの、作品にちゃんと見入ったといいます。
なんかそんなに(この映画は)AIで変な感じしなかったけどな、これ。
しぶちょーさんも、映像に破綻はなく、AIだと気になる場面もなかったと同意します。むしろ主人公の顔の奇妙さや、父親から与えられて日替わりでつける仮面の不思議さに、生成AIならではの表現を感じたそうです。
一方で、テーマについてしぶちょーさんの評価は少し辛口でした。外見ではなく中身を見てくれる人が現れるという筋立ては、わかりやすいハッピーエンドで、ご都合主義だとも感じたといいます。
(このテーマは)評価されやすそうだなと思った、グランプリで。
見た目か中身か、かねりんさんの問いが投げかけたもの
映画のテーマを受けて、かねりんさんは「見た目ですか?中身ですか?」としぶちょーさんに尋ねました。しぶちょーさんが「全然中身よ」と答えると、かねりんさんは笑い出します。
俺、この主人公みたいな見た目だったらポッドキャスト一緒にやってないでしょ。
しぶちょーさんは、ファーストインプレッションでは外見が大事になると認めました。そこからかねりんさんは、主人公がもし社交的だったら見た目は気にならないのでは、という問いを立てます。
しぶちょーさんの考えでは、見た目が奇妙すぎると第一印象で人が避けてしまい、それが人格形成にも影響します。かねりんさんは、ChatGPTのようなAIと会話すれば話すのが上手になるかもしれないと提案しました。
これに対してしぶちょーさんは、AIとの疑似的なコミュニケーションだけを与えるのは、母親のぬくもりを与えない猿の実験のような、倫理的に問題のある話になりかねないと指摘します。
ちゃんとコミュニケーションを取れる、そういうコミュニティに属させてあげたいって感じはするけどな。
しぶちょーさんは、社会の流れとしても、AIで本人に練習させるより、個性を差別なく受け入れるバリアフリーな社会を作ろうという方向が強いと話します。ただ、スタートラインは個性で明らかに変わるため、そこをAIで補う発想に倫理を重ねると合理的でない判断になる、という複雑な思いも口にしました。
話はさらに「イケメンや美女は性格が悪い説」に広がります。かねりんさんがそう思うと言うと、しぶちょーさんは、好意を受けて育った人は余裕があって優しくなり、ないがしろにされると卑屈になるという逆の説もあると返しました。
見た目に恵まれない人ほど苦労して内面を磨き、いい人になる
見た目がよく好意を受けてきた人ほど余裕があり、素直で優しくなる
かねりんさんは、自分の偏見はジェラシーかもしれないと笑い、刑事として捜査を指揮した経験にからめて「捜査の端緒は偏見から」とおどけます。しぶちょーさんも、人をある程度カテゴライズしていて、目と喋り方で「面倒くさい人」かどうかがわかると明かしました。
かねりんさんは、インフルエンサー時代に怪傑ゾロのような仮面をつけて外出し、ぎょっとされたり握手を無視されたりした経験も語りました。映画の主人公の気持ちを少し味わった、と振り返ります。
映画の制作背景にも話は戻りました。作者は映画監督ではなくNPO法人の社員で、1日17時間の作業を2週間続けて作ったそうです。かねりんさんは、現実にはいない外見の人物を描けるのはAIを使う利点かもしれないと話しています。
日本のAIアニメ『This is Me』とメッセージありきの創作
2つ目は、10分ほどの日本語の短編アニメ『This is Me』です。若い女性の映像作家、平田さんが監督し、WORLD AI FILM FESTIVAL 2026 in KYOTOでグランプリとベストAIアニメ賞の2冠を獲得しました。
作品は、ジェンダーアイデンティティ ── 自分の性別をどう認識しているかという、性自認のこと。身体の性別と一致しない場合もありますの揺らぎと、社会が求めるわかりやすさとのずれを、ファンタジーを混ぜた映像で描いています。見た目は女の子のようで心は女性の男の子が主人公で、トランプから出てきた怪人のような存在に誘拐され、戦う展開もあります。
この話題から、しぶちょーさんは身近にいる性的マイノリティの知人や親族について話しました。中学時代は女の子だった同級生が大人になって男性として生きていたことや、会社や親族にも当事者がいることから、偏見はあまりないといいます。
二人の雑談は、番組で話題になったBL作品にも及びました。しぶちょーさんがバイト先の先輩に7年ぶりにおすすめを尋ねると、理由も聞かれずに3分でリストが返ってきたそうです。かねりんさんはもらった4作品のうち2つほどを読み、「心キュン」だったと話しました。
本編に戻ると、このアニメは映像をAIで作り、演出・脚本・声優は人間が担当しています。しぶちょーさんは、動きが派手でキャラクターもかわいく、見応えがあると評価しました。
しぶちょーさんがこの2作品から見出したのは、この回の結論に近い考えでした。通常のアニメや映画は、制作費を回収するために面白さを盛り込む必要があります。しかし、AIで制作費が大きく下がれば、伝えたいメッセージを軸に物語を作れるというのです。
そういうマネタイズを気にせずに、結構表現として物語を作ることができるのが、やっぱAI時代のそのエンタメのあり方なのかなって、この2作品を見て思ったね。
制作費が大きく、DVDや興行で回収するため、面白さを盛り込むことが前提になる
AIで制作費が下がり、伝えたいメッセージを起点に物語を作れる
星新一賞の最終候補に残ったAI小説はどうだったか
かねりんさんが「文字もそうだよ」と話をつなぎ、3つ目の作品として小説『アルゴリズムの檻』が取り上げられました。約8500字、15分ほどで読める作品で、星新一賞 ── SF作家・星新一の名を冠した理系的な発想の短編文学賞。AIを使った作品の応募も受け付けていることで知られますで最終候補に残っています。
しぶちょーさんによると、あらすじも登場人物もAIが考え、作品の8割をAIが作り、作者が手を入れたのは2割程度です。作者自身は小説の才能はないと言っていますが、倍率1%ほどの選考を通過しました。
かねりんさんは作者のnoteの解説も読み、2025年に書かれた作品で、後に出たChatGPTのo1プレビューで書き直させた版もあると紹介しました。
二人の感想は、話の粗さで一致しました。展開が急に飛び、VRの妄想世界から現れた女性が伏線もなく現実に登場するなど、ご都合主義で進んでいくといいます。
なんかちょっとソードアートオンラインの劣化版みたいな。
ただしぶちょーさんは、細かい矛盾をなくそうとすれば、この短い文字数でこれほどダイナミックな展開は作れなかったかもしれないと指摘します。飛躍のスピード感は、当時のAIならではかもしれないという見方です。
決定的に違ったのはメッセージの有無でした。全部AIに作らせたこの小説は、読み終えても言いたいことが残らず、しぶちょーさんは昔の携帯小説を読んでいるような気分になったそうです。
やっぱメッセージあって、人がこれを伝えたいってのでAIがその画を作ったのか、AIがもう全部作ったのかで、やっぱこう違うなと思ったね、これね。
| 作品 | 人間が担った部分 | 二人の印象 |
|---|---|---|
| A Face Only A Mother Could Love | 物語・脚本・カット選び・編集 | テーマが明快で見入った |
| This is Me | 演出・脚本・声優 | メッセージが一貫し見応えあり |
| アルゴリズムの檻 | 手直し2割程度 | 展開が粗く、言いたいことが残らない |
一方でしぶちょーさんは、エンタメに必ずメッセージが要るのかとも問い返します。楽しくて気分がよくなればそれでいいのでは、という疑問です。かねりんさんは、クラシックの先生が「音楽は表現したいことがあって作るもの」と言っていたと紹介し、作者の意図がないAI曲は深掘りしようがないのでは、と話を音楽へつなげました。
正体はAIだった、The Velvet Sundownが突きつけたこと
4つ目は、The Velvet Sundownという架空のバンドです。60〜70年代風のサイケデリックロックを演奏する4人組として2025年6月に突然現れ、Spotifyの月間リスナーは100万人を超えました。
しかしネット上に情報がなく、インタビューもライブもないことから実在を疑われ、最終的にAIだとわかりました。AIだと知らずに好きになった人の中には、「騙された」と怒る人が多く出たといいます。
実在するかいなかみたいなやつが結構重要なんだねってことがちょっと話題になったよねっていう感じ。
自身もバンドをしているしぶちょーさんでも、この曲がAIかどうかは判別できないそうです。普通のバンドでもDTM ── デスクトップミュージックの略。パソコンで音を打ち込んで作曲・編曲する手法で打ち込んだ音を使うことは多く、生音でなくても違和感なく聴けてしまうと話しています。
かねりんさんが最近のデビューの形を尋ねると、しぶちょーさんはネット配信から一気に人気になったビリー・アイリッシュの例を挙げました。日本でもボカロPや、TikTokで話題になったなとりさんのような道筋があります。
では、AIで大量に曲を作ってワンチャンを狙えるのか。しぶちょーさんはローカル生成で100曲ほど上げようとしたものの、粗悪なAIコンテンツ対策で投稿までの申請が厳しく、面倒になってやめたそうです。ただ、結構前に調べた話で今はわからないとも付け加えています。
かねりんさんも、Web3の時代に自分の声の素材を組み合わせてiPadで作った曲を公開したことがあると明かしました。
バンドもポッドキャストも、作品の奥にいる「人」を見られている
The Velvet Sundownがバレて聴かれなくなった理由について、かねりんさんはメッセージがないからかと尋ねました。しぶちょーさんは、それに加えてバンドマンのキャラクターを応援したくなる気持ちが大きいと答えます。
(バンドマンの)人生とか生き様があって、この曲があるんだなみたいなところに、なんか曲の深みみたいなものが出てくるじゃない。
かねりんさんは、ポッドキャストも同じではないかと話を広げ、顔を出していることには「人間であることの証明」としての意味があると言います。しぶちょーさんも同意しつつ、ポッドキャストは本編のトークに素の部分まで詰まっていて、バンドのような「オフ」がないのが難しいと指摘しました。
そこから二人は、本編は作り込んだアルバムのようなもので、素の顔は有料のサポータークラブで見せる、というギャップの作り方を冗談まじりに語り合います。かねりんさんは、ミステリアスさは意図して作るものではなく、なってしまうものだと付け加えました。
この番組のメッセージは何か、そして何を作るか
コンテンツを語り合ったかねりんさんは、自分も何か作りたくなったと話しました。しぶちょーさんは、まさにそこへ話を持っていきたかったといいます。
だからメッセージありきで、なんかコンテンツを作ることができる時代になったんだろうなと思って。
かねりんさんは、それならこの番組のメッセージは何かと問いかけます。しぶちょーさんは「落ち着き」がメッセージだと答えましたが、かねりんさんは10年後にどうなっていたいかという、二人の共通認識があってもいいのではと話しました。二人とも本来はビジョンを持たない派だといいます。
作るものの候補として、しぶちょーさんはまず曲を考えましたが、曲は解釈の余地が大きく、メッセージを伝えるならアニメのほうがいいと考えます。ただし動画生成はガチャのように何度も生成して選ぶ必要があり、時間もAPI費用もかかります。
| 形式 | よい点 | 難しい点 |
|---|---|---|
| 動画・アニメ | メッセージが伝わりやすい | 3分でも2〜3万円ほどかかりそうで、時間もかかる |
| 小説 | 費用のハードルが低い | しぶちょーさんは自分で書きたくなってしまう |
| 音楽 | 完成形がそのまま出てくる | 解釈の余地が大きく、AIと言うと聴かれにくい |
しぶちょーさんは、リスナーのタカさんがAPI費用をかけ、自分のコンセプトを持って妖怪の動画を作っていた例を挙げ、それくらいの気合と力量が必要だと話しました。それでも、メッセージを伝えたい人がAIでコンテンツを作るのはいいことだといいます。
ただ、やっぱメッセージありきで表現として何かを見せようと思った時は、AIってのはすごくツールになるんだなというのが今日の結論かなと思いますんで。
エンタメ性だけで言えば、まだ人が作ったもののほうが面白い気がする、ともしぶちょーさんは話しています。最後には、サポータークラブでタカさんを先生に招き、動画生成でコンテンツ作りを学ぶ企画もありかもしれない、と盛り上がりました。
全編AIの長編映画『マチルダ 悪魔の遺伝子』
メインでは紹介しなかった作品として、しぶちょーさんは全編AIの長編映画『マチルダ 悪魔の遺伝子』を挙げました。72分の作品で、公式サイトから500円で視聴できます。
舞台は、暴力性に関わる遺伝子を持つ人類の約半数が滅んだ2222年で、暴力のない世界での禁断の出会いを描くSFです。スペインと日本の合作で、2025年12月19日に国内の劇場で公開されました。
映像もセリフの声もすべてAIで生成され、音楽はAIと作曲家の内山さんの共作です。映像制作の経験がない遠藤久美子さんが監督し、約4か月で完成させたとされています。
映画.comのユーザー評価は平均2.3点と厳しめで、かねりんさんは「AIだから」という理由の評価も入っていそうだと話しました。しぶちょーさん自身は、72分の時間が取れずにまだ見ていないそうです。
まとめ
AIで作られた4つの作品を見比べた二人がたどり着いたのは、心を動かすかどうかを分けるのは映像の完成度より、作り手の伝えたいことがあるかどうかだ、という気づきでした。AIは制作費の壁を下げ、メッセージを起点に作品を作れる時代を開きつつあります。
- グランプリ作品の映像は破綻がなく、AIだと気にならないほどの完成度だった
- 人が物語を作りAIが映像を担った作品は、メッセージが明快で見入ることができた
- ほぼAI任せの小説は展開が粗く、読み終えても言いたいことが残らなかった
- AIバンドの騒動からは、作品の奥にいる人の存在が重要だとわかる
- 伝えたいメッセージがある人にとって、AIは表現の強力なツールになる







