高宮さんが持ち込んだ「AIエージェントの組織論」というテーマ
今回のテーマは、高宮さんが「話したら面白いかも」と持ち込んだものです。
最近ClaudeやCoWorkなどを使うようになったという高宮さん。そこで感じたのは、AIを使うプロセスそのものが「オペレーション設計の理想状態」に近いのではないか、という感覚でした。
エージェントを作って走らせ、そのパフォーマンスを管理し、フィードバックして改善させる。これはもう人材育成そのものだと高宮さんは言います。
AIエージェントっていう人たちが、まさに人事制度とか組織設計の対象になっていくんじゃないかなっていう感覚を持って。
経営でマネージすべき対象は、かつて「人・物・金」と言われ、そこに「知恵」が加わりました。高宮さんは、そこにさらに「エージェント」が加わるのではないかと話します。
モデレーター準備を例にした「理想状態」への近づき方
高宮さんは、あるイベントでモデレーターを務めた準備プロセスを例に挙げます。
人がやる場合、進行案を考え、下調べで情報をインプットします。そのプロセスを客観視して抽象化すると、必要なインプットは三つに整理できると言います。
世の中のトレンド
今どんな話題が注目されているかをリサーチする
オーディエンスの嗜好
イベントの性質的にどんな話がウケるかを考える
スピーカーのコンテンツ
登壇者のインタビューやX上の発言を調べる
この三つをそれぞれリサーチし、合成して質問構成の素案を作ります。そして当日オーディエンスの反応を見てフィードバックをかける、という流れです。
高宮さんは、本来なら聴衆の満足度を数値で把握できるのが理想だと言います。人の身体性や時間の限界でやりきれなかった部分を、AIなら理想に近づけられると考えます。
AIエージェントが何かをするってことは理想状態に限りなく近づくことだと思っていて。人の身体性とか時間とかロジカルさの限界でリサーチしきれなかったものを、理想的にはこうしたいなを突き詰められる。
実際には、X上のスピーカーの発言をスクレイピングして分析し、どのコメントが世の中に受けたかを数字で見る、といったこともできます。
自己再帰的なワークフローは「改善サークル」と同じ
高宮さんが実際に組んだワークフローは、単発の作業では終わりません。
AIが出した進行案を一旦人力で直し、その修正をベースにトレンドやスピーカー発言を再度まとめ直させ、また進行案をブラッシュアップする。さらに、人がどう直したかを学習させ、初案と最終案の違いを分析させて次に活かします。
そのプロセスをテンプレート化し、次回も回せるようにする。こうした自律的なループを組むのだと言います。
高宮さんは、AI界隈でよく言われる「自己再帰的なフィードバックループ」は、実は人がやってきたことと同じだと指摘します。
僕専とか企業の戦略でも言ってる「PDCAこそ大事です」「初手でいきなり百点を取ろうとするな、どんどん改善していくことが大事だ」って言ってるのと全く一緒だし、まさにトヨタの改善サークルみたいなループを、めちゃめちゃタイトに高速に回し続けてるだけなんで。
つまり、人というリソースにプロセスを設計して経営目標を達成する活動と、それをAIにやらせることは、抽象的には同じだと高宮さんは言います。
違いは、物理の制約が解き放たれた点です。PDCAを回す速度が上がり、夜も眠らずにリサーチが続く。その結果、理想状態に近づいたという捉え方です。
AIなら測れる「人材ROI」と、感情のない理詰めのやりとり
AIエージェントの特徴として、高宮さんは「成果の測りやすさ」を挙げます。
エージェント一人あたりがどれだけトークンを使い、結果いくら費やしたかがわかるため、人材のROIのようなものが測れてしまうと言います。
人の場合、アウトプットや効率を綺麗に定量化できないため、人事評価という「セカンドベストの現実界」でそれを回してきただけだ、という見方を示します。
もう一つの違いが、感情のマネジメントです。人相手なら、前向きな批判の形で気を使わないとパフォーマンスが落ちることもあります。
一方AIには、改善案を出させ、どれが良いか理由とともに答えさせ、自己批判的に穴を探させる、といった理詰めのやりとりができます。
感情的にならないですもんね。
クリアな指示であればあるほど、そしてマイクロマネジメントであっても、AIは怒りません。ここが人との大きな違いだと語られています。
AIで本は一瞬でできる?残る「人間味」と文脈の価値
この話を聞いた長谷川さんは、あることを想起します。「だとしたら、企業の戦略論も一瞬でできてしまうのでは」という発想です。
本づくりは、著者・ライター・編集者が役割分担してきました。ライターの中にも、文末を整える、構成を作る、章のロジックを整えるといった細かい工程があります。それらをワークフローとして最適化できるなら、一人でよくなるのでは、というわけです。
高宮さんも、既刊の内容をゼロベースでAIに入力し、ロジックの整合性を取って再構成させれば、綺麗な本が出てくるのではないかと応じます。
ただし長谷川さんは、あえての反論を投げかけます。
十年前ならそういうアウトプットが望ましかったと思うんですけど、今って、あえての意見なんですけど、スパゲッティ味だったり人間っぽさを残す方が、AI味がないっていう意味で良かったりする。
みんなが綺麗なアウトプットを出せる時代には、むしろ二人が十年かけて作ったというストーリーや文脈の方が価値になる、と長谷川さんは指摘します。
どうやってもAIに作らせた文章ってAI味が残っちゃって。人間がなんとなく肌で感じるAI味と人間味みたいな、まだ人間の身体性のセンサーが高くて、そこを嗅ぎ分けるのをAIがまだハックできてないっていう話なんすかね。
レガシーを捨ててAI前提で作り直す方が近道か
高宮さんは、本の話を組織や事業全体のアナロジーとして広げます。
既存のワークフローや人材、これまでのやり方の中で「スパゲッティ味」が溜まっている会社に対して、ゼロベースでAI駆動の会社を作る新興企業が出てきたとき、どちらが成功への近道か、という問いです。
今までの人材やワークフローを前提に少しずつ改善するが、現実界に足を引っ張られる可能性がある
AIに最適化したワークフローを先に作り、そこに人を当てはめていく方が理想界に近づける可能性がある
AIが理想界に近づくための手段だと考えると、今持っているアセットが無効化される、あるいはマイナスのレガシーとして足を引っ張る時代にもなってきている、と高宮さんは話します。
長谷川さんは、Mirativeの赤川さんも番組で同じような悩みを話していたと振り返ります。
人のマネジメントと同じところ、違うところ
長谷川さんは、人とAIのマネジメントの違いについて問いを投げます。能力がそこまで高くない人にはざっくりした指示ではなく、細かく指示を出した方が成果が上がる。AIの成長も、その人のアナロジーで考えていいのか、という問いです。
AIを自己再帰的に成長させるためのマネジメントは、人のマネジメントのアナロジーでいいのか、全く別物なのか。
高宮さんの答えは「Yes and No」でした。
気持ちやモチベーションのマネジメントが関係ない点はNo、つまり人とは違う。一方で、アウトプットとプロセスを明確に定義し、言葉の定義や権限などの前提条件をクリアに設定するという点はYes、人と同じだと言います。
ただし人の場合、クリアであればあるほど良いとは限りません。分厚すぎるマニュアルを渡されて愚直にやれと言われれば萎えるし、マイクロマネジメントに謀反を起こすこともあります。
AIはデジタルに、クリアであればあるほど良い。しかも直裁的な言い方をしても怒らない。ここに個体差や揺らぎの大きさという違いがある、と整理されます。
もう一つ人と共通する点として、高宮さんはAIが抽象的な思考は得意でも、具体的に手を動かす部分は苦手だと感じたと言います。
声だけ番長みたいに「それってこういうステップでこうやればいいんだよ、あとはやっといて」みたいな話と、自分でそこまで抽象的にはわかってるんだけど「言うは易し、行うは難し」でやってみると難しい、みたいな話があるじゃないですか。
そのHow、実行の部分の難しさを、AIは七十点のレベルでポチッとクリアしてくれる。だから抽象思考と具体の落とし込みで役割分担すると相性が良い、というわけです。
逆に、紙からExcelへの手入力が得意な人はAIと競合してしまう。写メを撮って画像を読み込ませれば一瞬でExcel化でき、検算まで指示できるからです。
高宮さんは、AIの抽象度は「マトリョーシカ」のように上がっていくと言います。目先の業務からワークフロー、ビジネスプロセス、経営レイヤーへと、できる範囲が広がっていくイメージです。
AIができることに対して常に自分を合わせ込んで相性を良くしていくのか、自分との相性がいいボーナスタイムに突っ走って、次の時代に相性が良くなるような素地、アセットを作っとくのか。そういう戦い方になるんだろうなと。
使いこなしはこれから、リスナーへの呼びかけ
長谷川さんは、自分はまだ高宮さんの手前で使いこなせていないと率直に話します。福祉の事業でも使える余地があると感じ、これから使っていくつもりだそうです。
高宮さんも、ビジネス要件定義からAIが実行できる仕様に落とすところはやりやすい一方、コーディングが伴う領域はさっぱりだと打ち明けます。
そこで、我らがCTOの今井さんやプロデューサーの樋口さん、そしてリスナーからのおすすめの使い方を募集したいと呼びかけます。
もはや僕ら二人じゃなくて、樋口さんと今井さん回やってもいいんじゃないかという。
二人が出ない四人フルコース回も面白いかもしれない、という展開に。「僕らの戦略論」というタイトルの伏線回収になるかも、と笑いながら締めくくられました。
まとめ
AIエージェントの活用は、実は人のマネジメントや改善活動と本質的に同じで、物理の制約が外れて理想状態に近づいたものだ、というのが今回の見立てです。共通点と違いを見極めながら、これからの組織や戦略をどう組み直すかが問われています。
- AIを使うプロセスは、人材育成やPDCA、改善サークルと本質的に同じだと高宮さんは捉えている
- クリアな指示・権限委譲・成果の測定という点で人とAIは似ているが、感情のマネジメントや個体差の揺らぎは大きく異なる
- AIは抽象思考が得意で具体の実行を七十点で肩代わりするため、抽象と具体の役割分担で相性が良い
- みんなが綺麗なアウトプットを出せる時代には、人間味や積み上げた文脈そのものが価値になりうる
- 既存のレガシーを改善するより、ゼロベースでAI前提に作り直す方が近道になる可能性がある



