四季報で見るハイデイ日高の全体像
『日高屋』を運営する『ハイデイ日高』を、四季報ベースで整理してみました。前回の『物語コーポレーション』(焼肉キング)に続いて、飲食業界で高い利益率と資本効率を出している会社です。
ちなみに「ハイデイ」は、ハッピーな一日を、という意味から来ているらしいです。
創業は1983年、上場は1999年。時価総額は1143億円で、東証プライムで1000億円を超える規模の会社なんです。
事業を一言でいうと、首都圏の駅前に特化した外食のインフラ。ラーメンと中華のつまみで、ちょい飲みを直営で高速回転させるモデルだと私は捉えています。
売上の約95%が『熱烈中華食堂日高屋』で、ほぼ一本足打法。海外比率はゼロです。
予想売上高は670億円、予想営業利益は72億円で、営業利益率は10.75%。似た業種の『幸楽苑』が5.31%、『リンガーハット』が4.65%、『王将』が8.99%なので、頭一つ抜けているんじゃないかと思います。
いちばん注目したのは、ROEの予想値が18.6%という資本効率の高さです。自己資本比率は72.3%と実質無借金に近いのに、ここまでROEが出るということは、利益率に加えて総資産回転率もいいんだろうな、と考えました。
そこで私は、3つの仮説を立てました。
- 駅前の一等地に小さく構え、高速で投資回収しているのでは
- 低めのラーメンの利益率を、ちょい飲みとおつまみで埋めているのでは
- 人件費と家賃の重さを、セントラルキッチンなどで薄めているのでは
駅前一等地と1日13回転のからくり
1つ目の仮説は、完全に合致していました。
公式の物件募集基準を見ると、駅の乗降客数2万5000人以上、主要路線の駅前や繁華街、原則路面1階、と厳格に指定されているんです。ここまで明確に条件を出しているのはすごいですね。
ただ、最近は駅前の立地も埋まってきていて、郊外への進出も画策中だそうです。
社長のインタビューによると、「石の上にも3ヶ月」をモットーに、不採算店はスパッと撤退・移転する。出店に失敗すれば年1億円の損が出るので、その責任を社員に押し付けられないと、85歳を過ぎた今でも会長が自ら歩いて立地を決めているそうです。
後継者の育成という点ではどうなんだ、という話にはなるかもしれません。それでも、足で稼ぐ姿勢は経営者として大事にしなきゃいけないな、と思いました。
回転率もすごいんです。標準店は約30坪・約40席で、午前11時から翌午前4時まで営業。1座席が1日平均12〜13回転していて、一般の飲食店の3〜4倍だそうです。
会長が考えた、カウンター中心の「平成令和の屋台」のようなレイアウトで、一人客が短時間でさっと帰る高回転オペレーションができあがっているんですね。
確かに、仕事で疲れきったときに一人でさっと入って、タッチパネルで注文して、2、3杯飲んで帰る。そんな経験をしたことがある人は、私を含めて一人や二人じゃないはずです。
土地は持たず、契約期間も3年程度と短くして、すぐに近隣へ移転できる。屋台のような身軽さで、投資回収のリスクをコントロールしている訳です。
来てもらうのではなく、通り道にある「待ち伏せ型」の立地戦略とも言えます。CVP(損益分岐点)で見ると、一等地で固定費は高くても、13回転で売上を一気に積み上げられるので、損益分岐点比率は低く、安全余裕率は高くなるんじゃないかと思います。
390円の中華そばと「ケの日のご飯」
2つ目の仮説、ちょい飲みの役割です。
2002年の日高屋1号店のとき、会長は全役員の反対を押し切って中華そばを390円にしたそうです。これは集客用の商品で、本当の狙いは「ビール、餃子、ラーメンで1000円でお釣りが来る」高粗利なちょい飲みモデルだったと明かしています。
一般的なラーメン屋のアルコール比率が3%程度なのに対して、日高屋は約15%。生ビールも酎ハイも安いし、ついもう一杯、となりますよね。
それでいて席は一人飲み向けなので、長居はしない。だから回転率も粗利も両立できているんです。
味の考え方も面白くて、会長は「10人中6人がうまいと思うラーメンでいい」と言っています。感動よりも習慣、美味しすぎると飽きる、という思想です。
まずいものを作れという話ではなく、誰もが週2〜3回飽きずに通える日常食を設計して、リピート頻度を極大化しているんですね。
単身者の牛丼やハンバーガーのローテーションに中華を差し込む。そこにお酒の誘惑が加わって、1000円、1200円、1500円と使ってしまう。そうやって粗利率が上がっていく仕組みになっている訳です。
ほかのファストフードは競合というより、そこで商売が成り立つ前例。そのローテーションに2、3回入り込めれば十分元が取れる、という考え方なんだと理解しました。
中期経営計画のパーパスには「社会インフラ」とありました。晴れの日ではなく、ケの日のご飯としての設計なんです。
スコープを狭めて見てしまいがちなところで、毎日食べるものとして設計しているのは、目から鱗でした。「今日は日高屋でいいか」が、いい意味で発生しているんですよね。
セントラルキッチンと「働く社員の幸せ」
3つ目の仮説、販管費の構造です。販管費比率は58〜60%程度で、広告宣伝費は極めて少ないと有価証券報告書にも書かれています。費用の大半は人件費と店舗の賃借料です。
昔は「もりもりサービス券」を配っていましたが、最近は見ないですよね。駅前の目立つ看板そのものが、24時間アピールする広告塔として代わりを果たしているんじゃないでしょうか。熱烈中華食堂って、すごい名前ですしね。
埼玉県には自社工場があって、セントラルキッチンでスープ、麺、タレ、具材を一貫生産しています。店では温める、炒める、盛り付けるに標準化されているんです。
四季報にあった新工場の用地選定も、この供給基盤を強める動きだと考えられます。
一方で、関東に集中しているのは工場から届く範囲だから、という側面もあります。ほかの地域への展開は新工場の効率次第なので、将来性には少し疑問符が付く、というのが私の見方です。
人件費の面では、調理の属人性をなくして、学生や外国人アルバイトでも初日から戦力になれるようにしています。
パート・アルバイトを「フレンド社員」と呼び、会長の私財から累計8億円分の自社株を従業員に付与したり、懇親会を開いたりと、従業員への還元がとても旺盛なんです。
企業理念でも、お客様より先に「働く社員の幸せを第一の目的とし」と書いています。従業員満足からサービスの質、顧客満足、LTVへとつなげるサービスプロフィットチェーン ── 従業員満足(ES)を高めることが顧客満足(CS)や企業の利益につながる、という考え方を体現しているんじゃないかと思いました。
辞めるアルバイトが知人を紹介してくれるリファラル採用の網もあって、求人広告を打たずに済む店舗が多いそうです。シニアが70歳まで鍋を振らずに働けるよう『焼き鳥日高』を展開するなど、シニア雇用の受け皿づくりもしています。
まとめると、狭い店でも動線を工夫して時間を縮め、直営400店舗超の購買力とセントラルキッチンでコストリーダーシップ戦略をとっている。これがハイデイ日高の高い利益率の源泉だと結論づけました。
前回の物語コーポレーションとは、やり方もターゲットもまったく違います。それでも、どちらも高い利益率と資本効率を保ちながら市場に還元している会社でした。
別の戦い方をしている飲食店を見ると、同じ施策でも裏にある理屈がまったく変わってきます。経営理論に当てはめたから強くなるのではなく、自然とうまくいっているものに名前がついているんだと私は思っています。なので、こう分析するならこういう名前がつきそうだね、ぐらいの感じで見てもらえるといいかなと思います。
まとめ
日高屋は、駅前一等地の高い固定費を1日12〜13回転で薄め、390円の中華そばで集客してちょい飲みで粗利を取る「駅前インフラ」でした。セントラルキッチンと従業員を大事にする仕組みが、高い利益率と資本効率を支えていると私は考えています。
- 乗降客数2万5000人以上の駅前に絞り、短い契約と素早い撤退で投資回収のリスクを抑えている
- 「10人中6人がうまい」日常食とアルコール比率約15%のちょい飲みで、リピートと粗利を両立している
- セントラルキッチンでの標準化と従業員への還元が、人件費と採用コストの抑制につながっている
- 関東集中は工場の届く範囲ゆえで、他地域への展開は新工場の効率次第だと見ている






