1年間、名乗らずに続けてきた番組
番組冒頭で小澤さんが切り出したのは、番組開始から約1年が経ち、エピソード数も10本を超えたという節目でした。それを機に、これまで一度もしてこなかった自己紹介と雑談の回を録ることになります。
振り返ると、1回目のActual Source回は6月13日でした。ちょうど収録の前月で1年を迎えたことになります。
1年も経ったか、もう。早いね。
この番組は開始から小澤さん、名和さん、氏家さんの3人体制でした。ただし表に出て喋っていたのは小澤さんと名和さんの2人で、氏家さんは裏方に回っていたといいます。
氏家さんは、テーマの相談に乗ったり、XのアカウントでSNS投稿を担当したりと、第3のメンバーとして関わってきました。今回はそのメンバーが全員揃った回になります。
問題は、1話目から出演者が一度も自己紹介をしていなかったことでした。こいつら誰やねんという状態で聴かれてきたわけです。
なんとなくでも仕事の話はしてるから。多分こういう仕事なんだろうなって思ってる人はいるかも。
一応、Xのアカウントは番組で載せていたので、気になった人はそれを見ていたかもしれない、と補足しつつ、改めて軽く自己紹介をしていくことになりました。
3人のデザイナーの経歴
最初に名乗ったのは小澤祥矢さんです。元々は広告系の仕事から始まり、デジタルとリアルをつなぐインタラクティブ体験を手がける株式会社バードマンでデザイナーをしていました。
小澤さんはその後、パーソルキャリアの新規事業を作る部署に加わります。実はこの部署で、今回の3人が出会いました。
さらに小澤さんはスタートアップでデザイン全体を統括する役割を経て、今は同い年の2人とデザインベンチャーのGoodInc.に役員として参画しています。音楽制作やグラフィックデザインも自分で手がける人物です。
次の名和大気さんは、オフライン・オンライン両方の広告系を経て、制作会社でデザイナーとして働いていました。その制作会社の1社で、氏家さんとアートディレクターとデザイナーという関係で一緒になっています。
名和さんはその後、事業会社への移籍を考えたときに、先にパーソルキャリアにいた氏家さんと小澤さんを追う形で同社に入りました。ここで3人が揃ったことになります。
名和さんは現在、SaaS ── ソフトウェアをインターネット経由でサービスとして提供する形態。利用者は買い切りではなく、契約期間に応じて使う。SmartHRはこの形で人事労務のサービスを提供しているのプロダクトを作るSmartHRに在籍し、ブランド周りのクリエイティブを担当しています。キャリアの軸はブランディングにあります。
3人目の氏家豪さんは、自分をデザイナーと名乗っていいか分からないと前置きしつつ経歴を語ります。1社目の株式会社LOFTWORKではディレクターとしてクリエイティブの制作進行やコンセプト作りを担当していました。
氏家さんは2社目で名和さんと同じ会社に入り、デザイン系プロジェクトのリードを長く務めました。その後、小澤さんと同じパーソルキャリアに移り、現在はサービスデザイナーという肩書きで、主にUX領域を得意としています。
僕は自分が何者でもいいと思ってるんですけど。
収録時点で氏家さんは、次の環境に移るタイミングで東京に来ており、そのタイミングでこの回を録っている、という状況でした。3人とも歩んできたことは少しずつ違えど、広義のデザイナーとしてパーソルキャリアで出会い、気が合って今に至ります。
飲み屋の談義から始まった番組
番組がどう始まったかを尋ねると、名和さんは小澤さんとの飲み屋での会話を挙げます。
(小澤との飲み屋で)管巻くで終わりにするの良くないよねみたいな感じだったっけ?
小澤さんの記憶では、名和さんとしょっちゅう飲みに行き、デザインやブランドについて夜中まで語り合っていたといいます。小澤さんがインプットの多いタイプで面白いブランドを紹介し、名和さんが考え方を返す、という掛け合いでした。
その会話を毎回すごく面白いと感じていた小澤さんは、ポッドキャスト好きでもあったことから、これだけ喋るなら番組にしましょうと持ちかけます。それが番組の出発点でした。
せっかくならなんかポッドキャストとかやりましょうよって。
そこに氏家さんが加わったのは、小澤さんと名和さんが氏家さんの博識さとカルチャーへの深さを買っていたからです。番組を始めると伝えた流れで、手伝ってもらえないかと打診したといいます。
好きなソースが似ている3人
小澤さんと氏家さんは、好きな作家や音楽のバックグラウンドがかなり重なっていました。在職中から、お互いの好みが一致することに驚くようなやり取りをしていたそうです。
小沢さんと俺は好きな作家とか音楽のバックグラウンド結構マジで一緒だったりするから。
象徴的だったのが、Slackで國分功一郎さんの『中動態の世界』をどう捉えるかを、2人だけのスレッドで盛り上がっていたことです。小澤さんは、自分にはない視点を与えてくれる相手として氏家さんを尊敬してきたと語ります。
デザイナーの中で哲学領域にがっつりこう踏み込んで勉強している人とかなかなか見ないから、すごいなって思いながら接してましたけどね。
3人は出自も性格も少しずつ違いますが、馬が合う。名和さんはその理由を、小澤さんと氏家さんの思慮深さと思考の深さに見ています。
表層的なところ(の話)を捉えて終わることはほぼないじゃん。それって何でなの?とか、なぜとか。
名和さんは、2人の思考の掘り方が似ていると表現します。好奇心が強く、そこから自分なりの解釈へ進む方向性が同じだ、というわけです。今も個人でブランドを作る活動の中で、氏家さんとは毎週ほとんど哲学の話をしているといいます。
北海道移住で変わったインプットの種類
氏家さんは近年、自分のインプットの中身が変わってきたと話します。以前はカルチャーやデザインといった視覚的なインプットが多かったのに、北海道への移住を機に、文字情報のほうへ刺激を求め始めたといいます。
文字情報とかそっちの刺激を求め始めてて。故に、自然っていうものを相手にしてるからか、哲学とかそっちの方がより深くなっていった。
氏家さんはその背景に、人のインプットはいる環境にめちゃくちゃ左右されるという実感を置きます。東京は文化的に魅力的すぎて、映画館や美術館が至るところにあり、週末を使っても回りきれないほどだと語ります。
一方で氏家さんの住む街には、見たい映画や展示、ライブが揃っているわけではありません。旭川まで来日アーティストを見に行ったのは、トミー・ゲレロの一度だけだったといいます。
氏家さんは、自然と向き合うときに思考がクリアになり、そのことについて考えるようになると話します。結果として、これまでとは違うベクトルのインプットが増えていったという流れです。
(自然物は)圧倒的に美しいものを、東京にいるよりにはるかに見れるから。視覚的なものはそっちで満足してるのかもしれない。
東京中心。カルチャーやデザインなど視覚的なインプットが多い
北海道移住後。自然と向き合い、文字情報や哲学へのインプットが増える
自然の美と、感性が駆動する社会
氏家さんは、噴火でできた山の頂を登山で見たときの体験を語ります。これより美しいものがあるのか、人間には作りえないと感じ、自分の中の美に対するヒエラルキーが変わったと直感したそうです。
小澤さんはこれを受けて、あらゆる芸術が目指すゴールは、自然の荘厳さや神秘をどう写し取るか、模倣するかにあるのではないか、と話を広げます。その感動を人工的に作れるのか、という問いです。
2人はさらに、年齢を重ねたことも重なって、身体的にもメンタルヘルス的にも、そして感覚的にもヘルシーな方向へ興味が向いたと共有します。3人の関心が同じ方を向いていることがうかがえます。
ここ数年で自然とか、健康的なもの、感覚的にもヘルシーな方向っていうのに興味がめっちゃ向いた。
リスナーの存在と、番組が届けたいもの
番組の今後について、小澤さんはこの間の嬉しかった出来事を紹介します。友人の会社の社内Slackで、番組を知らない人たちによって「いい回だった」とエピソードが共有されていた、というものでした。
それもう最高だね。嬉しいよね、それね。
小澤さんは、アナリティクス上は聴いてくれる人がいると分かっていても、その存在が見えないもどかしさを語ります。編集後に自分が聞き直したのを数えているだけではないか、と思う瞬間もあるといいます。
だからこそ、聴いてもらえること、反応をもらえることがものすごく嬉しい。小澤さんは、扱ってほしいブランドのリクエストなど、いつでも反応がほしいと呼びかけます。
最後に氏家さんは、デザイナーにとってインプットをたゆまなく続けることは「カルマ」のようなものだと語ります。そのうえで番組の位置づけを言葉にしました。
良質なソースとして、我々の話が少しでも皆さんの役に立ってくれたなら、という気持ちで録音している。
小澤さんは番組の思いを、AI時代に世の中がより感性で駆動していくという見立ての中に置きます。クリエイター側には感性を実践する事例として、ビジネスパーソン側には「感性とは何か」を考える材料として届けたい、というわけです。
そのうえで小澤さんは、どちらかに偏らずビジネスと感性の幸福な融合をテーマに届けていきたいと締めくくりました。
自分の感性で社会に実践している人たちの事例が参考になる
AI時代に言われる「感性とは何か」を考える材料になる
まとめ
番組開始から1年、初めて自己紹介をしたCult Studsの雑談回でした。飲み屋の談義から始まった3人のデザイナーが、好きなソースの近さや環境によるインプットの変化を語り合い、番組で届けたいものを言葉にしています。
- 3人はパーソルキャリアで出会った広義のデザイナーで、小澤さんと名和さんの飲み屋での談義から番組が始まった
- 小澤さんと氏家さんは好きな作家・音楽・哲学のバックグラウンドが近く、思考の掘り方が似ている
- 氏家さんは北海道移住を機に、視覚的なインプットから文字情報や哲学へと関心が移った
- 自然の美への感動や、身体・心・感覚をヘルシーに保つ方向へ、3人の関心が重なっている
- 番組は「ビジネスと感性の幸福な融合」をテーマに、クリエイターとビジネスパーソンの両方へ届けることを目指している





