そもそもCROは何をする役職なのか
この回のテーマは、シャコウの城所秀征が務める「CRO」という役割だ。太田翔葵は、営業責任者や営業部長ではなく、あえてCROという名前をつける意味を掘り下げていく。
城所によれば、CROの仕事はシンプルに言えば収益を作ることだという。ただし管掌する範囲は営業だけにとどまらない。
簡単だと収益を作ると。まあChief Revenue Officerなので、お金を作って利益を上げてこいと。そういった一番しんどいかなというポジションになっております。
営業部長との違いを問われた城所は、CROは領域を営業に限定しないと答える。営業でもマーケでもよく、最終的に収益を上げることが役割だという整理だ。
営業も多分見ないといけないし、マーケもそうだしみたいな。広めのお役割ってところがあるんじゃないかなと。
なぜ今CROが注目されているのか
太田は、CMOは以前からある一方、アメリカのBtoB企業を中心にCROが増えている印象があると指摘する。城所は、その背景にBtoBマーケティングの限界があると見ている。
コロナ後にBtoBマーケティングに取り組む企業は増えた。しかし、マーケティング単体で収益への貢献を示すのは難しいという実感が広がってきたと城所は語る。
よくあるマーケとセールスの分断みたいな、まあよく言われるところだけど、マーケだけでレベニュー作るっていうのがまあしんどいよねっていうのが見えてきたのかなっていうところ。
太田は、リードを集めて商談は作れても受注まで持っていけない、という The Model 型の課題がABMへの流れを生んでいるのではと補足する。
新規だけではない、既存顧客という盲点
城所は、収益を作る道筋には2つの軸があると整理する。新規市場から取る軸と、既存アカウントをいかに太らせるかという軸だ。
営業もマーケも新規に意識が向きがちだが、CROはどちらから収益を最大化するか、そして利益を見てどちらにコストを踏むかまで意思決定する必要があると城所は語る。
自分たちがまだ取っていない市場・アカウントから収益を取りにいく。営業もマーケも意識が向きやすい
すでに取引のあるアカウントを太らせ、クロスセルやアップセルで収益を伸ばす
太田は、BtoBでは既存顧客へのアップセルのほうが信頼関係もあり圧倒的に楽だが、その目標を誰が持つかが難しいと応じる。
城所は上場代理店にいた実体験から、既存顧客のKPIが組まれていないケースが多いと指摘する。
既存のこっからいくら売り作ろうとか、じゃあ既存のお客さんからこういうとこ掘って、商談何件作ろうみたいなのは確かにあまり持ってない。
ABMとは何か、The Modelとどう違うのか
太田は、ABMという言葉が一人歩きしている感覚があると述べ、そもそもどういう考え方でABMをやるべきかを城所に尋ねる。
城所は、ABMの目的は一社からいかに多くの収益を取るかにあると説明する。一部署や一商材ではなく、一顧客を単位に考えるのがABMの発想だ。
必ず一社、一社からいかに多くのレベニューを取るかってところがABMの考え方かな。アカウントベースドマーケティングなので。
新規を開けるのも既存を太らせるのも、どちらもABMの一環だと城所は言う。そのため、組織体・意思決定の仕方・顧客管理が大きく変わってくる。
このクロッセルって誰の責任でやんの?とか、誰が仕切ってやんの?みたいなところが大体ないって言われるケースが多い。
だからこそABM導入は、施策の前にまず組織を変える、意思決定ラインを変えるところから始まるケースが多いと城所は語る。
ABM導入でKPIはどう変わるのか
太田は、ABMをやると決め、責任者を決めたあと、実際の会議では何をKPIとして管理するのかを問う。城所は、KPIは会社や組織によって違うと前置きする。
あるパターンでは、既存アカウントを担当する営業がフロントとして継続的に入り、KPIには別部門の担当者に会うことや商談数を置く。
今営業部が開けれてて、じゃあコンサル班だったら、人事の責任者と接点持ってないよねとかであれば、その接点数だったり商談数っていうのをKPIに置く。
別の会社では、自社が売っている商材以外の提案数をKPIに置いているという。組織にクロスセルの文化がないと、いきなり売上を求めるのは難しいからだ。
まずいきなり売りっていうよりも、そのご提案をするっていう意識付けが必要ってなった時に、じゃあこの提案をした数っていうのを一旦KPIに置こうか、と。
つまりABMは画一的ではなく、事業ポートフォリオや商材ポートフォリオによってあるべき形が変わる。すべてが個別最適のアカウントプランになっていくという話だ。
一営業あたり何社を担当すべきか
太田は、ABMは一社に工数をかけるため、一人の営業が何社も持てない感覚があると述べ、適正なアカウント数を尋ねる。城所の答えは、最終的に取りたい収益によるというものだ。
たとえば一契約の年間LTVが1億なら、一人が10社ほど持ち、3社こじ開けるだけでも3億になる。単価が1000万程度なら、利益の面からもっと多く持つ必要が出てくる。
最終的に取りたいレベニューによる。一年間のLTVが1億ですとかだったら、もっと数社とかでいい、一人。
太田は、担当社数から考えるのではなく、どれくらい売上を作りたいかから逆算する発想だと整理する。カスタマイズ性の高い製品やコンサル型の商材では、この考え方が特に効いてくる。
顧客のポテンシャルに応じた工数配分
城所は、相手がエンタープライズでも、自社が提供できる価値と合っていなければ収益は最大化できないと指摘する。5部門開けられる顧客と1部門しか対象がない顧客に同じ工数をかけても、取れる収益は違う。
そこでシャコウでは、アカウントプランの中でポテンシャルマップを使って管理しているという。ポテンシャルの低いアカウントに工数をかけすぎない、という判断のためだ。
ポテンシャルを見る
アカウントプランのポテンシャルマップで、その顧客からどれだけの収益余地があるかを整理する
工数を配分する
ポテンシャルが低いアカウントには工数をかけすぎない。将来性が高ければ重点的に張る
投資判断する
3年後に大きく伸びる見込みなら、初年度が赤字でも張ると判断する
城所は、初年度に人件費や販管費を含めて赤字になっても、3年後に年間5000万規模になる契約なら投資してよいと考えている。ただし、これは事業計画とキャッシュフロー次第だと釘を刺す。
全案件これだったら死んじゃうから、会社が。
担当者との合意だけでは案件が進まない理由
太田は、ウェブで調べれば出る情報と、その会社の稟議フローのような見えづらい情報は別物だと指摘する。特にエンタープライズに直撃で入ると、ステークホルダーが増える。城所は、そうした情報をタスクに落として営業に切っていくのがABMだと応じる。
ここで城所が強調するのが、誰と何を合意したかの管理だ。相手の稟議フローや、誰が何を言い、誰と誰が何を合意しているかが不明確なままタスクだけ切ると、危うい構図が生まれる。
本当は握らなくちゃいけない人がリスクとしているんだけど、この人を握ってなくて、担当と合意ばっかしてて。
この構図は特にエンタープライズで起きがちだと城所は言う。通常のSFAに入っているデータだけでは、案件の実態が見えなくなるからだ。
急に失注しとるやんみたいな。え、これ稟議通ったんじゃないの?これ握ってなかったです、みたいなのがあったよね、と。
太田は、The Model的な管理ではD読み・C読み・B読み程度で動くため、決裁者を呼び出す必要のあるABM型の案件は分けて管理する必要があると整理する。
ABMに向いている商材・向いていない商材
城所は、ABMは取れる収益が見合わない商材には向かないと言う。たとえば5年継続でも年間100万程度しか取れない商材は、ABMの重い工数に合わない。
一方で、出口に大きな商材があり、複数商材で一社にロックインしながら長く引ける場合はABMが成立する。低単価商材を5個入れても大きくならない場合は、そもそも合っていない。
単価が高く、決裁が上位に上がる商材。出口に大型商材があり、複数商材で一社にロックインして長く引ける
低単価で、複数入れても収益が伸びない商材。回収に時間がかかりすぎ、キャッシュフローやビジネスモデルが成り立たない
城所は、ABMは単価の高いものをこじ開けるケースでこそ成り立つと説明する。そうした案件は決裁が必ず上位に上がり、現場レイヤーの決裁で終わることはほとんどない。
POCやるってなっても、上と握っとかないと、その後の大きなお金が絶対に動かないってところがあるから、会うべき人と会うっていうのもめちゃくちゃ重要。
太田は、フロント商材はライトでアカウントを開けやすいため、最初から二段構えにしてフロントで開け、後ろに利益を生む商材を置く戦略もあると補足する。
決裁者との合意形成と、CROが事業全体を見る理由
太田は、ただツールを作って売れば済む時代が終わり、踏み込んだ提案で高単価にシフトせざるを得なくなっていると指摘する。その結果、これまで担当者で決裁できた金額が上位者の決裁を要するようになり、合意形成の難しさが増している。
ライトに入る顧客もいれば、重い提案で上位決裁を要する顧客もいる。城所は、それらすべてを統括して自社が何をやるべきかを決めるのがCROだと応じる。
結局収益上げるだから、コストをどこに使っていくかもこの人(CRO)の役割かなとは思ってる。
富士通のCRO改革と「物売り」から「こと売り」へ
太田は、城所が調べた富士通のCRO事例について尋ねる。城所は、富士通が2023年頃にCRO室を設け、大西さんという方が本も出していると紹介する。
やっぱなんか大きい会社ほどああいう機能って必要なんだなっていうのはめちゃめちゃ思った。
城所は、営業部門だけで改革しようとすると新規と既存でごちゃごちゃになりがちだが、CRO室が全体を管掌したからこそ営業改革ができたのではと本から読み取っている。
大きい会社ほど人のレバレッジが効きやすく、持っているアカウントの大きさも数も違うため、レバレッジが強く効くという。太田は、大手の顧客基盤が宝の持ち腐れになっている可能性を指摘する。
城所は、富士通の営業変革として、物売りからこと売りへの転換が語られていたと紹介する。
利益と先行投資まで考えるCRO
太田は、BtoBでも営業が強ければどうにかなるという時代から、顧客のバーニングニーズに応えるサービスかどうかが問われる時代に変わってきたと語る。日本ではPLGで売れるものはほぼなく、最終的に営業が要になるからこそ、CMOよりCROなのではという見立てだ。
城所は、ABMに合う商材ではマーケティング3割・営業7割ほどの比重になると言う。月数万円のSaaSならマーケティング偏重になるが、多くの商材はセールス偏重になりやすい。
さらに城所は、CPAが上がる中ではCPAを下げるより、許容CACを上げるほうが競争優位性が高まると語る。許容できるコストが大きいほど、優秀な人を引っ張れて打てる施策も増えるからだ。
城所は、安さは顧客にとって良く見えても、実は良くない可能性があると指摘する。利益が出なければ優秀な人材にも開発にも投資できず、結局は顧客のためにならないという逆説だ。
利益出ないと投資できないから、手詰まり。市場が変わった瞬間に終わる。
太田は、サービス側まで含めて中長期的に何が正しいかを見て、先行投資をどうするかを判断することも、CRO機能に含まれると整理した。
まとめ
CROは営業責任者と違い、営業もマーケも横断して収益と利益に責任を持つ役割だ。新規偏重になりがちな組織で既存顧客の売上をどう伸ばすか、ABMをどう機能させるかが、この回の中心だった。
- CROは営業に限定されず、収益最大化のためにコスト配分まで意思決定する役割
- 新規だけでなく既存顧客のKPIを設計しないと、売上機会をもったいなく落とす
- ABMは一社からの収益最大化が目的で、担当社数は取りたい収益から逆算する
- 担当者との合意だけでは大型案件は進まず、決裁者との合意形成の管理が要になる
- ABMは高単価商材でこそ成立し、利益と先行投資まで見るのがCRO機能である






