16年やったリーダーが自ら降りるという選択
この回で二人が取り上げるのは、4期16年を務めた福岡市の高島市長です。人物そのものを取り上げて話すことは珍しいと木原さんは前置きします。
話題の起点は、高島市長がこのまま市長を続けないと表明したことでした。福岡市が変わり続け、さらに改革が進むと思われたタイミングでの表明だったといいます。
小笠原さんは、この引き際そのものを珍しいと指摘します。政令指定都市の首長で、年齢も50代前半、体力的な限界というわけでもないからです。
なかなかそのリーダーシップ取ってる人が自分からリーダーを降りるって、あんまりなくないですか?
高島市長は多選は良くないという考えを本に書いていたといいます。小笠原さんは、市長のSNSプロフィールに若い首長が生まれてほしいという趣旨のことが書かれていたとも紹介します。
だから高島さんの言葉で言うと、襷をつなぐみたいなこと言われてましたけどね。
木原さんは、外から見た高島市長の立場を、改革を自分で進め、周りの目もネガティブどころか圧倒的にポジティブだろうと想像します。そのうえで、自分ならその立場を降りないと率直に語ります。
だってここまで俺が来たんだぜ、成長させたんだぜっていうのに、もっと自分は浸っていたい。
小笠原さんは、それが1万人以上の組織のトップの話であることを付け加えます。それだけの規模のリーダーが自ら降りる判断をした点に、二人は注目します。
家入さんの紹介から始まった福岡との関わり
そもそも小笠原さんがなぜ福岡に関わるようになったのか、木原さんが尋ねます。きっかけは、福岡にアドバイザー的に入っていたスタートアップの存在でした。
もともとその役割を担っていたのは家入さんでした。家入さんがあまり現地に行かないため、なぜか小笠原さんに回ってきたといいます。
家入さんがあまりに行かないから、なぜか僕になったんですよ。
小笠原さんは家入さんを、自分の興味が強い時とそうでない時で動きが極端に違う人だと表現します。それでもみんなから好かれる人で、自分も好きだと語ります。
福岡へ一緒に遊びに行くうちにアドバイザー先の紹介を受けたのが、2000年代後半のことだといいます。当時の市長はまだ高島市長ではなく、高島市長は当時アナウンサーだったと小笠原さんは記憶しています。
スタートアップ都市宣言と「やるぞ」の重み
その後、福岡ではMyojo和楽というイベントが生まれます。アメリカのサウス・バイ・サウスウエストのように、カルチャーやテック、スタートアップ、アートを混ぜたイベントを、自分たちの地域でもという流れから始まったものでした。
Myojo和楽が始まったのは2011年か2012年頃で、この時期にはすでに高島市長が就任していました。その流れの中で小笠原さんは高島市長と知り合ったといいます。
そこでスタートアップを街に根付かせようという話になり、宋泰蔵さんや小笠原さん、高島市長、そしてイギリスから来た関係者らで「スタートアップ都市宣言」を行います。
やって、別に宣言しただけなんですよ。でもやるぞっていうのが一番大事じゃないですか。
木原さんは、市政として「やるぞ」と宣言を出すこと自体が難しいはずだと指摘します。小笠原さんも、当時のスタートアップ政策は中小企業支援の一部でしかなかったと振り返ります。
それ、ど真ん中でやるぜって言うだけでもなかなかですよね。
数字で見える「取り戻せ信頼」の16年
高島市長は、市長になるためにキャスターから転じた人物だと小笠原さんは説明します。もともと政治家になろうと思っていた人だといいます。
小笠原さんは高島市長の公式サイトにある「市政信頼度推移」の数字を紹介します。調査元や信頼度は自分にはわからないと断ったうえで、継続的に取られた定点の変化として見ます。
選挙に出るときには「元気と信頼を取り戻そう」という趣旨を掲げていたと小笠原さんは記憶しています。まず市政の信頼度をきちんと測ることから始めたと見ます。
それを旗頭にリーダーシップ取っていくわけですよね。
市政信頼度は2010年に41%だったものが、2025年には84.2%まで上がっています。2020年からは6年ほど80%台が続いているとサイトからも確認できると二人は話します。
子育て環境の満足度も2010年の61.5%から2025年の85.1%へ上がり、開業率も政令指定都市の中でずっと1位が続いていると小笠原さんは挙げます。
さらに市税収入は2654億円から、2026年で4263億円へと伸びていると小笠原さんは紹介します。木原さんは、これらの実績を凄まじいと率直に受け止めます。
売上を伸ばさなければ投資はできない
木原さんは、これだけの指標を一つでも達成できたらいいと語ります。小笠原さんは、最初の一つを作るためにこそ、たくさんのことをやらなければならないと応じます。
最初の一個やろうと思うと、いっぱいやらないとそうならないじゃないですか。
たとえば子育て環境の満足度を上げようとしても、その前に市税を伸ばす必要があると小笠原さんは説明します。歳出には、使わざるを得ない義務的経費が多く含まれているからです。
小笠原さんはこれを企業経営に置き換えます。売上を伸ばさなければ、いくらコストを下げても利益は増えず、利益がなければ次の投資もできないという構造です。
コストを下げて借金を返す「教科書通りの経営」
高島市長は政治家を目指してきた人だが、企業経営者として見ても正しいと小笠原さんは評価します。よくある改革はまずコストを下げるところから始まると整理します。
ここでいうコストとは、行政でいう歳出、つまりお金のことです。歳出を下げるには業務や組織、構造の改革が必要で、当然そこには反対する人が出てきます。
コスト下げるのって難しいんですよね、やっぱり。
一方で、市税や固定資産税といった行政の収入を増やし、増えた分で借金を返していく流れがあると小笠原さんは説明します。
その結果、市債は2000年で2兆3000億から4000億ほどあったものが、2025年には1.7兆円になっていると小笠原さんは挙げます。
コストを下げる
業務・組織・構造を改革して歳出を下げる
収入を増やす
市税や固定資産税といった行政の収入を伸ばす
借金を返す
増えた分で市債を返済し、利息の負担も減らす
もう教科書通りの経営じゃないですか。
木原さんも、これは政治の是非を論じたいのではなく、福岡市とそれを引っ張った高島市長がすごいという話だと確認します。二人はあくまで公式サイトの実績を見ながら話していると強調します。
いざという時に動ける財政調整基金という指標
改革の結果として、小笠原さんは財政調整基金という財源に注目します。急速な経済変化や災害があったときに、緊急で動くための基金です。
この基金は2010年で約100億円だったものが、370億円ほどになっていると小笠原さんは挙げます。災害時に、その場で判断してすぐ動かせるお金だと説明します。
木原さんは、実際に住む立場で見ると、この基金がとても重要な指標に見えると受け止めます。
小笠原さんは、国や省庁が九州地域向けに用意する簡易ベッドやシャワー、トイレは、日本全体を見ている以上どうしても微々たる量になると説明します。だからこそ、必要に応じて対応できるお金を自治体が増やしている意味は大きいと見ます。
小笠原さんは、企業がインシデントや情報漏洩の対策で急に第三者委員会の設置に費用が要るような場面を例に出します。予算外のお金がなければ動けないという点で、行政の基金も同じ構造だと重ねます。
何から着手したのか、大学とも重なる合意形成
木原さんは、どこに予算を配分し、誰を当てるかを考えてここまで来たのだろうと関心を寄せ、何から着手したのかと問います。小笠原さんは、その詳細は本に書いてあるのではないかと応じます。
原資をどう作るかについて、小笠原さんはコストを落として余力資金を生むか、歳入を上げて投資できるお金を作り出すか、そしてそれを何に使うか、という順で整理します。
借金を減らせば、市債にかかる利息もその分減るはずだと小笠原さんは見ます。金額の規模が大きいだけに、利息の軽減だけでも効果は大きいという見立てです。
小笠原さんは、この構造は大学や学校にも似ていると投げかけます。木原さんも強く同意します。
木原さんが高島市長をすごいと感じる理由は、大学で働く自身の立場と重なるからです。多くのステークホルダーがいる中で、合意を取りながら決断し、時には反発を承知で決断して後から納得させる必要があるという点です。
大学の場合も本当に似てて、ちっちゃいことでも合意取って進めていかないと反発がかなり大きいので。
小笠原さんは、周りから聞いた話として、高島市長が自分は素人だからと有識者会議を活用したと紹介します。財政の専門家や民間の経営者に、歳入歳出の構造の洗い出しを最初に手伝ってもらったといいます。
そのうえで行財政改革プランのようなものを作って進める方向になったのだろうと小笠原さんは推測します。そして、それをやれている学校法人があるかと問い直します。
反発は「見てもらっている」証拠
木原さんは、高島市長が周囲からそれほど嫌われているイメージがない点にも触れます。小笠原さんは、市長になったばかりの頃は周りからだいぶ反発があったのではないかと見ます。
木原さんも、周りに理解されることばかりをやっていたら今の状態にはなっていないはずだと応じます。理解できないことや今すぐには考えられないことに着手した結果が、今の福岡市の成長につながっているという見方です。
ここで小笠原さんは、反発というものの捉え方を提示します。反発を受けるのは、ある一つの視点からチェックされている、つまりやろうとしていることを見られているということだと言います。
小笠原さんは、その視点からの意見に偏るのが良くないだけで、あくまで意見として受け取ればいいと続けます。自分がやろうとしていることと、それをされると困る視点の両方を見て考えるのが、きっと政治と呼ばれるものだと語ります。
小笠原さん、それできるんですか?
できひんからなってないんでしょうよ。
改革を決めたなら、意見の重みは最初から違う
小笠原さんは、最初にしかないチャンスがあると指摘します。よく知らない素人だからこそできること、知りすぎていないからこそ出せる意見があるという考え方で、これは高島市長も本の中で書いていたといいます。
新しい視点で動けば、これまでを知っている人からすると違和感が生まれる場面が出てきます。それでも改革すると決めているなら、どちらを優先すべきかという話だと小笠原さんは言い切ります。
今までを知っている人の意見と、新しく考えている人の意見は、最初から重みが違うはずだと小笠原さんは述べます。それを無理にフラットに見ようとするから悪感情が生まれるだけだという見立てです。
選挙で市民が選んだように、大学でも改革しようという人が理事長に選ばれたのなら、改革する前提でないとおかしいと小笠原さんは論を進めます。だからこそ、新しい意見と従来の意見の重み付けを最初に決めないと、逆にアンフェアだと言います。
それできたらいいけど、できるんすかね。
小笠原さんは、変えたら困る人たちからの、意識・無意識を問わない妨害を恐れることこそが一番の敵だと語ります。それを恐れなくていいようにするために、最初に重み付けをしておくべきだという主張です。
ルールチェンジする、ゲームチェンジするんですもん。改革するってことは。
重み付けをしないと、より良くしようと意思決定して頑張ろうとする側が損をしてしまうと小笠原さんは指摘します。木原さんも、それをやってくれたらいいと応じます。
自分たちの学園も、どこかで考え方を変えている
話は自分たちの組織に向かいます。木原さんは、自分たちの大学は反発が少なく応援してくれる方だと語ります。小笠原さんも、割とできている方だと同意します。
小笠原さんは、自分が入る前の話だとしても、この学園がここまで伸びてきたこと自体が、どこかで改革してきた証拠だと見ます。
これってどっかでなんか改革してますよね。
考え方を変えなければ、これほどの伸び方をするのはおかしいと小笠原さんは言います。その時どこかで、意見の重み付けのようなジャッジがちゃんとあったのではないかと推測して、この回を締めくくります。
まとめ
福岡市の16年を公表された数字で追うと、コストを下げ、収入を増やし、借金を返すという流れが見えてきます。小笠原さんはそれを「教科書通りの経営」と表現し、反発は「見てもらっている」証拠だという視点も示しました。次回に続きます。
- 高島市長は4期16年で退くと表明。1万人以上の組織のトップが自ら降りる選択に二人は注目した
- 市政信頼度は2010年の41%から2025年の84.2%へ。市税収入や財政調整基金も大きく伸びている
- 改革は、コストを下げ収入を増やして借金を返すという流れで進み、小笠原さんはこれを「教科書通り」と評した
- 反発は、やろうとしていることを見られている証拠であり、意見として受け取ればよいと小笠原さんは語る
- 改革すると決めたなら、新しい意見と従来の意見の重み付けは最初から違うはずで、それを決めないとアンフェアになる




