最初の提案が通らなくても、なぜ前に進めるのか
すがけんさんは、100万円の広告商品を束ねて10億円で提案した経験を振り返ります。後編の話は、その最初の提案がほぼ通るはずのない内容だったという告白から始まります。
本当に最初の最初の提案は多分相当ひどくて、何か100万円に毛が生えたような提案を持ってって、10億円分束ねて、10億円分くださいみたいな話をして、もうはなからダメみたいな。
それでもすがけんさんは、断られた場で「ダメな理由」を必ず3つ聞いて帰りました。1000個くらい直さなければ10億円には届かないと思っていた課題が、実は3つでかなり解消されるとわかったといいます。
最初に返ってきた理由は、実績や、予算を増やすほど効果が上がる根拠といった、当たり前で本質的なものでした。すがけんさんは、これを会社員が上司に出世の条件を事前に聞くことにたとえます。
サラリーマンで言うと、上司にどうやったら出世できるか3つ教えてくださいって言ってるようなもんじゃないですか。
後出しでマルかバツかの評価を受けるのではなく、先にマルの条件を聞いてから動く。そうすると、すぐに対応でき、相手が満足する品質の水準もわかるというのが、すがけんさんの説明です。
3社に断られ4社目で受注、何が変わったのか
すがけんさんは、聞いた3つの課題をおよそ2週間で直し、次の会社に提案しました。年間100億円という目標があったため、時間をかけられなかったといいます。
2社目でも断られましたが、同じ課題はもう出てきません。新しい3つが返ってきて、それをまた直すという繰り返しの結果、すがけんさんの提案は4社目で受注に至りました。
図のとおり、すがけんさんが実際に直した点は10個ほどでした。1000個ではなく10個ほどで満たせるという気づきが、この経験の大きな発見だったといえそうです。
課題を直す過程で、すがけんさんは決裁者が誰かも見えてきました。10億円を決裁できるのは、年間の広告費が100億円ほどある上場会社の経営者に限られていたといいます。
広告部長と経営者は、何が違うのか
すがけんさんによると、上場会社の社長は広告費を適正に使えるかと同じくらい、株価を上げたい、社内の人を育てたい、データを有効に活用したいといった関心を持っていました。
広告費をちゃんと使いたい
業績を良くしたい。そのために商品、働く人、データ、広告費をどう使うかを考える
この違いがわかってから、すがけんさんは経営者の質問の意図をくみ取れるようになりました。「そういうことを知りたくてこの質問をしているのか」とわかるようになり、ブレイクスルーした感覚があったといいます。
川原さんは、相手の勘所がわかり、回答にも慣れ、それに合わせた商品になったからこそ、相手が「それだよ」となったのだとまとめます。実際に4社目の経営者は「やろうよ」と応じ、すがけんさん自身も驚いたそうです。
失敗を成功に近づく合図と考えられるか
すがけんさんは、3回断られたことを「そろそろうまくいく」合図と捉えるべきだと話します。失敗は成功に近づいている、というイメージを持つことが大切だという考えです。
3回断られてるんで。でも3回断られてるってことは、4回目も断られるわけじゃなくて、3回断られるってことはそろそろうまくいくっていう風に考えた方がいいですよね。
すがけんさんは、薄利多売から厚利少売へ移ろうとする人ほど、おっかなびっくり始めて少し間違え、「やっぱりうまくいかない」と薄利多売に戻りがちだと指摘します。
すがけんさん自身は後に引けない状況だったため、前に進むしかありませんでした。前に進む前提なら、失敗は正解に近づいているだけで、むしろ喜ばしいことだといいます。
値段は1.2倍ではなく10倍に上げる理由とは
すがけんさんがいつも「値段を極端に上げろ」と言う理由は、10倍にすれば相手が今のお客さんではなくなるからです。
1.2倍の値上げ。今のお客さんから余計にお金をもらう方法を考えるため、罪悪感が湧く
10倍の値上げ。新しいお客さんがなぜ無理なく払いたいと思うのかを考えられ、リセットができる
すがけんさんの場合、この転換はおよそ半年でできるようになりました。その間は大変だったものの、10億円で一度売れてからは受注率が30%になったといいます。
川原さんは、100万円の商品を1000回売ってたどり着く境地に、「やろうよ」の一言で届くのだと驚きます。すがけんさんはこれを、ロールプレイングゲームにたとえました。
なんかスライム倒してレベルアップしてレベル100まで行こうと思ってたら、なんか4回ぐらい倒したらレベル100になっちゃうみたいな。
川原さんは、スライムを倒し続けても相手の要望や視野が変わるので、結局レベル100にはたどり着かないと応じます。すがけんさんも、相手に喜んでもらえるかどうかは実際に相手に会うしかないと話します。
10億円を払う経営者に、なぜ会えるのか
川原さんがどうしても聞きたかったのは、100万円の顧客リストにはいない経営者に、なぜ会えるのかという点です。すがけんさんは、多くの人が真逆のことをしていると答えます。
すがけんさんによれば、多くの人は商売では売る側が得をすると考えています。そのため、会いたいと言うことにやましさを感じ、相手に得がないから会えないと思い込んでしまうといいます。
すがけんさんの提案は、当時100分割ほどで代理店に発注されていた広告費10億円を一本にまとめるものでした。分散していたデータとノウハウが発注元に蓄積され、全ブランド共通の買い方ができるようになる、いわば購買部 ── 企業で部品や備品などの調達を一括して担う部署。まとめて買うことで、価格や品質の条件を有利にしやすくなりますの発想です。
ネジ買うのに分割発注する必要ないわけですよ。一番安いネジ買えばいいだけだから。だから相手が得してるんですよ。
すがけんさんは、商売とは本来、お金を払った側が商品やサービスで人生を変えていくゲームだと話します。売り手が自分にお金が集まるゲームだと勘違いすると、値上げにもやましさを感じてしまうといいます。
紹介を頼まれる側は、何を嫌がるのか
すがけんさんは、売り手の得だけを考えた紹介依頼が失敗する理由を、川原さんを例に説明します。「これを買ってくれたら僕が得する」という頼み方では、紹介する側は人脈がすり減ると感じてしまいます。
紹介する側にとって、人脈は何年もかけて積み重ねたものです。そこへ売り手が「20%払うのでお願いします」と言えば、かえって怒らせることになるとすがけんさんは指摘します。
20パー(の手数料)のために俺の信用傷つけようとしてるみたいな。安く買おうとしたみたいなね。
すがけんさんは、仮に100%払うと言われても嫌だと続けます。相手が買わなければ報酬は入らず、時間を使わせた申し訳なさも残るからです。
こうした頼み方では、紹介者は「会ってやってくれませんか」と頭を下げることになります。社長も紹介者の顔を立てて会うだけで、話を聞いてくれないというのが、すがけんさんの言う失敗する紹介です。
紹介したくなる頼み方とは
すがけんさんは、紹介したくなる頼み方を実演します。相手企業の社長が就任3年目で、IRで広告費の適正化や社員の総力を挙げることを掲げている点に触れ、広告費の見直しで利益を増やし社員が活躍する方法があると伝えるものです。
多分彼にメリットあると思うんで、一回紹介してもらえません?
えーわかったわかった、じゃあするわってなっちゃった。なったわ。なっちゃった。
川原さんは、知っているか知らないかで大きく変わる可能性がある話だから紹介したくなると話します。すがけんさんも、相手が得をする話なら紹介した人が喜ばれるかもしれないので、誰でも会えるようになると説明します。
紹介者は人脈がすり減ると感じ、相手は顔を立てて会うだけで話を聞かない
紹介者は喜ばれるかもしれないと感じ、相手にとって知る価値のある話になる
10億円でも得するレベルとはどこか
川原さんは、紹介を自信を持って頼めるのは、相手が欲しいものになるまで提案を磨き上げているからだと気づきます。すがけんさんは、断られた理由への答えは、相手が10億円でも得をする条件を教えてくれているのだと話します。
え、これここまでできたら10億円払ってでも御社が得すると思えますか?って聞く。
すがけんさんは、10億円を払って11億円分の価値になるだけでは足りないと考えています。10億円が15億円、20億円分くらいの価値になると思えたところで、ようやく提案のゴーサインを出すといいます。
川原さんは、こうした提案こそ受けたいものだと評し、「それは厚利少売だ」と応じました。相手が羨ましいほど得をする提案が、すがけんさんの仕事の基準になっています。
得をしたお客さんが、次の仕事を呼ぶのか
すがけんさんによると、お客さんが得をすればリピートが続き、その会社は右肩上がりに伸びます。伸びている会社を見ている他社が理由を知り、今度は紹介してほしいと頼まれるようになるといいます。
すがけんさんは、同業の広告代理店から、なぜ小さな会社が大きなクライアントと仕事ができるのかとよく驚かれるそうです。通常クライアントが嫌がる事例公開も、すがけんさんの依頼では断られたことがないといいます。
その理由について、すがけんさんは、取り組みが最先端で今までにないものなので、担当者自身も世間に知らせたいし出世にもつながるからだと説明します。結果が出る前も出た後も広めてくれるため、業界で評判が広がり、仕事をしたい会社が集まるようになったそうです。
相手が得をする
お客さんが成果を感じてリピートする
会社が伸びる
他社が注目し、理由を知りたがる
事例が広まる
担当者も取り組みを発信したくなる
依頼が集まる
仕事をしたいお客さんが向こうから来る
川原さんが「あまり人と話さないすがけんさんが出来上がる」と笑うと、すがけんさんは、人と話すとやろうとなってしまうので「本当にやります?」「僕高いですよ」と伝えていると話します。
値下げではなく、変化を売るとはどういうことか
すがけんさんは、100万円の商品より10億円の商品のほうが魅力的で、10億円以上の結果が返ってくると思えたし、実際にそうなったと振り返ります。値下げを突き詰めればゼロ円に近づき、返す価値もゼロになるため、やる必要はないといいます。
川原さんが「一つ一つ聞くと全部普通なのに、なぜこうじゃない世の中なのか」と感心すると、すがけんさんは自分が作りたいものを一言で示しました。
すがけんさんにとって商品やサービスは何でもよく、相手が得をして変化することが目的です。商品やサービスがあると、それに特化して売らなければならないため、究極形として無形の「アドバイス」になったと話します。
川原さんはこれを「変化そのものを売る」と言い換え、商品を持たないほうが役に立てる幅が広がるのだと応じました。
薄利多売に引き戻されないためには
すがけんさんは、薄利多売か厚利少売かは思想の違いだと話します。頭の中にある当たり前を崩しながら進まないと、日々は楽な薄利多売に戻ってしまうといいます。
すがけんさん自身は、1年で100億円を作ると決めて逃げ場なく始めたため、引き戻されずに済みました。だからこそ、話を聞きながら実践し、何度か失敗しても諦めずに続けることが、薄利多売を抜け出すチャンスになると語ります。
番組の最後には、11月24日の出版記念イベント『厚利少売』の案内がありました。川原さんとすがけんさんは、「価値は相手の変化量」という考えのもと、参加者に自分がどんな人かを見せてほしいと呼びかけています。
まとめ
すがけんさんが単価を1000倍にできた背景には、断られるたびに理由を聞いて提案を磨き、相手が10億円でも得をすると思える水準まで高めた積み重ねがありました。相手の得を中心に置くことで、経営者に会うことも、紹介や事例公開も自然に進むようになったと語られています。
- 断られたら「ダメな理由」を3つ聞き、直してから次の会社へ提案する
- 3回断られることは、成功に近づいている合図と捉える
- 値上げは10倍単位で考えると、新しいお客さんの視点でリセットできる
- 紹介は売り手の得ではなく、紹介先が得をする話として頼む
- 10億円が15億〜20億円分の価値になると思えるまで提案を磨く

