評価5.0のガイドが抱える「差別化したい」という悩み
今回はマスタークラス参加者を招いた公開お悩み相談の回です。1人目のゲストは、金沢でインバウンド向けの英語ツアーガイドを個人で営むゆりさん(村井ゆりあさん)です。
ゆりさんは金沢の地元の人にインタビューし、英語に訳して届ける英語ポッドキャストも自ら運営しています。
予約プラットフォームでの評価は5.0満点。レビューは106件あり、金沢の132社中5位という実力者です。
相談内容はこうです。通訳案内士の資格、元シドニー在住の経歴、英語ポッドキャスト、着物店との連携など手持ちの武器はいろいろあるのに、商品が街歩きツアー中心で他社と似てしまっている、というものでした。
ゆりさんの仮説は、利き酒師の資格を取って夜の日本酒バーホッピングツアーを作れば差別化できるのではないか、というものです。昼と組み合わせれば1日2本回せるし、酒蔵と違って予約の主導権も持てる。ただ資格取得の費用と時間に見合うか不安だと話します。
ゆりさんはさらに、正看護師として働いた経験も混ぜられないかと考え、ツアーのタイトルを変えたりもしていると付け加えました。
ちなみにそれはやってみてどうだったんですか、効果的には
あんまり
Airbnbを伸ばせば売上は倍になる、という整理
すがけんさんはまず状況を整理していきます。ゆりさんは主にバイアターから集客していて、Airbnbではまだレビューをほとんど得られていないといいます。
手数料はAirbnbが20%、バイアターが30%。取られる割合はAirbnbのほうが少ないものの、実績があるのはバイアターなので、そちらから客が来るという構造です。
すがけんさんは、世の中的な規模は両者ほぼ半々だという点に注目します。
じゃあ頑張れば、Airbnbを頑張れば倍になるってことね
バイアターと同じ実力をAirbnbで発揮できれば、そのぶんの客が新たに来る。それだけで売上は2倍になる、という指摘です。差別化を考える前に、伸ばせる余地がすでにあるという整理でした。
なぜ差別化したいのか、数字が見えない
話は本題の差別化に移ります。すがけんさんが繰り返し問うたのは「差別化して何が変わるのか」でした。
差別化するとなんかいいことあるんですか
ゆりさんは、同じような街歩きツアーが並んだとき、内容がパッと見変わらないのに高ければ安い他社に流れてしまう、と懸念を説明します。
何かのために差別化したいんで、差別化なんか別にしたくないんですよ
差別化のために差別化をしたいわけじゃないから、何のためにしたいのかが見えなくて
すがけんさんは、一位になりたいわけでも、単価を上げたいわけでも、申し込みを2倍にしたいと書いてあるわけでもない、と指摘します。差別化は手段であって目的ではない、という整理です。
ゆりさんが挙げたのは、繁忙期と閑散期がはっきりしていて、閑散期の案件を増やしたいという数字でした。
でもそれきっと差別化じゃないよね
閑散期を埋めるより、繁忙期の単価を上げる
すがけんさんは、閑散期は金沢全体が閑散期なのだから、差別化しても客は増えないと指摘します。
むしろ需要が集まる繁忙期にこそ、選んでもらえて単価を上げられる仕組みを作るべきだ、という方向を示しました。
どっちがいいですか、ずっとパツパツに一年中なりたいのか
繁忙期に価格を倍にできれば、閑散期は休んでいても成り立つ。ホテルのダイナミックプライシングのように、主要ホテルの相場と連動して価格を変える発想もありうる、と例を挙げます。
ゆりさんはこの視点に気づいていなかったと話し、繁忙期により高利で、かつ選んでいただけるサービス作りを考えたいと言語化しました。
繁忙期により高利で、かつ選んでいただけるサービス作り
「時間2倍で値段2倍」は差別化ではない
すがけんさんは、ゆりさんの「他社より高い」の中身を掘り下げます。
他社さんと比較すると、時間も倍だけど値段も倍だよねだったりする高さっていう意味ですかね
全然高くないね。時間2倍働くんで値段2倍にしますっていうんだったら
時間が2倍で値段も2倍なら、時給は他社と同じです。それなのに割高に見られているのは損だ、とすがけんさんは指摘します。
目指すべきは、時間を半分にして値段を少し上げること。2.5時間で1.5倍の単価をもらえて、初めて付加価値と呼べる、という整理でした。
時給は他社と同じ。ただの労働集約で、割高に見られるだけ損になる
時間あたりの価値が上がり、初めて付加価値と呼べる
「私しかできないこと」を問われて言葉に詰まる
すがけんさんは、ゆりさんに付加価値の中身を問います。ゆりさんは、地元の人間として本やインスタに載っていない店や路地を知っている、地元の人と近づける、と答えます。
それはでも他もやってるんでしょ
すがけんさんは、自分はすごいと言っても「他もやっているのでは」と聞くと「やっている」となるものは、すごくはないと切り込みます。客も調べれば分かってしまう、という指摘です。
ゆりあさんしかできないことって何なんですか
私と話ができることですかね
それはだいぶ逃げちゃってるよね
看護師免許についても、すがけんさんは「それは何が嬉しいのか」と問い続けます。ゆりさんは、夏の熱中症の初期対応ができる、安心感があると言われた、と答えますが、語尾は「かな」「でしょ」と曖昧でした。
要は全然お客さんのことをまだあんまり向いてないで、なんかいけるっしょと思って考えてません
看護師免許より、車の免許のほうが嬉しいかもしれない
すがけんさんは、顧客が本当に求めているものへ視点を移すよう促します。客は金沢を知るのに5時間かけたいわけではなく、2.5時間で済むならお金を払いたい、という前提です。
看護師免許持ってるより車の免許持ってる方が嬉しいかもしれない
細い道でタクシーが通れなくても、自分なら4名までスイスイ回れる。効率よく回れることのほうが、客にとっては魅力になりうる、という例です。
資格という自分の武器を足す発想ではなく、お客さんの欲しいものを経験から見て、本当に何が価値なのかを教えてほしいという問いかけでした。
金沢を回りたい客は、一人もいない
すがけんさんは、BtoBのツアーで、事前に顧客のことをほとんど聞いていなかった点を突きます。ゆりさんは、どこを回りたいかは聞いても、客自身のことは会ってから聞くことが多かったと認めました。
会ってからできることって少ないじゃん
そのうえで、すがけんさんは核心を突きます。客はツアーそのものを目的にしているのではなく、その先にある目的のために金沢に来ている、という指摘です。
金沢を回りたいっていう目的は多分、誰一人持ってないんですよ
仲良くなりたいなら行く場所や順番があるし、酒蔵を見たいなら連れ回すより酒蔵をじっくり見せたほうがいい。目的が分かれば、提供すべき体験も変わるという話です。
お客さんには目的があるんですよ
お金を稼ぎたいなら、自分ではなくお客さんに興味を持て
すがけんさんは、この日の相談を通して、ゆりさんの話に「私」が多く、「お客さん」が少なかったと総括します。
私の話が多くて、お客さんの話が少なかったんだよね
そして、プロとして最も重要なマインドセットを言い切ります。
お金を稼ぎたい人はお客さんに興味を持ちましょう。なぜならお客さんがお金を払うんで
私に興味を持つ人はうまくいきません。何の免許を持ってても
川原さんは、ゆりさんに人間的な魅力があることは100%伝わったとしたうえで、そのエネルギーの向きが大事だと振り返ります。
相手に使ってほしいな、そのパワーは。自分に向けないで
すがけんさんは、ちゃんとやれば一位になれると励まし、公開コンサルを締めくくりました。
まとめ
金沢のインバウンドガイド・ゆりさんへの公開コンサルは、資格や武器を足して差別化しようとする前に、その差別化が誰のためかを問い直す時間になりました。顧客の目的に興味を持つことこそが、価値の出発点だと示されています。
- 差別化は目的ではなく手段。何の数字を変えたいのかを先に定める
- 「時間2倍で値段2倍」は労働集約にすぎず、目指すべきは時間半分で価格据え置き
- 看護師免許のような自分の武器より、顧客が本当に求める「効率」や「安心」の解像度が大事
- 客はツアーそのものではなく、その先の目的のために来ている。目的から体験を逆算する
- お金を稼ぎたいなら、自分ではなくお客さんに興味を持つことがプロの前提







