ニューヨークに「銭湯」がようやく来た?
宮武さんは、ニューヨークファッションウィークが終わる頃にニューヨークへ入り、サンフランシスコを経て帰国しました。街中のポップアップも面白かったそうですが、宮武さんがまず挙げたのは、ニューヨークとシリコンバレーで流行している「バスハウス」です。
宮武さんによると、バスハウスとはサウナやお風呂を楽しめる施設のことです。サウナは少し前から流行していましたが、最近は銭湯のような浴場を設置する動きが出てきているといいます。
ようやく来た。
ようやく来ました。ようやく来ました。
ニューヨークのバスハウスはブルックリンやソーホーのあたりに何店舗かできているそうです。宮武さんが前を通った店は日本を強く意識していて、札があったり、「あかり」という日本風の店名が付いていたりしました。
お店入ったすぐにめちゃくちゃでかいポカリスエット専用の自販機があって。
わかってますね。
narumiさんは、夏のニューヨークは暑く、夕方に汗を流してさっぱりしたくなる瞬間があるのに銭湯がない、という不満があったと振り返ります。宮武さんは、ただしバスハウスはまだ一般層には広がっておらず、ファッションなどのトレンドを追う一部の層が行きたがっている段階だと話します。
裸の付き合いが怖いアメリカ人と銭湯文化
narumiさんが気になったのは、そもそもニューヨークの人はお風呂をどう考えているのかという点です。宮武さんによると、アメリカではシャワー文化が強く、お風呂に入る人もいるものの、基本はシャワーだといいます。
宮武さんは、アメリカにはこれまで公共浴場がほとんどなかったと話します。みんなで一緒にお風呂に入ることを、むしろ嫌がる文化だったからです。
宮武さんは以前、アメリカのクリエイターのグループが来日したときのことを例に挙げます。グループのメンバーは銭湯に行きたがっていたのに、実際にはかなり怖がっていたそうです。
「なんかどうしたらいいかわかんない」って。なんか「お互い裸見るのなんか気まずくないですか?」みたいな感じで。
宮武さんは、ドイツなどヨーロッパの一部には浴場文化があるものの、アメリカではなかなか見られないと補足します。さらに、タトゥーを入れているアメリカ人は、日本で銭湯に行きたくても行けない場合があるという事情にも触れています。
パスタもマカロニチーズも高タンパク化
バスハウスと同じくヘルストレンドの流れにあるのが、プロテインです。宮武さんは、アメリカではもう本当に何でもプロテイン入りになっていると話します。
narumiさんは、日本にもプロテインの流れが来ていると応じます。タンパク質の量をチェックして物を買う習慣がじわじわ広がり、いつも買っている粉のプロテインが1袋20〜30%すぐ値上がりしたといいます。
元々筋トレとかしててプロテインたくさん飲んでた人たちは、「このブームマジ困る」みたいなぐらい、言ってるぐらい値上がりはしてますね。
narumiさんによると、日本のコンビニではザバス ── 明治が展開するスポーツ栄養ブランド。プロテインパウダーのほか、手軽に飲めるプロテイン飲料もコンビニなどで販売されていますなどのプロテイン飲料のコーナーが大きくなり、ヨーグルトやお弁当、パン、サンドイッチにもタンパク質の表示が目立つようになりました。narumiさんは、プロテインを取ると筋肉がついて代謝が上がり痩せる、というイメージが定着してきたのではないかと見ています。
一方のアメリカでは、スーパーの棚のあちこちに「プロテイン」の文字が書かれているそうです。宮武さんは、大手パスタメーカーのバリラもプロテイン入りのスパゲッティを出していると紹介します。
narumiさんは、メーカーにとってプロテインは単価を上げるいい口実になると指摘します。そのうえで、プロテイン自体が高いため、今後はプロテインをちゃんと取れる層と取れない層に分かれていくのではないか、という怖さも口にしました。
宮武さんによると、アメリカでは食物繊維を加えるのも流行り始めています。ただし、本当に健康的なのかはわからず、とりあえず「入っている」と言っているだけの商品も多いといいます。
プロテイン入りのマカロニチーズがあって。
マカロニチーズを食うなと。
プロテイン入れたらカロリーゼロになると思ってるでしょ。
そうなんですよ。絶対そう思ってるんですよ。
トム・サックスが「勝手に作った」シャネルの店
ファッションウィーク中のニューヨークで宮武さんが訪れたのが、現代芸術家トム・サックス ── ニューヨークを拠点に活動する現代美術家。高級ブランドや宇宙開発などを、合板や段ボールといった身近な素材で手作り風に再現する作品で知られますのインスタレーションです。会場はソーホーあたりにあるサックスさんのスタジオでした。
インスタレーションの名前は「31 リュクサンブール」です。宮武さんによると、パリにあるシャネルのフラッグシップストアの住所にちなんだもので、ファッション業界の人ならすぐにピンと来るといいます。サックスさんはそれをオマージュして、シャネル風の店を「勝手に」作りました。
シャネルのスーツを彼がちょっと買えないので、彼がもう木でそれをスーツを作って、それを展示したんですよ。
宮武さんによると、トム・サックスさんがシャネルをオマージュするのは初めてではありません。1980年代か90年代ごろには「シャネルギロチン」を作ったそうです。サックスさん曰く、フランスの二大輸出物がシャネルとギロチンだから、無理やりコラボさせたという話です。
今回の店舗は、外から見るとシャネルの店のように見えます。ただし、ロゴは手書きで、商品は段ボール製、ジュエリーはレゴ製など、置いてあるものはすべて本物ではありません。
行列に並んでいた宮武さんは、通りがかりの人が本物のシャネルの店だと思い込み、外からシャネルを批判する場面に出くわしました。並んでいた人たちが「違うんですよ」と説得しようとしても、その通行人は全然理解してくれなかったそうです。
平日昼に60人が並んだ「PARKE」
ソーホーのいい場所で、こうした謎めいた展示やポップアップが数多く開かれているのも、ファッションウィークのニューヨークらしさです。宮武さんが外から見に行ったのが、PARKEというブランドのポップアップでした。
宮武さんによると、PARKEは今の女子高生や女子大生に一番人気があるとみられる、パーカーなどのストリートウェア系ブランドです。宮武さんは空いているだろうと考えて、ポップアップ初日の木曜午後2時半ごろに足を運びました。
六十人ぐらい並んでいて、全員もう若い女性の方々が並んでたっていう。
並んでいたのは女子高生や女子大生で、その日に出たニューヨーク限定コレクションを買うのが目的だったようです。宮武さんは、ニューヨークファッションウィークの公式ショーに合わせて多くの人が集まるため、街中でさまざまなブランドがポップアップを開いていると説明しています。
Spotify創業者の予防医療「Neko Health」とは
テック寄りの話題として宮武さんが挙げたのが、Neko Health ── Spotify共同創業者のダニエル・エクらが立ち上げた予防医療の会社。全身スキャンや各種検査を短時間で受けられる施設を運営していますです。宮武さんは体験できなかったものの、注目しているサービスだといいます。
Neko Healthを手がけるのは、Spotifyの共同創業者ダニエル・エクさんです。宮武さんによると、エクさんはSpotifyの仕事も続けながら別会社としてNeko Healthを起業しており、そちらでは社長ではありません。ヨーロッパで展開を始め、最近ニューヨークにも進出しました。
Neko Healthの施設では、体をスキャンして病気がないかを調べ、血液検査も含めたさまざまな検査を1時間以内に受けられるそうです。narumiさんは、人間ドックのようなものかと尋ねています。
一時間以内では本当にあのめちゃくちゃな量のテストをやってるらしいんですよね。
宮武さんは、体験した知り合いの投資家に話を聞きに行き、体験がすごく良かったという評判を得ています。血液検査を序盤に済ませ、最後にすべての結果がそろった状態で説明を受ける流れだそうです。narumiさんも、健康診断は半日つぶれるので1時間で済むならいい、と期待を寄せていました。
ポケカは投資対象?アメリカで熱を帯びるコレクタブル文化
宮武さんがもう一つ面白かったと話すのは、アメリカで人気が高まっているコレクタブル ── 集めて所有することに価値がある商品の総称。トレーディングカード、フィギュア、限定グッズなどが含まれ、転売や投資の対象になることもあります文化です。日本でいえば、トレカやフィギュアのように集めてコレクションしたくなるもののことです。
ああいうのをちまちま集めるのって僕らだけだと思ったんですけど。
もうもうもうその(集める)文化が今アメリカに来てるんですよ。
宮武さんの滞在中、マクドナルドはワンピースとスポンジボブのコラボハッピーセットを出していました。サンフランシスコでおまけだけを買える売り場を見に行くと、すでに完全に売り切れていたそうです。宮武さんによると、アメリカの人たちはワンピースが大好きで、転売まで起きているといいます。
宮武さんは、アメリカでは昔からスニーカーやスポーツのトレカはブームだったものの、最近はポケモンカードなどに人気が広がっていると話します。外でスポーツをしてビールを飲むアメリカ人、というnarumiさんのイメージに対しても、宮武さんは「変わってますね」と応じました。
宮武さんによると、ポケモンカードの人気の背景には投資意欲もあります。ポケモンカードの価格が跳ね上がり、S&P500の株に投資するより良い、というデータまで出ているそうです。宮武さんは、それが良い投資かどうかは別問題だとしつつ、それほど人気になっていると話しています。
コスメまでガチャに、Targetの「コレクタブル売り場」
集めたい気持ちに応えて、メーカー側の動きも変わっています。宮武さんは、アメリカでは何でもブラインドボックス ── 中身がわからない状態で売られる箱入り商品。開けるまで何が出るかわからない点が、日本のガチャと同じ楽しさを生みます化していて、最近はコスメやスキンケアまでガチャ形式で売られていると話します。
どんな色が出るかわかんないよ、唇に塗るのが。
本当にそんな感じで出してるんですよね。
宮武さんは、大手小売のTargetにもおもちゃ売り場とは別にコレクタブルコーナーができていると紹介します。そこにはトレカやブラインドボックスが大量に並び、日本のIPもすごく多かったそうです。
narumiさんは、宮武さんの報告には最新のものだけでなく、日本にもあったものがアメリカに広がっている意外性があって面白いと話します。銭湯の話と並べて「ガチャやって銭湯行ってるんでしょ」とまとめたnarumiさんの一言に、宮武さんもうなずいていました。
お香と抹茶ラテ、日本文化はビジネスチャンスになるか
宮武さんは、ここまでのトレンドを受けて、アメリカに日本のものがどんどん入ってきている今は日本文化にとってすごいチャンスだと話します。narumiさんは、日米の間でモノがすぐ行き来するようになり、差がなくなってきているのではないかと問いかけ、宮武さんも同意しました。
宮武さんによると、ニューヨークのイケている店ではお香が焚かれていて、アメリカのカフェにはほぼ抹茶ラテが置いてあります。抹茶ラテで大きく伸びているスタートアップもあるそうです。
どんどん日本企業が入ってこないと、アメリカ人はどんどんそこにビジネスチャンスを感じるので、どんどんどんどん取ってくるので。
宮武さんは、アメリカの人たちは真似もうまく、アメリカの消費カルチャーを知っているからこそローカライズがすごくうまいと話します。その例が抹茶ラテです。宮武さんによると、ほとんどのアメリカ人は抹茶をそのまま飲むと苦くてまずいと感じ、おいしいのは抹茶ラテだと認識しているといいます。
抹茶の飲み比べで1位になったのは?
宮武さんは、アメリカのあるメディア企業が行ったテストを紹介します。中国産の抹茶、日本で売られている普通の抹茶、日本の高級な抹茶を何人かのアメリカ人に飲み比べてもらい、どれがおいしかったかを聞いたというものです。
narumiさんの予想は、1位が日本の安い抹茶、2位が中国産、3位が高級な抹茶でした。宮武さんによると、苦みが強かった高級な抹茶が3位という点は正解で、1位は中国産だったそうです。
宮武さんが挙げた1位の理由は、フローラルな香りがしたからです。宮武さんは抹茶にフローラルを求めるのかと驚きつつ、アメリカでは抹茶の印象が日本と違うため、それに合わせたマーケティングや商品設計が必要になるのではないかと話しています。
最後に宮武さんは、次はサンフランシスコとLAに行くので、ニューヨークとは違う文化も報告したいと予告しました。早朝に江戸川でハゼ釣りをしてきたnarumiさんは、アメリカの人もハゼを釣るのか調べてきてほしいと頼みます。宮武さんは、お寿司も食べるようになっているので、5年後にはハゼ釣りも来るかもしれないと笑って返しました。
まとめ
今回の出張報告からは、銭湯、ガチャ、抹茶ラテなど、日本では日常的なものがアメリカのトレンドに入り込んでいる様子が見えてきます。宮武さんは、それを日本企業のチャンスと捉える一方で、アメリカの好みに合わせた商品設計が必要だと考えています。
- ニューヨークやシリコンバレーでは、日本を意識したバスハウスが一部のトレンド層に広がりつつある
- プロテインは日米で何でも入るブームになり、価格上昇や健康イメージだけの商品も生んでいる
- ポケモンカードやブラインドボックスなどのコレクタブル文化がアメリカで拡大し、Targetにも専用コーナーができた
- 抹茶の飲み比べでは中国産が1位になり、アメリカ向けのローカライズの重要性が示された


