なぜ番組名は「待てるラジオ」になったのか
児玉光史さんのPodcastは、この回からタイトルコールを「待てるラジオ〜悩める地方の経営者、人文書を読む〜」に変えました。以前の番組名は「地方経営者独白」でした。
児玉さんによると、マーケティング本や経営書は、感想をシェアする番組の形にはあまりうまく合わなかったといいます。そこで今後は人文書を中心に読んでいく、という思いを新しい番組名に込めています。
(経営書の本は)ちょっとあんまりこう、感想をシェアするにはうまくフィットしなかったので、「待てるラジオ」ということで、「悩める地方経営者、人文書を読む」と。
今回取り上げる本は、内田樹さんと近内悠太さんの対談本『自由より自在に生きる』です。番組で対談本を扱うのは、これが初めてです。
児玉さんは対談本の読みにくさにも触れています。通常の本は著者が読者に向けて書いているので比較的わかりやすいのに対し、対談本は2人の知識を前提に話が進むため、全体を掴むのが難しいといいます。
だから悪いってわけじゃなくて、故にこういろんな知識というか、いろんな観点がね、まあ見えていいなというふうに思いましたね。
「自由」ではなく「自在」とは何か
児玉さんはまず、本のタイトルにある「自由より自在」の意味を整理しています。本の中での自由とは、抑圧されている人たちが「抑圧がない状態がいい」と考えるものです。
ところが、自由になったらなったで退屈になったり、そもそも自由とは何かが捉えにくくなったりします。そこで出てくるのが「自在」という考え方です。
自在とは、自分ではない障害物がある中でもスイスイ進むことです。自分の意思で進むのではなく、周りから何かが来たときに無意識的に反応して生きる姿だと、児玉さんは説明しています。
抑圧されている人が、抑圧のない状態を望むもの。実現すると退屈になったり、捉えにくくなったりする
障害物がある中でも、周りからの働きかけに無意識的に反応してスイスイ進むこと
この考え方の背景には、内田樹さんが長く続けている合気道 ── 相手の力に逆らわず、その動きを利用して技をかける日本の武道。力でぶつかるのではなく、相手との調和を重んじる点に特徴がありますがあります。自我を捨てて体の反応に身を任せること、本の言葉でいえば「居着かない」ことが、対談の中心になっていると児玉さんは紹介しています。
本は多くのテーマに次々と展開していくため、児玉さんは一つずつ解説するのではなく、テーマとは関係なく自分が見つけたものを3つ取り上げる、という方針で話を進めます。
「壊すエネルギー」はなぜ強く見えるのか
1つ目は「壊すエネルギー」です。本の中では、いい意味でも悪い意味でもエネルギーがあるように見える人は、今の世の中を壊そうとしている人であることが多い、と語られているといいます。
本によれば、物事を作るのに100のエネルギーが必要だとしたら、壊すのは1くらいで済むそうです。児玉さんはこれを積み木やドミノにたとえています。
ドミノ並べるのは大変だけど、まあそれを全部壊しちゃうのね。一個ポーンって押すだけで壊れるみたいに、結構強く見える人は、壊そうとしていると。
人は強そうに見える人になびきやすいものです。だからこそ、時間のかかる「作ること」を見逃さずにやっていかなければいけない、と児玉さんは受け止めています。
児玉さんはこの話を会社経営にも重ねます。スタートアップのピッチでも、「既存の仕組みをぶっ壊してこれをやる」という発表のほうがエネルギーがあるように見える、というのです。
だけどこう、今までやってきたことに少し上積みしてこういう価値も提供するってなると、あんまりこう、活力があるようには見えないみたいなね。でもどっちも大変だし。
児玉さんは、壊して新しいものを作ることを否定しているわけではありません。ただ、かけた労力と提供できる価値で見れば、壊してから新しく作る試みが成立するほうがまれだとも話しています。
そのうえで児玉さんは、積み上げてこれもやるという仕事にも価値があると述べます。壊す話は単純にエネルギーがあるように見えるので、そこには気をつけなければいけない、というのが1つ目の気づきです。
読書は「そういえば」を思い出すだけでいい?
2つ目は「そういえばこんな話を思い出した」です。本の中で、内田樹さんが行っている読書会について触れた箇所があります。
内田さんの読書会では議論もしますが、その本を読んで「そういえばこんなことを思い出した」という話を共有することもあるそうです。児玉さんはこれを読んで、読書はそれでいいのだと感じたといいます。
この番組も、本を一つずつ解説するのではなく、児玉さん自身が何を思い出したかを話す形をとっています。同じ本を読んだ人が、児玉さんの話からまた別のことを思い出してくれれば、それが価値になるという考えです。
なんとなくこう、肩の力が抜けた、うん、力まなくて良くなった一節ですね。
児玉さんにとって読書は自由なものです。自分なりに解釈してもいいし、何かを思い出すだけでもいいし、何も思い出さず得るものがなかったとしても、それはそれで一つの価値だと語っています。
経営は「管理」より「同期」で考える
3つ目は「同期させる」です。『自由より自在に生きる』では、同期というテーマに多くのページが割かれていると児玉さんは紹介しています。
本で挙げられる同期の例は、阿吽の呼吸や、店員さんを呼ぼうとしたら呼ぶ前にこちらを見て来てくれた、といった場面です。児玉さんは、スピリチュアルなゾーンの話のようにも読めると話しています。
その中で児玉さんが目を留めたのが、学校の先生の話です。先生は生徒を管理する立場ではなく、同期する立場に立ったほうがいいのではないか、と本には書かれているといいます。
同期の例としては、馬の群れが一斉に同じ方向に走ることや、学校のクラスで一斉に笑いが起きたり、みんなが同じタイミングで勉強に集中したりすることが挙げられています。
児玉さんはこれを会社経営に重ね、従業員を「管理する」という表現を「同期する」に変えていくのもいいと考えました。一人ひとりの箸の上げ下げまでマイクロマネジメントするより、全員が同じ方向を向く状態をつくるという発想です。
みんなで一緒に、例えばTikTokの動画とかを撮ったり、ライブをやったりするみたいな。今うちの会社そうなってますけど。
一人ひとりの箸の上げ下げまでマイクロマネジメントする
TikTokの動画撮影やライブのように、全員が同じ方向を向くように動く
児玉さんは、すぐにマネージャーたちへ「同期しよう」と言うつもりはないと話しています。そのうえで、管理と同期の意味合いをうまく使い分けることを、今後の経営の姿勢として挙げています。
多岐にわたる対談本の楽しみ方と次回の一冊
この回は、意識的に収録時間を短くしてみた回でもあります。児玉さんは『自由より自在に生きる』について、話題が多岐にわたるため、一つずつ考えれば読み応えがあり、さらっと読んでもいろいろな話題が目に入る楽しい本だと評しています。
ほかにも記憶に残った話は多いものの、今回は3つに絞ったといいます。児玉さんは、同じ本を読んだ人と感想を話し合えたらいいと考えつつ、自分自身も他人の感想を聞くことはまだできていないので、そういうこともやってみたいと語りました。
次回取り上げるのは、近内悠太さんの『世界は像でできている』です。児玉さんにとって人生の一冊といえる本で、10回目くらいの再読になるかもしれないと話しています。
まとめ
児玉光史さんは対談本『自由より自在に生きる』から、壊すことの見えやすさ、読書で思い出したことを共有する価値、管理より同期という言葉の3つを拾い、自身の経営と番組づくりに重ねました。
- 「自由」が抑圧からの解放なのに対し、「自在」は周りに無意識的に反応してスイスイ進む生き方として語られる
- 作るのに100のエネルギーがいるのに対し、壊すのは1で済むため、壊す人は強く見えやすい
- 積み上げて新しい価値を足す仕事にも価値があり、壊す話の勢いには気をつけたい
- 読書は、そこから何かを思い出すだけでも十分に価値がある
- 会社経営は「管理」だけでなく「同期」という言葉で捉え、両方を使い分けるのもいい






