「好きだから始める」だけでは危ない理由
今回のテーマは「起業はビジネスモデルで考えよう」です。ごうさんは、好きなことでお店を持ちたい、起業したいと思うこと自体はいいことだと前置きします。ごうさん自身も、それに近い形で事業を始めた一人です。
そのうえでごうさんは、好きだから始めるだけなら、やめたほうがいいのではないかと話します。始める前に、上手くいく理由やロジックを用意するかどうかで、続けられる確率が全然変わってくると考えているからです。
ごうさんによれば、大事なのは始めた後にどこへ向けて進み続けられるかです。起業して上手くいかない人のうち、まあまあな割合が、この詰めが甘かったのではないかとも話しています。
ごうさんは企業法務のキャリアを10年ほど積み、新規事業の誕生と終わりをたくさん見てきました。今は自分で事業を立ち上げているので、その実感も踏まえて、始める前に整理したいポイントを紹介していきます。
ごうさんの定義では、ビジネスモデルとは事業の仕組みです。誰に何をどう届けて、どう利益を残すのか。言い換えると、商売を続けるための設計図だといいます。
最初から全部完璧な計画である必要はないです。
ただ、ある程度の仮説でいいから、自分なりのうまく続けられる理由、これは持っておかないと、地図がないまま見知らぬところを歩き始めるようなもんで。
ごうさんは、設計図に求められる解像度は始め方によって変わると話します。違いは、後から軌道修正しやすいかどうかです。
店舗を持たない、スタッフを雇わない、借り入れをあまりしない。多少粗い設計図でも動き始めてよく、ごうさん自身はこちらのタイプ
店舗を作る・買う、人を雇う、借り入れを多くする。一発で成功しないと後々苦しくなりやすく、始める前の設計の重要度が高い
固定費・利益・市場は、始める前にどう見る?
ごうさんは、始める前に見ておきたい観点を10個にまとめています。1つ目は固定費 ── 売上の多い少ないにかかわらず毎月かかる費用のこと。家賃や人件費、通信費などが代表的ですです。家賃や人件費のように、売れている月も売れていない月も払う必要がある費用を指します。
ごうさんは、固定費をいかに抑えられるかが事業の生存率にめちゃくちゃ関わってくると話します。頭では分かっていても、始めてから体感で実感してくる部分だといいます。
2つ目は利益ないし利益率です。売上から固定費を引き、仕入れのある業態なら仕入れの原価も差し引いて、どれだけ残るかを見ます。
ごうさんがすすめるのは、原価率から逆算するのではなく、自分の生活に必要なお金から考える方法です。月にいくら必要か、今後どれぐらい欲しいかを出発点にして、必要な利益を決めます。
必要な生活費
月にいくら必要か、今後どれぐらい欲しいかを決める
必要な利益
固定費や仕入れ原価を引いたあとに、生活費分が残るようにする
販売数
月に何個売るかを考える
1個あたりの価格
費用と必要な利益を販売数と掛け合わせて、必要な販売価格が見えてくる
ごうさんによれば、月にいくらで何個売ったときに残る利益が生活費に届かなければ、その事業は持続できません。
3つ目は市場と競合です。似たお店がどれぐらいあり、どういう売り方で何を売り、どれぐらい伸びているかをチェックしておくべきだといいます。誰もやっていない業態は、誰もお金を払わないからやっていない可能性もあり、かなり慎重になる必要があります。
ごうさんの場合、わたあめはニッチなスイーツですが、探せばわたあめ専門店はなくはありません。コーヒーのように拡大する市場ではないかもしれないものの、市場が一応あることは既存のお店からざっくり把握できたといいます。
さらに、三豊や瀬戸内エリアにはわたあめ専門店がなく、全国にはパラパラある状況でした。そのため、このエリアでわたあめ屋をやるのは選択肢としてありだと見えたそうです。
逆に、この三豊エリアで、自分もわたあめをやるっていう人がもしいたとしたら、これかなり厳しくなってくる。
ごうさんがすでに三豊でのわたあめ屋として土台を作りつつあるため、後から参入する人はそれをひっくり返す動き方が必要になる、という理由です。
市場の観点では、技術や仕入れの情勢も関わってきます。5年前ぐらいなら、文字起こしやウェブサイト制作、アプリ制作はランサーズ ── 仕事を依頼したい企業と、フリーランスをつなぐ日本のクラウドソーシングサービスですのようなフリーランス市場の定番の仕事でした。ごうさんは、それがAIの登場で大きく姿を変えていると話します。
仕入れの例としては、コーヒー豆が収録時点で2倍、3倍と値上がりが続いていると聞いているそうです。ごうさんは、こうした動きがあること自体は悪くなく、分かった上でどう進み、どう対策するかをセットで考える必要があると話しています。
お客さんがあなたを選ぶ理由はある?
4つ目は自分の強みです。ごうさんはこれを、お客さんがあなたを選ぶ理由を持てているか、と言い換えます。
ごうさんは、コーヒーが好き、本が好きというのは全然いいと言います。ただしそれは売り手側の事情です。そのうえで、他にない特徴があるからお客さんがあなたの商品を買う、という強みを明確に持つ必要があるといいます。
5つ目は持続可能性です。始めることはエイヤの踏ん張りでもできますが、始めた後に続けられるかどうかまで見据えているかが問われます。
例えば体力がいる系のお仕事っていうのは、始めた時点では大丈夫だけども、それが1年、3年、5年、10年、もしかしたら20年先も同じようなパフォーマンスが出せますかということですよね。
ごうさんは、多くの人は体力やライフステージの変化で難しくなると話します。続けるのが無理な状況になっていないかを見る必要があるといいます。
持続可能性には、将来現れる競合も含まれます。参入障壁 ── 新しい事業者が市場に入るときの難しさ。設備投資、技術、ブランド、許認可などが高いほど、競合は増えにくくなりますが低すぎる領域では、上手くいった途端に競合が増え、最初は売れたのに全然売れなくなり、共倒れになる可能性もあるとごうさんは指摘します。
6つ目はボトルネック ── 全体の流れを止めたり遅くしたりする、最も弱い部分のこと。もとは瓶の首の細い部分を指す言葉ですです。何かが起きたときに事業が止まる要素がないかを確認します。
ごうさんが挙げる例は2つです。特定の仕入れ先に依存していて、そこに何かあると商品を作れなくなるケース。そして、自分自身が動けなくなると事業も止まってしまうケースです。
立ち上げの段階では、自分が推進力になって事業を動かすので、自分がボトルネックになっても仕方ないといいます。ただし、軌道に乗せた後もいつまでも自分がボトルネックのままにならないよう気をつけたい、とごうさんは話しています。
赤字の限界と、終わり方まで決めておく
7つ目は、どこまで赤字に耐えられるかです。事業が軌道に乗るまでは、どうしても払う部分が多い投資の時期になります。どこまでのマイナスなら続けられるかという体力を把握しておく必要があります。
ごうさんは、赤字でも、どの指標が伸びていれば今後伸びる予兆と判断して続けるか、という考え方もあると話します。そうした撤退の基準をあらかじめ決めておくことも、始める前に必要な要素だといいます。
8つ目は、終わり方と立て直しです。ごうさんによれば、新規事業の生存率は10%とも20%とも言われ、上手くいかない可能性のほうが高いものです。
一方で、上手くいった場合でも、何かの事情で自分がお店を離れるタイミングは来ます。その場合は、事業の売却や事業承継 ── 経営者が事業や会社を、親族や従業員、第三者などの後継者に引き継ぐことですといった終わり方もあります。だからこそ、上手くいくかどうかに関わらず、自分が離れるときを見据えたざっくりとした設計を持っておくべきだといいます。
撤退する場合についても、ごうさんは、その状況になってから考えるより、今の段階で被害を最小限に抑える撤退線を描いておくほうがいいと話します。さらに、お店が終わっても人生は続くので、その後どう立ち直るかまでイメージしておくことをすすめています。
誰かがこの辺り(撤退や立て直し)の責任取ってくれたりとか、考えてくれることはないんですよ。あくまでも自分の人生だし。
価値は「相手の変化量」で決まる
9つ目は、誰のどんな問題や課題を解決するのかです。ごうさんは、これが一番大事だと話します。お客さんがあなたの商品を選ぶのは、自分の悩みや課題が解決できると思うからだ、という理由です。
ごうさんはここで、経営アドバイザーの菅原健一さんの「価値は相手の変化量」という考え方を紹介します。お客さんの悩みが、あなたの商品を介してどれだけ解決するのか。その変化を何でどの程度起こすのかを定義する必要があるといいます。
ごうさんは、食事を例に挙げて説明します。同じお腹を満たす食事でも、求められる体験によって金額は大きく変わります。
| 場面 | 求めている体験 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| ただお腹を満たす | 空腹を解消する | コンビニの500円程度 |
| 誰かと楽しむランチ | 一緒に過ごす時間 | 1500円ぐらい |
| 大切な人の記念日 | 特別な思い出 | 1万、2万、3万円 |
ごうさんによれば、誰にどんな変化を届けるかで価値と価格が変わります。だからこそ、誰のどんな課題を解決するかという視点がめちゃくちゃ重要だといいます。
あなたの好きとかあなたの頑張りっていうのが、お客さんにとっての価値にはイコールの関係じゃないんだよ。
ごうさんは、自分の好きだけでやりたいのなら、趣味として続けることが一番の幸せにつながるかもしれない、とも話します。あくまでも、仕事として始めるときに欠かせないポイントだという位置づけです。
10個目の観点は、価値をどう届けるかです。広告やSNSでの発信、どんな場所で売るか、どんなパッケージにするかまで含めて、商品だけでなく届け方も設計する必要があるといいます。
ごうさんは最後に、10個の観点を振り返ります。
ごうさんは、やりたいで始める前に、仮説でもいいからうまく続けられる理由をできるだけ詰め、解像度を上げておくことがめちゃくちゃ大事だとまとめています。詳しく知りたい人がいれば、ごうさん自身の事例も交えて話したいそうです。
返事待ちの仕事と、移住先の家選びをどう考える?
後半はお便りのコーナーです。この番組では、AIに作らせた質問に人間からの質問も紛れ込ませていて、ごうさんはどれが本物か知らないまま答えています。
一人で小さな会社のチラシを作っています。お客さんの確認待ちで作業が止まることがあるのですが、納品日はそのままなので、返事が来ると自分が夜に作業して間に合わせています。催促すると急かしているようでつい待ってしまいます。GOさんなら相手の返事で自分の段取りが変わる仕事をどう進めますか?
返事待ち さんから
ごうさんの答えは、確認が遅れることが分かっているなら、それを前提にスケジュールを組むことです。納品日から逆算した最悪の確認期限にバッファーも加え、「ここまでに確認してください」と伝えるといいます。
ほかにも、遅れた分だけ延滞料を設計に入れる方法や、急ぐ必要がある場合は特急便のように追加料金をもらう方法もあるのではないか、とごうさんは話しています。
移住先で借りる家を探しています。景色が気に入った山間の家と、店や病院に近い街の中の家で迷っています。どちらも家賃を払える範囲で車も使う予定です。山の家には惹かれる一方、毎日の移動が負担にならないか気になります。GOさんなら気に入った家と暮らしやすさをどうやってすり合わせますか。
魚の上 さんから
ごうさんは、暮らしやすさに比重を置きつつ、自分が惹かれる要素も入れると答えます。二者択一ではなく、バランスの問題だという考えです。
ごうさんが住む三豊市仁尾町は、ロードサイド的なお店がなく、大きめの店に行くには車を走らせる必要があります。その一方で、父母ヶ浜 ── 香川県三豊市仁尾町にある海岸。干潮時の潮だまりに空が映り込む景色で知られる人気スポットですのような景色のいい場所や自然豊かなスポットがあり、面白い人もたくさんいるそうです。
ごうさんにとって仁尾町は、多少不便でも車で問題なく移動できる距離にあります。もっと山奥ならかなりしんどいだろう、とも話しています。
まずは自分でその似たような条件のところで1ヶ月、2ヶ月住んでみるっていうのがいいと思います。
ごうさん自身も、今の家を買う前に1、2ヶ月ほどシェアハウスのようなところに住んで感覚をつかんだそうです。移住後も元の拠点に戻る選択肢を持ちながら、好きな要素と便利さのバランスを確かめてきたといいます。
見せる作業、空いた時間、いつもの店をどうする?
綿飴を作っているところを子供がずっと見ていました。GOさんは人に見られながら作る時、作業に集中する感覚とお客さんに見せる感覚をどう行き来していますか?普段は意識していないなら、声をかけられた時にどんなふうに応じているか聞いてみたいです。
白いシャツ さんから
ごうさんの答えは、いっぱい作って数をこなすしかない、というものです。わたあめの仕事の前は一人で黙々と集中する仕事が多く、人前でのパフォーマンスはめちゃくちゃ苦手だったといいます。
最初めちゃくちゃバランス難しかったけど、もうこれはいっぱい数こなせば両方を同時にできるようになります。人間って不思議なもので。
今のごうさんは、視線はわたあめ機をまっすぐ見ながら、周辺視野でお客さんが何に興味を持っているかを感じ取っています。そのうえで、かける言葉やタイミングを選んでいるそうです。
急に予定がなくなって半日空くと、前からやりたかったことがあるはずなのに、何をするか迷っているうちに時間が過ぎます。GOさんは急に自由な時間ができた時、その時間の使い道をどう決めていますか?
空白の午後 さんから
ごうさんは、空いたときにやることのリストをなんとなく持っておくといいます。ただし、コンディション次第では休むことを優先します。
今はとにかく自分がやりたいように仕事をやっている、いうなれば全国大会目指している部活みたいなもんで、空き時間にはじゃあ自主練しようみたいな、それぐらいの動き方をしちゃっている。
ごうさんは事業の立ち上げフェーズにあり、休みらしい休みはほぼないそうです。本当は休みもきちんと設計すべきだと認めつつ、体が悲鳴を上げたときは休むようにしているといいます。
ごうさんは緊急度と重要度のマトリックス ── タスクを「緊急かどうか」と「重要かどうか」の2軸で4つに分けて整理する考え方。時間管理の手法として広く知られていますも紹介します。緊急度の高いものは普段からやっているはずなので、空き時間は「緊急ではないが重要なもの」に使うと後々効いてくる、という考えです。
初めての店に入ろうと出かけたのに、結局いつもの店、いつものメニューを頼んでしまいました。GOさんは遊びや食事で、知らないものを試したい気分と外したくない気分がぶつかった時、どう決着をつけますか?
いつもの関 さんから
ごうさんは、あの店のあの味を絶対に食べたいという明確な気分があればいつものものを選びます。そうでなければ、前から気になっていた店など新しいものを選ぶといいます。
僕も大体8割ぐらいいつものお店、いつものものを頼みがちなんだけど、油断するとそれが10割ぐらいになっちゃうから、危ない危ないと。
ごうさんは、自分の好奇心からも、仕事に活かせるものがないかという観点からも、たまには新しいものに飛び込もうと思っているそうです。
東京と横浜でのイベント出店のお知らせ
エンディングでは、2026年11月の収録時点での出店情報が告知されました。1つ目は11月22日に東京の有楽町駅前広場で開催される瀬戸内川丸です。大人向けのクラフトわたあめ「三豊ふわりと」を持っていくそうです。
2つ目は、横浜赤レンガ倉庫に隣接する新港中央広場で開かれるヨルノヨクリスマスゲート2026です。11月20日から12月25日まで開催され、初日は17時から、ほかの日は11時から21時ぐらいまでだといいます。
このクリスマスマーケットは本体の入場に料金が必要ですが、ごうさんが出店するのは入場無料のエリアです。支払いはキャッシュレス決済に指定されています。こちらでは「三豊ふわりと」ではなく、カラフルなフルーツわたあめや持ち帰り用のわたあめを用意するそうです。
まとめ
好きなことで起業するのはあくまでスタート地点です。ごうさんは、続けられる理由を仮説でも用意しておくことが大切だと話します。特に、店舗や雇用、借り入れのような軌道修正しにくい始め方ほど、10の観点で事前に設計しておく重要度が高くなります。
- 好きなことで始めること自体はいいが、上手くいく理由を用意するかどうかで継続の確率が変わる
- 固定費や必要な利益は、自分の生活費から逆算して価格と販売数を設計する
- 自分の好きや頑張りは、お客さんにとっての価値とイコールではない
- 価値は相手の変化量であり、誰のどんな課題を解決するかが最も重要
- 赤字の限界、撤退の基準、終わった後の立て直しまで、始める前に考えておく




