なぜ店舗ではなくマルシェから始めたのか
わたあめ職人のごうさんは、会社員から起業して自分の商品を作って売る側になったとき、会社員時代との大きな差を感じたといいます。
ごうさんの前職は企業法務というバックオフィス側の仕事で、未経験の分野への挑戦でした。商品開発、値付け、日々の仕事の回し方、PR、販促、接客のどれにも、想像以上のギャップがあったそうです。
大変なんだろうなとは思っていたけれども、これやっぱりね、想像以上のギャップ、差がありました。
それでも、ごうさんが良かったと振り返るのは、最初から店舗を構えたり人を雇ったりしなかったことです。
(最初から店舗や人を雇うことを)やってたら確実に失敗してたなというふうに思いました。
ごうさんにとって、店頭出店スタイルのマルシェは修行の場、ステップアップの場になりました。マルシェは場所もお客さんも毎回違い、期間は1日か2日ほどで、イベントの規模や主催者の集客力、移動・設営・撤収、天気にも左右される難しさがあります。
ただ、マルシェ出店には、その回の売り方を次の出店でブラッシュアップできるという大きな利点があります。ごうさんは、店舗やキッチンカーではこうはいかなかったと考えています。
出店ごとに売り方ややり方を試し、次の出店で修正できる
ハード面からコンセプトのようなソフト面まで、変更の壁が高い
ごうさんはこの違いを、ゲームのレベルにたとえています。店舗なら「レベル50」くらいで挑むことに、レベル0のまま挑戦することになっていたかもしれない、という見立てです。
商売レベルゼロのところからレベル1ずつ進めれた。
ごうさんは、やりながら変えられるPDCAのスタイルが、自分のような事業初心者にはとても合っていたと話しています。
売れるものがわからない状態から、どう試行錯誤したか
自分の商品を売り始めた頃のごうさんは、どんな商品が求められているのか、適正な価格帯はどこか、どう見せれば価値が伝わるのか、どんなコミュニケーションが正解なのかが、まったくわからなかったといいます。
ごうさんは、そうした一つひとつの試行錯誤をマルシェの場でしてきたと振り返り、これをスタートアップ界隈でいうピボット ── 事業の方向性や戦略を、検証結果をもとに大きく切り替えること。主にスタートアップの文脈で使われる言葉です的な考え方に重ねています。
オンラインの領域なら、計測してA/Bに分けたり、データで集計したりといった検証がしやすいものです。一方で、手触りのあるオフラインの商売で同じサイクルを回すなら、マルシェ出店が向いているのではないか、というのがごうさんの考えです。
前職がウェブ系だったごうさんは、オンラインでは数字が見えても、現場の肌感覚としての体験値は得にくいと感じています。マルシェでは、商品を買ったお客さんの反応をダイレクトに見て感じられるのが大きいといいます。
ごうさんによれば、マルシェで得られるフィードバックは購入者の反応だけではありません。お店の前を通るだけの人まで、あらゆるものが手がかりになります。
- 見たけど買わなかった人、そもそも見なかった人
- お客さんの年齢、性別、誰と一緒に来ているか
- どんなシーンで来ているか
- 会話だけでなく、視線や仕草
- 他のお店で買って手に持っているもの
そういうものが全部が、あの、自分の事業、商売、お店のフィードバックになるんですよ。
最初は漠然としか見えなかったお客さんの様子が、出店回数を重ねるごとに解像度を上げていったそうです。共通点に気づき、次の仮説を立てて試すサイクルが、徐々に回るようになりました。
仮説を立てる
売り方や見せ方について、自分なりの仮説を持って出店する
現場で確かめる
お客さんの反応や通行人の様子をフィードバックとして観察する
修正する
気づいたことをもとに、やり方を直す
また出店する
修正した内容を次の出店で試す
ごうさんは、セオリーとして当然のことを時間をかけて自分で見つけ直した部分もあるかもしれないと認めつつ、このサイクルを繰り返すこと自体がいい修行になったと振り返っています。
会社員こそマルシェ出店を試すべき理由とは
ごうさんは、マルシェで得た感覚や考え方、経験値は他の分野でも十分に役立つと実感しています。そのため、会社員の人には副業としてのマルシェ出店を選択肢の一つとしてすすめたいといいます。
マルシェは土日に開かれることが多いため、平日は会社で働き、土日に出店するスタイルも十分に可能だとごうさんは話します。
いわゆるマーケティングみたいな、要は勉強、知識レベルでの習得っていうのは、もうAIもあるし、ウェブ上でもいろいろね、ノウハウ本でもいっぱいあるんだけれども、
やっぱりその市場からの正直な評価っていうものっていうのはやるしか得られなくて。
ごうさんが大切だと考えるのは、会社の看板なしに自分の商品が売れるかを確かめる実践経験です。これは起業やお店をやるかどうかに関わらず、みんなが持っておいたほうがいいと話しています。
ごうさんにとってマルシェ出店は、経営者感覚を実地で経験できる場でもあります。独立の基盤にもなりますが、独立しなくても、ビジネスの全体像の解像度を上げて本業に生かせることに価値があるといいます。
ごうさんは、もし自分がいま企業勤めに戻ったとしても、ビジネス全体の中での自分の位置や、周りの人の視点への解像度が上がっているため、違うレベルで働けるだろうと考えています。
収録時点のごうさんは、いろいろな理由で出店比率を下げているそうです。それでも出店で得た知見が事業の土台になっているため、出店は今後も続けたいと話しています。
キャリアに行き詰まりを感じている人や、もっとレベルアップしたい人、将来自分のお店や事業を持ちたい人にとって、マルシェ出店は事業全般の基礎力を体験で身につけられる場になる、というのがこの回の本編の結論です。
元システム保守の広報担当は、頼まれごとにどこまで応じるべきか
後半はお便りコーナーです。この番組では、ごうさんがAIに作らせた質問に、匿名質問サービス「マシュマロ」に届いた人間からの質問を混ぜて答えています。
未経験の広報の仕事に転職して半年になります。前職はシステムの保守で、今も社内でパソコンの相談をよく頼まれます。頼りにされるのは嬉しいですが、気づくと広報の勉強や企画に使う時間が減っています。前の得意分野を生かしながら、新しい仕事でも力をつけたいです。Goさんなら以前の経験を頼られる仕事にどこまで時間を使いますか?
古い名札 さんから
ごうさんの現実的な答えは、まずこの状況を上司に共有して相談することでした。
今そういう状況をあなたの上司にね、共有して相談しましょう。
ごうさんは、広報の部署に配属されている以上、その人のリソースは広報部門の中で使うのが原則だと考えています。上司から見れば、他部署の仕事が勝手に差し込まれるのは困る、というのが会社というものだといいます。
システム保守の経験も生かしたいなら、兼務の形にして、業務比率を部門同士でオフィシャルに調整する方法をごうさんは挙げています。そうでなければ、広報をメインにして、受けきれない依頼は断ってよいという考えです。
できるから手伝うはもちろんね、素晴らしいし、一方でそれで本業の方がね、倒れちゃうのは本末転倒ではあるので、
やっぱりそこの優先順位付けは間違えない方がいいかなというふうに思いました。
移住先で仕事以外のつながりはどう作る?
地方に引っ越して、以前の会社の仕事を在宅で続けています。打ち合わせも全部オンラインで、平日は家から出ない日が増えました。仕事は済むのですが、会社以外の人と話す機会もなく1週間が終わるのが少し寂しいです。近くの共同オフィスを借りることも考えています。Goさんなら移住先で仕事以外の人との接点を暮らしの中にどう作りますか?
まどべえの机 さんから
ごうさんは、共同オフィスを借りるのもいいとしたうえで、自分なら趣味や学びの機会を作りに行くと答えています。
ごうさん自身は収録時点で、三豊にある瀬戸内暮らしの大学という学びの場で、スキルアップしたい領域の講座を受けているそうです。講師や他の受講者とコミュニケーションを取る機会にもなっているといいます。
ほかにも、土日を中心に近くへ足を運ぶことや、本編の話のように副業で発信者や作り手の立場で動くことで、会社以外の人の幅が広がるとごうさんは話しています。
世に出したものは、どこまで直すべきか
Goさんが仕事で作ったものに、後からこれは自分で直したいなと感じた時、もう世に出したものをどこまで直すか、どう考えていますか?実際に直したものでも、今はそのままにしているものでも、その判断の裏側を聞いてみたいです。
消しゴム さんから
ごうさんにとって、これはよくある悩みだそうです。わたあめのパッケージやパンフレットのデザインは、一度作るとよほどのことがない限りそのまま使い、直したい点は次の追加発注のタイミングで修正するしかないといいます。
ごうさん自身、性格的には完璧な状態で出したいタイプで、気持ちはよくわかるそうです。それでも、それでは何も進まないこともわかってくるといいます。
80点、もう最悪60点の場合かもしれない。
ごうさんの判断基準は、出したものを後から修正できるかどうかです。
多少慎重にならざるを得ない
さっさと出して、修正が必要なタイミングで直す
ごうさんは、このポッドキャストもエピソードのデータを後から差し替えられるらしいと話しています。真偽はまだ確かめていないものの、それができるなら完璧を目指さずにサクッと出すことを優先し、判断基準を緩めることもあるといいます。
AIがどの案にも賛成してくるときは?
AIに企画を相談すると、こちらが言い方を変えるたび、どの案にも賛成してくれて、かえって決めにくくなります。Goさんは自分の案を褒めてもらうだけではなく、弱いところを見つけたい時、AIとのやりとりをどう変えますか?
ふたつの画面 さんから
ごうさんの第一声は、弱いところを見つけてくださいとAIに言えばいい、というシンプルなものでした。そのうえで、AIがどの案にも賛成していると気づけることが第一歩だといいます。
(AIの賛成に)気づけないと、変にね、認知が歪んだまま暴走してしまうみたいな方に行っちゃうので、
ごうさんは、AIがイエスマン的になるのは仕組み上仕方ない面があると見ています。各社のAIサービスはユーザーに機嫌よく使ってもらう必要があり、厳しいフィードバックばかりでは使われなくなるからです。
そのためごうさんは、AIの立場や役割をこちらが明確に指示し、さらに自分の目的も伝えることをすすめています。賛成してほしいのではなく、目的のために中立的な評価が必要なのだと伝える、というやり方です。
僕はね、これ賛成して欲しくて使ってるわけじゃないんだと。
「最後の1個」に心が動いたらどう決める?
美味しそうなものが最後の1個になると、さっきまで迷ってたのに急に欲しくなります。買った後に隣の商品でもよかったなど落ち着くこともあります。Goさんは限定とか残り1個に気持ちが動いた時、どう買うか、どんな風に決着をつけますか?
最後の1個 さんから
ごうさんは、セールスライティングなどマーケティングの知識に触れてみることをすすめています。売り手が小賢しいという話ではなく、「残り1個」は売り方の手法の一つだという見方です。
ごうさんによれば、気持ちが動いている自分を認知することで、その先の行動が変わってきます。そのうえで、今買わなかった場合に後から中古で買えるか、他のもので代替できるかで判断が変わるといいます。
ごうさんは、どこかで聞いた名言として、値段で迷ったときの考え方も紹介しています。言葉を思い出しながらの説明でしたが、要点は次のように整理されています。
値段が最後の決め手なら、買わないほうがいい
欲しいもので値段だけが迷いなら、買ったほうがいい
要は、後から後悔するのはどちらかという見方もある、とごうさんはまとめています。もっとうまく答えられそうだったので、いい言葉を思いついたら後日触れたいとも話していました。
東京・有楽町と横浜のクリスマスマーケットに出店
エンディングは2026年11月6日の収録で、ごうさんは出店の告知を長めにしています。
1つ目は、前回まで話していた瀬戸内かがみ手用マルシェで、11月22日に東京の有楽町駅前広場で開かれます。
2つ目は、今回情報解禁となったよるのよクリスマスゲート2026への出店です。横浜赤レンガ倉庫の手前にある新港中央広場で開かれるクリスマスマーケットで、11月20日(金)から12月25日(金)までの全36日間という長期の出店になります。
営業は初日だけ17時スタートで、それ以降は11時から21時ごろまで、ラストオーダーは20時半ごろとのことです。出店エリアは入場無料ですが、支払いはキャッシュレスのみなので注意が必要だといいます。
持っていくのは、通常のマルシェで出しているカラフルなフルーツわたあめが中心になる予定だそうです。
まとめ
ごうさんは、店舗のような大きな投資をせず、マルシェ出店で仮説と修正を繰り返してきた経験が事業の土台になったと語ります。市場からの正直な評価は実際にやることでしか得られず、その経験は起業しない人にとっても価値があるというのがこの回の主張です。
- マルシェは出店ごとにやり方を修正できるため、事業初心者が「レベル0」から段階的に成長できる
- 購入者だけでなく、通り過ぎる人の様子や持ち物までが商売のフィードバックになる
- 会社員なら、土日の副業としてマルシェに出店し、会社の看板なしで売れるかを試す選択肢がある
- お便りでは、上司への相談、後から直せるかどうかでの判断、AIへの役割と目的の指示などが提案された




