テーマは組み紐。それでも「ただの紐」が寂しい理由
今回のエピソードは、Manaさん自身が「ただのお悩み配信」と呼ぶ回です。題材は、ゲームマーケット2027春に向けて制作中の新作ボードゲームです。
この新作はテストプレイをすでに終えており、今はデザインを作る段階に入っています。ところが、テーマは決まっているのに、デザインの方向性が決まりません。
新作のジャンルはトリックテイキング ── 各プレイヤーが手札を1枚ずつ出し、最も強いカードを出した人がその回の場札(トリック)を獲得するカードゲームの形式。トランプのナポレオンやコントラクトブリッジなどが代表例ですで、テーマは組み紐です。Manaさんは組み紐を、映画『君の名は。』で主人公の女の子が糸を組み上げて1本の紐にしていた工芸品として紹介しています。
Manaさんによると、組み紐には人の縁や魔除けといった意味が込められているそうです。この意味合いが、新作のテーマに選ばれた理由につながっています。
テーマを固めたあと、Manaさんはデザイナーに簡単なカードのラフを起こしてもらいました。しかし、出来上がったカードはやはり「ただの紐」に見えてしまったといいます。
ちょっとただの紐なので、ちょっと寂しいよねっていうことになって、何かちょっとモチーフみたいなものがあるといいよねっていうようなお話に、今デザイナーとなっております。
こうして、組み紐に添えるモチーフを探すことになりました。ところが、そのモチーフがなかなか決まらないというのが、今回の悩みの中心です。
和風、北斎、三十六禽。モチーフ探しはどこで行き詰まった?
Manaさんはまず、組み紐が和風の題材であることから、和のモチーフを探りました。組み紐には神社系の、少し宗教的な要素もあるため、神社・神道系のモチーフも検討したそうです。
ただ、神社系のモチーフにすると宗教色が強くなりすぎて、遊びにくそう、とっつきにくそうに見える心配がありました。そのため、この案は保留になっています。
次にManaさんが着目したのは、カードの枚数です。新作のメインのカードは数字入りの36枚で、ほかに各プレイヤーが1枚ずつ別のカードを持ちます。そこで「36種類あるもの」を探しました。
最初に候補になったのが、北斎 ── 江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎のこと。代表作「富嶽三十六景」は富士山をさまざまな場所から描いた連作で、現在は著作権が切れたパブリックドメインの作品ですの三十六景です。パブリックドメインで自由に使える点は魅力でしたが、類似のボードゲームがすでにあり、ほかの作品との被りが気になってやめたといいます。
今Manaさんが有力視しているのは、三十六禽という考え方です。干支の12種類それぞれに3つの動物を割り当て、合計36種類の動物にするというもので、干支をより細かくしたものと説明されています。
三十六禽は中国にもあり、占いなどにも使われる動物たちだそうです。Manaさんは、縁や魔除けの意味を持つ組み紐のテーマにも合うと考えていました。
ところが今度は、三十六禽の動物たちをカードに組み込みにくいという問題が出てきました。動物をシルエットにすると組み紐らしさが消え、イラストで配置すると動物のほうが目立ってしまいます。
組み紐だけじゃちょっと寂しいから、何かしらあしらいのモチーフが欲しいなって思っていたんですけども、あまりにもそっちに引っ張られてしまうと、ちょっと組み紐が薄まってしまう。
ここまでのモチーフ候補と、それぞれで引っかかった点を整理すると次のようになります。
| 候補 | 魅力 | 引っかかった点 |
|---|---|---|
| 神社系のモチーフ | 組み紐の宗教的な要素と合う | 宗教色が強く、とっつきにくそう |
| 北斎の三十六景 | 36枚と数が合い、パブリックドメイン | 類似のボードゲームと被る |
| 三十六禽 | 36種類で、占いにも使われ組み紐と合う | 動物が目立ち、組み紐が薄まる |
ルールができてテストプレイも終わり、プロダクトデザインに入ったのは2〜3か月ほど前です。Manaさんは、それから今まで永遠と悩み続けていると打ち明けています。
6スート×1〜6、「1が6に勝つ」新作のルールとは?
Manaさんは、悩みの背景として新作のルールをざっくり紹介しています。あくまで超ざっくりの概要で、正式なルール説明は改めて行う予定だと断ったうえでの話です。
新作のカードにはスート ── トランプのクローバー・ダイヤ・スペード・ハートのように、カードを種類分けするマークのこと。トリックテイキングでは、どのスートを出すかが勝敗を左右しますが6種類あります。トランプは4スートですが、新作では6種類のマークを色で表す予定です。
新作の数字は1から6までです。1〜6のカードが6スート分あり、6×6で36枚という構成になっています。
新作のゲームはマストフォロー ── トリックテイキングで、最初にカードを出した人(リーダー、親)と同じスートを持っていれば、必ずそのスートを出さなければならないルールで、切り札はありません。ただし、フォローの条件に独自の工夫があります。
今回のゲームはですね、その親が出した色、もしくは親が出した数字を持ってると必ず出さなきゃいけないっていったようなフォローの状態になります。
カードを6×6のマス目に並べると、親が出したカードを中心に十字の範囲がフォロー対象になります。Manaさんは、この十字のフォローを新作の特徴の1つに挙げています。
新作の強さは、基本的に数字が大きいほうが勝ち、スートの強さも固定で決まっています。そのうえで、1は2〜5には負けるものの、6には勝てるという逆転要素があります。
スートが6種類あるため、この1と6の逆転は頻繁に起きるように調整されているそうです。
縁結びか縁切りか。カードを出す前の宣言が勝負を変える
新作のもう1つの大きな特徴は、各トリックの前に行う宣言です。親がカードを出し始める前に、全員が「せーの」で、各プレイヤーが1枚ずつ持っている特別なカードを出します。
この特別なカードは表が縁結び、裏が縁切りになっています。カードにするかコインにするかは、まだ決まっていないそうです。
縁結びと縁切りの宣言は、これから自分が出すカードをプラスにするかマイナスにするかを決めるものです。勝った人は場のカードを総取りし、獲得したカードは縁結びと縁切りに振り分けられます。
得点は枚数ではなく数字の合計で、1なら1点、6なら6点です。縁結びの合計から縁切りの合計を引いた点数が最も高い人が勝ちになります。
宣言
全員が「せーの」で縁結びか縁切りかを出す
プレイ
親が出したカードに対し、色か数字が同じならフォローする
獲得
最も強いカードを出した人が場のカードを総取りする
得点計算
縁結びはプラス、縁切りはマイナスとして数字を合計する
新作の面白さは、同じ6点のカードでも、宣言次第でプラスにもマイナスにもできる点にあります。親は全員の宣言を見てから、勝ちに行くか、あえて負けるかを考えることになります。
敢えて負けよう。で、マイナスを押し付けようとか、そういったような考え方ができるわけなんです。
たとえば縁結びの人が6を出したとき、別のプレイヤーは1を出して、そのプラス点を一気にもらうことができます。逆に誰かが1を出していれば、縁切りを宣言した人があえて6を出し、大きなマイナス点を押し付けることもできます。
組み紐というテーマも、もともとはこの縁結び・縁切りの考え方から出発したものです。組み紐は結べば縁結び、切れば縁切りという意味合いを持つため、世界観にフィットしているとManaさんは考えています。
色違いの紐と数字だけで終わらせないには?
組み紐を軸にしたいものの、ただの紐だけではカードが魅力的にならない。Manaさんの悩みは結局この点に戻ってきます。
組み紐の色を6種類作り、スートを表す案は考えているそうです。ただ、それだけだと「色違いの組み紐と1〜6の数字」のカードになってしまい、芸がないと感じています。
ただ、数字と組み紐がちょっとポロッと書いてあってっていうぐらいですと、ちょっと芸がないかなとも思いつつ。
ほかにも、組み紐の配置の仕方や、組み紐のさまざまな結び方で表現する方向も考えているといいます。このまま三十六禽でいく可能性も残っています。
答えはまだ出ていません。そこでManaさんは、「こんなテーマはどう?」というアイデアがあれば、コメントで教えてほしいとリスナーに呼びかけています。
スケジュール面では、今は10月に入ったばかりで、次のゲームマーケットは翌年の5月ごろの見込みです。あと7か月ほどあるため、焦ってはいないとManaさんは話しています。
ルールの微調整も続ける予定で、その流れで組み紐というテーマ自体をやめる可能性もあるそうです。Manaさんは、最初に決めたテーマから最終的に全く違うものに変わることがよくあるといいます。
現時点で確かなのは、組み紐をテーマにしたトリックテイキングが「出るかもね」という段階であることです。宣言のワンアクション、1が6に勝つ逆転要素、6種類のスート、1〜6の少ない数字という骨格は、ベースとして固まっています。
ルール完成後に毎回悩む「プロダクトデザイン」の壁
Manaさんは、これまでの配信では聞き手に何か気づきを持ち帰ってほしいと考えてきました。今回は雑談に近いただの悩みになったと認めつつ、その悩みこそが制作の実態だと話しています。
ボードゲーム作るのはすごく楽しいですけども、結構毎回このルールが出来上がってきてからのプロダクトデザインっていったものが悩むんですよね。
プロダクトデザインの悩みは、絵柄だけにとどまりません。縁結び・縁切りをカードにするかコインにするかという選択1つで、ほかの要素も連鎖的に変わっていきます。
形状
縁結び・縁切りをカードにするかコインにするかを決める
印刷先
形状によって、どこで印刷するかが変わる
箱のサイズ
印刷や部品に応じて、箱の大きさも変わってくる
Manaさんはこれまで同じサイズの箱で作品を出しており、新作もその中に収めたいと考えています。ただ、収まるかどうかはまだわからないそうです。
Manaさんは最後に、たまにはこうした悩み配信もすると話しました。テーマのアイデアが閃いた人には、ぜひ教えてほしいと改めて呼びかけています。
まとめ
Manaさんの新作は、縁結び・縁切りの宣言がある組み紐テーマのトリックテイキングで、ルールとテストプレイはすでに完成しています。一方で、組み紐を主役にしたままカードを魅力的にするモチーフは、まだ見つかっていません。
- 新作はゲームマーケット2027春向けで、36枚・6スート・数字1〜6のトリックテイキング
- 親と同じ色か数字ならフォロー必須の十字フォローと、1が6に勝つ逆転要素が特徴
- 縁結び・縁切りの宣言で、同じカードがプラスにもマイナスにもなる
- 神社系、北斎の三十六景、三十六禽を検討したが、組み紐との両立に悩んでいる
- カードかコインかの選択が印刷先や箱のサイズにも影響し、プロダクトデザインは毎回の難所


