日曜のコメント返しはどう始まる?
「牛乳のむ?牧場配信」は、島根県出雲市の川上牧場から酪農家の川上さんが毎朝届けている音声配信です。この回は10月4日の日曜日で、日曜恒例の「まったりゆったりコメント返し」の回になっています。
川上さんによると、今週はInstagramやThreadsからのコメントが先週・先々週ほど多くなかったそうです。そのため、配信は20分から30分くらいで終わりそうだと話しています。
コメント返しの前には、配信を文字起こしして再構成したnote記事やメンバーシップ、Instagramの「#未来の牛乳」の案内がありました。「#未来の牛乳」は、リスナーが考えた「こんな牛乳や乳製品があったらいいな」をデジタルアートにして販売する企画です。
デジタルアートの売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小中高の食育活動に参加するときの活動費にあてる予定だといいます。週1回まとめ記事が届く公式LINEや、リスナーのおすすめ商品を並べたTikTokショップの紹介も続きます。
ちょっとすいませんね。場所がちょっといつもと違うので。はい乾杯。いただきます。
いつもと違う場所からの収録ながら、恒例の牛乳での乾杯をはさんで、コメント返しが始まります。
牛の双子が「すんなり喜べない」のはなぜ?
最初のコメントは、YouTubeのメイプルさんから。牛の双子は一卵性と二卵性のどちらが多いのか、という配信に寄せられたものです。
一卵性か二卵性かあんまり気にしたことなかったけど、牛の双子は圧倒的に二卵性が多いんですね。双子を産んだら親牛のあと産停滞とか、周産期病を心配してしまいますよね。喜ばしいことだけど、なかなか1回の出産で2頭産まれてお得とは思えないですよね。
川上さんもこの意見に強くうなずきます。双子の牛のお産は、分娩前からずっと心配が続くといいます。
分娩し2頭とも産まれて、あ、よかったなってなるんですけど、親牛もね、本当にまあ安産だったらいいんですけど。
両方とも安産で出てきた場合はいいんですけど、本当にダメージがね、大きいんで。
川上さんの説明では、双子のお産で親牛が受けたダメージは、その後の種付けの遅れにつながることがあります。今の時期だと、次のお産が夏にずれこむ「夏産み」になる心配も出てくるそうです。
双子の分娩
2頭とも無事に産まれても、親牛の体へのダメージが大きい
種付けの遅れ
親牛の回復が遅れると、次の種付けも遅れがちになる
夏産み
時期によっては次のお産が夏にずれこんでしまう
双子もなんかあのすんなりね、喜べないというのが酪農家の事情じゃないかなと思います。
「顔が見える」農家は推し活になる?
2つ目は、noteの吉田間さんからのコメントです。牛1頭のどこまでが価値になるのかを、一頭買いや乳製品から考えたnote記事に、「農産物をどう選んでいますか」という問いかけを添えていました。
基本的に信頼している酪農家さんや畜産家さんが出荷されているメーカーを選んで購入しています。
川上さんはこの声に、顔が見える商品が選ばれる流れを重ねます。その流れは、今の「推し活」に近いのではないかと見ています。
その農家もやっぱ推し農家みたいなのを作って、その農家さんをSNS見て、コメントしながら、商品を購入して、美味しかったですよって言って反応して。
川上さんは、農家と食べる人がそうしたやり取りをすることで、食が豊かになると考えています。信頼される農家になるために発信を続けていて、川上牧場の商品はまだ少ないものの、いつか飲んでもらえたらうれしいと話しています。
「牛さんにありがとう」と思ってもらえたら
3つ目は、TikTokのスライド投稿「妊娠中の牛から牛乳って出るの?」に、クマの絵文字アイコンの方から届いた「牛さんにありがとうだね」という短いコメントです。
川上さんは、牛乳や乳製品が当たり前になりすぎて、牛に感謝する機会はなかなかないかもしれないと話します。それ自体はありがたいことだ、とも付け加えています。
でもね、その牛に感謝してうってなるのもあんまりよろしくないので、ふと思った時にですね、そうやって思っていただいて、美味しく飲んでいただけたらいいなと思います。
感謝を重く背負うのではなく、ふとしたときに思い出して、おいしく飲んでもらえたらいい。川上さんらしい、肩の力が抜けた受け止め方ですよね。
いちばん好きな牛と、飼ってみたい牛は?
4つ目は、「酪農家に聞いた、経営抜きにして一番好きな牛は何ですか?」というスライド投稿に、8さんから届いた「川上さんもやはりホルスタインが好きなんですね」というコメントです。
ホルスタインが一番飼ってる経験があって、いろいろね、その接して、いろんなことを調べたりとかするんで、知れば知るほど面白いですね、牛。
一方で、これから飼ってみたい牛として川上さんが挙げるのはゼブー ── インドなどの暑い地域で飼われてきた、背中にこぶのある牛の仲間。暑さや乾燥に強い性質で知られていますです。日本の夏の暑さにどれくらい耐えられるのか、生産能力がどうなのかが気になるといいます。
5つ目は、「雪国で牛を見ない本当の理由は?」という投稿に、TikTokのメイプルさんから届いたコメントです。
歩く暖房器具。冬は牛の上に寝そべるとすごく暖かくて気持ちいいです。
川上さんの牧場は、牛をつないで飼うつなぎ牛舎 ── 牛を1頭ずつ決まった場所につないで飼う牛舎。1頭ごとの様子を近くで見やすいのが特徴ですです。牛に挟まれると、牛の体温で寒さがまったく違うそうです。
冬はもうほんとありがたいですね。指先がカチカチのやつが牛のお尻に手を入れると、もうそれが一瞬で暖かくなるというね。
川上さんは繁殖管理が好きで、牛の直腸に手を入れて調べる直検 ── 直腸検査のこと。直腸越しに子宮や卵巣を触って、妊娠しているかや繁殖の状態を確かめますをよく行います。ただし、一般の人が牛に近づくのは危ないこともあるのでおすすめはしない、とも念を押しています。
最新機器より大事なのは「牛を見ること」
6つ目は、海外で流行し日本でも広がりはじめているSNS「Substack」に届いたコメントです。牛舎の監視カメラやAIセンサーを紹介したスライド投稿に、「その通りです」と一言寄せられていました。
このスライドは、最新の機器を入れても、結局は牛を見ないとダメだという締めくくりになっていたそうです。川上さんはその結論に、あらためて力を込めます。
スリック遺伝子の改良はどこまで進んでいる?
7つ目は、Threadsのプラセンタさんから。「経営のことを抜きにして、本当に飼いたい牛はどれですか?」というスライド投稿へのコメントです。
今はスリック遺伝子の種付けをしていますが、まだまだ改良しないと乳出ないですね。
スリック遺伝子 ── 毛を短くなめらかにし、牛を暑さに強くするとされる遺伝子。暑さ対策として注目されていますについて、川上さんは一度、自分が使った無角品種の種牛の話と取り違えかけます。そのうえで、スリック遺伝子を持つ牛はまだ品種改良があまり進んでおらず、乳を出す能力が低いと説明します。
スリック遺伝子、まだ牛の品種改良もあんまり進んでなくて。まあいいのが出てきてますけどね。出てきてますけど、能力も低くて。
次の交配に使える種牛がまだ出ていないこともあり、改良は簡単ではないそうです。川上さんは、それでも先駆けて取り組んでいるプラセンタさんに感心していました。
同じ投稿には、堤田ファームさんから「ジャージーとヘレフォードが好きです」というコメントも届きました。
子牛の時はめちゃめちゃ可愛いんですよね、ジャージー。好奇心が旺盛で、ホル(スタイン)とは全然違うね、なんか寄ってくる感じがありまして。
ホルスタインの群れにジャージーが1頭まじっていると目立つうえ、体は小さいのに負けないほど強いのだとか。ヘレフォードは飼ったことがなく、茶色っぽい肉用の牛だったはず、と話しています。
子牛のときは好奇心旺盛で人に寄ってくる。体は小さいが群れの中で負けない強さがある
いちばん長く飼ってきた品種。調べるほど面白い、牛の代表例
太りすぎも双子も、一頭ずつ見て決まる
8つ目からは、牛トピアさんのコメントが続きます。最初はThreadsの「牛にも太りすぎがあります」という配信へのものです。
体重だけではなく、牛ごとの状態や次の分娩まで見ていることが伝わる発信ですね。学びになります。
川上さんによると、牛の太りすぎ・痩せすぎは体重だけで判断してはいけないそうです。栄養状態、何回目のお産か、搾乳してからの日数、餌をどれだけ食べているか、さらに血統まで調べるとよい、という話をしていました。
牛トピアさんは、「牛の双子は実は一卵性より二卵性の方が圧倒的に多い」というThreadsの投稿にもコメントを寄せています。
同じDNAでも育つ環境で変わるという視点が印象的です。1頭ずつの物語を感じます。
同じように見えるんですよ。ほんと二卵でも同じように見えて。「飼い方やったら同じ牛乳出るでしょ」って思われがちなんですけど、「そんなことはないよ」ということでね。
川上さんは、DNAから調べていくと牛は1頭ずつまったく違い、血統を調べるのがとても面白いと話します。もっと知りたい人には、酪農データバンクやKindleの書籍をすすめています。
牛はペットじゃない、をどう伝える?
牛トピアさんは、Instagramのスライド投稿「牛はペットじゃないの?」にもコメントを寄せていました。
命の役割と1頭ずつへの愛情、その両方を伝える発信に共感します。
川上さんは、変なことをやっていると言われることもあるので、共感してもらえてうれしいと話します。そのうえで、牛はペットではないということは消費者になかなか伝わりにくいと感じているそうです。
愛玩動物 ── ペットのように、かわいがることを目的に飼われる動物のことと経済動物 ── 乳や肉など、人の暮らしや産業に役立てることを目的に飼われる動物のことの違いは、経験で得られる知識で、受け止め方も人それぞれだと川上さんは言います。
川上さんは最近、髪を切りに行った先でこんな会話をしたそうです。仕事を聞かれて牛を飼っていると答えると、相手は農業高校に進んで牛をやりたかったけれど、自分の育てた牛がお肉になるのは耐えられなかったと話したといいます。
牛がお肉になって、その牛食べれるって最高のことじゃないかって僕は思うんですけど、やっぱ見る人からすればもう本当にひどいって思っちゃったりとかするんですよね。
SNSで反論せず、音声で語る理由
9つ目は、「意見が違う人には反論しません」というInstagramのスライド投稿に、小田さんから届いたコメントです。
保存しました。心に留めておきたい内容です。
このスライドのもとになったのは、ビーガンの人や「牛乳は体に悪い」という意見の人にどう向き合うのか、という質問でした。川上さんの答えは、SNSでは反論せず、音声配信で自分の考えを丁寧に話す、というものです。
川上さんがSNSでの反論を避けるのは、SNSは切り取りが多く、相手の背景が見えないからだといいます。ペットを事故で亡くした経験や、切り取り動画を見たことなど、背景によって考え方が違ってきます。
牛は可哀想じゃないかって言われて、うるさいよもうそんな可哀想じゃないよ、本当にお前やってみろよみたいなやっても話にならないじゃないですか。SNSの中でね。
SNS上で言い返す。背景がわからないまま、切り取りの中で話がかみ合わない
SNSでは反論せず、音声配信で自分の考えを丁寧に話す
モヤッとしたときは一度心に留めて、このスライドを見返してほしい。保存はそういう使い方につながるうえ、より多くの人に見てもらえることにもなるので、ありがたいと話しています。
「話が長い」にどう答える?
今週最後のコメントは、Instagramのともさんから。「雪国で牛を見かけない本当の理由」の投稿に届いた一言でした。
話が長い。
川上さんは、ショート動画のように結論がドンと最初に来る形に慣れると、5分のスライドでも長く感じられてしまうのだろう、と受け止めます。感想として受け付けたうえで、内容を伝えるには長さが必要だと話します。
川上牧場のショート動画は、音声配信を元にnote記事を作り、その記事から作っているものです。そのため動画では本来の内容はほとんど伝わっていない、と川上さんは考えています。
音声配信
毎日の配信で、川上さんが考えを丁寧に話す
note記事
音声配信を文字起こしして、再構成した記事にする
動画・スライド
note記事を元に、SNS向けの短い動画やスライドを作る
川上さんにとって、ショート動画やスライドは酪農や牛乳に興味を持ってもらう入り口としてのきっかけです。気になった人には、原文のnote、Pody、酪農データバンク、公式LINEで、もっと深く知ってほしいといいます。
ありがとうございます。はい、真摯に受け止めてですね、めちゃめちゃ長い配信していこうと思います。
気になったことはLINEで聞ける
すべてのコメントを読み終えた川上さんは、各SNSのコメント欄やDMで気軽に声を寄せてほしいと呼びかけます。
酪農データバンクは使いやすく見やすくなってきていて、公式LINEのトップメニューから開けるそうです。スーパーやコンビニで牛乳や牛について気になったことがあれば、その場でLINEから質問してみてくださいね。
最後は、日曜日でも仕事や学校に向かうリスナーへ「いってらっしゃい。みんな牛乳飲んでね」と声をかけて、配信は締めくくられました。
まとめ
日曜恒例のコメント返しでは、牛の双子から品種、牛はペットかという問いまで、一つひとつの声に酪農家の実感がこもった答えが返ってきました。「話が長い」という一言にも、長く語ることで伝えたいという川上さんの姿勢がよく表れています。
- 牛の双子は二卵性が多く、親牛へのダメージや種付けの遅れを考えると、酪農家はすんなり喜べない
- 最新機器があっても、太りすぎや個体差の判断には一頭ずつ牛を見ることが欠かせない
- スリック遺伝子を持つ牛はまだ改良途中で、乳を出す能力が課題とされている
- 牛はペットか家畜かという考え方の違いには、SNSで反論せず音声配信で対話する
- ショート動画は入り口で、note・Pody・酪農データバンク・公式LINEで深く知ってほしいと考えている

