勤務社労士は本当にストレスが少ないのか
この回のテーマは、勤務社労士のストレス対策です。吉田さんは2012年に社労士試験に合格し、そこからおよそ8年間、勤務社会保険労務士として働いてきた経験を持っています。
勤務社労士ではない人からは「勤務なら守られていてストレスがないだろう」と思われがちですが、吉田さんはそうではないと話します。
まず勤務社労士じゃない人に言いたいのは、「いや、勤務だからストレスないよね」って思ったら大間違いなんですよ。
正直、開業も大変だが勤務も大変だというのが吉田さんの実感です。知識のなさは勉強すれば解消できますが、それとは別に大きな不安があったといいます。
一番のストレスは「顧客対応が怖い」だった
吉田さんが挙げる勤務社労士時代の最大のストレスは、顧客対応への恐怖でした。
一番のストレスって何かっていうと、やっぱりお客さんの対応、顧客対応が怖いっていうのが一番のストレスでした。
変なことを言ったらお客さんが怒るのではないか、間違ったアドバイスをして相手がそれを信じて進め、後からクレームになるのではないか。そうした不安を強く抱えていたと振り返ります。
そのほかにも、給与計算や手続きでミスをすれば謝罪しなければならない、勤務ゆえに裁量権がなく上から仕事が次々と降ってきて終わりがない、といったストレスも挙げます。
吉田さんは社会人経験がほとんどないまま社労士になったため、特に顧客対応には苦労したといいます。うまく答えられず、「じゃあ先輩の誰々に代わってください」と言われたこともありました。
不安を消してくれた「質問型営業」との出会い
そんな顧客対応の不安を減らしたのが、ある営業手法との出会いでした。
私はその、「この聞き方で聞けば、絶対にお客さんから怒られることはないな」っていうものに出会ったんです。
それが、青木健さんが提唱する「質問型営業」です。営業の話し方をマニュアル化・構造化したもので、書籍や研修、音声配信などで学べるといいます。
吉田さんは、質問型営業そのものについては本や音声、研修など本家の情報を参照してほしいと前置きしたうえで、以降は自分なりの解釈として話を進めます。
なお、勤務社労士なら営業は不要だと思われるかもしれませんが、吉田さんはむしろ勤務社労士こそこの手法を知ってほしいと話します。もともとは独立後の営業のために学び始めたものが、労務相談にそのまま使えると気づいたためです。
労務相談に使える質問型営業の4ステップ
吉田さんの解釈による質問型営業は、4つのステップで構成されています。この流れは、勤務社労士が労務相談に答えるときにもそのまま使えるといいます。
この構造どおりに進めれば営業成績が上がるとされるものですが、吉田さんはこれが労務相談にそのまま応用できると気づきました。
これってそのまま勤務社労士の人が労務相談に答える時にもそのまま使えます。
最初のステップは、とにかく共感から入る
吉田さんは、トラブル社員の相談を受けた場面を例に説明します。社長から「こういう社員がいて困っている」と電話がかかってきたとします。
最初のステップは共感と好意です。まず「社長も大変ですね」と受け止めるところから入ります。
まず最初は「いや、社長も大変ですね」と共感していくんです。
仮に社長側にも問題がありそうだと感じても、そこはまず共感するのが先だといいます。このファーストステップの有無で、お客さんの満足度は大きく変わるとのことです。
どんな場合でも「今回大変ですね」「お電話ありがとうございます」といった言葉から入っていくのがポイントです。
現状を時系列で聞くことで、相手も落ち着く
共感だけでは話が進まないため、次のステップは現状を聞くことです。「実際どんなことが行われているんですか」と切り返し、時系列で聞いていきます。
たとえば、新しく雇った人が連絡もなく遅刻する、注意したら開き直られた、その後も遅刻が止まらない、といった話が出てきます。パワハラや会社のものを盗むといった深刻なケースもあります。
吉田さんは、この現状をゆっくり聞くことが重要だと強調します。相談者は興奮したり不安になったりしていることが多く、話すだけでも気持ちが落ち着いてくるためです。
決めつけずに「要望」を聞くことが最大の分かれ道
現状を聞くと、社労士なら「どうせ辞めさせたいのだろう」とピンと来ることが多いといいます。しかし吉田さんは、ここで解決策に飛びつくのは間違いだと指摘します。
あ、じゃあ辞めさせる方法は?って言ったら、それはダメなんですよ。その次のステップは要望を聞くっていうところです。
問題社員の相談の9割ほどは辞めさせたいケースで、合意退職の方法や解雇のリスクの話になります。ただ、そうとは限らないと吉田さんは言います。
見捨てない姿勢の経営者であれば、その社員をどう改心させて一人前にするか、という相談であることもあります。そこで「辞めさせたいのだろう」と決めつけて辞めさせる方法を提示すると、「俺が求めているのはそれじゃない」とお客さんが怒ってしまいます。
だからちゃんとここで聞くんです。現状を聞いた後に要望を聞いてください。
トラブル社員対応では正直辞めてほしいという要望が多いものの、そうでないケースもあるため、ここで決めつけないことが重要だと繰り返します。
現状と要望のギャップを埋めれば、怒られない
最後のステップは解決策の提示です。吉田さんは、人が悩むのは現状となりたい姿にギャップがあるからだと説明します。
この二番目に聞いた現状と欲望、要望、なりたい自分っていうのにギャップがあるから悩むわけですよ。
恋愛の悩みも、付き合いたい相手と付き合えていない自分との差から生まれる、というのが吉田さんのたとえです。労務相談も同じで、この現状と要望のギャップを埋める解決策を提示すれば、お客さんは絶対に怒らないといいます。
トラブル社員対応であれば、まずは注意指導を勧めます。辞めることが決まっているなら退職勧奨とその注意点を、改心してほしいなら改善の進め方を話すと、相談者はとても喜んでくれるとのことです。
吉田さんは、この4ステップの聞き方に出会ったことで、こう聞けばお客さんは怒らないという確信を持てるようになり、安心して毎日仕事ができるようになったと語ります。
まとめ
勤務社労士の顧客対応の不安は、答えの正しさ以前に「聞く順番」で大きく減らせる、というのがこの回の結論です。共感から入り、現状を聞き、要望を確認し、そのギャップに解決策を出す。この4ステップが、吉田さん自身のストレスを減らした実践知として語られました。
- 勤務社労士にも顧客対応という大きなストレスがあり、開業と同様に大変である
- 吉田さんは青木健さんの「質問型営業」を労務相談に応用している
- 相談対応は「共感→現状→要望→解決策」の4ステップで進める
- 現状を聞いた後、要望を決めつけずに確認することが最大のポイント
- 現状と要望のギャップを埋める解決策を出せば、お客さんは怒らない




