近所のタワマンと海外ホテルから始まる収録
冒頭は、岡島さんの近所で工事中のタワマンの話から始まります。最終的に80メートルほどになる予定で、街中にクレーンが刺さっているそうです。
もともとは、オンライン収録のために引っ越した先で、今度はタワマンの工事音が入るようになってしまったという流れでした。ノイズ除去でなんとか聞きやすい音源にしているといいます。
一方の玉置さんは、この日ワシントンDCの深夜のホテルから収録。隣の部屋で酔っ払った人が上手に歌っていて、収録に入るかもしれないと笑い合います。
隣の部屋が酔っ払ってむっちゃ歌ってるんですよ。無駄に上手いんですよ。
「伝説ラジオ」出演と、姉さんを憑依させた投稿
今回のテーマにつながる話として、玉置さんが「伝説ラジオ」という番組に3時間出演した経緯が語られます。MCはスタートアップの起業家2人で、名だたる出演者が並ぶ番組だといいます。
玉置さんは、自分の回だけ視聴数が伸びなかったら申し訳ないと考え、これまであまりしてこなかったスタートアップ向けの発信をXで試したそうです。
その際、GOのミウラさんから「これからは起業家姉さんというキャラでいった方がいい」とアドバイスをもらったと話します。姉さんは強いんだという自己暗示をかけて、強い口調で書いたところ、投稿は大きく伸びました。
普段のヘラヘラした感じじゃなくて、「姉さんは強いんだ」っていう自己暗示をかけて、その姉さんを憑依させて強い口調で書いたら、伸びたんですよ。
言い切ることは「捨てる」こと
投稿がかなり乱暴に言い切った表現だったため、多少解説した方が親切だと考えたのが、この回の出発点でした。
言い切ると「そうじゃないケースもあるじゃん」という反論が必ず出てきます。玉置さんによれば、言い切るとは、そうした例外やバランスへの配慮を捨てることだといいます。
そしてこの捨てる力が、案外スタートアップの推進力には大事かもしれないと語ります。言い切るのは賢そうに見えず、見栄えも悪い。だからこそ難しいのだと話します。
言い切れないよね、こういうケースもあるよね、バランス大事だよねとかいっぱいあるんですよ。でも言い切るってことは、それを捨てるってことなんですよ。
今のスタートアップには賢い人が多く、視野が広く、いろいろ見えてしまう。それが逆に決断を鈍らせ、スピードを遅くしている側面があると指摘します。
GMO熊谷さんの「タイピング数」という言い切り
玉置さんは、この言い切る力をGMOの熊谷さんから学んだと話します。考えが非常にシンプルなのだといいます。
例として挙げるのが、GMOグループがリモートワークを廃止した件です。在宅より出社の方がタイピング数が多く、業務効率が高いという根拠で、リモートワークをやめると打ち出したといいます。
聞けばいくらでも反論できます。生産性はそこなのか、そんなタイピング数だろうか、と。それでも「タイピング数です」と言い切って決断することは、実はむちゃくちゃ難しいと玉置さんは言います。
もうそこでタイピング数ですって言い切っちゃって、リモートワークやめますってシンプルな決断することって実はむちゃくちゃ難しいんですよね。
かつてリモートワークの良さをバンバン発信してきた会社が前言撤回すれば、ネットでは批判もされます。それでも他の選択肢を考えられないバカだからではなく、AIの革命期を全力で走るためだという強い目的意識のもとの決断だと解釈します。
起業は勝つゲームではなく死なないゲーム
話は、以前の回でも触れた「スタートアップはとにかく生き延びろ」というテーマに戻ります。玉置さんの主張は一貫しています。
今回Xで書いた内容も、一言で言えば「とにかく資金繰りを気にして生き延びろ」ということでした。所詮ファーストプランでは成功しないため、何度もピボットする必要があるからです。
たくさん挑戦するにはお金が必要で、小さい額で挑戦を重ねるしかありません。その大前提が、資金があることだと語ります。
玉置さんは25年ぶりの起業で景色が違い、まるで戦後の焼け野原からタイムマシンで来た人のようだと言います。今は資金調達がニュースになりフォーカスされがちですが、それより前にお金を使わないゲームをしないとダメだと指摘します。
資金調達より前にいかにお金を使わないかっていうゲームをまずしないとダメですよっていう話なんですよね。
大きなお金は「いっぱいある」ように見えてしまう
資金調達で入ってくるお金は、20代でも数百万、時には1000万や億単位になります。自腹で扱ったことのない金額なので、いっぱいあるように見えてしまうと玉置さんは言います。
いっぱいあると感じると、丼勘定でもいけそうに思ってしまうのが人間です。お金で解決する、時間を買う、という言葉が出てきやすくなります。
たとえば手元に1億あれば、高いからZoomを解約しようとは言いません。ちょうどこの日の収録も、岡島さんがZoomを解約してMeetに切り替えていました。玉置さんは、その判断こそが大事だと話します。
一億あってもZoom使わないから課金やめるみたいなことの方がすごい大事なんですよ。
緩く決済してしまう金額は人によりますが、1〜2万ならいいかと考える人は、あっという間に500万ほど溶かすといいます。多くの人を見てきた実感として、だいたい2週から2週半ぶんの金額はすぐ溶けるそうです。
中古家具を使う人しか信用しない、という感覚
玉置さん自身、かつて借金生活で本当にお金を切り詰めていました。マヨネーズが買えず卵から作り、大体の調味料は自分で作れると話します。
そこまでする人はほとんどいないといいます。オフィスを設けたときに中古の家具を使う人しか信用しない、ピカピカの家具や国領の銀色の古い机を見ると安心する、と語ります。
中古の家具を使う人しか信用しないですもん、私。失敗しちゃうと思うもん。
いい椅子が健康への投資だ、体が資本だと言っている場合ではない、と玉置さんは言います。10万の椅子を買うより、そのお金でどんなトライができるかを考える。いかにお金があって、いかに長く挑戦できるかがすべてだと話します。
「売り上げ」ではなく「入金」で考える
玉置さんが強調するのが、売り上げではなく入金で考えることです。最初の会社は黒字だったのに、資金繰りが持たず売却せざるを得なくなった経験があるといいます。
最初の会社の取引先はNTTでした。当初は2ヶ月後入金の契約だったのが、ある時から一方的に4ヶ月後に変わるという通達があり、4ヶ月間入金なしで耐えなければならなかったといいます。
二ヶ月後じゃなくて四ヶ月後に変わりますっていう一方的な通達で入金のサイトが変わったんですよ。だから四ヶ月入金なしで耐えなきゃいけないんですよ。
どんなに信頼できる大手でも、こうしたことは起こり得ます。だから玉置さんは、入っていないお金はないものと思った方がいいと語ります。
売掛金を当てにするのはまだマシですが、口約束や契約書を結んだだけで売り上げが入る前提で動くのは絶対にダメだといいます。投資家に見せる事業計画も、まだ一円も入っていないお金で立てているものだからです。
約束は守られない前提で資金繰りを組む
岡島さんも、独立してすぐの頃を思い出します。気前よく報酬を提示してくれた相手が、何度リマインドしても連絡が取れなくなった経験があるといいます。
玉置さんの助言は明快です。約束を信じるのはいいが、資金繰りには反映しないこと。バラ色の事業計画やワクワクする未来プランではなく、ひたすら資金繰り表を見た方がいいと話します。
大手でも入金を平気でずらしてくることは今でも横行しているといいます。下請けをいじめている意識なく、自分たちの都合でずらすことがまかり通っている、という前提で動くしかないと語ります。
大手が悪いとか社会が悪いとかいうわけじゃなくて、そんなもんだからなんですよ。
費用は放っておくと膨らむ
一方で、支払う額は放っておくと膨らむと玉置さんは指摘します。費用には、誰か必死な人がずっと見ていないと膨らむ性質があるといいます。
費用って放っとくと膨らむんですよ。誰か必死な人がずっと見てないと膨らむんです。
規模が拡大している時や人が増えている時ほど、判断が緩んで費用は膨らむようにできています。人が増えて費用が筋肉質になっていくのは、あまり聞いたことがないと話します。
スピードを買うという発想も同じです。タクシーで20分節約しても、その時間が今の入金につながっているかというと、大抵つながっていません。費用は増えるのに入金は増えない、というバランスになりがちだといいます。
費用は増えるんだけど入金は増えずっていうバランスになっちゃうんですよ。未来への投資とか時間を買うとかってもっともらしいのでやっちゃうんですよね。
PMF前は、まず調達より節約
これはどのフェーズでも同じではなく、PMF前に絞った話だと玉置さんは補足します。今の事業がうまくいくと証明されるまでは、お金をかけてはいけないという趣旨です。
お客さんがいるかどうかも、いても人数がいるかもわからない段階では、サービスを変えたりピボットしたりする時間が必要になります。その時間を買うには、調達ではなく、まず節約だと語ります。
時間を買おうと思ったら、調達するんじゃなくて、まず節約しなさいなんです。それは自分でできるんですよ。調達は相手ありきなんですよ。
節約はケチケチしろという意味ではなく、かける必要があるかどうかをきっちり考えることだといいます。玉置さん自身、かけない制作物はAIで1時間ほどで作り、自社サイトもAIで2時間ほどで作ったそうです。
そのサイトにブランディングもデザインもない理由は、最初の告知がこのポッドキャストのリスナーという、文脈をわかっているウォームな層だけだったからです。伝えたいメッセージはポッドキャストで伝わるため、サイトのデザインは関係ないと判断したといいます。
相手ありきで、自分だけではコントロールできない
相手が不要で、自分でいくらでもできる
今日生き延びなければ明日はない
昨今の起業はキラキラして見え、風前の灯火のスタートアップの社長と話しても、キャッシュバーンやランウェイといったカタカナが飛び交うといいます。玉置さんは、それより資金繰りをなんとかするしかないと言い切ります。
絞っていって、事業継続に本当に必要なものだけにしなければならないフェーズで、未来を語っている場合ではない。もちろん未来は必要だが、まず今日だと話します。
生き延びてマーケットフィットすれば、次のフェーズに行けます。会社のカルチャーやビジョンを考えるのが好きな人も多いですが、それは生き延びてからでいいと語ります。形も考えも変わるからです。
悲観は、メンタルを守る燃料の使い分け
玉置さんは、起業家に大事なのは結局メンタルであり体力だと考えています。キラキラした夢や希望がないとやってられないメンタルでは、長く続かないといいます。
始めたら、うまくいくことよりうまくいかないことに出会う確率の方が高い。思い通りにならず、結果が出ず、うまくいかないのが日常です。その日常を引き受けてニコニコやれないともたないと話します。
だからこそ、悲観的に考えることを恐れないでほしいと語ります。自分であえて悲観的に考えるのと、状況によって悲観的にならざるを得ないのとでは、やられ方が全然違うからです。
一番まずいのは、いつも楽観的に考えていて、何か起こってから悲観的になることだといいます。悲観的に考えておくことが、結局はメンタルを守るのだと話します。
SASUKEに学ぶ、ほとんどが水に落ちる前提
玉置さんは、名だたるプレイヤーが挑んだサービス「ポポポ」が短期間で終了した例を挙げます。ドワンゴを作った川上さんが私財30億を投じ、まさにアベンジャーズのような布陣だったといいます。
その川上さんは、ニコニコ動画やN高など、小さく当てて伸ばす立ち上げを得意としてきた人でした。N高も初年度は1万人を打ち出しつつ実際は1500人ほどで、そこから軌道修正して4年で1万5000人まで育てたといいます。
そんな実績のある布陣でさえ、お金が尽きれば撤退せざるを得ません。玉置さんは、この事実こそが起業の本質だと語り、SASUKEを例に出します。
SASUKEは、成功する人より途中で水に落ちる人の方が圧倒的に多い競技です。起業は、ほとんどの人が途中で水に落ちるやつなのだといいます。
ほとんどの人が成功するやつじゃないんですよ。ほとんどの人があの途中で水に落ちるやつなんですよ。
初めてやれば序盤で水に落ちて終わる。そう思って入った方がメンタルはやられません。ディズニーランドですよと言われて行くのと、扉を開けた瞬間に野生の動物に食われるかもと言われて始めるのとでは、準備も身の構えも違うと話します。
むやみに怖がれとかやめろって話をしてるんじゃなくて、そういうもんだとして関わっていけば、メンタルがやられることもないんですよ。
打席に立つ回数を増やす、という誰にでも使える話
岡島さんは、起業の話でありながら人生全般に生かせると感じ、特に「時間を買おう」と思ってしまう癖を挙げます。玉置さんは、個人がお金持ちになりたい時も同じ考え方だと応じます。
どんな仕事でも、挑戦すれば失敗する確率は上がります。挑戦した人が成果を出して認められ上に行くのは、起業家に限らず変わらないと語ります。
いかにして打席にたくさん立てるか、いかに小さな挑戦を繰り返すかっていうことを考えることは、誰にとっても大事なことだと思うんですよね。
岡島さんも、流れで会社を建てて雰囲気でやっている身として身が引き締まったと話し、漠然と払っているドメイン代の解約タスクを放置していたことを思い出します。
興味深いのは、玉置さんが個人ではサブスクを払いまくって「ぶよぶよ」だと明かした点です。それでも会社となるとできるのは、金銭感覚ではなく、ゲームの趣旨と種類がわかっているだけの差だといいます。
個人はもうぶよぶよですよ。でも会社となるとできるんですよね。多分個人の金銭感覚とかとあんま関係ないかもしれないですね。ゲームの趣旨と種類がわかってるだけで。
まとめ
起業は勝つゲームではなく死なないゲームだ、というのがこの回の核心です。資金調達より前にお金を使わない工夫をし、入金ベースで悲観的に資金繰りを見ながら、打席に立つ回数を増やして生き延びる。玉置さんの語りは、起業家だけでなく、仕事や個人の挑戦にも通じる生存戦略として整理されました。
- 起業は「勝つ」より「死なない」ことが大事で、生き延びるほど挑戦回数を増やせる
- 売り上げや契約ではなく「入金」で考え、入っていないお金はないものとして資金繰りを組む
- 費用は放っておくと膨らむため、PMF前は調達より先に、自分でできる節約を徹底する
- SASUKEのように、ほとんどが途中で水に落ちる前提で始めれば、悲観がメンタルを守る燃料になる
- 打席に立つ回数を増やすという発想は、起業家に限らず誰の仕事にも当てはまる



