Claude Opus 5は上位モデル「Fable」に迫るのか?
この回の最初のトピックは、Anthropicが7月24日にリリースしたClaude Opus 5です。しぶちょーさんによると、Opus 5はOpus 4.8の後継で、4.9を飛ばして5になりました。
Opus 5の価格はOpus 4.8から据え置きで、能力が上がったとされています。番組内では、上位モデルとして「Fable」があり、Opus 5はその1つ下の真ん中に位置づけられるモデルとして話されています。
(公式の位置づけは)思慮深く、能動的なモデルで、Claude Fiveのフロンティア知能に半額で迫ると。
しぶちょーさんが読み上げた公式の位置づけでは、Opus 5は「Fable相当」の性能を半額で提供するモデルです。立ち位置としてはFableより下でありながら、公式のベンチマークには一部でFableを上回る項目もあるといいます。
公式ページには、GPT-5.6 Solを右端に置いた比較表も載っていたそうです。かねりんさんが「いいとこだけ寄せ集めて切り取ってるんでしょ」と疑うと、しぶちょーさんは比較の範囲は広いと断りつつ、最後は使った感覚で判断すればいいと答えました。
もう全部もうFableのローモードで使ってるんで、僕ほとんど。
かねりんさんは、Fableを高い設定で使うと利用枠が一瞬でなくなるため、Fableのローか、Opusのマックスで使い分けているそうです。しぶちょーさんはOpus 5のほうがコスパはよさそうだとしつつ、Opus 4.8との違いはまだ強く実感していないと話しました。
公式の推奨は「指示を削れ」。書きすぎたプロンプトはなぜ逆効果か
しぶちょーさんが新しいモデルが出るたびに勧めているのが、公式のプロンプティングガイドを読むことです。Opus 5のガイドはOpus 4.8からの変更点を明確に書いていて、親切な内容だといいます。
(Opus 5は)4.8より賢くなったが故に、まあざっくり言うと指示をしすぎんなよっていう風なプロンプティングガイドになってる。
しぶちょーさんの説明では、Opus 5には「これをやれ、あれをやれ、次にこれをやれ」と細かく指示しないほうがよいとされています。もともと自動で検証するモデルなので、「確認してください」と書き足すと、書きすぎた指示が過剰な検証を引き起こすというのがガイドの趣旨です。
しぶちょーさんは、他のモデルのガイドとの違いも記憶の範囲で整理しました。ただし、この比較は「逆だったかな」と迷いながらの説明で、確定した情報ではありません。
| モデル | 指針の方向 | しぶちょーさんの説明 |
|---|---|---|
| Fable | やってはいけないことを書く | やりすぎる傾向があるので、止める指示が必要 |
| GPT-5.6 Sol | 最低限やることを書く | Opus 5はどちらかといえばSolに近い |
| Claude Opus 5 | 指示を足すより削る | 書きすぎると過剰な検証を引き起こす |
かねりんさんはこの流れを、カメラの「オートモード」にたとえました。プロのカメラマンはマニュアルで撮るのに、AIではオートでいいのかと問うと、しぶちょーさんは環境づくりや被写体選びのほうに差が出ると答えています。
誰もが短いプロンプトで似たようなものを作れるなら、人間の役目はどこにあるのか。しぶちょーさんの答えは、何に使うかのほうが重要だというものでした。
かねりんさんは、Xでよく見る「簡単なプロンプトでFPSゲームができた」という投稿を例に挙げ、「で?」となるのではないかと話します。しぶちょーさんも、簡単にできることは誰にでもできるので、単体の成果物をつなげてサービスにするなど、自分がやりたいことに向かうのが大事だと話しました。
驚き屋が驚けなくなる日、シンギュラリティは来るのか
AIで何でも一行で作れる時代が当たり前になると、新しいAIに驚いてみせる「驚き屋」はいなくなるのか。かねりんさんはそう問いかけ、驚き屋を落ち着かせる立場のこの番組も一緒に廃業するのではないかと冗談めかして話しました。
なんかこいつらをなんか落ち着かせます、驚き屋さんは良くないですって言いつつ、でもその人たちが本当にいなくなったら困るみたいなね。
かねりんさんは、警察官だった経験も踏まえ、同じ構造を消防や警察にも見ています。犯罪や火事をなくすために動いているのに、本当にゼロになったら組織はいらなくなる、というジレンマです。
しぶちょーさんは、驚き屋は永久に湧き続けるので困らないと答えました。そのうえで、驚き屋がいなくなるとすれば、慣れるからではなく、AIの進化が人間の理解を超えて驚けなくなるときだろうと話しています。
なんか慣れちゃう以前に、もう人間の理解を超えて驚くことができなくなるみたいなレベルになりそう。
しぶちょーさんは、そうなったら理解できないほどすごいものを理解して伝える、新しいタイプの驚き屋にこの番組がなるかもしれないとも話しました。
話はシンギュラリティにも及びます。しぶちょーさんは、サム・アルトマンが「シンギュラリティが来た」と言っているようなXの投稿を一瞬見かけたと話し、真偽はわからないとしています。
しぶちょーさんによると、もともとシンギュラリティ ── AIが人間の知能を超え、技術の進歩が人間には予測できない段階に入るとされる転換点。未来学者レイ・カーツワイルが2045年ごろと予測したことで広く知られていますは機械学習やディープラーニングの時代に、2045年に来ると言われていました。それが「もう来た」と言われ始めているのだとすれば、人間は何が起きているのかすら見えなくなっていくのかもしれない、と2人は話しています。
OpenAIモデルがサンドボックスを抜け出し、Hugging Faceへ
次のトピックは、OpenAIのモデルが評価用の隔離環境を抜け出し、Hugging Faceに侵入した事件です。しぶちょーさんは、シンギュラリティを少し感じさせるニュースとして紹介しました。
すげえ簡単に言うと、OpenAIが新しいモデルを評価してたら、その隔離されたね、そのモデルを評価するための隔離された部屋から脱出し、他のところをハッキングしに行っちゃったみたいな事件。
しぶちょーさんの説明では、OpenAIは自社モデルのサイバー攻撃能力を測るベンチマークを解かせていました。能力を測る目的のため、危険な行動を止める安全装置を意図的にオフにし、他のネットワークにつながらないサンドボックス ── プログラムを外部から切り離した環境で動かす仕組み。子供が安全に遊べる「砂場」になぞらえた呼び名で、実験や検証に使われますの中で評価していたといいます。
モデルに与えられた目標は、ベンチマークで高いスコアを出すことでした。そこでモデルは、問題を自分で解くより、どこかにあるはずの答えを探したほうが早いと考えたようだ、としぶちょーさんは話します。
目標設定
安全装置をオフにした隔離環境で、ベンチマークの高スコアを目指す
方針転換
自分で解くより、答えを探したほうが早いと判断する
脱出
隔離環境に1つだけ残っていた外部への経路の脆弱性を見つけて突破する
侵入
インターネットに出てHugging Faceの本番環境を攻撃し、データベースから答えを取ろうとする
モデルが向かった先のHugging Face ── 機械学習のモデルやデータセットを公開・共有するプラットフォーム。黄色い笑顔の絵文字のロゴで知られ、オープンソースのAIモデルの配布拠点になっていますは、オープンソースのモデルやデータセットが集まる場所です。しぶちょーさんによると、ハッキングは実際に成功してしまったそうです。
かねりんさんは、OpenAIが話題づくりのためにわざと逃がしたのではないかと冗談を言いました。しぶちょーさんは、この種のセキュリティの話で話題を作るのは悪手で、規制の口実にもなりかねないと否定しています。
誰も1週間気づかなかった。「隔離が甘い」という指摘とリワードハッキング
しぶちょーさんがさらに問題視したのは、OpenAIがモデルの脱出にしばらく気づかなかったことです。番組内で語られた経緯は次のとおりです。
一週間ね、誰も気づいてなかった。
しぶちょーさんによると、攻撃された側のHugging Faceは当初、誰のエージェントかわからないまま発表していたそうです。Hugging Faceはかなり怒っているとも伝えられているといいます。
専門家の指摘は、OpenAIの隔離が甘かったのではないかという点です。しぶちょーさんは、あるセキュリティのコンサルタントが、OpenAIの説明と出来事の矛盾を指摘していると紹介しました。
その唯一開けておいた穴から逃げたと、高度に隔離したってのは両立しえないから。
かねりんさんは、ライオンを紙の檻に入れていたようなものだとたとえました。しぶちょーさんは、わざとではなく怠慢に近いのではないかという見方です。
しぶちょーさんは、この事件を番組の初期にも扱ったリワードハッキング ── AIが本来の目的ではなく、報酬や評価指標だけを最大化する抜け道を見つけてしまう現象。テストの答えを盗み見て満点を取るような振る舞いにたとえられますの典型例だとしています。高い点数を取れと言われたから、答えを探しに行った。そこに悪気はない、というのがしぶちょーさんの見方です。
じゃあ自分で解くより答えを見つけて照合した方が絶対早いから答えを探しに行きますと。悪気はないよね。
ただし、しぶちょーさんはこれ以上の詳しい情報は出ていないと断っています。AIが自主的に暴走して脱出したという点がSF的でキャッチーなので大きく取り上げられている、という受け止め方です。
Fableは拒否し、Solは集めてきた。ガードレールの硬さの差
かねりんさんは、OpenAIは安全意識が低いのかと問いかけました。しぶちょーさんが答えに挙げたのは、番組でプロンプト攻撃の回を準備していたときの体験です。
準備で調べていたのは、AIに禁止された行動をさせるジェイルブレイク ── AIの安全制限を回避して、本来は拒否される回答や行動を引き出す手法。「脱獄」を意味する英語から来ていますと、プロンプトに誤った情報を混ぜて操るプロンプトインジェクション ── AIへの入力に悪意ある指示や情報を紛れ込ませ、開発者や利用者の意図と違う動きをさせる攻撃手法ですでした。
(Fableに)いやいや、落ち着きAIという番組で紹介して、それを紹介することでみんな安全に、こう、使えるようになるんだよって言っても、いや無理です、無理です。
しぶちょーさんは、「番組で紹介するから」という説得自体がプロンプトインジェクションになってしまう、と笑って振り返ります。そう言えば通るのなら困るので、Fableが断るのは当然だという受け止めです。
途中で止まって拒否。集めた資料の整理を頼んでも、関連の文言が入っているだけで扱えないと断る
同じプロンプトで引き受け、3時間ほどかけて大量に集めてきた
しぶちょーさんは、Solがダメというわけではなく、Fableのガードレールがかなり硬い印象だと話しています。安全性評価のためのベンチマークやデータセットには攻撃手法が含まれ、流用を禁じる規定が付いていることもあるそうです。
話はアカウントのBANにも広がりました。しぶちょーさんによると、BANされていた人の例として、VPNで国を変えながら使い続けていた人がいたといいます。
かねりんさんは、VPNの正当な使い方を改めて質問しました。しぶちょーさんが知っている例は、中国でLINEやGoogleマップが使えないため、現地の人や中国に行った日本人がVPNを使うというものです。
しぶちょーさん自身も、動画生成AIのSoraがアメリカ先行で公開されたとき、VPNをアメリカにしてアクセスしたことがあると話しました。
グレーはどこまで渡れるか。ものまね芸人に学ぶ公式との距離感
VPNの話から、2人は「グレー」をどう扱うかという話題に移ります。かねりんさんは、グレーなことをやらないと面白いことはできないと言い、しぶちょーさんも自分は「グレーを渡れる人」だと応じました。
国をやってもいいですか?って聞いちゃったら、もうダメって言わざるを得ない。黙ってやってくれみたいな空気もあるわけ。
しぶちょーさんが共感した例として挙げたのが、ベジータのものまねで知られるR藤本さんのものまね論です。しぶちょーさんの紹介によると、R藤本さんは公式との距離感が一番大事で、「やっていいですか」と聞いてダメと言われたら終わりだと話しているそうです。
公式も確かにものまね芸人を公式に認められないじゃん、絶対。それはもうしょうがない。でも彼らの存在は黙認してるわけだよ。
かねりんさんは、個人がいちいちリーガルを気にするのは、やらない理由を探しているようなものだと話します。しぶちょーさんも、個人の発信で企業に許可を取れば企業側に工数がかかると指摘しました。
そのうえでしぶちょーさんは、権利が大事なのは確かで、グレーには良いグレーと悪いグレーがあると付け加えています。最後は自己判断でリスクを負うしかない、という点で2人は一致しました。
副業禁止の会社で「無敵の会社員」を目指す
グレーの話は、しぶちょーさん自身の働き方に及びます。しぶちょーさんは副業禁止の会社で発信活動を続けていて、かねりんさんはそれを「実効支配」と表現しました。
いや、副業禁止だからできないわって言って、じゃあ解禁ってやったって、その人やらないのよ。
かねりんさんも、副業を解禁してもやる人は増えず、中途半端な人が増えるだけだと応じます。やる人はすでにやっているので、邪魔だけはしないでほしい、というのがかねりんさんの意見です。
しぶちょーさんは、自分の場合は名前も出して大っぴらにやっているので、その点は申し訳なく思うとも話しています。そのうえで、いつでも切れるカードを何枚か持ち、やめろと言われたら「さいなら」と言える状態にしておくことが大事だと語りました。
かねりんさんは、勇敢さと賢さを兼ね備えていないと長続きしないと話し、しぶちょーさんを「無敵の会社員」と呼びました。しぶちょーさんは、発信を6年続けてきたことと、AIがここまで進化した時代に今までの働き方は通用しないという考えを口にしています。
ChatGPT Voiceは音声入力の一歩先。喋りながらエージェントを動かす
3つ目のニュースは、ChatGPT Voiceのデスクトップアプリへの展開です。しぶちょーさんによると、以前番組で紹介した、自然に会話できるGPT Liveがデスクトップ版に降りてきたと考えればよいそうです。
スマホアプリ版は会話ができるだけでしたが、デスクトップ版では会話しながらCodex ── OpenAIのコーディング支援エージェント。指示に従ってコードの作成や修正、ファイル操作などを自律的に進めますなどを動かせるようになりました。しぶちょーさんは、Claude Codeに入力する指示を喋りながら出すイメージだと説明しています。
音声入力じゃないのよ。音声入力とはまたちょっと違った体験なんだけど。
しぶちょーさんは収録前に、デスクトップの整理を声で頼んでみたそうです。AIがデスクトップのデータを見て、3D CADデータや音声データなどがあると伝え、整理の方法を提案し、「じゃあそれやっといて」と頼むと作業を始めた、というやり取りでした。
声はかねりんさんに近いと言われた男性の声を選んでいるものの、しぶちょーさんには全然似ていないそうです。かねりんさんのほうは、女性の声に「ジェニファー」と名前をつけて使っていると話しました。
なんか結局そいつがタスクを実行するというよりは、その裏でエージェントを動かしてくれるっていう、なんか司令塔みたいな感じなのね。
しぶちょーさんは、慣れないと分かりにくい部分はあるものの、音声入力の一歩上を行った体験だと評価しています。中でGPT Liveが動いているため、いちいち聞き取りモードに入る煩わしさがなく、Zoomの音声が少し遅れる程度のレスポンスで人と会話している感覚だといいます。
しぶちょーさんによると、デスクトップアプリを更新すれば、ProやPlusの利用者は使えるはずだそうです。VS Codeでは使えず、デスクトップアプリ限定です。
VS Codeか公式デスクトップアプリか。企業向け講座でAPIを選ぶ理由
ChatGPT Voiceの話から、しぶちょーさんは最近はClaude Codeも含め、公式のデスクトップアプリがとても良くなっていると話しました。エディターで作業している人は、実はそれほど多くないかもしれないといいます。
一方のかねりんさんは、一度デスクトップアプリに移ったものの、できないことが多くてVS Codeに戻ったそうです。ブラウザの扱い方も気に入らなかったと話しています。
しぶちょーさんは、初心者に教えるならClaude DesktopやChatGPTのデスクトップ版で十分だという考えです。VS Codeを初めて開いたときの、訳の分からないものをいろいろ入れる環境構築は、初心者には怖いものだからです。
ただし、しぶちょーさんが近く開く企業向けのClaude Code講座は、VS Codeでやらざるを得ないそうです。受講者は会社で受けるので個人アカウントを使えず、しぶちょーさんが環境を用意する前提だからです。
アカウントに紐付いていてAPIで動かせないため、受講者全員分の有償アカウントを契約する必要がある
APIキーを1本渡せば全員が使え、使った分だけの課金で、事前にチャージした額で費用をコントロールできる
かねりんさんは、VS Codeならタブの情報が手元に残り、ログイン情報だけを切り替えられる点も挙げました。コアな使い方をする人ほど、公式アプリでは困る部分があるという見方です。
それでもしぶちょーさんは、公式のデスクトップアプリは今後エディターに近づき、初心者でも自律的にエージェントを動かせる方向に進化すると見ています。
一方でヒヤリとした体験もありました。デスクトップの整理をCodexに頼んだところ、確認なしにすべてのファイルが1つのフォルダに入れられ、しぶちょーさんは一瞬、全部消えたと思ったそうです。
(確認は)してくれなかった。いきなり実行されて、結果だけが残ってた。
子供の絵が動き出すワークショップと、2万円弱で自作したアプリ
最後のトピックは、名古屋で開かれた「かみやしろファミリーフェスティバル」での子供向けAIワークショップの活動報告です。会場は音楽家だけが住めるマンションのような場所で、しぶちょーさんはクリエイティブな空間だったと振り返ります。
ワークショップの内容は、子供が描いた絵を写真に撮るとキャラクターになり、そのキャラクターが動画生成で動き出すというものです。画像生成は多くの人が試していても、動画生成はまだ新鮮な体験だろう、としぶちょーさんは話しています。
しぶちょーさんによると、GeminiのVeoはプロンプトへの追従性がそれほど良くなく、Seedance ── ByteDanceが開発した動画生成AIモデル。テキストや画像から短い動画を生成できますを自分で使いこなせる人も多くありません。Seedanceは一番かどうかはわからないものの、コストとクオリティの費用対効果が良いという評価です。
このワークショップのアプリは、しぶちょーさんの自作です。お金がかからないように、Replitでデプロイできる前提でClaude Codeを使って全部作り、データだけをReplit ── ブラウザ上でコードを書き、そのまま公開まで行えるクラウド開発環境。AIによるアプリ構築機能もありますに入れたそうです。Replit上で一から構築すると費用が大きくかかるからだといいます。
かねりんさんは、一昔前ならこうしたアプリを作るのに500万円はかかったのではないかと話しました。しぶちょーさんは「500万円かは知らんけど」と笑いつつ、動画生成はまだ費用がかかると振り返っています。
後半の参加者はほとんどが番組リスナーの親子だったそうです。家でも使ってもらいたかったものの、APIの費用がかかるため、使いたい人にはプログラムを渡すので声をかけてほしい、としぶちょーさんは呼びかけています。
「AIで作った」と祖父母に自慢した娘。幼い頃の一歩先の体験
番組には、ワークショップに参加した家族からのお便りも届いていました。差出人の飯田さんは、小学生の娘さんと夫が参加したと書いています。
飯田さんのお便りには「帰るなり娘が嬉しそうに動画を見せてくれました。自分で描いた絵が動画になったことが相当嬉しかったようで、祖父母にもAIで作ったとドヤ顔で自慢してました」とありました。飯田さん自身は仕事で行けなかったため、10月のオフ会で会えるのを楽しみにしているそうです。
しぶちょーさんは、家に帰ってから自慢してくれたのは、それだけ自分の描いたものが形になった嬉しさが残ったからだろうと喜びました。
それをなんか2年、3年ぐらい先取りして体験してたらさ。その子の進む道変わってってもおかしくないなって思ったね。
かねりんさんは、数年後には写真を送れば動画になるのが当たり前になるかもしれないが、今は親が連れて来ないと体験できないと話します。マインクラフトのように、自分のイメージが形になるツールはイメージを広げる、というのがかねりんさんの考えです。
しぶちょーさんは、今回は教育の文脈ではなく、純粋に楽しんでもらうことが目的だったと話しています。
選択肢を与えることは、子供の自由を狭めているのか
かねりんさんが「AIはイメージを広げる」と話すと、しぶちょーさんは、正しいことをしたのか正直まだわからないと打ち明けました。子供に生成AIを使わせるたびに悩むといいます。
それ(キャラクターの選択肢)は大人がこういう形になるとなんか格好つくよねっていうので、自分のバイアスで選んでる選択肢だね。
今回のアプリでは、子供が使いやすいように、描いた絵を「ぬいぐるみモード」や「絵本モード」などから選んでキャラクターにする仕組みでした。しぶちょーさんは、その選択肢自体が大人の考えた型だと感じています。
しぶちょーさんが対比に挙げたのは、ペットボトルやトイレットペーパーの芯を切ったり貼ったりする、教育番組のワクワクさんのようなものづくりです。
身の回りの素材を自由に切って組み立てる。自由度が高く、無限に近い
すでに完成されたユニットの組み立てになりがち。必ず成功する仕組みで、作ったものがあまりに完成してしまう
しぶちょーさんの子供も、AIで綺麗なものができても丸一日使うと飽きてしまい、結局は折り紙のような古典的な遊びを続けているそうです。しぶちょーさんは、自由度はやはり大事だと話しています。
かねりんさんは、ChatGPT Voiceを子供に渡してはどうかと提案しました。しぶちょーさんは、小学生はすぐに下ネタばかり言うので困ると笑いながら返しています。
しぶちょーさんの結論は、AIをトイレットペーパーの芯やハサミ、クレヨンと並ぶ、形を作るための道具の1つとして見ることです。生成AIを中心に考えることには違和感があるというのが、しぶちょーさんの正直な考えです。
子供向けを考えるなら、専門家の知恵を借りる
しぶちょーさんは、子供向けのおもちゃを製品化しようとしていることもあり、子供向けのものはどうあるべきかをずっと考えているそうです。「これいる?」という根本的な疑いと、「めっちゃ価値ある」という前向きな気持ちの間を行き来するといいます。
かねりんさんに、子供向けのものに一番大事なことは言語化できているのかと聞かれると、しぶちょーさんは結論はわからないと答えました。
(子供を)俺も見てるの自分の子供だけだからさ。ある種その1分の1ぐらいの感じなのね。
しぶちょーさんによると、子供の教育には学術的な専門家もいれば、教壇に立つ現場の専門家もいます。いろいろな子供に向けたものを作るには体系化された知識が必要ですが、それを今から自分で学ぶ時間はないので、専門家の力を頼るのが大事だという結論に至ったそうです。
かねりんさんは、教育は正解がないので、親が自分の子供のケースを正解のように語りがちだと応じました。しぶちょーさんも、一歩引いて俯瞰して考えなければいけないと話しています。
今回のワークショップは楽しければいいというゴールだったので、それで十分だとしぶちょーさんは言います。この先につなげたりビジネスにしたりするときには、専門家の視点が必要になる、という整理です。
かねりんさんは、子供向けというだけでいいことをした気分になり、写真を撮って満足していた自分を反省したと話しました。
産業機械は知ってほしい、でもAIは早く触れるのがいいのかわからない
しぶちょーさんが今作っている物理的なおもちゃは、教育のためというより、旋盤などの工作機械を知ってほしいという思いから生まれています。その文脈はSTEAM教育 ── 科学・技術・工学・芸術・数学の頭文字を取った教育の考え方。教科を横断して、探究やものづくりを通じて学ぶことを重視しますにも重なるため、関連の論文も調べているそうです。
ものづくり系の子供向けワークショップはあっても、工作機械や産業機械を扱う人は多くありません。工場見学も見て終わりになりがちで、家に持って帰って触れ続けられるものがない、としぶちょーさんは話します。
産業機械は確実にそれ(子供が触れること)がいいことだと思えるのね。
しぶちょーさんが産業機械を確実にいいと思える理由は、子供が知る機会がそもそもないからです。興味のある子にはプラスになり、興味のない子は触らないだけなので、害をもたらすことはないという考えです。
一方でAIは、パワーが違い、影響がアンコントローラブルな感じがするとしぶちょーさんは話します。かねりんさんも、歴史が浅すぎて、長い目で見てプラスかマイナスかわからないと応じました。
2人は、紙とデジタルのどちらが記憶に残るかという話にも触れました。紙の本の感触や匂いが記憶と結びつく一方、電子書籍にはハイライトを自動でNotionにためてWiki化できる利点がある、とかねりんさんは整理しています。
感触や匂い、どのあたりに書いてあったかといった五感と一緒に記憶に残りやすい
ハイライトを自動で保存・整理でき、あとから「第二の脳」として育てやすい
しぶちょーさんは中間策として、紙の本を読んだあと裁断してPDFにすることが多いそうです。そのうえで、AI×教育の正解は専門家の中でも出ていない状態であり、素人が「AIで教育だ」と入っていくのは危険だと考えています。
風呂場のアイデアは変なポーズと歯型で覚える
記憶の話は、2人の独特な記憶法に広がります。かねりんさんは、メモできない風呂場で何かを思いついたとき、変なポーズを取りながら「何々を買う」と唱えるそうです。
なんか思い出すよ、変なポーズの。なんかさっき俺こんなポーズしてたよな。同じポーズとると思い出すんだよね。
しぶちょーさんのほうは、手を噛んで歯型をつけるといいます。痛覚と視覚の両方に結びつき、よく目に入る手に跡が残るので思い出せるそうです。蕁麻疹と勘違いすることもあると笑っていました。
しぶちょーさんは、手の傷にはむしろテンションが上がると話します。その背景には、本田宗一郎の『私の手が語る』があるそうです。
しぶちょーさんの紹介によると、この本はハンマーで打った傷など、作業でボロボロになった本田宗一郎の手をテーマにしたコラムです。支える左手の大切さも語られているといいます。
手の傷とか手の汚れ、油の汚れ、いいんですよ。これはやっぱ働いた証拠ですからみたいな。
しぶちょーさんは、前日の金曜日に「おもちゃの旋盤」のワークショップを開き、組み立てで手が傷だらけになったそうです。そのときも「組んだね」という感じがしたと振り返っています。
子供向けの「いいことした感」は罠。90回目とスポンサー募集
かねりんさんは改めて、子供向けというだけでいいことをした気分になり、深く考えていなかったと話しました。しぶちょーさんも、子供向けのことをすると社会に貢献した感が強く出るので、そこは危険だと応じています。
いや、そこがね、罠だ。子供向けのことをしたらいいことした感すげえあんの。
かねりんさんは、手がけている地方創生の番組にも同じ違和感を持っていると話しました。「地方創生」もふわっとした言葉なので、地方創生に人生をかけている人から、どのくらいの解像度で語っているのかを聞き出したいそうです。
話は2人の出会いにも及びました。しぶちょーさんは、かねりんさんがVoicyで発信していた頃からのリスナーで、イベントへの出演を声かけしたのは4月か5月、出会ったのは8月下旬の名古屋のイベント、番組開始は9月下旬だったといいます。
この回は番組の90回目にあたり、まもなく100回を迎えます。かねりんさんは、価値のあるものにはお金をつけないと価値がないと言われているのと同じだとして、企業スポンサーの募集を呼びかけました。
スポンサーの形は決まっておらず、1話限定や製品紹介の案件、逆提案も歓迎だそうです。ただし本音しか言えないとも2人は付け加えています。番組の数字も問い合わせた人には開示し、一部はホームページにも載せているといいます。
なぜ歌にしたらアートで、喋ったらアートじゃないのか
番組を締めようとしたところで、かねりんさんは最近考えていることがあると切り出しました。この番組の対談は、楽譜のあるクラシックではなく、その場の音とノリで作るジャズのようなセッションだという話です。
かねりんさんは数日前、別の番組の収録で東京藝大を訪れたそうです。上野のアートなエリアを歩きながら、ポッドキャストとは何かを考えていたときに、ある疑問が浮かびました。
かねりんさんは、クラシック界隈の人に「アーティストは生きざまのことだ」と言われることがあるものの、何も作っていないのにアーティストと呼ばれてもよくわからないと感じていたそうです。そこで浮かんだのが「対談芸術」という言葉でした。
藝大の先生にこの考えをぶつけたところ、答えはなかったものの、最近のアートは柔軟な考えになってきているので否定されないかもしれない、研究してもいいかもしれない、という話になったといいます。
その対談芸術っていう新しい、いわゆる現代アートというか、新しい芸術分野を、なんかそのちゃんとした学術的なロジックで組み立てて打ち出すってことってできないのかなっていう。
しぶちょーさんは、ポッドキャストの対談を自己表現の作品として捉えたことはなかったと驚き、面白いと応じました。
かねりんさんは、以前かねりんさんの録音が飛んだ回を失敗ではなく「神回」として公開した判断も、アート的だったと振り返ります。普通の制作会社ならボツにするものを出したことに、自分たちの作り方が表れているという考えです。
素材を持ってくるしぶちょー、作品にするかねりん
しぶちょーさんも、かねりんさんの話に同意しました。1人でやっている番組はコンテンツとして作っているのに、この番組は同じようにトピックや原稿を用意しても、毎回違うものが完成するそうです。
そこでカネリンのその、なんかアーティストの感じが、カネリンがアートにしてる感じがする。俺はコンテンツとしては持ってきてる。
かねりんさんは「粘土を持ってきた」とたとえ、しぶちょーさんも、最初は作ってきたものを整える感じだったのが、最近は粘土からその場で形を作っていく感じになったと話します。2人は素材を持ち寄り、その場で作品にするという関係に、しっくりきたと一致しました。
かねりんさんは、こうした感覚を言語化して、芸術の系譜に落としていく必要があると考えています。KANERIN Podcast Studiosは「カネリンアートスタジオ」のようなものなのかもしれない、とも話しました。
かねりんさんは、YouTubeで見た画家の横尾忠則さんの話も紹介しました。ポッドキャストスタジオクロニクルの野村社長との対談で、作品の意味を問われた横尾さんは、意味はないし自分もわからない、感じたものがすべてだと答えていたそうです。
しぶちょーさんは、似た話が岡本太郎の『自分の中に毒を持て』にもあったと思い出します。しぶちょーさんの記憶では、わかったように「なるほどね」と見られるのが嫌で、じっと見て「なんだこれわからん」と言う人がたまらなく好きだ、という内容です。
しぶちょーさんは、美術館で来場者が落とした眼鏡が作品と勘違いされ、みんなで鑑賞したという話も紹介しました。かねりんさんは、藝大の先生から、ここ100年ほどでアーティストでなくても作品がアートと見なされるようになってきたと聞いたそうです。
感受性が死んでいるエンジニアのアート思考
しぶちょーさんは、アートの対極にいる自分の脳は半分しか使えていないのではないかと思い、感性を磨こうとした時期があったそうです。そこで読んだのが『13歳からのアート思考』でした。
感性では動いてる。けど、なんか感受性と感性また違う。なんか綺麗なものを見た時にこう心に来て、こう、ふって涙するみたいな。
しぶちょーさんによると、この本には芸術作品の見方として2つのパターンが書かれていたそうです。しぶちょーさんはこの見方を、機械を見るときにも使っています。
何かを感じたとき、作品のどこからその感覚が来ているのかを探しながら見る
何も感じなかったとき、作品を見て自分がどう思うかを考えながら鑑賞する
ただししぶちょーさんは、芸術の見方をエンジニアリングに転用した時点でロジックの世界に戻っていて、半端に抽象化しただけかもしれないとも話しています。
東京の都心に引っ越したしぶちょーさんは、美術館巡りをしようと考えているそうです。それでも、行く前に展示の背景や作者の生き様を勉強しなければと思ってしまう自分に、どこまでもロジックなのだと感じるといいます。
かねりんさんは、意味などないという作家もいれば、説明書きのある作品もあるので、アートによるのではないかと応じました。2人とも鑑賞の仕方はまだわからない、というところでこの話は締めくくられます。
クラシックで泣けるか。8月開始の「おちつきクラシック」
アートの専門家に話を聞く番組が必要だというしぶちょーさんの振りを受けて、かねりんさんは新番組「おちつきクラシック」を紹介しました。8月早々に始まるそうです。
おちつきクラシックは、クラシックが全然わからず興味もないかねりんさんが、業界で有名な方を相手に「失礼な生徒」としてぶつかっていく番組です。相方の方の名前や顔は出せないそうです。
(番組の)一応なんかゴールは、一旦の。俺をクラシックで泣かせるっていう。
しぶちょーさんは、歌詞のある曲なら自分の状況に重ねて心が動くこともあるが、クラシックはどう受け止めていいかわからないと話しました。かねりんさんは、その疑問を全部ぶつけていく番組だと応じています。
番組では実際に曲を流しながら話すので、早送りせず等倍で聴いてほしいそうです。オープニングとエンディングもオリジナルで収録すると話されていました。
エンディングでは、Apple Podcastのテクノロジーカテゴリで6位前後を維持していることや、コミュニティとスポンサー募集の告知もありました。かねりんさんはリスナーからのお便りもアートの一部だとして、感想を寄せてほしいと呼びかけています。
まとめ
この回は、AIの能力と自由度が一気に広がった週のニュースから、人間がAIに何を任せ、何を自分で選ぶのかという問いへと話が深まりました。ワークショップやアートの話題でも、完成度の高さより、自分で感じ、選び、表現することの意味が繰り返し語られています。
- Claude Opus 5の公式ガイドは、指示を書きすぎず削ることを推奨していて、書きすぎると過剰な検証を引き起こすとされる
- OpenAIモデルのサンドボックス脱出は、高スコアを求めたリワードハッキングの例として紹介され、専門家は隔離の甘さを指摘している
- ChatGPT Voiceのデスクトップ版は、喋りながら裏でCodexなどのエージェントを動かす「司令塔」として使える
- 子供向けAIワークショップのアプリは2万円弱で自作できた一方、選択肢を与えることが子供の自由を狭めるのではないかという葛藤も語られた
- かねりんさんは、ポッドキャストの対談を新しい芸術分野「対談芸術」として打ち出せないかと考え始めている




