増えている「地元の土地で何かしたい」という相談
西野さんは西野コンサルという名前で、年間100社ほどの企業のコンサルティングに携わっているほか、全国各地で経営者とお酒をともにする機会も多いと話します。
そうした環境にいると、まだ表に出ていない小さな変化を人より少し早く耳にすることがあるそうです。
最近明らかに増えてきた話題が、「地元の土地を譲り受けることになったので、この土地を使って何をしようか考えている」という相談だといいます。
そうした場面では、自分なりのテーマパークのようなものを作ろうと考える経営者が少なくないそうです。
テーマパークというと単位がでかくなっちゃいます。テーマパークみたいなもんですね。自分の世界観で繰り広げられる居場所みたいなものを、皆さん作ろうとするんですけれども。
ゼロから集客施設を作ることをすすめない理由
西野さんは、その気持ち自体はとてもよくわかると言います。採算や経済合理性だけでは説明がつかない、男のロマンと呼ぶべき魅力がそこにはあるからです。
たとえとして、所さんのガレージや世田谷ガレージのようなロマンが挙げられています。
ただ結論として、人の流れが存在しない場所にゼロからテーマパークのような集客施設を作ることはおすすめしないと話します。
理由はシンプルで、テーマパークや遊園地が人の流れそのものを生み出す装置として機能していたのは、娯楽の選択肢が今ほど多くなかった時代のやり口だからだといいます。
現代はスマホ一つで世界中のコンテンツにアクセスできます。映画もゲームもライブも配信もSNSもある中で、わざわざその場所まで足を運ぶ理由をゼロから作る難易度は、昔とは比較にならないと語られています。
ディズニーランドができた時とも話が違いますよっていう。
例外は「再編集」。ライトアップという一本勝負
もちろん例外もあると西野さんは言います。それは、その土地にしか存在しない自然資源をライトアップで生かせる場合です。
山や湖、渓谷、滝、桜並木、イチョウ並木といった、その土地固有の景観にライトアップを組み合わせる取り組みは、時々当たるそうです。
これは新たなコンテンツを生み出すというより、その土地だけが持つ価値を再編集する戦略だと説明されます。他の地域との差別化が成立しやすく、地元の人も来やすい点が強みです。
この再編集と今言いましたけど、これね、ほぼライトアップ一本勝負なんですよ。ライトアップだと地元の人も取れるんですよね。
岐阜の飛騨にある合掌郷{要確認: 合掌郷}のように、廃線となったレールを活用したエンタメが人を呼ぶケースもあると触れられます。
ただ、それは本当に稀なケースであり、もともと飛騨は観光地の延長線上にあるため、異常値としてノーカウントにした方がいいとされています。
基本はライトアップであり、ライトアップ映えしない土地にゼロから人工的な集客装置を作る戦略は、現代ではほぼ無理ゲーだと語られました。
ムーミンバレーパークの数字から見える現実
西野さんは、自身も大好きだというムーミンバレーパークを例に挙げます。埼玉の飯能にある施設です。
ここは無料エリアのメッツァビレッジと、有料エリアのムーミンバレーパークで構成されています。
運営会社が公表している年間来場者数は、コロナ禍を経て現在およそ70万人から80万人規模で推移しているといいます。
ただし、この数字は施設全体の来場者数で、無料エリアの利用者も含まれています。有料施設単体の年間入園者数は公表されていないと指摘されます。
仮に有料のムーミンバレーパークに流れる客がそのうちの3分の1だとすると、年間20万人ちょいで、一日あたりの来場者は600人ほどになる計算だと西野さんは試算します。
これだけ広大な施設のランニングコストを600人の売上から賄うのは簡単ではありません。ムーミンの場合はグッズ売上が大きいため、そこでどうにか成り立たせていると考えられると話します。
沖縄のジャングリア、和歌山のポルトヨーロッパ、長崎のハウステンボスといった施設も引き合いに出され、集客の難しさが語られました。
チムニータウンの失敗と「どこでやるか」という戦略
西野さんは、チムニータウンもこの点できちんと失敗していると明かします。
ただ、自分たちの場合は上物を建てる前に撤退できたのでまだ良かったといいます。上物を建ててしまうと、せっかくの施設をなんとか生かさないとという人質ゾーンに入ってしまうからです。
そうなると、かなりの負債を抱え、人生の時間で見てもかなりのロスをすることになると語られます。
人口が減りコンテンツが増えた現代において、人の流れがない土地は基本的に工場や農園以外の使い道がないという厳しい見方が示されます。
一方で、子供の頃から慣れ親しんだ土地が丸々自分のものになるというロマンに、人は目が眩んでしまうといいます。
ここ全部俺らが自由に使えるの?ってなると、ここを使って何かしようというふうに考えちゃうと。ただ、ここは本当に気をつけた方がいい。
逆に言えば、「どこでやるか」というゲームは今かなり大きな意味を持ち始めていると西野さんは述べます。
そのため、地元の土地を売ってでも、人の流れがある場所は本気で取りに行った方がいいのではないかと提案されました。
娯楽の選択肢が少なかった時代のやり方で、現代ではゼロから足を運ぶ理由を作る難易度が高い
どこでやるかを重視する発想で、既にある流れを活かせるため現代では有効になりやすい
まとめ
何でもかんでも強いコンテンツで人を呼べると思ったら大間違い、という注意喚起の回でした。土地のロマンにちょっと待ったをかけ、立地の重要性を考えるきっかけになりそうです。
- 人の流れがない場所にゼロから集客施設を作ることは、西野さんはおすすめしていない
- 娯楽の選択肢が増えた現代では、わざわざ足を運ぶ理由をゼロから作る難易度が高い
- 例外は、その土地固有の景観を活かすライトアップのような「再編集」戦略
- メジャーなIPでも、人の流れがない場所で集客するのは簡単ではない
- 「どこでやるか」は今大きな意味を持ち、人の流れがある場所は本気で取りに行く価値がある
