社長の会見で語られた「開業のタイミング」
先日、『ジャングリア沖縄』の運営会社である『ジャパンエンターテインメント』の社長さんが、株主総会後の記者会見で開業後の苦戦について話されていました。
内容は「真夏の繁忙期に開業するのではなく、観光需要が落ち着く時期にあえて開業することで混乱を防ぐ必要があった」というもの。「準備期間を十分に確保できていれば、従業員の練度も高められたはずだ」とも説明されていたんですね。
この話は、僕も過去に出版した本に書きましたし、何度もお話ししてきました。
オンラインサロンのメンバーさんなら、もう耳にタコができるほど聞いている話だと思いますが、、
テーマパークを繁忙期にオープンさせるのは、基本的には避けなきゃいけないんです。
一度離れたお客さんは戻ってこない
これはテーマパークに限った話ではありません。
中長期的にサービスを提供して事業を続けていくことを前提にするなら、あらゆるビジネスに共通する原則なんです。
理由は、社長さんがおっしゃっていた通りです。
需要が落ち着いている時期に開業して、従業員の練度を高める必要があるから。サービスのエラーを、お客さんがあまりいない間に見つける必要があるからです。
サービスの品質が十分に整っていない段階で、過剰な集客をしちゃいけないんですよ。
一旦期待を裏切られたお客さんを呼び戻すのは、ほぼ不可能です。最初の体験で失望した人は、その後サービスの品質が改善されても戻ってきてくれないんですね。
つまり、提供体制が整うまではあんまり売っちゃいけない。
見つかりすぎないようにすることも、経営における重要な判断なんです。
東京ディズニーランドが4月15日に開園した理由
これはテーマパーク運営の、基本中の基本です。
僕もこの話が好きなんですけど、『オリエンタルランド』さんが運営する『東京ディズニーランド』は、4月15日に開園しているんですね。
夏休みという大きな繁忙期を迎える前に開園して、実際にお客さんを受け入れながらオペレーション上のエラーを洗い出す。
そしてサービスの精度を高めて、従業員の練度を上げる。そのための4月15日開園なんです。
やっぱり、開業はゴールじゃないんですね。繁忙期という本番を迎えるための、準備期間の始まりなんです。
なぜジャングリア沖縄がこうした基本の手順を踏まなかったのか。その判断の背景には、いろんな事情があったんだと思います。
ただ今となっては、判断を振り返るだけでなく、ここから何を学んで次にどう生かすかが重要かなと思います。
PRとマーケティング、そして経営は別もの
この問題を考えるうえで理解しておかなきゃいけないのが、PRとマーケティングの違いです。
PRの目的は、認知を獲得すること。マーケティングの目的は、商品やサービスが継続的に売れる仕組みを作ること。
この2つは似ているようで、本質的に全然違うんですね。
ジャングリア沖縄に限らず、『刀』の森岡さんがこれまで手がけてこられた施設の取り組みを見ていて、僕がめちゃくちゃ感じているのは、森岡さんの最大の強みはマーケティングじゃなくてPRなんじゃないか、ということです。
個人的には、マーケティングの神様というより、PRの神様と呼んだほうが、その能力の本質を捉えているように思います。実際、ジャングリアもPRは成功していますから。
もちろん、認知を獲得することにはめっちゃ価値があります。話題を作って関心を集め、足を運んでもらう。事業の立ち上げにおいては、非常に強力な武器です。
ただ、PRによって生み出されるのは、あくまで最初の集客機会なんですね。
そのお客さんに満足してもらえるのか。また来てもらえるのか。口コミで新たなお客さんが生まれるのか。売上と利益を継続的に生み出せるのか。
ここから先は、PRだけでは解決できないんです。
マーケターとしてPRの成果を示すことに徹するなら、認知や集客の数字を作って「これだけの成果を出しました」と示すことはできます。
でも、実際に会社を経営して長期的な事業責任を負う立場になったら、それだけでは事足らない訳です。
自ら経営するというのは、集客した後の結果まで引き受けるということなんですよ。
話題になることと、事業がうまくいくことは同じじゃない。認知を獲得する力と顧客満足を生み出す力も、集客する能力と事業を持続させる能力も、別なんですね。
最初の数字を作ることは、もちろん重要です。
でも本当に問われるのは、その数字を一過性で終わらせず、継続的な売上と利益に変えていけるかどうかなんです。
PRは人を連れてくる。マーケティングは売れる仕組みを作る。経営はその仕組みが長く機能し続ける状態を作る。
この3つを、ごちゃごちゃにしちゃいけないなと思います。
観光地ならなおさら繁忙期に開業してはいけない
最後にもう1つ、ここもめっちゃ大事です。
沖縄のような観光地だと、なおさら繁忙期にオープンしちゃダメ、絶対ダメなんです。テーマパークに限らず、お店もそうです。
まだサービスの精度が低いのに、ホテル代はめちゃくちゃ高い。お客さんからすると、体験が値段に見合わないんですね。
みんな、初日から超満員で長蛇の列、みたいな最初の盛り上がりを作りたがるんですけど、そこは本当に気をつけてください。
今日は「繁忙期にオープンしたジャングリア沖縄から学ぶこと」について書いてみました。
オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日2000〜3000文字の記事を投稿しています。興味がある方は、ぜひ覗いてみてください。
それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
開業はゴールではなく、繁忙期という本番に向けた準備期間の始まりです。僕は、認知を取るPRと、売れ続ける仕組みを作るマーケティング、それを長く機能させる経営は別ものだと考えています。
- サービスの提供体制が整うまでは、過剰に集客せず「見つかりすぎない」ことも経営判断
- 一度期待を裏切られたお客さんは、品質が改善されてもほぼ戻ってこない
- 東京ディズニーランドは夏休み前の4月15日に開園し、エラーの洗い出しと従業員の練度向上に充てた
- 観光地は宿泊費も高いぶん、体験が値段に見合わなくなりやすく、繁忙期の開業はなおさら避けるべき







