仕事が大きくなって増えた「とりあえず現場の下見」
近年、ChimneyTownが手がける仕事は一つひとつのサイズが大きくなってきたと西野さんは話します。
たとえば2017年ごろ、兵庫県川西市で行った「チックタック 光る絵本と光る漫画辞典」は、山をライトアップした個展で、1〜2週間で約3万人が訪れ、制作費は4500万円ほどだったといいます。
当時は自身過去最大の個展と語っていましたが、今はそれよりも人数も金額も大きくなり、金額でいえば一桁増えていると話します。
そのなかで、自分のスケジュールを振り返ると明らかに変わったことがあると気づいたそうです。それが「とりあえず現場の下見」の増加でした。
昔はとりあえず現場の下見っていうのなかったんすよ、別に。
「仕事が決まる前に現場を見る」という逆転の順番
以前は、話がまとまった仕事に対して、口約束でも契約めいたものを結んでから、必要に応じて現場を見に行く順番でした。
ところが最近は、まだ案件になるかどうかもわからない段階で現場を見に行く工程が差し込まれることが増えたといいます。
収録当日も、西野さんはこの後に京都太秦映画村へ下見に行く予定だと話します。前夜には一人で客として電車に乗り、チケットを買って夜の映画村の様子を確かめてきたそうです。
西野さんはこの取り組みを「フロントエンドプランニング」と呼びます。仕事が正式に始まる前の段階に、あえて時間と人を投入するという考え方です。
まだ仕事になっていない段階で現場を見て、可能性を探って、リスクを把握して、何かできそうであればやるし、無理ならやらない。
多くの会社では「時間と人を投入する=事業が始まる」なので、現場を見ている時点で仕事が決まっていると思われがちだと指摘します。
だからこそオンラインサロンでも「あの件どうなったんですか、流れたんですか」という質問を頻繁にもらうそうです。実際には、やらないと判断することがほとんどだといいます。
一般的な流れと、ChimneyTownの流れの違いを整理すると次のようになります。
仕事が決まる → 現場を見る → 実行する
現場を見る → 可能性を発見・企画 → 仕事が決まる → 改めて現場を見る → 実行する
なぜ上流に入るのか、スリランカの例
スリランカへ行った話も出ます。始まったら大きな仕事になりそうだと感じつつも、動きが遅く、詐欺師が多めだと感じたそうです。
もう騙された僕らだけだったら別にいいですけど、人巻き込んでその仲間まで騙されるのは嫌だな。
そのため距離を置き、寝かせることにしたといいます。こうした「この土地をどうにか使えないか」という相談はよくあると話します。
その場合も、まず現場を見て可能性を発見し、同時にリスクも把握する。予算や詐欺のリスクが消えないなら、やめておこうと判断することが多いそうです。
仕事が小さいうちは決まった仕事を上手にやることが重要ですが、仕事が大きくなると、そもそも何をやるかを決めるところから関わる必要が出てくると西野さんは言います。
下見が増えたのは単に仕事が増えたからではなく、仕事の上流に入らないと大きくならないし、責任も取りようがないという考えからかもしれない、とまとめています。
リスナーが再現できる「立ち上げメンバーの席」
「それは西野さんだからできる」という声を想定し、ここからは誰でも再現できる話だと切り替えます。
もし周りに、まだ仕事が決まる前から現場の下見をしているチームがいたなら、自腹でいいから同行した方が絶対にいいと言い切ります。
ついて行っていいですか、っていう感じで。もう自腹で行きますんで、交通費も宿も全部自分で取りますんで。
下見の場では、こんなことをしよう、あんなことをしようというアイデアが次々に出てきます。そこにはクライアントになりうる人や行政の担当者がいることもあります。
一方で、そのアイデアを実行するメンバーはまだ固まっていません。仕事になっていないからです。
つまり立ち上げメンバーの席が空いている状態だと西野さんは表現します。雑用でもいいから「それ俺やっときますよ」と手を挙げておけば、プロジェクトが動き出したときにいいポジションを取れると話します。
逆に、下見に立ち会わず「いい話だったら振ってください」という姿勢の人は、ポジションを取れないと指摘します。
ほとんど形にならない現実と、自腹で行けるかどうか
ここで向き合うべき現実として、ほとんどの現場下見が形にならないまま終わることを挙げます。
それを承知のうえで、時間・人・お金を投資できる人が勝つと語ります。今日の業務を休みにして、新幹線や飛行機に乗り、宿を取って現場に行く。これができないのがほとんどの人だといいます。
さらに西野さんは「生々しい話」として、同行した人が飛行機代や宿代を請求してくるケースに触れます。
仕事を休みにして、飛行機乗って宿を取って、現場の下見に「とりあえず僕も行きますわ」っていう人いるんですけど、飛行機代とか宿代とかを請求する人がいるの。
請求先がなぜかChimneyTownになることもあり、実際に何度か払ったこともあるが、それはそもそも変な話だと言います。
なぜなら、その場はまだ誰の案件でもない「ゼロの地平」であり、そこに集まること自体が投資だからです。
この、このゼロの地平はみんなまず仕事にも何にもなってないよ。でもそこにみんな来てるのはこれ投資なんですよ。
交通費を請求してしまう人は、結果として「その人を呼ぶのはやめておこうか」となってしまうと指摘します。
まとめ
仕事のサイズが大きくなるほど、案件になる前の現場下見という「仕事になる前の仕事」が増えていく、というのがこの回の中心でした。多くは形にならないと承知したうえで、自腹で立ち会えるかどうかが、いいポジションを取れるかの分かれ目だと語られています。
- 近年ChimneyTownの仕事は大型化し、案件確定前の「とりあえず現場の下見」が増えた
- 一般的には「仕事が決まる→現場を見る」だが、西野さんは「現場を見る→企画→仕事が決まる」と順番を逆にしている
- 仕事が大きくなると、何をやるかを決める上流から関わる必要が出てくる
- 下見の場は立ち上げメンバーの席が空いており、手を挙げればいいポジションを取れる
- ほとんどは形にならない前提で、自腹で時間・人・お金を投資できる人が勝つ






