在宅医療の現場で、なぜ看護師との連携が欠かせないのか
薬剤師のたいぞーさんは、在宅医療に関わる場面が多く、薬局でも看護師と連携する機会がたくさんあるといいます。
たいぞーさんは、日々患者さんをしっかり見ている看護師の力によって、薬剤師としての仕事がよりよく実施できていると感じる場面が多いと話しています。
今回のテーマは、その看護師と薬剤師の関係です。きっかけになったのは、以前、訪問看護の事業所から「看護師に薬のことを教えてほしい」と依頼を受けて開いた勉強会でした。
看護師さんの訪問看護の事業所で勉強会を行ったことがありまして、看護師に対して薬のことを教えてほしいというようなことでお話依頼がありました。
勉強会でたいぞーさんが取り上げたのは、医療用麻薬 ── がんの痛みなど強い痛みを和らげるために使われる、モルヒネやフェンタニルなどの麻薬性鎮痛薬。法律に基づいて厳しく管理されますを使う際に、薬剤師がどのような視点で患者さんを見ているのかという話でした。
貼り薬の医療用麻薬は、なぜすぐに効かないのか
たいぞーさんによると、内服薬は服用後、比較的速やかに作用して状態が変化することが多く、経過観察の面でも患者さんの状態を追いやすい薬だといいます。
一方で、医療用麻薬を貼付剤 ── 皮膚に貼って使う薬。成分が皮膚から少しずつ吸収されて全身に届くため、効果が長く続く一方で、効き始めまでに時間がかかるものがあります、つまり貼り薬で使う場面もあります。
医療用麻薬の貼付剤は、皮膚から徐々に吸収される仕組みのため、貼ってすぐに効果が出るわけではありません。吸収されながら体に蓄積し、少しずつ作用していきます。
たいぞーさんの説明では、医療用麻薬の貼付剤は薬の体内での動きを見ると、大体3、4日、長くて5日程度かけて効果を発揮していく特性があるとされています。
服用後、比較的速やかに作用し、状態の変化が見えやすい
皮膚から徐々に吸収・蓄積し、大体3、4日、長くて5日程度かけて効果を発揮する
薬剤師は、こうした薬の体内での動きをデータとして把握できます。そのため、この薬がどの時期にどれぐらいの効果を発揮するのかを、理論として理解しているとたいぞーさんは話します。
薬剤師の見方を知ると、看護師の観察はどう変わるのか
たいぞーさんは、薬剤師が理論として持っている薬の見方を看護師に知ってもらうことで、経過観察のポイントを絞りやすくなると考えていました。
例えば貼付剤を使用し始めて、1日、2日後に痛みが取れていないとなった時に、(それは)まだそういう時期に入っていないので効果が出ていないだけで、これからだんだん良くなっていくんだという経過を把握しておくことでですね、
貼付剤を使い始めて1〜2日後に痛みが残っていても、それが効き始める前の時期だと分かっていれば、患者さんへの支援の仕方も変わるかもしれない、というのがたいぞーさんの見立てです。
さらに、レスキュー ── 痛みが急に強くなったときに、定時の鎮痛薬とは別に追加で使う即効性のある鎮痛薬のことの使い方の確認や、副作用で困っていないかの情報収集にもつなげられるといいます。
経過の予測
効き始めまで3、4日かかることを把握する
観察ポイントの絞り込み
1〜2日目の痛みを「まだ効く時期ではない」と捉えられる
支援の具体化
レスキューの使い方や副作用の有無を確認し、今後の見通しを細やかに把握する
たいぞーさんは副作用についても、だんだん落ち着いていくものなのか、悪化する可能性があるものなのかを、より細やかに把握できるようになると話しています。
看護師がすべての薬を覚える必要はあるのか
たいぞーさんが勉強会で伝えたかったのは、看護師が全ての薬を自分で学んで把握することではありませんでした。
薬剤師であれば概ね誰でも、薬の情報をもとに理論上の変化を予測できる基礎知識をすでに学んでいます。だからこそ、薬剤師と情報を共有し合うことで、看護師が自分で全てを把握しなくても、薬を安全かつ適切に使う支援ができるという考え方です。
情報をお互いに共有し合ってですね、薬をよりよく安全に、そして適切に使っていくことができる、そんな支援を届けていくことができるんじゃないかな
勉強会は症例検討の形式で、薬剤師がどんなデータを見て、何を考えながら患者さんを見ているのかを伝えるために企画されたものでした。
ベテラン看護師の一言に、薬剤師が驚いた理由
症例検討の中で、たいぞーさんが「この薬は大体どれぐらいで効くか」という話をしていると、ベテランの看護師から思いがけない言葉が返ってきました。
ベテランの看護師さんの方から、「この薬って大体使うと3、4日ぐらいで効果が出てくるから、すぐには効かない薬だよね」っていうようなことをさらっと言われました。
薬剤師が理論として説明しようとしていた内容を、ベテラン看護師は経験から自然に把握していたわけです。たいぞーさんはこのとき、看護師は本当にすごいと改めて感じたことを今でも覚えているといいます。
たいぞーさんが挙げた理由は、看護師が患者さん一人一人を見てきた経験の多さです。特にベテランは、同じ薬を使った患者さんがいつ頃どうなるのかを細やかに観察し、その経験値を積み重ねてきています。
一人一人の患者さんとの関わりの経験が、理論的な薬の働きときれいに一致していく。たいぞーさんは、そこに看護師ならではの専門性を見ています。
経験がある看護師にも、新人の看護師にも薬剤師が必要なわけ
たいぞーさんは、経験値の高い看護師が理論を経験で補っているからといって、薬剤師の活躍の場がないわけではないと話します。
薬剤師の理論と看護師の経験が一致しているかを確認しながら患者さんに介入すると、経験から生じる誤差が小さくなるというのがたいぞーさんの考えです。それが患者さんを細やかに見ることにもつながるといいます。
逆に、経験の浅い新人の看護師は経験値が少ないため、薬がどう働くのかを把握するのが難しい場合があります。
なので、薬剤師を頼ることでですね、そういった経験の差ということを補うことにもつながる、そういう意味ではやはり連携をすることが非常に大事だなということを
| 立場 | 持っている強み | 薬剤師と連携する意味 |
|---|---|---|
| ベテラン看護師 | 患者を観察してきた豊富な経験 | 理論と経験の一致を確認し、誤差を小さくする |
| 新人看護師 | 経験値はまだ少ない | 薬剤師の理論的な知識で経験の差を補う |
この考えは、たいぞーさん自身だけでなく、勉強会に参加した事業所の看護師たちとも意見交換し合った内容として、強く印象に残っているそうです。
専門性の違いは、優劣ではなく連携の理由になる
たいぞーさんは、看護師と薬剤師はどちらも薬を見ながら患者さんを把握する職種だとしたうえで、下地になる専門知識やスペシャリティが異なると整理します。
専門性が異なるため、患者さんとの関わり方や、そもそも関わる目的も大きく違ってくる部分があるといいます。
たいぞーさんは、この考え方は医師と薬剤師の連携にも言えることだと付け加えています。
現在も訪問看護師と連携する場面は多く、勉強会での学びが生きているそうです。薬剤師としてできることをきちんとしつつ、頼れるところは看護師を頼り、一緒により良い治療を患者さんに届けることを日々実践しているといいます。
たいぞーさんはリスナーに対し、看護師の専門性を生かしながら薬剤師の専門性も生かすために、自分たちに何ができるのかを考える機会にしてほしいと呼びかけています。
姫路のバイタルサイン講習会、追加の1枠
番組の最後に、たいぞーさんは10月25日に兵庫県姫路市で開かれるバイタルサイン講習会を告知しています。
バイタルサイン講習会は一度満席になっていましたが、熱意ある薬剤師から参加希望の声があり参加枠を増設し、残り1枠が空いている状態だといいます。
たいぞーさんは講師として、薬剤師としてもっと何かできそうなのに実践できていない、どうしたらいいかわからないという課題感を持つ人に、解決のヒントを最大限の熱量で届けたいと話しています。
まとめ
医療用麻薬の貼付剤は効果が出るまで3、4日ほどかかる薬であり、薬剤師はそれを理論として、ベテラン看護師は経験として把握していました。たいぞーさんは、この理論と経験を持ち寄ることにこそ看護師と薬剤師が連携する意味があると語っています。
- 医療用麻薬の貼付剤は皮膚から徐々に吸収され、大体3、4日、長くて5日程度かけて効果を発揮する
- 薬の経過を理論で知っておくと、看護師は観察や支援のポイントを絞りやすくなる
- ベテラン看護師は、患者さんを観察してきた経験から薬の効き方を自然に把握している
- 薬剤師の理論は、ベテランには誤差を小さくする確認として、新人には経験の差を補う土台として役立つ
- どちらの職種が優れているかではなく、それぞれの専門性を生かして患者さんに関わることが大切


