「薬剤師に処方権を」という議論はなぜ起きるのか
この回でたいぞーさんが取り上げるのは、「薬剤師に処方権を与えることが大事なのではないか」という議論です。薬剤師の仕事をしていると、「薬剤師には処方権がないので」という論調の意見を耳にする機会がしばしばあると話します。
処方権について、諸外国では薬剤師に認められている国もあります。薬剤師が患者の薬物治療にあたって薬剤選択の権限を持ち、それを行使する役割があるとたいぞーさんは説明します。
一方、日本では処方権は医師が持っています。医師が処方箋の内容を決定し、その内容に従って薬剤師が調剤して薬を揃える、という役割分担になっています。
日本の薬剤師が処方箋の後に担っている役割
日本の薬剤師は、薬を渡す前後の場面で治療に関わっているとたいぞーさんは整理します。服用にあたって患者と面談し、治療経過を踏まえて薬物治療を続ける妥当性を判断する役割です。
さらに、継続して使っている中で不都合が生じている兆候はないかを、きちんとアセスメントしていくことも薬剤師の役割だと話します。
こうした役割の中に処方権が組み込まれれば、薬剤選択の場面で薬学の専門性を生かし、より良い治療を届けることにつながる、という見方があります。
また、医師が薬を出すのではなく薬剤師が薬を選択して渡す形になれば、ポリファーマシーの問題を解決する糸口にもつながるのではないか、という論調も挙げられていたとたいぞーさんは紹介します。
処方権がなくてもできることは多い、という見方
たいぞーさん個人の意見として、処方権があれば薬剤師が薬物治療により主体的に関われる仕事ができるのは、確かにその通りだと認めます。
その一方で、処方権が医師にある今の状態を大きく覆さなくても、それに近い仕事は現状の制度の中でも十分できるのではないか、とも考えていると話します。
処方権がなかったとしても、薬剤師ってそれに近い仕事を、現状の制度の中でも十分行うことができるんじゃないかなと思ったりもします。
例として挙げるのが、用法が保険適用の用法と違っているときの疑義照会です。医師にお伺いを立てるこの作業は、薬剤師としても本当に煩雑な業務工程だとたいぞーさんは言います。
負担がかかるのは薬剤師だけではありません。電話を受ける医師やクリニックのスタッフにとっても、電話で目の前の業務が止められてしまうため、できれば負担を少なくやりたい場面だと指摘します。
プロトコールで疑義照会を減らすという現実的な手段
その疑義照会の負担を、処方権で解決できるのではないかという議論がある。これに対してたいぞーさんは、処方箋の内容を薬局側の判断で変更する方法が現状まったくないわけではない、と説明します。
その方法がプロトコールです。医療機関との間で事前の取り決めを結んでおくことで、薬剤師が自分の判断で、形式的な疑義照会をせずに対応できる体制を作ることが実際に可能になると言います。
ただし、これをクリニックや医療機関ごとに行うと、連携していない医療機関では結局疑義照会が必要になり、業務の煩雑さが解決されないままになりかねないと課題も挙げます。
そこでたいぞーさんが示すのが、薬剤師会と医師会などで大きく取りまとめてプロトコールを結ぶという方法です。これなら業務負担を解消でき、処方権を渡す議論よりよほど現実的な対策になるのではないかと話します。
服薬情報提供書で薬剤選択に関わる
処方権の話には、業務負担の軽減という側面だけでなく、適切な薬物治療のために薬剤師が薬剤の選択権を得ることの重要性という側面もあるとたいぞーさんは整理します。
この選択に関わる側面についても、服薬情報提供書という手段が使えると言います。医師に対して自分の考えや思い、医薬品情報を伝えていく方法です。
その際に大切なのが視点だとたいぞーさんは強調します。この情報提供が患者の薬物治療にどうプラスになるのかという治療の視点、医師の治療成績を上げるための視点を交えて伝えることだと話します。
そうして情報提供を行えば、薬剤師の提案が承認される機会もあります。現行制度のままでも、薬剤師が薬剤選択に関わる道は残されている、というのがたいぞーさんの見立てです。
なぜ「処方権はない方がいい場面もある」と考えるのか
たいぞーさんは、薬剤師の提案が承認されない場合にも意味を見出します。承認されないなら、そこには医師なりの判断があるはずで、医学的な所見が入ることはとても重要だと考えているからです。
だからこそ、薬剤師に処方権が移ると医学的な所見が入らなくなり、そこにはリスクも伴うと指摘します。むしろ医師と薬剤師が共同する体制のほうが、より最適な治療に近づくのではないかという見方です。
薬剤選択に主体的に関われる一方、その判断に医学的な所見が入らなくなるリスクを伴う
提案が承認されない場合も含めて医学的な所見が入り、より最適な治療に近づくと考えられる
現行制度の中でできることを最大化する
結論として、薬剤師に処方権がいるかという問いに、たいぞーさんは「あってもいいけどなくてもいい」と答えます。状況によっては、ない方がいい場面もあるのではないかという立場です。
この議論がどのような形に実を結ぶかはわからないとしつつ、現行制度の中でも十分にできることはたくさんあると話します。
そのうえでたいぞーさんは、議論の動向を見守りながら、自身は現行制度の中でできることを最大限に行い、医師と協働しながら患者により良い治療を届けていきたいと締めくくります。
まとめ
薬剤師に処方権を、という議論に対して、たいぞーさんは制度を大きく変えなくても現行制度の中でできることは多いという視点を示しました。プロトコールや服薬情報提供書を使い、医師と協働する体制のほうが患者にとって健全だという考え方です。
- 日本では処方権は医師が持ち、薬剤師は調剤や面談、治療の妥当性のアセスメントを担っている
- 用法変更などの疑義照会の負担は、薬剤師会と医師会でプロトコールを結ぶことで現実的に軽減できる
- 薬剤選択への関わりは、治療の視点を交えた服薬情報提供書で行える
- 処方権が薬剤師に移ると医学的な所見が入らなくなるリスクがあり、協働体制のほうが最適な治療に近づくとたいぞーさんは考える
- 処方権議論の動向を見守りつつ、現行制度でできることを最大化する姿勢が語られた



