「ドーパミンに操られている」は本当か?
回の冒頭でレンさんは、「僕たち現代人は快楽物質ドーパミンに操られている」という、よく聞くフレーズを読み上げます。エマさんの「イエーイ」という反応にツッコミが入るところから、この回の話は始まります。
この言い方の背景としてレンさんが挙げるのは、スマホを見続けてドーパミンが「ドパドパ」出て気持ちいい、というイメージです。エマさんは、無意識にショート動画をひたすらスクロールして時間が過ぎていく状態をドゥームスクローリング ── スマートフォンでSNSやニュースなどを延々とスクロールし続けてしまう状態を指す言葉。もとは悪いニュースを読み続ける行為を指して広まりましたと呼ぶと紹介しました。
まあでもそんなに実際さ、ダラダラ何も考えずにショート動画見てる時とかって快楽ではないけどね。
どっちかっていうとなんか刺激を求めてるみたいなイメージはあるかも。
レンさんもエマさんの感覚に同意し、ショート動画を見ている状態は快楽そのものではなく、快楽を求めている状態に近いと整理します。そのうえで、「快楽物質イコールドーパミンではない」とはっきり述べました。
レンさんは、スマホ断ちを意味する「ドーパミンデトックス」という言葉にも疑問を投げかけます。ドーパミンはそもそも毒ではないので、デトックスという言い方は合わないというのがレンさんの指摘です。
めっちゃマジレスしちゃうんだけど。だし、本当にドーパミンなくなったら僕たち生きていけませんよっていうのも言いたい。
さらにレンさんは、ドーパミンは脳だけでなく腸にもたくさんあり、置いておいたバナナが黒くなる現象にも関わっていると話します。バナナの皮にはドーパミンが多く含まれていて、それが酸化して重合し、メラニン ── 皮膚や髪などの色を決める黒褐色の色素の総称。動物だけでなく植物や菌類でも作られ、紫外線などから身を守る働きがありますになっていくといいます。
化学を専門とするレンさんは、この回では「化学物質としてのドーパミン」を扱い、なぜ快楽物質ではないのかを紹介すると予告しました。
人間を動かすのはアメかムチか
本題の入口として、レンさんは「人間ってアメとムチどっちで動くと思いますか?」とエマさんに問いかけます。エマさんの答えはアメでした。
まあ今のさ、時代においてムチみたいな状況があんまりないかなって思って。
エマさんは、生死に関わるような危険は現代ではあまり起きないので、人は普通の状態からプラスを求めて頑張っているのではないかと説明します。これに対してレンさんは、社会的な立場が危うくなるといった罰も人を動かす原動力になっていると返しました。
エマさんもレンさんの指摘に納得し、人間関係の悪い会社を辞めたい気持ちや、面倒でも法律違反で捕まりたくないからやる作業を例に挙げます。生死の危険はなくても、社会的なムチは今も十分にあるという結論です。
普通の状態からプラスを求めて頑張る。エマさんが現代人の主な原動力と考えた側
社会的立場の危機や法律違反のおそれを避けるために動く。レンさんが補った側
要はムチ打たれながらでもアメ取りますかっていう。
レンさんによれば、報酬と罰のどちらが人間の思考を支配しているのかという問いは、哲学でも神経科学でも長く議論されてきました。脳で電気信号が意思決定に関わるとき、何が重要なファクターなのかが研究されてきたといいます。
1時間7000回レバーを押すラットの実験
レンさんが紹介した実験は、ラットの脳に電極を刺し、弱い電気を流して特定の部分を活性化させるというものです。偶然ある位置に電極を刺したとき、ラットがすごい快感を覚えているように見えたといいます。
このラットに自分でレバーを押して電気を流せるようにすると、1時間に7000回もレバーを押し続けました。何も食べず、疲労困憊で気絶するまで押し続けたそうです。
あの、お腹減ってるからさ、隣に餌とか置いてみたりするんだけど、それでもレバー押す方を優先するし。
オスがやってたとしたら、隣に発情期のメスがいてもレバーを押す方を優先するし。
さらに、レバーを押すと罰として電気ショックも与えられる仕組みにしても、ラットは押し続けました。アメとムチが同時に与えられても、アメの力が勝ったことになります。
レンさんはこの結果から、脳の中に「気持ちいい」という報酬があると、食欲や性欲よりもその行為を優先させてしまうことがわかったと説明します。これが、のちに報酬系 ── 快感や満足感を生み、行動を強化する脳の神経回路のまとまり。中脳から線条体や前頭前野へ向かう経路などが含まれますと呼ばれる仕組みです。
エマさんの質問に、レンさんはこの実験が1950年代のものだと答えます。もともとはラットの覚醒レベルを制御する場所を狙っていたのに、手元が狂って違う場所に刺したら、たまたまこの効果が見つかったそうです。
ただし、どこを刺激したかはわかっても、刺した先で何が起きているかは当時まったくわかっていませんでした。電気は脳の広い範囲を刺激するので、「電気が流れると気持ちよくなる」という結果だけでは本当の仕組みは言えない、というのがレンさんの問題提起です。
脳の情報を運ぶのは電気か化学物質か
レンさんは、以前のホルモンの回にも触れながら、体の中で情報を伝えているのは電気なのか化学物質なのかという問いを紹介します。現代の結論は、神経回路は電気で走り、ホルモンのような物質も体内を動いて情報を伝える「ハイブリッド」だというものです。
脳についても、電気はあくまで引き金で、電気によって放出された化学物質が本当の情報を伝えている、と考える人が出てきました。そこで、脳の中の物質を実際に見る技術が登場します。
レンさんによると、1960年代に、凍結乾燥した脳の組織をホルムアルデヒド ── 刺激臭のある単純な有機化合物。生物標本の固定などに使われ、蛍光組織化学ではアミン類と反応させて光らせるために使われましたのガスで処理すると、特定の物質が光る方法が見つかりました。ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといったアミン系の物質が、それぞれ違う色で光るといいます。
この方法で脳内の「化学物質の地図」ができると、ラットに電気を流していた場所と、物質がある場所を照らし合わせられます。その結果、レバーを押し続けてしまう場所は、ドーパミンが通る道として浮かび上がってきました。
ドーパミンを受け取る側の働きを止める薬剤を使うと、電気を流してもレバーへの異常な執着がなくなることもわかりました。エマさんは当初「ドーパミンが出なくなる」と受け取りましたが、レンさんは「出たドーパミンを受け取るポケットが働かなくなる」のだと訂正しています。
1950年代
ラットの脳への電気刺激で、レバーを押し続ける現象が偶然見つかる
1960年代
ホルムアルデヒド処理で、脳内の物質の分布が光で見えるようになる
照合
刺激していた場所がドーパミンの通り道と重なる
阻害実験
ドーパミンの受け取りを止めると、レバーへの執着が消える
仮説
「ドーパミンは気持ちいい物質」と考えられるようになる
サルとジュースの実験が覆した常識
「ドーパミン=気持ちいい物質」は本当なのか。それを確かめるため、今度は電気で神経の活動を測る方法が使われます。レンさんによれば、電気は何分の1秒という単位で、どの神経経路が活性化しているかを計測できます。
ドーパミンを出すニューロンが活性化するとドーパミンが出るので、そのニューロンの電気的な活動を見れば、いつドーパミンが出たかを間接的に知ることができます。エマさんの確認に、レンさんは「そうそうそう」と答えました。
実験ではサルの前にランプを置き、ランプが光ると美味しいジュースが口に入る、という学習をさせます。学習前は、ランプと関係なくいきなりジュースをもらえたとき、ドーパミンニューロンが大きく活性化しました。
その後に完全に学習した後は気持ちいいっていう時にドーパミンが出ると思われてたから、ジュース飲んだ時に出ると思われてたんよ、それまでは。
ところが学習後のサルでは、ジュースを飲んだときではなく、ランプが光った時点でドーパミンニューロンが活性化していました。レンさんは「ドーパミンイコール快楽じゃなくなるわけ」と言い、報酬をもらう前の「期待」に反応していることがわかったと説明します。
さらに、ランプを光らせたのにジュースを与えないと、本来ジュースが出るはずのタイミングでドーパミンニューロンの活動が抑えられました。レンさんは「猿もがっかりしてるし、本当に神経もがっかりしてる」と表現しています。
予告なくジュースをもらえたとき、ジュースを受け取った瞬間に強く活性化する
ランプが光った時点で活性化し、ジュースを飲むときにはもう活性化しない
期待と現実のずれ「報酬予測誤差」とは
エマさんの質問をきっかけに、レンさんはドーパミンニューロンの活動が「ゼロからプラス」だけでなく、上にも下にも振れることを確認します。ニューロンは誤差を見ている、というのがレンさんの説明です。
サルの実験を整理すると、学習前は「予想外ラッキー」で活性化し、ランプとジュースの関係を覚えるにつれて予測と結果が一致して反応は落ち着いていきます。ランプが光ったのにもらえないと、予測を修正するために回路が弱められ、次にもらえるとまた活性化します。
予想外の報酬
期待していないのにジュースがもらえ、強く活性化する
慣れ
ランプとジュースの関係を学び、予測と結果が一致して反応が落ち着く
予想外の欠如
ランプが光ったのにもらえず、活動が抑えられる
再び報酬
次にもらえると「やっぱもらえるんかい」と再び活性化する
エマさんは、この仕組みを自分なりの例え話で言い直しました。
なんか初め貧乏だった人が急に外食とか与えられたりとかしたらめっちゃ嬉しいみたいな。ご褒美だってなって。
その後その人が出世して金持ちになって、自分のスタンダードが上がったら、ご褒美とか、あの外食が当たり前になって、そんなになんか嬉しいみたいにならない。
レンさんは「いい例えだな」と応じ、自分は住宅で考えたと話します。普通の家からいきなりタワマンに住むと最初は嬉しいけれど、慣れて当たり前になり、転落するとまた欲しくなる、という例です。
レンさんによれば、この働きは報酬予測誤差 ── 実際に得られた報酬と、事前に予測していた報酬との差。予想より良ければプラス、悪ければマイナスの信号になるとされますと呼ばれています。ドーパミンは快楽そのものではなく、期待と現実のずれを伝えているというのが、この回の大きな転換点です。
ギャンブルもSNSも恋愛も「確率50%」にハマる?
エマさんが冒頭のスマホ中毒の話との関係を尋ねると、レンさんは確率を変えた実験を紹介します。ランプが光ったときにジュースがもらえる確率を研究者が決め、どれぐらい期待してしまうかを調べたものです。
100%なら必ずもらえるので慣れてしまい、0%なら「どうせ出てこない」と予測するので、どちらもドーパミンはそれほど出ません。いちばん反応が大きかったのは50%で、来るか来ないかという不確実性が最大になると、ドーパミンニューロンが最も活発になるといいます。
レンさんは、ショート動画のスクロールもこれで説明できるかもしれないと話します。次に何の動画が来るかわからないので、予測と現実のずれが発生し続けるというわけです。
スマホでショート動画見たいから、こうスクローリングしてるっていうよりは、なんか面白いことないかなみたいな、探して、あのスクローリングしてるから。
レンさんは、ギャンブルや、SNSで「いいね」が来るかどうかを期待してしまうことにも、ドーパミンが関係しているのではないかと述べました。
エマさんは恋愛にも当てはまるのではと話を広げます。確実に手に入る相手には価値を感じにくいけれど、手に入るか入らないか50%ぐらいの相手なら追いかけたくなる、という例えです。レンさんは「しかもなんか男目線だし」とツッコミつつも、結婚して慣れると期待と現実の幅が狭くなり、刺激が足りなくなる、と話を重ねました。
レンさんは、これらはかなりメタファー的な例えだと断りながらも、仕組みとしては近く、納得感があると評価しています。
AIの強化学習にも使われる発想
レンさんは、報酬予測誤差の考え方が、今のAIの学習にも使われている点を面白いと紹介します。予測した期待と現実の誤差を測り、その誤差を修正していくやり方が、AIの教育にも使われている概念だといいます。
エマさんが、AIはもともと神経の動きをまねたものだったのではと尋ねると、レンさんは以前のエピソードで扱ったニューラルネットワーク ── 脳の神経細胞のつながりを模した計算モデル。多数の単純な計算単位を層状につなぎ、データから重みを調整して学習しますに触れます。そのうえで、強化学習 ── 行動の結果として得られる報酬をもとに、より良い行動を選べるよう試行錯誤で学ぶ機械学習の手法。ゲームAIやロボット制御などで使われますもこれに近いと説明しました。
予測して現実とのずれをこう測って、じゃあ次どうするのかっていうのでどんどん修正していくとかね。
「好き」と「欲しい」は別物だった
レンさんは、報酬予測誤差でドーパミンの役割がわかったように見えるものの、まだ謎が残っていたと話します。それが薬物依存の問題です。耐性がつくと快楽はどんどん減るのに、薬物が欲しいという気持ちは止まりません。
だって快楽を求めているはずなのに快楽ないのに向かってくっていうのだけ残るっていう。
この謎を説明したのが、ラットの味覚反応を使った実験です。ラットは甘いものを口にすると舌を出して唇を舐め、苦いものを口にすると口を大きく開けて吐き出そうとするので、ハッピーかどうかを行動で判断できます。
このラットのドーパミンニューロンを毒素で止めると、目の前に大好物の餌があっても、自分から一切食べようとしなくなりました。ところが、甘い水を強制的に口に入れると、普通のラットと同じように美味しそうな反応を見せたといいます。
大好物の餌が目の前にあっても、自分から食べに行こうとしない
甘い水を口に入れられると、普通のラットと同じように美味しそうな反応をする
レンさんはこれを、英語でライキング ── Liking。報酬を受け取ったときに感じる「好き」「心地よい」という快楽の側面を指す、心理学・神経科学の用語ですとウォンティング ── Wanting。報酬を得ようとする「欲しい」という欲求や動機の側面を指す用語。依存症研究で、快楽とは別の仕組みとして注目されてきましたが違うという話だと説明します。快楽を感じることには何の問題もないのに、そこへ向かおうとしなくなるのです。
ドーパミンは快楽そのものじゃなくて、快楽に向かわせるための原動力みたいな。
レンさんはエマさんの言い直しに「そう」と答え、ウォンティング、つまり欲求や動機を担当しているのがドーパミンだとまとめました。ドーパミンは「好き」ではなく「欲しい」を担うという整理です。
快楽を担うのはオピオイド系
レンさんによれば、昔は快楽と欲求の切り分けが難しかったものの、現代では切り分けられていて、快楽の方はオピオイド ── モルヒネなどのアヘン類と同じ受容体に作用する物質の総称。体内でもエンドルフィンなどが作られ、鎮痛や快感に関わります系という別の物質が制御しています。麻薬とも関わる領域なので、詳しくはまたいつか扱いたいとのことです。
エマさんは、ドーパミンに関わるニューロンを抑える薬があれば、麻薬中毒の人は快楽は感じても薬物に向かわなくなるのではと考えます。レンさんはその可能性を認めつつ、薬物以外のやる気や欲求もすべて失われるおそれがあると指摘しました。
結構だって行動の原動力になってるわけだから。さっきも言ったけど、ドーパミン出なくなったラットは本当に死ぬまで何もしないとかになっちゃうんで。
エマさんが「鬱みたい」と言うと、レンさんは関連があると認めます。ただし、うつ病の人はドーパミンが少ないのかという問いには、「少ないだけじゃ言えない」と慎重に答えました。
レンさんが強調したのは、ここまでの話はドーパミンが出るか出ないかだけだという点です。出た後にどこにくっつくのか、くっつく先によっては逆に抑制に働く場合もある、といった話は世の中であまりされていないといいます。この込み入った話は次回に深掘りする予定です。
まあ今回はだからドーパミンはこの快楽そのものじゃなくて、欲しいっていう方に関わってますよっていうのが一つ結論。
プラセボ効果とタンパク質の関係
レンさんは続いて、ドーパミンが関わる意外な現象を紹介します。1つ目は、偽物の薬でも効く気がするというプラセボ効果 ── 有効成分を含まない偽薬でも、効くと信じて服用することで症状が改善する現象。期待や思い込みが体の反応を変えると考えられていますです。
痛みに効く薬だと期待して飲むと、本当にドーパミンが放出され、それが鎮痛のシステムを起動させるといいます。エマさんの確認に、レンさんはドーパミンに鎮痛システムを起動させる働きも「一応ある」と答えました。
また、ドーパミンは「欲しい」という欲求を担うので、なくなると困ります。レンさんは、ドーパミンデトックスをしてしまうと何もやる気がなくなるようなことが起こり得るので、なくすのではなくコントロールするという方が近いのではないかと話します。
ドーパミンの原料はアミノ酸のフェニルアラニン ── 必須アミノ酸の1つ。体内で作れないため食事から摂る必要があり、チロシンを経てドーパミンなどの材料になりますです。レンさんはこれが100%食事に依存しているので、タンパク質をきちんと摂る必要があると説明します。フェニルアラニンは肉、魚、卵などに大体含まれているそうです。
食事
肉・魚・卵などからタンパク質を摂る
アミノ酸
タンパク質を構成するアミノ酸の1つ、フェニルアラニンを得る
ドーパミン
フェニルアラニンがドーパミンの原料になる
レンさんは、ドーパミンを物として理解することが大事だと強調します。「ドーパミンをコントロールして人生をうまく生かそう」のような言い方は、物質として見ていない感じがするというのです。
概念としてドーパミンっていう単語を使うんだけど、そうじゃなくて化合物の名前ですよっていう、あくまで。
腸、腎臓、白血球まで、全身で働くドーパミン
レンさんによると、体の中のドーパミンの50%は腸にあり、消化や腸の動き、腸の免疫細胞への指令などに使われています。エマさんは、ドーパミンの役割は1つではなく、場所によって変わるのかと受け止めました。
ドーパミンは脳のバリアを通過できないため、全身にあるドーパミンが脳に直接入ることはありません。脳の中で原料から作られる必要があり、腸で作られたドーパミンが脳に行くこともないとレンさんは説明します。
ほかにも、腎臓ではドーパミンが自前で作られておしっこの量の調節に使われ、血糖値を下げるインスリン ── すい臓から分泌され、血液中の糖を細胞に取り込ませて血糖値を下げるホルモンですが出すぎないようにブレーキをかける役割もあるといいます。血液中の白血球もドーパミンを作っているそうです。
| 部位 | 役割 |
|---|---|
| 脳 | 「欲しい」という欲求・動機、報酬予測誤差を伝える |
| 腸 | 消化や腸の動き、腸の免疫細胞への指令。体内のドーパミンの50%がある |
| 腎臓 | 自前で作られ、おしっこの量を調節する |
| すい臓まわり | インスリンが出すぎないようにブレーキをかける |
| 白血球 | 血液中の白血球もドーパミンを作っている |
エマさんは「全身のドーパミンに意識を巡らせて感謝するわ」と話し、レンさんに「スピリチュアル系に聞こえる」とツッコまれます。レンさんは、ドーパミンは脳で危険な欲求を生み出すだけの物質ではないと締めくくりました。
植物も無脊椎動物もドーパミンを使っている
レンさんは、ドーパミンが人間だけのものではないと話を広げます。冒頭のバナナのほか、脳を持たない無脊椎動物もドーパミンを持っているといいます。
エマさんの問いに、レンさんはバナナの皮のドーパミンは快楽とはまったく関係なく、抗酸化物質として働いていると答えます。虫に食われるなどのストレスから植物が身を守るため、酸化をブロックする役割があるそうです。
一方、無脊椎動物のような原始的な生き物では、餌を感知したときにドーパミンが放出されることがあるといいます。役割は違っても、物質としてドーパミンを活用することはあらゆる生物が行っているとレンさんは説明しました。
抗酸化物質として、虫に食われるなどのストレスから身を守る。酸化・重合すると黒いメラニンになる
脳では欲求や報酬予測誤差を担い、無脊椎動物では餌を感知したときに放出される
エマさんが、植物と人間が共有しているなら進化の枝分かれより前からいるのかと尋ねると、レンさんは「超原始的な時代からいる」と考えていると答えます。形がシンプルなドーパミンを使う仕組みが、生き物にとってとても良かったのだろうというのがレンさんの見方です。
いやそう、デトックスしたらまあ間違いなく死ぬから。体の動きほとんど止まっちゃうから、それ。
めっちゃ俺今日ドーパミンを擁護してるよね、なんか。
いや、私も今ドーパミンに感謝してるわ。
ドーパミンは100%悪者ではない
レンさんは、今回はドーパミンがどういうものかを紹介したものの、出た後に何が起きているかはあまり話していないと振り返ります。ドーパミンが出たら必ず何かをしたい欲求になるほど単純ではなく、受け取り手にもパターンがあるといいます。
だからそれ(受け取り手のパターン)をちゃんと理解して初めてドーパミンを理解したと言えるんじゃないかっていう。
レンさんは、この部分に踏み込んだ話は少なく、「ドーパミンを使いこなせ」という理論だけが独り歩きしていると指摘します。ただし、それが間違いだというわけではなく、もっとドーパミンに詳しくなろうという趣旨だと補足しました。
YouTube登録者数に「支配される」エマさん
エンディングでエマさんは、最近力を入れているYouTubeの登録者数の話をします。登録者がぐっと伸びる時期は、スマホを開くたびに人数が増えているので何度も見てしまうといいます。
人数めっちゃ増えてるから、めっちゃ見ちゃって。ドーパミン中毒になってて。
一方で、あまり伸びていない時期は忘れて見なくなるそうで、エマさんは「マジで行動支配されてるわ」と笑います。レンさんは、どうしたらいいかの対策は次回考えたいと応じました。
エマさんが「登録してくれたら私のドーパミンが出てきます」と呼びかけると、レンさんは「それさ、登録しなくなるんじゃない?」とツッコみます。ドーパミン中毒を加速させてほしいというエマさんの宣伝に、レンさんは「やばいなその宣伝の仕方」と返して回を締めくくりました。
まとめ
この回では、「快楽物質」と呼ばれがちなドーパミンを化学物質として捉え直し、その本当の働きが紹介されました。ドーパミンが伝えるのは快楽そのものではなく、期待と現実のずれや「欲しい」という動機であり、脳だけでなく全身や植物でも働く、生き物に欠かせない物質だというのがレンさんの結論です。
- サルの実験では、学習後はジュースを飲んだときではなくランプが光った時点でドーパミンニューロンが活性化し、「報酬予測誤差」を伝えていることがわかった
- もらえる確率が50%のとき反応が最も大きく、ギャンブルやSNS、ショート動画にハマる理由の1つと考えられる
- ドーパミンが担うのは「好き(Liking)」ではなく「欲しい(Wanting)」で、快楽はオピオイド系という別の仕組みが制御している
- 体内のドーパミンの50%は腸にあり、腎臓や白血球でも作られ、バナナでは抗酸化物質として働く
- ドーパミンはなくなると生きていけない物質であり、「デトックス」ではなく、出た後の受け取り方まで含めて理解することが大切だと話された




