チャンスをつかむ人と、つかめない人の違いは?
前編で馬場社長は、自分の人生を「流れに身を任せてきた」「自分は何もしていない」と繰り返し語っていました。でも、流されているだけなら今の馬場さんはいないはず。東原はそこに引っかかっていたそうです。
そこで、チャンスをつかむための準備とは何か、つかめる人とつかめない人の違いは何かを尋ねます。馬場社長が返したのは、大学時代にインターン先の経営者から言われた言葉でした。
チャンスの神様は前髪しかないんやで。後ろ髪は引けないから、行っちゃったらもう掴めないよ、みたいなことは言ってました
つまり、来たらつかむしかない、ということ。ただ、それ以上のことは「あとは気の赴くままにしか行動してない」と言います。そのうえで、意識していることをひとつだけ挙げました。
その代表例が、目の前にいる川野社長でした。カケハシ社のイベントで「おもしろいな」と思った馬場社長が、自分から声をかけたのが2人の出会いだったそうです。
「親父殿」との喧嘩と、2代目という立場
話は、28歳で会津若松に戻ってからのことへ。戻った時点で「ほぼ100パーセント」自分が経営を継ぐと意識していたそうですが、入社は普通の一般社員としてでした。
父親から会社を引き継ぐ過程では、「めっちゃ親父殿と喧嘩しました」と振り返ります。よくある2代目のパターンだったと言います。
中途で入ってきて、経緯も知らんのにこんな勝手なこと言いやがって、みたいなことをよくやってました
川野社長は、この構図がM&Aで店舗を買収するときの摩擦とよく似ていると指摘します。既存のやり方や文化がある場所に、外から入って変えていくときのあつれきは、立場が違っても似た形になる、というわけです。
カリスマ創業者の「間」に立つという戦い方
既存社員との関係については、創業者である先代の強さがひとつの壁になったと言います。創業者にはカリスマ性があり、同じ路線は取らない、というのが馬場さんの認識です。
そこで馬場社長が選んだのは、正反対のスタンスでした。
なるべくその路線は取らない、その分親しみやすさアピールみたいな
組織は創業者の色に染まっている。その良さは社員も共感しているけれど、不満がまったくないわけではない。馬場社長は、そこにできた小さなギャップを拾いにいく役回りを選びました。
具体的には、「先代が苦手としているところに取り組む:という方針です。残業を減らす、休みを増やす、有給を使う。先代と従業員の間に軋轢が生まれやすい場所の、ちょうど真ん中に立つようにしたと言います。
先代が得意なところで何かしたって、私の評価は何も上がらないと思って
カリスマ性で組織を引っ張る。その色で組織全体が染まっている
親しみやすさを軸に、先代と従業員の軋轢が生まれやすい真ん中に立つ
「前に出て映える人」を増やしたい
会喜地域薬局グループを「こういう会社にしたい」という思いを聞かれると、馬場社長は自分が目立つのはあまり好きではなく、端っこにいたい人だと言います。
だからこそ、前に出てくれる人を増やしたい。川野社長のように前に出るのは自分には向いていないから、代わりに前に出て映える人を育てていきたい、という方針でした。
出て映える人をいっぱい増やしていけたらいいなみたいな方針で
実際、最近はタカハシさんやハシモトさんなど、いろんな場に出て活躍する人が増えてきたそうです。それは馬場社長にとって目指してきた形なのか、と川野社長が確認すると、返事は明快でした。
任せる基準は「面白さ」と「こだわり」
前編で馬場社長は「箱は作るけど、作ったらまた任せる」と話していました。ここでは、人に任せるときに何を見ているのかを掘り下げます。
任せる基準として挙がったのは、「おもしろそうかな」ということ。そしてもうひとつ、こだわりのある人がいい、と言います。
多少凸凹してても、尖ってるところがいい人の方がなんか面白い気がしますけど
馬場社長は自分のことを「全部平均点みたいな男」と表現します。そこそこうまくやるけれど、めっちゃ頑張っている人にはかなわない。だからこそ、尖った人に任せたいということのようです。
一方で、会社に合うのは「どこか根が真面目な人」だとも言います。その例に挙がったのが、川野社長の会社にいた長谷川さんでした。真面目で素直で頑張り屋さんだと評します。
川野社長は、長谷川さんがパチスロで勝てるくらい自制心のある真面目な人だったと語り、その姿を「アイキさんらしい」と感じたと言います。すると馬場社長から、こんな言葉が出ました。
垣間見える狂気、いいですよね
真面目さの奥に、ふと見える尖りや狂気。それが会喜地域薬局グループらしさなのかもしれない、と場が盛り上がりました。
平均点より、凸凹していても尖っているところがある人を面白いと感じる
真面目で素直な人がヒットしやすい。奥に垣間見える狂気も魅力
同級生であり「相談役の弟子」、高橋さんという存在
会喜地域薬局グループを語るうえで欠かせないのが、タカハシさんの存在です。馬場社長とはミニバス時代からの同級生ですが、関係性はただの友達とは少し違うと言います。
どちらかというと業務上は、相談役の流れの正当後継者だと俺は思ってて
新卒からずっと在籍し、馬場さんより年次も長い高橋さんは、創業からの文化を濃く受け継ぐ「生え抜き」。馬場さん自身は、その流れからすると「外様」なのだと自己認識しています。
もし高橋さんがいなかったら、と問われると、馬場さんは自分を熊にたとえて答えました。奥さんからは、映画に出てくる、推定有罪で片っ端から相手を処してしまうキャラに似ていると言われるそうです。
私がバサバサ切っちゃうんで。切りまくっちゃうんで
自分は基本的に気づかない人だから、気が利いてよく気づく高橋さんが道を探してくれている。ロジカルな仕事は白井さん、ウェッティーだったりパワープレイが必要な仕事は高橋さん、と得意分野で頼り分けているそうです。
4年続くオープン社内報が生んだもの
前編でも触れた、会喜地域薬局グループのオープン社内報。毎週2本を4年以上、500本近く続けているそうです。書いて残し、次の人に渡す文化がフィットしている印象です。
続けてきたことで、会社にはどんな変化があったのか。馬場さんは、採用の場面での効果を挙げます。
面接とかすると、読んでくれてる子は多いみたいですよ。検索すると引っかかるみたいで
これは、以前カケハシのウェビナーで話した「ストック型」の情報発信が効いている実感でもあります。ラーメンのような一見関係ない記事でもPVが伸び、思わぬところで目に触れる。情報発信のツールがあること自体がいいことだ、と話します。
話は、川野さんが番組向けに書いている記事のことにも及びました。会喜地域薬局グループ内での閲覧率は高く、社内の人はみんな川野さんを知っているのに川野さん本人は知らない、というほどだそうです。
うちのファンなんで、僕。めちゃくちゃ続けてほしい
「残すものがない」と言う人に、周りが残したくなる理由
人の物語を残すことに価値を感じているという東原さんは、あまり自分のことを残したがらない馬場さんに、自分の考えや人生を残したいと思うか尋ねます。
いや、ほんまに残すものがないような気はしていて
でも、周りからすると残してほしい。「何もしてないですよ」から始まった前後編で、深掘るほどに話が出てくる。それをどう思うか聞かれ、馬場さんはこう返しました。
面白いですね。インタビュアーが上手。間違いなく
川野さんは、会社のことだけでなく馬場さん自身が何を見て何を考えているかを知りたい人はたくさんいるはずだ、ともっと発信するよう勧めます。馬場さんの人柄がにじむやり取りが続きました。
好きなことをして、不義理をしない
最後は、番組テーマである「何者でもない若者」へのメッセージへ。何をしたらいいかわからない大学生や社会人一年目に向けて、馬場さんなりのアドバイスを聞きます。
返ってきたのはシンプルな言葉でした。好きなことをして、不義理をしない。この2つです。
不義理をする人って、なんか大体静かにパージされるじゃないですか
好きなことをやっていれば、何かご縁がつながっていく。それが馬場さんの実感のようです。
川野さんは、自分たちも42歳になり、何かを渡していく世代になりつつあると話し、若者に何かしているかを尋ねます。馬場さんの答えは、飾らないものでした。
なんかあれですね、飯は奢ってあげたいなと思います
若い男の子のほうが気楽でいい、ただ「馬場さんなので、恐れをなしてみんな逃げていくんじゃないか」というのが目下の悩みだ、と笑いを誘いました。最後に「もう何者かになったと思いますか」と聞かれると、こう答えます。
まとめ
「流されて生きてきた」「何もしてない」と語る馬場さんですが、深掘っていくと、先代の間に立ち、人に任せ、書いて残す文化を育ててきた確かな輪郭が見えてきます。目立たず、周りを前に出す。その裏に、こだわりと配慮が詰まった後編でした。
- チャンスは前髪しかない。来たら掴むしかなく、普段から面白そうな人に近寄っておく
- 2代目は先代と同じ路線を取らず、先代が苦手なところに取り組み、軋轢の真ん中に立つ
- 任せる基準は「面白さ」と「こだわり」。尖った人を面白いと感じ、根が真面目な人が合う
- 書いて残すオープン社内報はストック型として効き、採用や社外との接点を生む
- 若者へのメッセージは「好きなことをして、不義理をしない」。ご縁はそこからつながる



