「大統領機のせいで赤字」は本当か?
米ボーイングの2026年4〜6月期決算が赤字となり、大統領専用機エアフォースワンの追加損失が計上されたというニュースが報じられました。
CEOセオさんは、このニュースの描き方には、トランプ大統領の大統領機のせいで赤字になったかのようなバイアスがかかっていると受け止めています。
ちょっとニュースだけを見ると、まあいわゆるトランプ叩きというかね、そういうところもちょっとあるなと思ったので。
ボーイングは再建中で赤字が続いている会社です。CEOセオさんは、構造的に分析されることの少ない飛行機メーカーを、経営者目線で読み解こうとします。
赤字の中身は業績悪化なのか
ボーイングの2026年4〜6月期決算では、純損失が4億2800万ドル(約700億円)でした。ただし前年同期は6億1200万ドルの赤字だったため、赤字幅は縮小しています。
営業段階では255億円のプラスで、前年同期より改善しています。赤字になったのは、約982億円の支払い利息などの債務費用や、年金・退職給付の調整が影響しているためだと説明されています。
売上高は約4兆円で、前年同期比8%の増加です。そのうえで、エアフォースワンの追加費用損失として約458億円が上積みされました。
エアフォースワンの初号機は、引き渡し想定が2028年に後ろ倒しになったといいます。
純損失6億1200万ドル。営業段階・キャッシュフローもマイナス
純損失4億2800万ドルに縮小。営業段階は255億円のプラス、売上高は8%増
なぜ飛行機の会計は赤字が出やすいのか
CEOセオさんがボーイングのビジネスモデルや収益計上を調べて気づいたのは、飛行機ビジネスの会計の独特さです。飛行機は受注してすぐに納品できず、数年単位・数千億円規模のプロジェクトになります。
そのため、受注した金額を一度に計上するのではなく、段階的に売上を計上していきます。途中で原価が見積もりより高騰すると、利益が圧迫されます。
利益が減るだけなら問題は小さいものの、プロジェクトが赤字見込みになった場合は、その赤字分を一括で計上するルールがあるといいます。CEOセオさんはこれを減損 ── 資産やプロジェクトの価値が見込みを下回ったとき、その差額を損失として一度に計上する会計処理のようなものだと説明しています。
受注
数年単位・数千億円規模の契約を獲得
段階的な計上
進み具合に応じて売上・利益を計上
原価高騰
見積もりより原価が上がり、利益を圧迫
一括計上
赤字見込みになった時点で損失をまとめて計上
エアフォースワンの損失も、今期に現金が出ていったわけではありません。これから発生するコストを、会計上この四半期に費用として計上したために赤字に見えるのだと、CEOセオさんは話しています。
過去最高117兆円の受注残が示すもの
ボーイングの受注残(バックログ ── 受注済みでまだ納品・売上計上されていない注文の総額。将来の売上の見通しを示す指標として使われる)は117兆円で、過去最高です。そのうち民間機は97兆円、機体数で6200機にのぼります。
民間機の引き渡しは171機で、前年同期の150機から14%増えました。これは2018年以来、四半期として最高の水準だといいます。
営業キャッシュフローは2200億円、フリーキャッシュフローもプラス1000億円です。CEOセオさんは、再建中で厳しさはあるものの、業績はプラスに向かい黒字化も見えてきていると見ています。
機体を作っても赤字、それでも稼ぐ仕組みとは?
ボーイングの部門別の数字を見ると、全日空などが使う民間機の部門は売上約1.92兆円に対して営業損失527億円で、営業利益率はマイナス2.7%です。
防衛・宇宙の部門も、売上約1.22兆円に対して営業損失25億円で、営業利益率はマイナス0.2%でした。つまりボーイングは、機体を作っても赤字という状態です。
だから機体を売る事業っていうのはもうそもそも赤字。
一方でサービス部門は売上8744億円に対し、約1500億円の営業利益を出しており、営業利益率は18%です。整備、部品、訓練などの収入が、その後20〜30年にわたって続きます。
| 部門 | 売上 | 営業利益率 |
|---|---|---|
| 民間機 | 約1.92兆円 | マイナス2.7% |
| 防衛・宇宙 | 約1.22兆円 | マイナス0.2% |
| サービス | 8744億円 | 18% |
CEOセオさんは、ボーイングはアフターマーケットを取るための入り口として機体を売っている会社だとまとめています。
予測が難しい事業という特性
ボーイングの事業には、事故による訴訟費用など、あとから損失が計上されるリスクもあります。CEOセオさんは、非常に複雑な事業だと話しています。
117兆円の受注残も、あくまで将来の売上なので変わる可能性があります。ボーイングの見通しでは、2027年までに約21%、2030年までに約62%が売上に転換できるとされています。
CEOセオさんは、4〜5年たってようやく6割という長さに、飛行機ビジネスの会計の難しさを感じたといいます。
CEOセオさんは、ファッションにも似たところがあると話します。洋服は在庫を抱えて売れた分を計上し、売れなくなれば一気に減損をかけるため、こうしたビジネスは会計が面倒で予測しにくいという見方です。
数字は良いのに、なぜ記事はネガティブなのか
改めて決算を整理すると、売上は約4兆円で前年から伸び、営業段階はマイナスから255億円のプラスに転じています。フリーキャッシュフローもプラスになり、民間機の引き渡し数も増えています。
だから数字だけを見ていくといいんだけど、記事では非常にマイナス、ネガティブ(な)インパクトをつけて。
CEOセオさんは、ボーイングの決算記事がトランプ大統領への風当たりの強い内容になっていると指摘しています。
エアフォースワンの裏にある中国200機の受注
エアフォースワンは一度作れば終わりではなく、改造費用だけで数百億円かかることもあります。2018年に決まった契約は約40億ドル、約6500億円の規模で、ボーイング747-8を2機改造して作っているといいます。
CEOセオさんが「裏のテーマ」と呼ぶのが、トランプ大統領によるトップ営業です。中国はボーイングの民間機などで20%以上のシェアを持つ市場です。
トランプ大統領が2026年5月に訪中した際、ボーイングは200機の初期コミットメントを発表しました。2026年5月20日には中国の商務部が、200機とエンジン、スペアパーツの購入を正式に発表したといいます。
自分はあのエアフォースワンでね、お金もかけてあれもしてるけど、ちゃんとトップ営業して中国から売り上げを取ってくるということをやってるわけですね。
損失の何倍の売上を持ってきたのか
中国からの200機受注の金額は、ボーイングも中国政府も公表していません。調査会社の試算では2.7兆〜3兆円程度、ワイドボディ機の比率が4割なら約4兆円になると言われています。
CEOセオさんは、約4兆円ならボーイングの1年分ほどの売上を大統領の営業で取ってきたことになると話します。
約2.8億ドル程度。記事で叩かれている部分
試算で約4兆円。追加損失の約61倍、累積30億ドルと比べても約5.7倍
CEOセオさんは、ボーイングの決算記事は損失と受注をセットで書くべきだと考えています。
実際に株式市場では、受注の発表後にボーイングの株価が4.7%上がり、時価総額は28兆円を突破したといいます。
ボーイングの強みはどこにあるのか
CEOセオさんは、民間機の分野ではボーイングはエアバスに負けている面があるとしつつ、いくつかの強みを挙げています。
- 受注残117兆円という大きなリード
- サービス部門の営業利益率18.1%
- 大統領が直接営業してくれる立場
エアフォースワンを作る会社として大統領がトップ営業をしてくれる点は、他の会社にはなかなかできないことで、ボーイングを特徴的な会社にしていると話されています。
ボーイングはどこまで回復してきたのか
ボーイングが再建を迫られる大赤字を積み上げた発端は、2018年10月の墜落事故です。この事故で20か月の運航停止を受け、2018年から2020年までほぼ運用ができなかったといいます。
2024年にはドアプラグの脱落もあり、その後7週間の従業員ストライキも起きました。こうして累計の純損失は5.8兆円にのぼりました。
累計純損失5.8兆円、2023年に債務超過
純資産はプラス54億ドルまで回復、四半期ベースで黒字転換
CEOセオさんは、いろいろあったものの、ボーイングは頑張って黒字転換し、純資産もプラスに持ち上げてきたのが現状だと評価しています。
赤字だからダメ、ではない見方とは
CEOセオさんは、大統領機は作るたびに赤字が計上されるものの、大統領自らが中国の大型案件を取ってきたことが、このニュースの裏側のテーマだとまとめています。
CEOセオさんは、こうした特殊なビジネスを見ることで、自社のサービスや考え方も変わってくるかもしれないと話します。特にスタートアップでは、赤字だからダメという見方は当てはまらないといいます。
CEOセオさんは、見るべき部分をきちんと見ることが重要だと結んでいます。
まとめ
ボーイングの決算は「大統領専用機で赤字」と報じられましたが、CEOセオさんは、営業段階の黒字化や受注残の大きさ、サービス部門で稼ぐ収益構造、大統領のトップ営業による中国からの受注を合わせて見るべきだと語っています。
- 赤字の主因は利息や年金調整などで、営業段階は255億円の黒字に改善している
- ボーイングは機体製造では赤字で、利益率18%のサービス部門で稼ぐビジネスモデル
- エアフォースワンの損失は将来コストの会計上の計上で、今期に出た現金ではない
- トランプ大統領の訪中で中国から200機を受注し、試算では損失の数十倍の売上規模
- 表面の赤字だけで判断せず、見るべき数字を見る姿勢が大切




