フィギュアだらけのオフィスは何を語る?
今回のゲストは、Griffin Gaming Partnersの共同創業者でマネージングディレクターを務めるPeter Levinさんです。Levinさんは同社を、世界のゲームエコシステムだけに投資する、世界有数の投資ビークルと紹介します。
Griffin Gaming Partnersは世界中に投資しており、投資ステージも問わない方針だといいます。Levinさんは収録の少し前に日本から戻ったばかりでした。
宮武さんがまず触れたのは、Levinさんのオフィスの様子です。カウンターにはミレニアム・ファルコン、そばにはWarhammerのスペースマリーンが置かれ、ターミネーターやエイリアンのゲーム筐体、Big Buck HunterやGolden Teeまで並んでいます。
Levinさんによると、オフィスにあるものはすべて本人の私物です。その95%ほどは、作り手から贈られたものか、自分が関わった案件の結果として手に入れたものだといいます。
Levinさんはこれらを、案件成立の記念品であるディールトイ ── M&Aや資金調達の成立を記念して関係者に配られる記念品。透明な樹脂の置物などが多く、「トゥームストーン」とも呼ばれますの「特大版」だと表現します。
Levinさんがこの空間を大事にする理由は、初めての起業家が訪れたときの安心感にあります。無機質なオフィスではないことで、「この人たちは自分たちの仲間だ」と感じてもらえると話しています。
(ここにいるのは)ゲームを一度もやったことがなくて、ただなんとなく投資しているような人たちじゃない、ということですよね?
Levinさんは、唯一の欠点としてミーティングが遅れることがあると笑います。誰かがハイスコアに迫っていれば最後まで見届けたいからで、インターンに何度もハイスコアを塗り替えられているそうです。
GameSpyへの初投資から見えた「市場の空白」
Levinさんのキャリアの大半は、連続起業家、事業運営者としてのものでした。その一方で、初めて企業に出資した先はGameSpy Industriesだったといいます。
Levinさんは、この投資をウォーレン・バフェット ── アメリカの著名投資家。自分が理解できる事業に投資するという考え方で知られていますの「自分が知っていて、好きで、使っているものに投資する」という考え方になぞらえます。当時Duke NukemやQuake、Half-Lifeをマルチプレイで遊ぶには、GameSpyが欠かせなかったからです。
Levinさんはそれから20年にわたり個人資金でゲーム企業に投資・助言を続け、ファンド設立前に約15件のイグジットを経験したと話しています。
さらにLevinさんはNerdist Industriesを共同創業し、Legendary Entertainmentに売却しました。そのタイミングで、グローバルなゲーム業界に特化した、規律あるデータドリブンな投資プラットフォームが市場に欠けていると気づいたといいます。
当時の投資ビークルは、特定の地域か、インタラクティブソフトの特定分野に絞ったものが中心でした。Levinさんは共同創業パートナーのNick Tuostoさん、シニアパートナーのPhil Sandersonさんと組み、重なりの少ないスキルを持ち寄ってGriffinを立ち上げます。
Levinさんが強みとして挙げるのは、ハンズオンで価値を加える姿勢です。起業家として、頼りになる資本と、ただそこにあるだけの資本の両方を経験してきたからこそ、適切なタイミングの価値ある資本はゲームチェンジャーになると語っています。
ゲーム会社と「ゲームではない会社」の両方に投資する理由
Griffin Gaming Partnersは、ゲームスタジオだけでなく、ゲーム関連のインフラやプラットフォームにも投資しています。宮武さんは、その両輪にする狙いと、非ゲーム側から得られる知見を尋ねました。
Levinさんにとって、両方に投資するのは迷うまでもない選択だったといいます。きっかけはGameSpyで、Levinさんが取締役を務めた期間に同社は3〜4回も存続の危機を迎えたそうです。
Levinさんは、GameSpyへの投資を「テントの中に入れてもらう」経験だったと振り返ります。オーディエンスがどこから来てどこへ向かうのか、どう収益化し、どうオンボーディングしているのか、何が本物のシグナルで何が偽のシグナルかが見えたといいます。
過剰なマーケティング費で何が買えて、実際の正味の成果はどれほどか。インフラ側の投資から得たこうした知見が、コンテンツ投資をより規律あるデータドリブンなものにしているとLevinさんは説明します。
インフラ・プラットフォームに投資
GameSpyのように、ゲームの裏側を支える事業に関わる
市場の内側が見える
ユーザーの流入元、収益化、オンボーディング、シグナルの真偽がわかる
コンテンツ投資の精度が上がる
ゲームスタジオへの投資をより規律あるデータドリブンなものにできる
なぜゲームは他のメディアより深く愛されるのか
宮武さんは、Levinさんが以前のPodcastで、自身のキャリアに共通するテーマとして「arrested development」を挙げていたことに触れます。発達が子どもの段階で止まっている、というほどの意味で、子どもの頃の熱中をそのまま仕事にしているというニュアンスです。
Levinさんは、情熱を注いできたものをキャリアにできた自分は非常に幸運だと話します。ゲーム、コミック、グラフィックノベル、アニメ、マンガといったジャンルは、この15〜20年で世界のメディアを席巻してきたといいます。
Levinさん自身も、トレーディングカードを50万枚ほど、コミックを2万5000冊ほど持っているそうです。収録前には宮武さんとポケモンの話で盛り上がっていたといいます。
Levinさんが注目するのは、人々がIPに抱く感情的な愛着です。ゲームのエンゲージメント指標は他のメディアより桁違いに大きく、何千時間も繰り返し遊ぶ人もいて、ゲームが生活の社会的な基盤の一部になっていると語ります。
だからこそ、ゲームの体験を現実世界に広げたいという需要が生まれ、ゲームのおもちゃ化やグッズが大きく売れるとLevinさんは見ています。
Levinさんは、Angry Birdsを開発したRovioの初期の助言者・投資家でもありました。IPアドバイザーのRussell Binderさんにライセンス・グッズ展開の機会をつないだところ、1年以内に10億ドル規模のプログラムが組み上がったそうです。Levinさんは、他のメディアではめったに起きないことだと話しています。
MMAを学ぶために、選手の代理人になった
宮武さんは続けて、Levinさんが映画やMMAなど、エンタメ全般にも関わってきたことに話を移します。Levinさんは、スポーツもゲームと同じように感情的な反応を引き出す、非常に部族的なものだと話します。
Levinさんが魅了されたのは、日本のMMAがプロレスと絡み合っていた点でした。試合の合間に選手がプロレスのリングに上がり、その結果が次のストーリーを決めていく仕組みに驚いたといいます。
Levinさんは一時期、ランディ・クートゥアやランペイジ・ジャクソン、ダン・ヘンダーソン、バス・ルッテンら、世界トップクラスのMMA選手を20〜25人ほど代理していました。UFCがまだ現在のような存在になる前の時期です。
合法なのはネバダ州とニュージャージー州の2州だけだった
NFLのような人気スポーツだった
Levinさんによると、MMAはゲームと同じく閉鎖的で身内意識の強い業界でした。ビジネスを学ぶ唯一の方法は、選手の代理人になり、誰がいくら稼ぎ、売上がどう分配されているのかを逆算することだったと話しています。
その後Levinさんはマネジメントから離れ、StrikeforceのScott Cokerさんと組みます。世界規模で利益を出せる経営者はUFCのDana Whiteさんと、Scott Cokerさんの2人しかいないと考えたからです。Strikeforceは最終的にUFCに売却されました。
曙とのIn-N-Outと、大谷翔平への熱い評価
日本人選手を代理したことがあるかと聞かれ、Levinさんは曙を挙げます。ハワイ出身の横綱で、LevinさんはそのWWE契約を担当したそうです。
Levinさんが「初めて話す」という、曙との一番がっかりした思い出があります。LAでの撮影の合間に、曙がIn-N-Out Burger ── カリフォルニア発祥の人気ハンバーガーチェーン。西海岸を代表するファストフード店として知られていますに行きたいと言い、Levinさんは曙がチーズバーガーを97個くらい頼む姿を想像して、一生語れる話になると興奮していました。
ところが曙が頼んだのはチーズバーガー1つとポテト、ダイエットコークくらいでした。Levinさんのほうがたくさん頼んでしまい、恥ずかしかったといいます。あとで聞くと、曙は迎えに行く前に食事を済ませていたそうです。
これ(曙との話)はみんなに話せますね。
Levinさんは、日本の代理人の世界はとても閉鎖的だったと振り返ります。宮武さんも、少し開かれてきたとはいえ、今でもやや難しいと応じます。
Levinさんは、野茂英雄の時代から野球がその扉を開いてきたと話します。生涯ドジャースファンのLevinさんにとって、大谷翔平がいることは格別で、球場では日本人選手3人のグッズやジャージが大量に売れているといいます。
Levinさんは「批判されるかもしれないが何年も言い続けている」と前置きし、大谷翔平は史上最高の野球選手で、ベーブ・ルースより上だと語ります。日本のパートナーとZoomをするたびに、最新の大谷のボブルヘッドを見せているそうです。
(大谷の評価で)日本人のリスナーの多くからは、批判なんて来ないと思いますよ。
黄金期のDisneyで学んだブランドの力
宮武さんは、Levinさんが1995年にDisneyに在籍していたことに触れます。美女と野獣、アラジン、ライオン・キング、ポカホンタスと続いた、映画部門の黄金期です。
Levinさんは、上司がWalt Disney Companyの社長になったのを機に、戦略企画・事業開発部門に入りました。Kevin MayerさんやTom Staggsさんらが在籍したそのチームを、Levinさんは戦略企画界の「1927年のヤンキース」と呼んでいます。
なぜそれほどの人材が集まったのか。Levinさんは、Michael Eisnerさんの実績があったからだと答えます。数字は正確ではないかもしれないと断ったうえで、Levinさんは次の数字を挙げました。
就任時は約2億7500万ドル
退任時は250億ドル
Levinさんは、Eisnerさんと、そこからさらに会社を伸ばしたBob Igerさんを、過去50〜75年のエンタメ業界で最高の経営者2人だと評価しています。
Levinさんはその後Disney Onlineに移りました。入社時は18人目くらいの社員でしたが、辞める頃には800人ほどに増えていたそうです。ゲーム、スポーツ、ニュースの領域を担当し、ゲームへの情熱を仕事にし始めたといいます。
Levinさんにとっての気づきは、Disneyというブランドがどんな扉も開くということでした。Disneyのシニアプロデューサーとして電話すれば、RealNetworksもMicrosoftもMacromediaもAdobeも応じてくれて、相手の取り組みを素早く学べたといいます。
Levinさんは、Disneyがブランドを大切に扱う姿勢も理解できたと話します。プロデューサー時代、本社の許可を取らずに、当時のaol.com上でミッキーマウスとマリオのチャットを実施し、クビになりかけたそうです。それでも、とても楽しかったと振り返っています。
ゲーム業界で連続起業家が成功しやすいのはなぜか
宮武さんは話を投資に戻し、ゲーム業界では連続起業家の成功率が一般的なソフトウェア業界より高いとされる理由を尋ねました。
Levinさんによると、ゲーム産業の市場規模はハードウェアと広告を除いてもエンタープライズソフトウェアに匹敵し、それらを含めれば上回ります。それでいてコミュニティははるかに小さいといいます。
Levinさんは、この身内意識の強さが連続起業家の強みになると説明します。一度成功した起業家が再び旗を立てると、「あの人の下で働いた、良い文化だった」という評判が人材を引き寄せるからです。
ゲームやプラットフォーム作りは何年もかかる体験で、仲間と長い旅に出るようなものだとLevinさんは話します。報酬だけで職場を選ぶ人ばかりではないので、ゲーム業界では文化が重視されるといいます。例としてLevinさんは、人が辞めないSupercellを挙げています。
では、投資の際に文化をどう見極めるのか。Levinさんは、Griffinがツーリストキャピタル ── 本業の外から一時的なブームに乗って流れ込む投資資金。業界への理解が浅く、市況が悪くなると去りやすいとされますの対極にあることが助けになると答えます。
コロナ禍直後、不動産・エネルギー・暗号資産の世界から流入したが、見た目より難しいとすぐに気づいた
長く業界にいるため、リファレンスを三角測量して人物を見極められる
Levinさんは、大手パブリッシャーから独立した人や、買収後に競業避止期間を終えて辞めた人について、誰が本当に製品を押し上げたのかを細かく見分けられると話します。手柄を横取りしている人も、控えめな性格で手柄を主張しない本当のキーパーソンも見えてくるといいます。
ゲームの映画化が相次ぐのはなぜ?
宮武さんは、映画界でゲーム原作が急増していると指摘します。今年はMinecraftの映画や「8番出口」、昨年はBorderlands、今後はStreet FighterやCall of Dutyも控えています。
Levinさんは、ソニックの最新作、Minecraft、グランツーリスモ、そしてインディータイトルながら興行収入3億ドルを超えたFive Nights at Freddy'sを挙げます。宮武さんが加えたスーパーマリオも「信じられない成功」だといいます。
Levinさんによると、既存メディア企業の今後3〜5年の開発ラインナップを見ると、劇場、配信、テレビ形式のいずれでもゲームIPの多さに驚くそうです。Levinさん自身もLionsgate時代にゲーム事業を立ち上げ、FalloutのAmazonでの映像化に関わりました。
一方でLevinさんは、Borderlandsの映画は「見るに堪えない」出来で、CBSでのCandy Crushのゲームショーも同様だったと率直に語ります。良いことも悪いこともある、というのがLevinさんの受け止めです。
Levinさんが挙げる根本的な理由は、今物語を作っている人たちがゲームで育った世代だということです。Falloutのショーランナー、Jonah NolanさんがBethesdaのTodd Howardさんと話し始めて2分で、Nolanさんが遊べるだけのFalloutを遊び尽くしているとわかったといいます。
Nolanさんは色使いやサウンドトラックの独自性、ブラックユーモアまで理解していたそうです。Levinさんは、15年前なら「Warcraftはこれだけ売れたから、そこそこの映画でも数字は取れる」と数字だけで判断されていたと対比します。
Levinさんは、J.J.エイブラムスのようにゲームを深く理解している作り手もいると話します。そして、原作に忠実であることも大事だといいます。熱心なファン層は、原作を裏切れば作り手を許さないが、誠実に全力を尽くせば大目に見てくれるというのがLevinさんの見方です。
アニメの実写化と「ハブ&スポーク」の逆転
宮武さんは、日本のアニメスタジオや大手出版社の多くが実写化を恐れていた一方で、ONE PIECEの実写版は大成功したと話します。作り手が実際にアニメを観ている世代だからかもしれない、という問いかけです。
(ONE PIECEの実写版は)良かったです。僕は好きでした。
LevinさんもONE PIECEは大好きで、カードゲームのブースターボックスを発売初日から全部持っているそうです。小声で、そのアートワークはポケモンに匹敵するか、それ以上かもしれないと語ります。
Levinさんは、実写版のプロデューサーMarty Adelsteinさんを知っており、彼は作品を大切にしていると話します。IPを搾り取るのではなく、ファンのために世界を広げていると作り手が感じられれば、それはプラスと受け止められるといいます。
Levinさんによると、日本のアニメ・マンガのIP権利者と話すと、経済条件から入ることはまずないそうです。「これをどう見ているか」「この世界をどこへ連れていくのか」を問われ、何十年も続いてきた作品とファンへの深い敬意を感じるといいます。
Levinさんはこの変化を、ハブ&スポーク ── 中心(ハブ)から放射状に線(スポーク)が伸びる構造。ここでは中心となる作品から派生商品が広がる関係を指していますモデルの逆転と表現します。
ハブは映画かテレビシリーズで、おもちゃ、コミック、アニメ、マンガ、ゲームはスポークだった
ハブは何でもよい。Podcast、アニメ、マンガ、Labubuでもありうる
Levinさんは、香港の空港で案内表示がすべてLabubuになっていて、16時間のフライト明けに6メートルほどのLabubuに迎えられたというエピソードも紹介します。こうした広がりが受け入れられるのは、原作IPへの誠実さがあるからだとLevinさんは話しています。
続編ばかりの時代に、インディーゲームが伸びている
宮武さんは、昨年の世界興行収入トップ10のうち9本が続編で、残る1本もブロードウェイミュージカルの映画化「ウィキッド」だったと指摘します。ゲームにも同じ傾向があるのか、今後変わるのかを尋ねました。
Levinさんは、Call of Dutyのように毎年出る定番タイトルは長く続くと答えます。Call of Dutyはコロナ禍を乗り切る支えで、チームもこのゲームで結束したそうです。GTA VIはIP史上もっとも稼ぐ作品になるかもしれないとも話しています。
Levinさんは続編そのものを否定しません。観客に誠実であればよく、搾取的に感じられるものは今では見抜かれ、投資回収もできないだろうと語ります。
一方でLevinさんは、インディーゲームが爆発的に伸びていると強調します。数人のスタジオが大成功し、10年続くタイトルもあり、7〜9年目のほうが1〜3年目より好調な例もあるといいます。
Levinさんは25年にわたり好不況の波をくぐってきたといいます。ツーリストキャピタルが去る不安定な市場でこそ最良の投資ができたと振り返り、モバイルが落ち込んでも、アフリカ大陸やインド亜大陸、中東・北アフリカなどまだ本格的に立ち上がっていない市場があると楽観的に語ります。
モッドとUGCが広げるゲームの世界
宮武さんは、スター・ウォーズのようにファンフィクションがIPを大きくしてきた例に触れ、ゲームがよりインタラクティブになる中でファンとの関係をどう見るかを尋ねました。
Levinさんは、モッドは大成功だと答えます。パートナー企業のOverwolfは、ゲームのカスタマイズ体験を提供する世界的リーダーだといいます。YouTube、Twitch、TikTokなどで生まれるゲームIP由来のUGC ── ユーザー生成コンテンツの略。企業ではなく一般のユーザーやクリエイターが作る動画や作品などを指しますやクリエイターコンテンツは、数えきれない量だと話しています。
Levinさんは、かつて流行語だった「あらゆるもののゲーミフィケーション」が、マイクロドラマやショート動画として実際に起き始めていると見ています。短い形式を好む世代に合わせるのは良し悪しではなく現実だといいます。
Levinさんによると、変化に抵抗して殻に閉じこもった既存メディアは衰退しかけました。音楽業界はSpotifyやPandora、ツアーがなければ消えかけたし、Netflixは映画業界を揺るがしたと話します。
だからNetflixやRokuのようなプラットフォームがゲームに乗り出すのは当然だとLevinさんは語ります。ユーザーを獲得するのは難しくて高くつくので、一度手放して再獲得するのは割に合わないからです。
Levinさんは、何百時間も遊ぶゲームなら自分の音楽を入れたりアバターを入れたりできるのは理にかなっていると話します。こうした「つるはしとシャベル」型の事業は、Griffinにとって非常に興味深く、業界の成長に欠かせないといいます。
フィンランドはなぜゲーム大国になったのか
宮武さんは、RovioやSupercellを生んだフィンランドがなぜ独自のゲームエコシステムを築けたのかを尋ねます。Levinさんは、フィンランドを「パーフェクトストーム」だったと表現します。
Levinさんによると、出発点はNokiaでした。Series 40やSeries 60の端末に入っていた「スネーク」のように、Nokiaは携帯電話を通話以外にも使えるハードウェアとして見た最初のメーカーだったといいます。宮武さんは、スネークがもともと携帯向けだったとは知らなかったと驚いています。
Nokia
携帯電話を通話以外にも使えると考える先見的な人材がいた
大学へ
Nokiaを出た人材が大学で教え、ノウハウが広がった
先駆的な企業
Habbo HotelのSulakeが基本無料モデルと仮想経済をいち早く模索した
支える土台
世界上位の教育水準と、政府のスタートアップ支援
成功と人材の連鎖
Supercell、Remedyなどが成功し、次の人材を輩出した
Levinさんは、Supercellを今でも史上もっとも成功したモバイル企業だろうと評価します。Clash Royaleの再ブームはインフルエンサーの力も大きいものの、ゲームの品質と継続的な革新があってこそだと話しています。
Levinさんは、NetflixへのNext Gamesの売却なども例に挙げます。さらに、市場規模が小さい国ならではの強みとして、最初から世界で通用するものを作るしかないという前提があると指摘します。
トルコ、イスラエル、そして日本という特別な市場
宮武さんは、日本のコンテンツは国内志向が強く、Netflixの日本のランキングもアニメなど国産作品が中心だと話します。そのうえで、日本、アメリカ、フィンランドの違いを尋ねました。
Levinさんは、まずトルコを挙げます。Gram GamesやPeak GamesがZyngaに買収され、その人材がSpyke GamesやDream Gamesを立ち上げるという人材の連鎖があったといいます。トルコの労働倫理の高さは周辺国を不安にさせるほどで、コロナ禍でも減速しなかったと話しています。
Levinさんはイスラエルも、技術面で実力以上の成果を出す小国の成功例だと話します。フィンランドと同じく、国内市場が小さいため最初から世界で通用するものを作る必要がある国です。
日本についてLevinさんは、自分は日本びいきだと認めたうえで、他に比べられる市場はないと語ります。ゲームやトレーディングカードの文化がメディアの隅々まで浸透し、街を歩けば誰もが好きなIPのものをリュックに付けているといいます。
Levinさんは、日本を宮本茂さんや小島秀夫さんを生んだ「ゲームのゆりかご」と呼びます。セガ、ソニー、バンダイナムコ、コナミ、スクウェア・エニックスと、成功したパブリッシャーも数えきれないと話しています。
Levinさんは、日本のプレイヤーには詳細で技術的なオンボーディングを受け入れる意欲と忍耐があり、それがほとんど勲章のようになっていると見ています。
歴史が長く、複雑なオンボーディングにも付き合う忍耐がある
まだ「赤ちゃんの国」で忍耐が短く、王室がない分セレブやアスリートを過大に重んじる
Levinさんは、自国のものをそのまま輸出しても同じように受け入れられるとは限らず、消費傾向の違う市場から単純に輸入することもできないと話します。それでも根っこには通じ合うものがあり、忍耐強く丁寧にそのパズルを解くべきだといいます。
築地、TCG、そしてゼルダ。Levinさんが日本とゲームに求めるもの
最後に宮武さんは短い質問を2つ投げかけます。1つ目は、日本にあってアメリカにないもので、持ち込みたいものは何かという質問です。
Levinさんの答えは築地の魚市場です。大の魚好きで、日本に行くたびに空港へ向かう前の最後の予定は築地でウニを食べ、ビールを飲むことだといいます。新しい市場があることは知っていて、早朝4〜5時に行くならそちらだとしつつ、没入体験としては築地がまだ上だと話しています。
Levinさんは真面目な答えとして、TCGの小売体験を挙げます。東京駅の地下にあるスタジオジブリのお店に行列ができていた光景を例に、IPが生活に染み込んでいる日本の状況はアメリカでは再現しにくいと語ります。
それでもLevinさんは、アメリカでも干上がりかけていたカード店が、コロナ後のトレーディングカードの爆発的な人気で盛り返していると話します。デジタルのゲームの世界が実店舗やTCGに溶け込んでいく流れにも期待しているといいます。
2つ目の質問は、何度も戻ってしまうゲームです。Levinさんは「退屈な答え」と断りつつ、宮本茂さんが生んだもの、そこから派生したものすべてだと答えます。Levinさんにとって宮本さんは「生けるゲーム界のウォルト・ディズニー」です。
Levinさんは、任天堂は何度も「終わった」と言われながら、WiiやSwitchで復活してきたと話します。Switchの画面は最高画質ではないと批判されても、ブレス オブ ザ ワイルドやティアーズ オブ ザ キングダムは見事な体験だといいます。
Levinさんは、Griffinのウェブサイトでも時のオカリナについて語っていると話します。時のオカリナは人生を変えたゲーム体験で、Levinさんにとっては生きた芸術だといいます。
まとめ
Peter Levinさんは、ゲームが他のメディアより桁違いの熱量を生むことを出発点に、業界を内側から理解する投資家であることの価値を語りました。ゲームIPの映像化も、日本やフィンランドの市場の強さも、根底にあるのは作品とファンへの誠実さだという見方が一貫しています。
- Griffin Gaming Partnersは、ゲームとゲーム関連インフラの両方に投資し、インフラ側の知見をコンテンツ投資に生かしている
- ゲームの映画化が増えた根本理由は、今の作り手がゲームで育ち、原作を理解し裏切らない世代だからだとLevinさんは見ている
- IP展開の中心は映画やテレビに限られなくなり、マンガ、Podcast、Labubuなど何でもハブになりうる
- フィンランドやイスラエルのような小さな国は、最初から世界で通用するものを作る必要があることが強みになっている
- Levinさんは日本を比べられる市場のない「ゲームのゆりかご」と評し、宮本茂さんを生けるゲーム界のウォルト・ディズニーと呼んだ





