立ち上げ方は2パターン。まず何を決めるのか
衛生委員会の構成メンバーが決まった後、その先の進め方には大きく2つのパターンがあると小橋さんは話します。前回は衛生委員会の目的と構成メンバーを扱ってきたため、今回はその続きにあたる立ち上げの流れが中心です。
1つ目は、とりあえずメンバーを集めて、何も決まっていない状態で衛生委員会を始めてしまうパターンです。衛生委員会の方向性や進め方そのものを、委員会の中でみんなで決めていく形になります。
2つ目は、正式な委員会の前に設立準備委員会のような場を設けるパターンです。事務局や一部のメンバーで運用面を固めてから、満を持して正式にスタートさせるやり方だと説明されています。
法令が求めているのは「毎月1回以上開催すること」がほぼ中心で、細かい運用は自分たちで決めてよいというスタンスだと小橋さんは述べます。そのため、どちらのやり方でも構わないという立場です。
毎月1回以上開催するっていうこと以外は、あとは自分たちで運用の細かいところは決めてねっていうのが法令のスタンスなんで、個人的にはどちらのやり方でもいいかなっていうふうに思います。
ただし、いずれのパターンでも衛生委員会のルールは固めていったほうがいいと小橋さんは強調します。一般的にはこれが衛生委員会規定と呼ばれるものです。
衛生委員会規定に盛り込む内容とオリジナル要素
衛生委員会規定には、まず法令で決められている項目をそのまま反映させるケースが多いと小橋さんは話します。具体的には、開催頻度、調査審議事項、議事録の保管や周知方法などです。
一方で、法令項目だけでなく、その企業オリジナルの部分を付け加えることも多いといいます。例えば、定例と定例の間に緊急事態が発生した場合に臨時委員会を開催する、といった取り決めです。
出欠に関する独自ルールを設けているケースもあります。メンバー全員が毎回出席できるとは限らないためです。
- 欠席する場合は代理人を立てる
- 欠席者は議事録に必ずコメントを残す
- 過半数の出席がない場合は衛生委員会として成立させない
構成メンバーについても、法令の枠を超えて独自に加えるケースが多いと小橋さんは説明します。前回触れた法令上の4つの役割は、事業者トップ、衛生管理者、産業医、衛生経験を有する者でした。
これに加えて、議長を補佐する副議長、準備や進行を担う事務局、必要に応じて呼ぶ専門家などを構成に組み込む例があるといいます。法令のメンバー構成をベースにしつつ、運用に必要な役割を足していく形です。
メンバーの任期は交代制。関わった人が得るもの
議長、衛生管理者、産業医はあまり変わらないものの、その他のメンバーには任期を設けるケースが多いと小橋さんは話します。目安は1年から2年程度が多い印象だといいます。
よく見られるのは、一定期間が経過したら交代する、ただし再任は妨げないというルールです。特定の人だけでなく、いろいろな社員が関わっていく設計になっています。
これをポジティブに捉えれば、多くの社員が衛生委員会に関わることで、企業の健康管理に対する意識が社内で醸成されていく効果が期待できると小橋さんは述べます。
実際、任期が終わる際の最後の挨拶で、ポジティブなフィードバックをもらうことも多いといいます。勉強になった、会社がこうやって社員を守っているのだと知って好感を持てた、といった声です。
会社ってこういうふうにして社員を守っているんだなって知って好感を持てたとか、そういうポジティブなフィードバックをいただくことも結構多いです。
対面が基本、でもオンライン開催も認められる時代に
開催方法についても、最近はバラエティに富んできていると小橋さんは話します。衛生委員会は対面が基本ですが、対面と同等の質が担保できるのであれば、オンラインやメールでの開催も法令上・通達上で認められてきています。
オンライン開催が認められる条件には、ハード面とソフト面があります。まずハード面の条件は3つあると整理されています。
ただし、業務内容によっては社員にスマホやパソコンが支給されないケースもあると小橋さんは指摘します。そうした場合、オンライン開催は現実的に厳しいと述べています。
ソフト面の大前提は、対面と同等の円滑なコミュニケーションが取れることです。できればお互い顔出しで、資料は画面共有をしながら、必要に応じてチャットで情報を送り合うような進め方が想定されています。
個人的には会議の内容にもよりますけど、慣れたら意外とオンラインの方が成果とか生産性が高いような場面も多い気がしますけどね。
メール・チャットで開く非同期型の衛生委員会
さらに小橋さんは、メールやチャットでの開催にも触れます。まだ少数派としつつ、オンラインの条件に加えて次の条件を満たせば開催が認められると説明します。
4つ目のコーディネーターについて、小橋さんは、それぞれが自由に言いたい放題では収拾がつかなくなるため、取りまとめ役が必要だと説明します。これらの条件をクリアし、規定に落とし込めば、メールやチャットによる非同期型の衛生委員会も認められるといいます。
こうした柔軟な開催が向くのは、フルリモートや多拠点展開の組織だと小橋さんは述べます。すでにコミュニケーションがオンライン中心で定着しているためです。
また、24時間営業のシフト制のような業界も挙げられます。宿泊や医療などでは、全員が同じ時間に集まること自体が難しいためです。
開催時期と時間、そして見落としがちな労働時間の扱い
開催時期については、第何週の何曜日まで細かく規定に定めるケースはあまり見かけないと小橋さんは話します。一般的には月の中旬から下旬に設定されることが多い印象だといいます。
その理由は締めのタイミングにあります。月末締めの会社が多く、月初には労働時間や休業者の人数などの集計作業が入るためです。前月の状況をタイムリーに報告するには、中旬から下旬に持っていきたいという事情があると説明されています。
開催時間は、なるべくみんなが集まる時間帯が望ましいとされます。フレックス制ならコアタイム、日中は営業や客先常駐で出払っている場合は、定時過ぎの夜19時開始も珍しくないといいます。
ここで注意が必要なのが労働時間の扱いです。衛生委員会は基本的に業務内であるため、労働時間として取り扱う必要があると小橋さんは指摘します。
さらに、それが法定時間外に行われた場合は割増賃金が発生するという通達も出ていると述べ、注意を促しています。
規定づくり自体を委員会で話し合う意味
話は最初のテーマに戻ります。衛生委員会の規定を作るというプロセス自体も、法令で定められている調査審議事項に含まれると小橋さんは指摘します。「衛生に関する規定の作成に関すること」がそれにあたります。
そのため、衛生委員会の運用をどうしていくかを、委員会の中でみんなで話し合うことは不自然ではないと小橋さんは述べます。冒頭で紹介した「何も決めずに始める」パターンにも、この裏づけがあることになります。
むしろ、メンバー全員で衛生委員会を作り上げているという感覚が、衛生委員会の活性化にもつながっていくのではないかと小橋さんは話しています。
今回は衛生委員会の立ち上げ方、特に運用規定を中心に取り上げてきました。次回はいよいよ審議事項の中身、衛生委員会で何を話していけばいいのかを深掘りしていく予定だと予告されています。
まとめ
衛生委員会は、法令が定める「毎月1回以上の開催」を軸に、細かい運用は各企業が自分たちで決めていくものだと小橋さんは整理します。規定づくりからメンバー任期、開催方法や時間まで、実態に合わせて設計していく姿勢が語られました。
- 衛生委員会の立ち上げには、何も決めずに始める方法と、準備委員会で運用を固める方法の2パターンがある
- 衛生委員会規定は、法令項目に加えて臨時委員会や欠席時の代理人など企業独自のルールを盛り込むことが多い
- 対面が基本だが、条件を満たせばオンラインや、非同期型のメール・チャット開催も認められる
- 開催は集計を踏まえて月の中旬〜下旬が多く、業務内であるため労働時間として扱い、法定時間外なら割増賃金が発生する
- 規定づくり自体が調査審議事項に含まれ、みんなで作り上げる感覚が委員会の活性化につながる


