子牛だらけの牧場、ホルスタインのオスはどこへ行く?
収録日は9月21日。今日も研修生が参加して、勉強しながらの配信です。まずは牧場に生まれたホルスタインのオスの話から始まります。
雄はどうなるんですか?
雄はもうお肉ですね。お肉の牛として飼われるので。
川上牧場は子牛を産ませるための牧場なので、オスは1〜2週間ほどで別のお肉の牧場に買われていきます。今週から来週には引き取りに来られるそうです。
気になる売値も話題になりました。品種によって、かなり差があるようです。
6〜8万円ほど。今は上がってきているものの安めです
20万円ほど。少し下がったものの高く売れます
子牛がたくさんいるのは楽しい一方で、哺乳ロボットが渋滞しちゃったりするのが悩みどころ。1台しかないので、飲んでいる小さな牛が横取りされてしまうこともあるそうです。
なかでも早産で生まれた未発達の子牛は、ずっと寝ていることが多いといいます。1か月経ってもまだ小さく、飲む量も少なめ。しっかり育てても、月齢が小さい分、売るときは他の牛より安くなってしまうという難しさもあるようです。
万博で見た「培養肉」ってどういう仕組み?
ここで研修生から、ずっと聞きたかったという質問が飛び出します。大阪・関西万博のヘルスケア館で見た「培養肉」の話です。
万博で行って、ヘルスケア館に行った時に培養肉って。
ずっと僕の配信でそうやって言ってるけど、僕培養肉大好きだから。
川上さんによると、培養肉は日本ではまだ認可されておらず、研究段階でも食べることはできません。仕組みを聞かれて、こう説明します。
培養肉ってあれどういう仕組みでできてるんですか?
iPS細胞のようにどんな細胞にもなるものではなく、スーパーで売っているようなお肉の細胞を培養して増殖させて作るものだと説明されています。
増殖したお肉ははじめブヨブヨの塊なので、それを3Dプリンターで形にしていくのが今の形だそう。脂や硬いところ、柔らかいところを筋組織のように再現してステーキにするのは、めっちゃ難しいといいます。
それでも技術はどんどん進んでいて、日本ハムなど大手も参加する協議会ができ、半年ほど前には法規制を整えて日本でも進めていこうという話になってきているそうです。
頭数を減らしても収入は増える?畜産農家との関係
培養肉が広まると畜産農家は大打撃なのでは、と心配する研修生。しかし川上さんの見方は違いました。
あれできちゃったらもう酪農家は大打撃じゃない?
大打撃じゃなくて、もう海外の方では食べられてて。
海外ではすでに、100%ステーキとしてではなく、ナゲットやハンバーグ、ウインナーやソーセージなどの加工品として使われているそうです。
川上さんが描くのは、培養肉の施設の隣に牧場がある、という姿です。牧場では品種改良でおいしい血統の牛を育て、その細胞をもとに培養肉を作るイメージです。
これまで
1000頭を飼って肉を生産していた
これから
500頭に減らし、残り500頭分は培養肉として販売する
結果
労力・従業員・土地が減り、生産量は保たれる
つまり牛を育てることそのものは減らせても、培養のもとになる細胞を売ることで副収入が上がるという発想です。畜産農家にとってはメリットになりうる、というわけですね。
ドイツのスタートアップとシンガポールの「市販」事情
話は海外の具体例へと進みます。ドイツではすでにスタートアップ企業が動き出しているそうです。
コンテナハウスのような培養施設をレンタルで貸し出し、培養に使うシャーレのセットをサブスクのように定期的に売り続けるサービスが始まっているといいます。
酪農家は、生まれたときの子牛のへその緒から取った血清をシャーレに入れることで、お肉を作れるのだそうです。赤ちゃんの傷が早く治るように、子牛のへその緒の血清は細胞の増殖率がいいのだといいます。
ただ、ドイツでは政権交代で法律が変わり、賛成から反対へと態度が揺れてゴタゴタしている面もあるそうです。
一方で、すでに市販が進んでいる国もあります。
シンガポールはもう普通に市販で、お肉だけじゃなくてサーモンが今進んでるけど。
シンガポールではサーモンやフォアグラ、ウズラなどが加工品として販売され、「これは培養肉のものです」「これは普通の畜産のものです」と売られているとのこと。研修生も「食べてみたい」と前のめりでした。
「加工食品だから体に悪い」は本当?培養肉への抵抗感
研修生が気にしていたのは、体への影響でした。ハムやウインナーなどの加工食品は添加物が入っているイメージがあり、あまり食べないようにしているといいます。
iPS細胞でできた培養肉はそういう、なんだろう。
全く同じお肉だもん。だって。栄養素も全く一緒。
添加物が入っているわけではなく、栄養素も普通の肉と変わらないと聞いて、研修生は「バクバク食べたい」とお肉好きらしい反応を見せます。
それでも培養肉には反対の声もあります。その理由を川上さんはこう見ています。
未知の生物で。だからiPS細胞自体も最初の時はもうめちゃめちゃね。
仕組みがよくわからないから怖い、という感覚です。iPS細胞も、今でこそ理解が広がっていますが、最初は同じように受け止められていた、と重ねています。
ゲノム編集まで進むと、牛の存在価値はどうなる?
話題はさらにゲノム編集へと広がります。川上さんは茨城に出張してゲノム編集のお米を見てきたそうで、早く実用化してほしいと感じたと話します。
これまでの品種改良は、優れた植物どうしを掛け合わせて、膨大な数の中から良いものを選ぶ、という力技でした。ゲノム編集は、望んだ特徴を直接作れる技術だといいます。
動物にも、そして技術的には人間にもできるという話になり、少子高齢化で出産できる女性を望む、といった倫理に関わる例まで話が及びます。川上さんは「アニメ漫画の世界」と表現しつつ、技術的には可能だと語ります。
そして最後に、この回の核心となる問いへとたどり着きます。培養肉やゲノム編集が進んで牛乳やお肉が不要になったとき、牛の存在価値はどうなるのか、という問いです。
研修生も、万博の展示を見てまさに同じことを考えたといいます。万博行った甲斐がある、と川上さんも手応えを感じていました。
大屋根リングの美しさや、崩されることを見込んで作られた日本館の技術にも話が及び、「新しい技術大好きです」という川上さんらしい一言で配信は締めくくられます。
まとめ
万博で見た培養肉を入り口に、近未来の食と酪農、そして牛の存在価値まで話が広がった回でした。難しいテーマながら、研修生の素朴な疑問がやりとりを分かりやすくしてくれています。
- 川上牧場は子牛を産ませる牧場で、ホルスタインのオスは1〜2週間で肉用の牧場へ。交雑種(F1)はオスより高く売れる
- 培養肉は普通の肉の細胞を培養して増やし、3Dプリンターで形にする。日本ではまだ認可されておらず、海外では加工品として使われている
- 頭数を減らしても培養肉で生産量を保ち、細胞を売ることで副収入が上がる、という畜産農家との共存の形が語られた
- シンガポールではサーモンなどが市販され、ドイツではスタートアップやサブスク型の培養施設も登場している
- 培養肉やゲノム編集が進む近未来に「牛の存在価値はどうなるのか」という問いが、この回の核心として投げかけられた

