リスナーからの質問「少子高齢化で酪農はどうなる?」
今回のお便りは、配信アプリAWAのリスナー「やまさん」から届いたものです。
気仙沼に行きました。子供は毎年200人も生まれないそうです。少子高齢化による酪農への影響はありますか?
島根県も少子高齢化が進む地域だと、川上さんは話します。
島根県もそうなんですけど、少子高齢化がね、先進県ですよ。行き交う人はもう高齢者ばかりですね。
この問いに対して川上さんは、AIに分析とシミュレーションを頼み、その結果を読み上げていきます。
担い手だけじゃない、産業全体が縮む?
AIの分析によると、日本の酪農家の平均年齢はすでに60歳を超えています。離農も加速し、毎年数百戸の単位で酪農家が減っているそうです。
ここで川上さんが強調するのは、減るのは農家だけではないという点です。
牛乳を支える獣医師や人工授精師、トラック運転手、搾乳師といった人たちも減っていきます。さらに牛乳を加工する工場の従業員、物流や販売の現場スタッフも同時に人手不足になります。
つまり農家がいなくなるだけではなく、産業全体が縮小するリスクがある、というわけです。
消費者側への影響も見逃せません。少子化で牛乳をよく飲む子供の数が減り、実際に日本の牛乳消費量は年々減少傾向にあります。
一方で、ヨーグルトやチーズといった加工品にはまだ伸びしろがあります。市場の重心が「飲む牛乳」から「食べる乳製品」へとシフトしていく可能性があるそうです。
未来の酪農に見える2つの道筋
では少子高齢化がさらに進んだらどうなるのか。AIの分析では、大きく2つの道筋が見えているといいます。
担い手が少ない分、大規模なメガファームやロボット搾乳、AIによる牛群管理が広がり、少人数でたくさんの牛を管理する仕組みが当たり前になる
放牧牛乳や有機農法、地域ブランド牛乳など、ストーリー性のある商品を少人数で届ける。観光や教育とセットの牧場体験やカフェに広がる可能性もある
AIはまとめとして、少子高齢化は「酪農を今のまま続けられない」という厳しい現実を突きつける一方で、新しい技術や仕組みを取り入れるチャンスでもあると指摘しています。
「限界ギリギリまで変わらない」現場のもどかしさ
AIのまとめを受けて、川上さんは現場のリアルな感覚を語ります。
限界までね、このシステムを続けようとしちゃうんですよね。圧倒的に年配の方の意見が通りやすい状況なので。
これは政治や社会、会社でも同じかもしれない、と川上さんは話します。会議で「ああしましょう、こうしましょう」と言っても、なかなか変わらないのが実情だそうです。
急激に変えると痛みが伴うので、徐々に変えていくしかない。けれど一方で、急激に変化するところが出てくるとも見ています。
その兆しとして、川上さんはこの夏に牛乳が一部足りなくなった地域があったことを挙げます。
一瞬牛乳がちょっとなくなるみたいなこともあるんじゃないかなと。消費者の方には引き続きそういう意識を持って、牛乳を応援していただけたら嬉しいです。
集乳車や機械メーカーの「週休2日制」がもたらす変化
リスナーからのコメントを拾いながら、川上さんは地域ごとに現れる具体的な変化にも触れます。
たとえば集乳車。今は来てくれるからいいものの、集乳車が来なくなって離農した地域も過去にあったといいます。餌の配送も、メリットがないからと撤退する可能性が地域によっては出てくるそうです。
集乳車来なくて離農するっていうのも過去にあった。餌の配送、メリットないから撤退するみたいなのも、地域によっては出てくるかもしれません。
輸入の農業機械についても、部品などが「本当に来なくなる」ケースが出てくると川上さんは注意を促します。
さらに、機械メーカーや飼料会社の中には、完全週休2日制にすると宣言する企業も出てきているそうです。
それに合わせて酪農するって、やっぱ大変ですけど、考えていかないといけないですね。
24時間365日休まない牛を相手にする酪農にとって、取引先の休みは無視できない問題です。
少子化の根っこと、経営の実態をめぐって
コメントには、少子化そのものの原因に踏み込む声も寄せられました。結婚のメリットや将来性が見えにくく、自分の老後すら不安な中で、なぜ子供を持てるのかという指摘です。
川上さんもこの見方に理解を示しつつ、政策の使い方に注文をつけます。
子供家庭庁の予算、もうちょっとうまいこと使った方がいいんじゃないかなと。
海外の例として、子供が3人いる家庭は非課税になる国もあると触れ、そうした政策があれば産みやすくなるのでは、と話しています。
また「高齢の一次産業従事者には経営能力がない人もいる」というコメントについては、川上さんは冷静に補足します。
それは兼業農家を含めて見た場合の話で、サラリーマンをしながら農業をする人も含まれます。酪農は専業が多く、専業でやっている人はそんなことはないのでは、という見方を示しました。
「何十年も同じ日常だと、花瓶の位置が変わっても大騒ぎする」というコメントには、うまい例えだと共感しつつ、だからこそ変えていかないと本当にやばい、と危機感をにじませます。
まとめ
少子高齢化は酪農にとって、今のままでは続けられないという厳しい現実を突きつけます。一方で、効率化や高付加価値化といった新しい形へ進むチャンスでもあり、消費者の応援も欠かせない、というのが今回のお便り回のポイントです。
- 日本の酪農家の平均年齢は60歳を超え、離農は毎年数百戸単位で加速している
- 減るのは農家だけでなく、獣医師や運転手、工場・物流のスタッフなど産業全体に影響が及ぶ
- 未来の酪農は「大規模な集約・効率化」と「小規模な高付加価値型」の2つの道筋が見えている
- 集乳車の停止や機械メーカーの週休2日制など、地域ごとに具体的な変化が現れ始めている
- 一人では限界があり、消費者を含めた協力が新しい酪農づくりの鍵になる

