白米を見たら餃子、餃子を見たら白米?
小野寺さんはこの回を「私たちはどうして白米を見たら餃子が欲しくなり、餃子を見たら白米が欲しくなるのか」という問いから始めます。スーパーのお米売り場に新米が並び始めた時期に合わせた話題です。
私たちはどうして白米を見たら餃子が欲しくなり、餃子を見たら白米が欲しくなるんでしょうか?
小野寺さんによれば、おかずとして進化した日本の餃子は、そもそも「ご飯が欲しくなる料理」です。この回はその理由を、歴史と研究の両面から探っていきます。
焼き餃子はなぜ「ご飯のおかず」になったのか
餃子のふるさとである中国東北部では小麦が主食で、餃子そのものが主食として食べられています。そのため、ご飯と一緒に餃子を食べるのではなく、餃子と一緒におかずがある、という食べ方になります。
一方、日本の主食はお米で、餃子はご飯のおかずとして食べられてきました。小野寺さんは、戦後に満州から引き揚げてきた人たちが焼き餃子を広める際、ニンニクを効かせてしっかり味をつけ、油で香ばしく焼いたことが背景にあると説明します。
小野寺さんは、かつて渋谷の民民羊肉館 ── 民民羊肉館。書き起こしでは「民民楊柳館」と表記。戦後の渋谷で焼き餃子を広めたとされる店で、番組の♯40でも「珉珉」との違いが扱われていますの方が、餃子は総菜としてご飯に合い、酒の肴としても受けたと語っていたことも紹介しています。
餃子はご飯のおかずでもあり、お酒のつまみでもある。この二刀流がですね、日本の焼き餃子なんだっていうことなんですね。
中国はタレ、日本は餡。味つけの場所の違い
日本の焼き餃子はおかずとして進化する過程で、中の餡にしっかり味がつくようになったと小野寺さんは話します。
中国の主食としての餃子では、ニンニクはタレに漬け込んだり、生ニンニクをかじりながら食べたりします。それに対して日本では、ニンニクを餡に練り込むのが一般的です。
主食として食べる。ニンニクはタレに漬けたり、生でかじったりして添える
ご飯のおかずとして食べる。ニンニクを餡に練り込み、タレなしでも味がする
小野寺さんが普段から「タレなしでも餃子はおいしい」と言っているのは、日本の焼き餃子がおかずとして進化し、餡自体の味がしっかりしているからだといいます。
それは日本の焼き餃子はおかずとして進化している。だから味がしっかりとしているんだ、そういったことが理由にあるんですね。
ご飯とおかずを交互に食べる「口中調味」とは?
小野寺さんは、餃子がおかずとしておいしくなった理由のもう一つに、日本の食文化を挙げます。平安時代から続くとされる口中調味 ── 口の中でご飯とおかずを混ぜて味わう食べ方。味の薄いご飯を、口に残ったおかずの味で味付けする日本的な食べ方として知られますです。
口中調味とは、ご飯とおかずを交互に食べ、口の中に残ったおかずの味でご飯を味付けしていく食べ方です。小野寺さんは、給食の時間に「ご飯、汁物、おかずを交互に食べましょう」と言われた経験がある人も多いのではないかと話します。
論文が示した餃子の立ち位置は「ご飯をおいしくするおかず」
口中調味で、どんなおかずとご飯の組み合わせがおいしいのかを調べた研究が、2011年の日本調理科学会誌に掲載されています。広島文教女子大学や県立広島大学の研究者らが、広島の大学生413人にアンケートを取ったものです。
この調査では和食・洋食・中華のおかずが挙げられ、中華は麻婆豆腐、酢豚、シュウマイ、春巻き、餃子など9品でした。それぞれについて「おいしく食べるためにご飯が必要なおかずか」と「ご飯をおいしく感じさせるおかずか」の2点が質問されています。
餃子については、口中調味をしている人のおよそ8割、していない人もおよそ7割が「ご飯をおいしく感じさせるおかず」と答えました。一方、「ご飯がないとおいしく食べられないおかず」と答えた人は4割に届かなかったといいます。
小野寺さんはこの結果から、餃子はご飯がないとだめなおかずではなく、ご飯があったらもっとおいしくなるおかずだと読み取ります。
つまりですね、餃子とご飯って必ずペアじゃないんですよ。餃子があってご飯があってもいいし、餃子があってビールがあってもいい
おかずにもつまみにもなれることが、餃子の強みだと小野寺さんは考えています。
さらに論文では、ご飯をおいしく感じさせるおかずとして、天ぷら、とんかつ、唐揚げ、春巻き、餃子など、油やバターを使ったものが挙がっていたといいます。小野寺さんは、この「ご飯と油」に餃子とご飯の相性を解く鍵がありそうだと見ています。
「おいしいものは、脂肪と糖でできている」は本当か
小野寺さんが次に取り上げるのは、日本コカ・コーラの「からだすこやか茶W」の広告コピー「おいしいものは、脂肪と糖でできている」です。小野寺さん自身もこのお茶をよく飲んでいるそうです。
小野寺さんは、このコピーはご飯と餃子にも当てはまると話します。ご飯はデンプンで、デンプンはブドウ糖がつながった糖分です。ご飯をよく噛むと甘くなるのは、唾液がデンプンを糖に分解しているからだと説明します。
一方の焼き餃子には、焼くときの油や、餡の肉の脂など、さまざまな油が含まれています。ご飯の糖と餃子の油がセットになることで、おいしく感じられるという見立てです。
ただし小野寺さんは、からだすこやか茶の広告は餃子とご飯に限った話ではなく、おいしいと思われている料理には糖と油が使われている、と言っているだけだとも補足しています。
糖と脂の組み合わせに脳がよろこぶ研究
糖と脂の組み合わせについては実際に研究があります。小野寺さんが紹介するのは、2018年にアメリカのイェール大学とドイツのマックス・プランク研究所などのチームが行った実験で、おやつの写真を見せて「いくらなら買うか」を決めてもらい、同時に脳の動きも調べたものです。
この実験では、油と炭水化物が両方入ったおやつに最も高い値段がつきました。同じカロリーで、同じくらい好きなおやつであっても、油だけ・炭水化物だけのものより、両方が入ったものが好まれたといいます。
脳のご褒美を感じる部分も、油と糖分が両方入ったものに強く反応しました。しかも、そのおやつが好きかどうかに関係なく、本能的に反応してしまうそうです。
研究者らは、油と炭水化物が両方たっぷりな食べ物は自然界ではとても珍しく、だから脳が「これはすごい」と思ってしまうのかもしれない、と書いているといいます。
小野寺さんは、この研究がご飯と餃子で確かめたものではないと断ったうえで、ご飯と餃子を交互に食べると口の中でこの組み合わせができあがり、脳のご褒美を感じる部分を刺激しているのだろうと考えています。
脳は糖と脂の記憶を覚えている?
もう一つの研究は、2025年にアメリカのモネル化学感覚センターなどのチームが発表したマウスの研究です。記憶をつかさどる海馬 ── 脳の奥にある部位で、記憶の形成や場所の記憶に深く関わります。形がタツノオトシゴに似ていることからこの名がつきましたに、糖に反応する神経細胞と脂に反応する神経細胞が、別々に存在していたといいます。
糖に反応する細胞を刺激しても、脂に反応する細胞を刺激しても、マウスはたくさん食べるようになりました。小野寺さんは、両方を刺激するとご褒美感がより強くなるのではないかと考えられている、と紹介します。
食べた体験
ご飯と餃子を一緒に食べておいしかった
脳の記憶
海馬の糖と脂に反応する細胞がそれぞれ記憶する
欲求
餃子を思い出すだけでご飯が欲しくなる
マツコさん流「餃子ご飯に中濃ソース」
小野寺さんは2020年にテレビ番組「マツコの知らない世界」に出演し、マツコ・デラックスさんにさまざまなお取り寄せ餃子を紹介しました。そのときマツコさんが「こうやって食べた方がおいしいのよ」と教えてくれた食べ方があります。
マツコさんはスタッフに白いご飯を用意してもらい、餃子を乗せてぐちゃぐちゃと混ぜ、さらに中濃ソースも混ぜて食べたそうです。小野寺さんもそのまま同じ茶碗と箸で食べさせてもらいました。
実際それ本当美味しかったんですね。すごいジャンキーな雰囲気になりますし、餃子そのものの味じゃないんだけど、本当にこれは美味しかったんですね。
小野寺さんは、中濃ソースの酸味・甘み・塩気・スパイスがご飯と餃子に混ざったこと、そして餃子の脂とご飯の糖分がそろっていたことが、おいしさの理由だと考えています。茶碗で混ぜている時点で、口中調味をする必要もないわけです。
今週のお取り寄せ餃子:宮崎・ぎょうざの丸岡
今週のお取り寄せ餃子は、マツコさんが茶碗で混ぜて食べた、宮崎県都城市の「ぎょうざの丸岡」の餃子です。番組ではドレッシングやイエローマスタードなど調味料の食べ比べを紹介したものの、マツコさんに「つまんない男ね」と言われ、結局あの混ぜご飯が一番だという流れになったそうです。
丸岡の餃子は野菜たっぷりのシンプルな野菜餃子で、食べたことがある人は「脂はどこにあるの?」と思うかもしれないと小野寺さんは話します。実は丸岡はもともと精肉店から始まった店で、野菜に肉の旨味、つまり脂がしっかり混ぜ込まれて包まれているといいます。
もうこの丸岡の餃子を食べた瞬間うめえってなる。それが餃子がご飯と混じってもうまいよって話になると思うんですね。
丸岡の餃子は冷凍ではなく冷蔵の生餃子です。賞味期限は発送日から4日間で、届いてから2日間ほどしかないため、早めに焼いて食べてほしいとのことです。
焼き方について小野寺さんは、表面の粉を落とす方法を勧めています。ボウルに水をためて餃子をさっと通し、フライパンに並べると、皮がプルプルに仕上がるそうです。
価格は10月1日発送分から上がるものの、40個入りが1360円、50個入りが1700円で、1個あたり約34円です。人気店のためお取り寄せには時間がかかるかもしれない、と小野寺さんは添えています。
ご飯に合う餃子はどれ?リスナーへの問いかけ
小野寺さんは、そろそろ「餃子を見たらご飯が欲しくなる呪い」にかかってきた頃ではないかと冗談めかしつつ、ご飯に合う餃子をぜひ探してほしいと呼びかけます。
糖と脂の話からすれば、脂がしっかりした肉汁たっぷり系の餃子が合うのか、それとも肉汁はそこそこで食感のいい餃子がいいのか。答えは人によって違うかもしれない、と小野寺さんは話します。
小野寺さんは、見つけた餃子や、餃子に合うご飯についての情報を、Xやスレッズのハッシュタグ「聴く餃子」、noteの質問箱、焼き餃子協会のLINE公式アカウントで募集しています。
一言本音:餃子の日はご飯なし、でももち麦ご飯
最後の「一言本音」で小野寺さんは、実は自分は餃子を食べるときはご飯なしで餃子だけを食べていると明かします。それでもお腹が空いているときなど、どうしてもご飯が食べたくなるときがあるそうです。
そんなとき小野寺さんが食べるのは、イオンで売っている電子レンジで温めるもち麦ご飯です。いろいろ食べ比べた中で、これが一番おいしいと感じて常備しているといいます。
麦ご飯、食物繊維がね、たっぷりあればなんか糖と脂に勝てるんじゃないかなっていう風に思って、こうしているんですけど、どうなんでしょうね。
まとめ
日本の焼き餃子は、ご飯のおかずとして餡に味をつける方向に進化してきました。口中調味の研究では、餃子はご飯がないと困るおかずではなく、ご飯をおいしくしてくれるおかずと評価されています。その背景には、糖と脂の組み合わせに反応し、それを記憶する脳の働きがあるのかもしれません。
- 中国では餃子が主食でタレで味をつけ、日本では餡に味を練り込んでおかずとして進化した
- 広島の大学生413人への調査で、約7〜8割が餃子を「ご飯をおいしく感じさせるおかず」と回答した
- ご飯の糖と餃子の脂の組み合わせは、脳のご褒美を感じる部分を刺激すると考えられる
- マツコさん流の「餃子ご飯に中濃ソース」や、ぎょうざの丸岡の野菜餃子も紹介された


