ドイツ人の休み方と聞いて、何を想像する?
幸あれこさんがこの回で紹介するのは、サンドラ・ヘフェリンさんの『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』です。ダイヤ出版から出ている本で、以前番組で同じ著者の本を紹介した際に献本されたものだといいます。
幸あれこさんによると、この本はヘフェリンさん自身がさまざまなドイツ人にインタビューし、一人ひとりの暮らしぶりを細かく聞いているのが特徴です。ドイツの文化や慣習がわかりやすく書かれていて、まさに戦略的な休み方がわかる一冊だと話します。
幸あれこさんは本題に入る前に、ドイツ人の休み方として「ソーセージを両手に持って踊る」「プレッツェルを頬張って踊る」「ビールを頬張って踊る」の3択クイズを出します。
(ドイツ人の休み方は)ビールを頬張って。どれも違うんじゃないか。
しゅうへいさんの答えが正解で、どれも違うとのこと。しゅうへいさんも「週末にビール飲んでるのかなぐらいは想像するけど」と笑い、ここから日本人には新鮮なドイツの休み方3つの紹介が始まります。
休みは「大きな石」として先に瓶に入れる
1つ目のポイントは「休みの石を先に入れておく」ことです。幸あれこさんは、瓶に砂や小石を先に詰めると最後に大きな石が入らなくなるが、大きな石を先に入れれば隙間に小石や砂が入る、というよく知られたたとえを持ち出します。
日本人って先に仕事とか予定とか、メールの返信とか、嫌々な頼まれ事とか、謎の「一応やっときますか」みたいなのを瓶に最初詰めがちで。
最後に休みを入れようとするんだけど、もう入んなくなってて、「あ、どうしましょうか」みたいな感じなんだけど。
対してドイツでは、休暇をかなり早い段階で考える文化があるそうです。会社によっては新年早々、誰がどの月に休暇を取りたいかを各自が書き込んで共有することもあると本で紹介されています。
日本の年始は今年の目標や売り上げ、上半期の計画を考えるのが普通ですが、ドイツでは「あなたは今年いつ休みますか?」が大事な話として出てくるといいます。幸あれこさんは、ドイツでは休暇が人生の予定として扱われていると受け止めています。
仕事や頼まれ事を先に詰め、余った隙間に休みを入れようとする。結果、隙間にも用事が入り、休めない
年始などの早い段階で休暇を決めて共有する。休みを守るために仕事を整える
幸あれこさんは、日本人は余った時間に休む感覚が強いと指摘します。空いたスペースにはどうしても「ここで用事を済ませておくか」と仕事が入り込み、気づけば今月どこで休んだのか、休んだはずなのに疲れている、という状態になるといいます。
その仕事の隙間に休むんじゃなくて、休みを守るために仕事を整えるっていう、ドイツの戦略的な休み方なんですけれども。
「1年の休は元旦にあり」をくじ引きで実践
とはいえ、日本でいきなりドイツのような長期休暇を取るのは難しい、と幸あれこさんは認めます。お月見が好きだから9月を丸々休みたいと言えば、「何考えてんだ」という上司もいるだろう、と冗談まじりに話します。
そこで幸あれこさんが自分で考えた対策が「1年の休は元旦にあり」です。年始に自分の休みをくじ引きで決めてしまうというもので、収録にも実際にくじを作って持ち込みました。
出演者が引いたくじには「6月17日夕方5時からコサックダンスを踊る」「6月22日夕方5時からふくらはぎと膝に感謝する」「9月9日夕方4時から盆踊りのセンターを任される」と書かれていました。リスナー向けには「10月4日朝5時からカニ歩きで隣の家まで行って帰ってくる」「7月4日朝10時からトウモロコシに将来性を感じる」が用意されています。
こうやってくじ引きにしちゃえば、無理やりにでもこの時間、コサックダンスを踊るんだって決めておけば、仕事せずに踊れると思うんですよね。
イケダハヤトさんは、行き先をランダムに決める旅行アプリや、それをSNSで発信している人を例に挙げ、何をするか決められないから決めてもらう方法は実際にあると応じます。
確かに強制力は確かに大事ですね。
内容がトンチキすぎるという指摘に対し、幸あれこさんは、押し付けられたら「自分はコサックダンスより別のことをしたい」という欲が出てくるはずで、そこが狙いだと説明します。休むという概念がなかった人に、休みたい中身を考えさせる仕掛けだというわけです。
育休ではなく「親時間」と呼ぶドイツ
2つ目のポイントは「ドイツでは育休とは言わない」です。ドイツには「親時間」という制度があるそうです。
育児してる人からしたら当たり前に「どこが休みやねん」っていう話になるわけですよ。だから休暇っていうよりは、実はその24時間営業の命を守るプロジェクトになります。
本によると、ドイツの親時間は子ども1人あたり最大36ヶ月取ることができ、子どもが8歳の誕生日を迎えるまで取得できます。そのうち12ヶ月は子どもが3歳の誕生日を迎えるまでに使う必要があり、残りは3歳から8歳の間に取れる仕組みです。
両親が同時に取っても、別々のタイミングで取ってもよく、一般的には別々に取るケースが多いものの、両親で平等に分けて取るケースもあると本では紹介されています。
幸あれこさんは、生まれた直後だけでなく、少し大きくなってからも親としての時間が必要だという前提が制度に入っている点に注目します。3人の子どもがいるイケダハヤトさんに話を振ると、イケダハヤトさんも頷きます。
8歳までっていうのはいいなって感じします。確かにね、なるほどって感じ。
ドイツでも以前は育児休暇にあたる言葉が使われていましたが、2001年に親時間という名称に変わったそうです。この変更によって、親が子どものために使う時間、つまり家庭内の育児労働が少しずつ評価されるようになったと本には書かれています。
幸あれこさんは、育休と呼ぶと周りからも本人からも「仕事を休んでいる人」にしか見えないと話します。イケダハヤトさんも「申し訳なさそうに取るよね」と応じ、日本も呼び方を変えたほうがいいという話に広がります。
家庭の時間にも名前をつけていい
番組内では、子どもが熱を出して迎えに行く親がひたすら謝りながら職場を抜けていく光景はおかしい、という話も出ます。寝坊なら謝るのもわかるが、子どもの発熱でそこまで謝るのは変だ、という指摘です。
幸あれこさんはこれを受け、日本の仕事時間には勤務時間、残業時間、会議の時間、研修の時間、稼働時間など多くの名前があると指摘します。自身がいた業界では、働く時間を正式に「拘束時間」と呼んでいたそうです。
ちょっと家のことですいませんとか、ちょっと子供のあれですいませんとか、私用でとか、家庭の事情でちょっととか、なんか急にぼかすじゃないですか。
仕事の用事ならプレゼンや会議と堂々と言えるのに、家庭や自分の時間はぼかしてしまう。幸あれこさんは親時間という言葉をヒントに、家族の時間、家庭の時間にもちゃんと名前を付けていいと考え、自作の名称を提案します。
| 場面 | よくある言い方 | 幸あれこさんの名称案 |
|---|---|---|
| 子どもの発熱 | 子どもが熱を出して | 家庭内救急センター稼働時間 |
| 洗濯・掃除・買い出し・片付け | 家庭の事情で | 生活向上インフラ整備時間 |
| 鍼灸院・整体・美容院 | 私用で | 人間メンテナンス再起動時間 |
| 家族の送り迎え | 送り迎えが | 人間輸送ミッション |
名前のノリにイケダハヤトさんが「若干エヴァっぽくなって」と突っ込む場面もありつつ、幸あれこさんの狙いは、仕事以外の大切な時間にも市民権を与えることだといいます。
ごまかしの休みとかじゃなくて、こうやって大事なものにはしっかり名前をつけたら、逆に本当の休みっていうのが見えてくるのかなって思ったのが2つ目のポイントでございます。
休暇に仕事を連れてこないドイツの「ギブアンドテイク」
3つ目のポイントは「休暇に仕事を連れてこない」です。幸あれこさんは、日本人には休みの日でも仕事を完全に切り離すのが苦手な人が多く、温泉に行っても仕事をしてしまう、といった経験があるのではと問いかけます。
ドイツでは、休暇中に仕事のメールを見ない、仕事のことをきっぱり忘れるという感覚がとても強いそうです。さらに、休暇中の人に連絡しない、その人を仕事に引き戻さないという空気もあると本では紹介されています。
出演者の一人は、社会人1年目の営業マン時代に、休日に会社の携帯へ連絡が来ると「会社からちょっと」と格好をつけて席を外していた思い出を語ります。実際には発注ミスの電話で、レンタカーで部品を届けに行ったという失敗談に、スタジオは笑いに包まれます。
幸あれこさんは、日本人は休みの日でも「念のためメールだけ見ておこう」「自分が止めたら迷惑だろう」と考えがちだと話します。ドイツ式では、休暇はただ会社に行かない日ではなく、仕事の世界から一度出る時間だという認識なのだそうです。
幸あれこさんがもう1つハッとしたのが、本で紹介されていた「休暇はギブアンドテイク」という考え方です。自分が休むときは周りに助けてもらい、周りが休むときは自分が助ける。上司も部下も同僚も自分も休むので、休みは誰かの特権ではなくお互いに守るものになります。
「すいません、ご迷惑をおかけします」と、自分だけ休むことに引け目を感じる。上司が休まない職場もある
「今度は私が休む番」「次はあなたが休む番」。休むことを個人のわがままではなく、チームのお互い様と捉える
幸あれこさんは、日本では休みの日にも「あの人が怒っていたら嫌だな」「月曜の会議はどうなるか」と頭が回り続けるため、いくら寝てもカフェに行っても疲れが取れないのではと話します。
休暇の引き継ぎに必要なのは「仁義」?
ギブアンドテイクに身に覚えがあると感じた幸あれこさんが行き着いたのは、任侠の世界でした。休暇を「仁義な引き継ぎ」にすればいい、という提案です。
わてが休みに入った暁には、あんたにこの一件お任せします。ただ、その代わりあんたが休む時、わて行きますけんみたいな。
この仁義さえあれば、お互いお互い様の契りを交わせるから、罪悪感なく休み行けますよね。
職場でどう実践するのかと聞かれた幸あれこさんは、まず任侠映画をみんなで道徳の時間のように見ればいい、朝礼でもいいと答えます。しゅうへいさんは「やべえ会社じゃないか」と突っ込みます。
みんなでやくざ映画を見ろ。
話の最後には、幸あれこさんが最近Netflixで作品を見て任侠の世界に影響を受けていたことも明かされ、ゴッドファーザーの話題で脱線しつつ盛り上がります。
休暇中の自分をアイデンティティにする
幸あれこさんがこの本でいちばんの気づきとして挙げたのは、日本で働くドイツ人女性のインタビューです。日本人にとっては仕事がアイデンティティのようなところがあるが、ドイツ人にとってのアイデンティティは休暇中の自分だったりする、という言葉でした。
幸あれこさんは、アイデンティティを仕事の自分ではなく休暇中の自分にすることを取り入れたいと話し、日本人にはあまりない概念ではないかと締めくくります。
しゅうへいさんは「最後は普通の話に落ち着く」と笑い、イケダハヤトさんは「ドイツに行っていたら日本に帰ってきて仁義」と、話の旅路を世界一周にたとえました。次回は3冊の振り返りとコメント返しが予告されています。
まとめ
ドイツ人の休み方の要点は、休暇を余った時間ではなく人生の予定として先に確保し、仕事から完全に離れることにありました。幸あれこさんはそれを、くじ引きや名前づけ、仁義の引き継ぎといった日本流の工夫に置き換えて提案しています。
- ドイツでは年始に誰がいつ休むかを共有することもあり、休みを守るために仕事を整える
- 育休は2001年に「親時間」へ改称され、子どもが8歳になるまで最大36ヶ月取得できる
- 家庭や自分の時間にも名前をつけると、ぼかさずに堂々と休めるという提案
- 休暇はギブアンドテイクで、休暇中の人に連絡しない空気がドイツにはある
- 仕事ではなく休暇中の自分をアイデンティティにするという視点が、いちばんの気づき




